イラスト入り
高校時代、寮で同室だった圭と聖人はつきあっていたが、圭の裏切りで決別した。その後、互いに教師として母校で再会し…?
『壁の中の嘘と秘密』のスピンオフ。
前作で意味ありげに登場していた二人の教師の高校時代~母校で教師として再会し結ばれるまでの話です。
【あらすじ】
お坊ちゃん育ちで世渡り上手な高校生・圭は、帰国子女の聖人と寮で相部屋になる。
無愛想だが本当は可愛い聖人を知るにつれ惹かれていく圭は、他生徒と親しくする聖人に嫉妬し、孤立してほしい、自分だけのものでいてほしいと願ってしまう。
その独占欲が、聖人を嫌う学生の策略を間接的に手助けし、聖人を陥れる結果になってしまった。
金を盗んだ濡れ絹を着せられ、孤立した聖人に圭は手を差しのべ、ますます親密になった二人は一線を越える。
だが、圭の裏切りを知り傷ついた 聖人は、圭の前から姿を消し…。
【感想】
前作同様、全寮制の高校という舞台で青く切なくロマンティックな世界がたっぷり描かれます。
二人が桜の木の下で初めて出会うシーンは梶井基次郎の詩を思わせる幻想的な美しさがあるし、
再会後、嵐の夜の告白もひたむきな想いが溢れていて良い。
ただ、陽×陰のカップリングや展開が前作とデシャブであまり目新しさがないのが残念。
前作は「屋根裏部屋」や「天体観測」等の小道具が印象的でしたが、本書は相当なページ数を過去編に割いたわりにそうした核となるモチーフが弱く、せっかくの描写が冗長に感じてしまいました。
若き日の圭の過ちは分からなくもないのですが、再会後はもう少し大人な口説き方をしてほしかったかな。
ピュアさが本書の売りなのでしょうが、27にもなって「好きだから」一辺倒はどうなのかな~と、個人的にあまりノれませんでした;;
前作を読んだときは
教師カップルはもう少し大人な関係だと思っていたので、ふたを開けてみると思いの外ジュブナイルでピンとこなかったのも敗因です。
「壁の中の嘘と秘密」のスピンオフ。
あのー正直なところ、前作があまり好きじゃなく、こっちはどうしようかな~なんて思ってたんです。あと高校の寮ものにそんなに惹かれないというのも。
でもこっちはツボでした。神と悩むくらいに。
この本、分厚いんですが、半分ちょっとは棚橋(攻)と朝倉(受)の高校時代のお話で、残りが現在のお話です。
前半は棚橋視点でふたりがくっつくまでと離れるまでが丁寧に綴られていて、
後半は朝倉視点でふたたびくっつくまでが綴られている。
桜の木が重要アイテムかな。特に最初の桜のシーン(挿絵あり)が印象的で好き。
とにかくこれは棚橋が朝倉を思い続けているお話。
カテゴリ的には執着攻めなんですが、あんまり熱量を感じさせないんですよね。
暑苦しいことしてるのに、暑苦しくない。不思議w
これは高遠マジックかな、という気がします。高遠先生の書かれるキャラクターって、みんな低体温そうというか。
高校生のころの嫉妬心や執着心からくる愚かな行為がふたりを別つことに。
若いころ余裕がなかったんだよね…と思わせておいて、大人になってからもあまり余裕がなかった棚橋に萌えです。
一歩間違えたらストーカーちっくなんですけど、朝倉側の揺れる気持ちが伝わってくるから、はらはらとふたりを応援しながら読めました。
前作のふたりも出てきます。あのBBQのシーンですねー。
たぶん前作読んでなくても大丈夫だとは思うけど、読んでたほうがより今作のふたりの空気も感じられていいと思います。
こんにちは、snowblackさま、はじめまして!
コメントありがとうございます。
前作もどこが駄目だったの?と言われるとよくわからないのですが…
おそらくキャラの組み合わせかなぁと…お話自体が嫌というわけでもなかったですし。
ただ好みから結構遠く離れてた、みたいな感じでした。
高遠作品はひんやりした印象が強くて、そこが好きなところです。
私のレビューがお役に立てたのなら、嬉しいかぎりですー
ランプの精さま、こんにちは。
snowblackと申します。
高遠作品は基本好きなのですが、私も前作がイマイチピンとこなかったので
こちらはそれほど積極的な気持ちになれず、未だ読んでおりませんでした。
ランプの精さまの、同様に迷いながらも読んでみたら神と悩むくらいにツボだった……
というご感想を読んで、背中を押された気分。
ありがとうございます、早速読んでみたいと思います。
高遠琉加先生の作品は、確か二冊目。
前はシリーズものの一つの途中を読んでしまったのですが。
今回は、スピンオフものでした。
前作は未読ですが、まったく問題ないようでした。
またしても、小椋ムク先生のイラストで、つい買ってしまった。
どうにも小椋ムク先生に弱いらしい。
高校時代と教師になってからで、視点が入れかわる作品です。
時代によって視点が入れかわる事で。
まったく変わってしまった関係が、より深く感じられる。
語られない相手の気持ちが、痛いほど伝わります。
塀に囲まれた独特の世界観のある、山の中の御坊っちゃま高校。
紅茶輸入会社社長の息子で、帰国子女。
日本に不慣れで人見知りな、三白眼で色白でやせっぽちの朝倉聖人。
大きな総合病院の院長兼学校理事の父を持ち。
男前で甘え上手で頭も運動も人付き合いもそこそここなす、要領が良い末っ子の棚橋圭。
高校一年の時のルームメイトの二人。
一本の山桜が、二人を運命的に出会わせ。
ある生徒の存在が、二人の人生を良くも悪くも狂わせます。
淡々と語られていますが、なかなかすごい熱いものを感じるし、そしてちょっぴり羨ましいかも?
閉鎖的な世界の中で、二人の上がったり下がったりの関係は、とても楽しく読めました。
特に圭の犯した罪は、気持ち的にはわかるわぁ~!、と思いました。
そして、大人になってからの聖人の、可愛いげのないところが妙にツボでした♪
少し物足りない終わり方な気もしましたが。
私はこの二人がとても好きです。
人は正しいだけじゃいられない。
間違えても、嫌われても、憎まれても。
私はあなたを愛している。
そんな、何気に深~いお話でした。
「壁の中の嘘と秘密」のスピンオフ。
前作で気になっていた大人組の過去と現在。
高遠作品は大好きで、基本作家買いなのだけれど
これは前作が今ひとつピンとこなかったので、ちょっと躊躇していたのだけれど
こっちは好みででした。
山の中の寮制の男子名門高校、
そこに勤める社会科教師棚橋は、明るい二枚目の人気者。
一方同い年で寮監も勤める数学教師の朝倉は、三白眼で無愛想。
そんな彼らは高校時代、ルームメイトだった……
時は遡り、彼らの高校時代、
帰国子女で人見知りで愛想のない朝倉が、唯一心を開いた棚橋。
二人はお互いに惹かれ合って身体を繋ぐようになったが、
棚橋の幼い独占欲が朝倉を傷つけ、朝倉は去っていく。
そんな10代で恋をして破局を迎えた2人が、10年経って再会する。
ぬぐいされない過去のわだかまり故に、頑に背を向ける朝倉と
それを突き破ろうとする棚橋。
拗らせた初恋、再会、とストーリーはありがちだけど、
隔絶された山奥の学園という仕掛けや(これは、いかにもファンタジーだけれどw)、
キャラクターの個性もあって読みでがある作品になっている。
高校時代の二人は甘酸っぱく気恥ずかしいような感じだし、
二人を引き裂いた事件は、個人的には分かるなぁ!と愛おしい思いがした。
後半の大人になってからの二人は、前作を読んで予想したより
ずっとピュアで高校生の頃のまま。
執着する棚橋は個人的にはタイプじゃないけれど、
こんな風に何もかも持っている男が、
浮き世の全てを捨てても初恋の君を求めるという図は好みでした。
冒頭の夜の桜が非常に印象的。
BL読み始めの頃に読んだ『楽園建造計画』の印象が強かったこともあって
高遠先生と桜は切り離せないイメージなんだな……。
前作「壁の嘘と秘密」で登場した、寮監先生達のお話。
高校時代に寮の同室だった二人。
ある事件をきっかけに、熱病のように甘い関係に溺れ、
そしてあっけなく崩壊した、
そんな初恋。
この本は、そんな初恋の顛末と、
それぞれ学校から一度外に出た二人が、
一方は教師として戻り、
それを知ったもう一方が、外の世界の全部と引き換えに、10年前の初恋を取り戻しに来るお話。
前作は、いろいろな要素を盛り込み過ぎな感じで、私としてはちょっと…だったけど、
今作は、もう、そのものズバリ、
どんなに好きだったか(前半「十六歳 春」棚橋視点)
だからこそ、どんなに憎いか(後半「二七歳 夏」朝倉視点)
それだけを描いていて、
その潔さに、萌萌ズッキュ~ンでした。