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野良犬にさえなれねぇ

norainu sae narenee

流浪犬都比你威

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表題作野良犬にさえなれねぇ

辻村洋平,高校生
小島連,幼馴染の仲良し3人組のひとり・高校生

同時収録作品ハートに風穴 前編 / 後編

辻村洋平,受の兄の親友・刑事
夏目央登,高校1年生・16歳

その他の収録作品

  • 28日後…(描き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

子供の頃からつるんでは多少の悪さなどもしてきた保(たもつ)・洋平・蓮。
親の再婚で保に小さい弟・央登(ひさと)ができ、3人+チビは相変わらずの日々を送るはず……だったが、蓮と洋平はある事件をきっかけに《ダチ》以上の関係となってしまう。
やがて時が過ぎ、それぞれ道を進んだ彼らは……⁉︎

奇才・語シスコが贈る伊達ワル系BL!
描き下ろし短編も収録。

作品情報

作品名
野良犬にさえなれねぇ
著者
語シスコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス ルチルコレクション
発売日
ISBN
9784344831261
4.3

(34)

(16)

萌々

(15)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
10
得点
146
評価数
34
平均
4.3 / 5
神率
47.1%

レビュー投稿数10

これも高校生もの

高校生祭りもそろそろ打ち止めかなぁ。

爽やかとも、かわいいとも、かけ離れているけど、これも紛れもなく高校生もの。

冒頭の「ハートに~」は、高校生になったばかりの央登は子どもの頃から近所に住む兄の友達洋平が大好き。
洋平としては、まだまだ子供の央登を相手にするわけにはいかず拒み続けるのだが、兄と喧嘩し、洋平にも追い出された央登は、兄と洋平ともう一人の仲間だった蓮に街で偶然で会います。
この後の展開が、なかなかハードなんだけど、逆に説得力あるというか、
ここまでのことがないと、大人の方からは子どもに手を出す「淫行」の壁は乗り越えられないよね。

そして、続く表題作「野良犬にさえ~」で保と央登、洋平、蓮の高校時代が語られます。

なんと言っていいか、年期?覚悟?格の違い?
ズシンと来る。

その上、最後はちゃんと洋平と央登の現在話でちゃんと明るくオチを付けて終わる。
大満足です。

3

BL・社会学編

懐かしさ溢れる絵柄だ……。本単行本収録中一番古いものはだいたい10年前に描かれた作品ですね。こういう絵柄流行ってたなあ。顔長めでくちびるが厚くて目が大きくて……。いまは二次元でも三次元でも塩顔全盛だなあとあらためて思いました。

それはさておき、ストーリー……。重いです。
受けの子がレイプされるBLで泣いたのは初めてかも。涙が止まらないとかではないのですが、お義姉さんがベッドでふとんにくるまってる央登の頭を撫でるところでじんわりと涙が滲みました。央登(受け)が全然わめいたり泣いたり発狂したりしないのがリアルで……あまりのことになにも考えられず手足を動かすこともできずにベッドでただ横たわってるだけのとき、なにもきかない母親のような女性がただそばにいて頭をなでてくれるのってどれだけ安心するだろうと思います。央登がかわいそうすぎて、攻めとのお清めエッチがセカンドレイプにしか見えなくて「やめてあげて!」と本気で思いました。本人は喜んでたのでいいんですけどね……。

で、表題作。レイプ犯・蓮の話。蓮は悪い奴です。美貌のクズ。本人のクズさを家庭環境のせいにすべきではないんですけど、親からの愛情をいっさい与えられずに育った子供が落ちるところまで落ちていく過程を救いなく描いた話です。たぶん彼はこれからも引き返せずに落ち続けて最後はどこかで野垂れ死ぬんだろうなあ。父親に犯され、母親代わりの姉には捨てられ、この子いったいなんのために生まれてきたんだろう?

蓮が央登を見付けてターゲットにすることを決めた理由はなんとなくわかる。得られなかったものと社会への復讐のつもりだったのかな。でも央登は蓮とは違ってたくさんの人に愛されて立ち直って、蓮の行為は蓮の思うようには功を奏さなかった。出所してきた父親に声を掛けられて子供のように怯えて失禁していた彼のことを思うと、悲惨さや憐憫を通り越してただ無常感だけが残る。

1

本領発揮!のアウトローもの

5月の予約購入本のひとつ、語シスコさんの新刊。
ワクワクしながら開いたら、口絵にいきなり女装っ子が!
まさか女装モノ?!と一瞬たじろいだものの(苦手なんです、女装モノ)、本編には女装シーンはありませんでした。めでたし、めでたし(゚ー゚;A

ていうか、この口絵、「赤ずきんちゃん(=女装っ子)たら気をつけて(オオカミが狙ってるよン)の図」だったんですね。
冒頭の「ハートに風穴」は、そう言われてみればそんなお話。
主人公は、高校生の央登(ひさと)。央登には、父が再婚した関係で血の繋がりのない(年の離れた)兄が一人。
自分も昔はヤンキーだったクセに、央登を掌中の珠のように大切に厳しく育てようとする兄と、兄の悪友たち――マル暴刑事の洋平と、ヤクザでムショ上がりの蓮――にユーワクされたい年頃な央登の、バトルな日々を描いたコミカルな作品です。

表題作も一連の作品で、こちらは「ハートに風穴」から少し年月を遡り、央登の兄と悪友たち3人の悪ガキ時代と、洋平と蓮の切ない恋の顛末が描かれています。
ワケありの家庭に育った3人がつるんで、酒・タバコ・麻雀・喧嘩三昧の日々。
といってもフツーにやんちゃな高校生だった3人の中で、一人蓮だけは、暴力団関係者とも付き合い始め、次第に闇社会へと足を踏み入れていきます。
変わっていく蓮を一途に想い続ける洋平ですが、犯罪に手を染め、いっぱしのヤクザへと変貌を遂げていく蓮を止めることはできず…という、語さんお得意のやるせないアウトローもの。
あとがきによると、「ハートに風穴」連載中、蓮が好評だったことから「野良犬にさえなれねえ」が生まれたとのことですが、後出しで生まれたという「野良犬~」の部分が圧倒的に面白い!
これほんとに「キュートでスウィート」が謡い文句のルチル?とレーベルを見返すほど、ヤクザに染まっていく男の姿が躊躇なく描かれています。
この本の表紙絵はマル暴刑事の洋平なんですが、レーベルカラーに配慮してか、中身よりもずいぶんキレイめ。本編では、洋平は顎鬚有りのワイルド路線だし、ヤクザ顔負けの派手な雰囲気なんですがね(苦笑)
表紙を見て、「あれ?語さん随分マイルドになった?」と感じた方、中身はもろに語シスコ節なので、安心してください。

何度カラダを重ねても洋平の愛が届かない、蓮の空虚な眼差しや、ヤクザの世界でのし上がるために手段を選ばない蓮の非情さ、そんな彼が自分を虐待していた父親と再会して失禁するほど怯える姿など、蓮というキャラが、まるで実在の人間であるかのように生々しくてリアル。
これほど暗く、救いが見いだせない人間を、ドライに、容赦なく、しかも魅力的に描ける作家さんは少ないんじゃないでしょうか。

「ハートに風穴」に較べると「野良犬~」は、濡れ場の数は少ないものの、雰囲気は逆に淫猥。
「野良犬~」の暗さを、「ハートに風穴」がうまく中和する形で、両者のバランスも絶妙です。それでいて、どうにもならない人間の性(さが)は曲げることなく描き切っている辺りに、語シスコさんのゆるぎない世界観を感じます。
や、面白かった。良い意味で、ルチルのイメージを壊してますね。

7

ダークヒーローの肖像

シリアスで重いけど、端々に挟まれるギャグと
男たちのタフなカッコよさのおかげで
読後感はカラリと痛快。
ビターでエッジの効いた青春エンタメ劇です。


【ハートに風穴】は
明るく可愛い高校生・史登の身に起こった不幸な事件と
その後のめっけものなラブ展開を描いたプロローグ。

その後の【野良犬にさえなれねぇ】は
史登の兄・保と、その幼馴染み二人の過去編。
幼馴染みの一人で史登の片想い相手・洋平(表紙の男性)が
主人公です。


幼馴染みの洋平、蓮、保。
父から虐待を受け酷い家庭環境で育った蓮は、
成長するにつれ薬やヤクザと関わるようになり
洋平たちから離れていく。
蓮に想いを寄せる洋平は、蓮を放っておけず
頼まれるままヤク流しの仕事に加担するが…。

史登の憧れのお兄さん・洋平にも当然あった青春時代。
好きな人を守る番犬にも
欲望のまま生きる野良犬にもなれない
洋平の焦燥感が伝わってきて切ないです。

蓮の側にいたいけど
愛してくれる家族がいて根が常識人な洋平は
蓮と一緒に堕ちることができず、二人は道を違う。
別れ際の会話は子供時代の感傷に溢れ切なく、
更に冒頭の現在編の彼らを思うと
成長するにつれ否応なしに変わっていく
人間関係の虚しさを感じさせます。

洋平の、ニヒルな風貌の下に
過去の恋の痛手や優しさを隠した佇まいには
アニメや特撮物に出てくるダークヒーローのような
哀愁、カッコよさがあり、そこに男のドラマを感じました。
(なんか俳優の某ジョー氏に似てるような…v)


移り変わっていく人間関係に絶対なんてない、
何がきっかけで愛が芽生えるかなんて
誰にも分からない
そんなメッセージを感じる本書。

このまま史登が成人して、H解禁になったら
二人は意外とラブラブバカップルになるんじゃないかな。
そんな未来まで見届けたかったです!
そして悲嘆に暮れる保の姿もw

6

読むほど染み入る

2008年~2010年にルチル掲載されたものに、描き下ろしを加えたものでした。
表紙の洋平の思春期と大人になってからの恋のお話。

導入?の「ハートに風穴」は、洋平の親友・保の弟、央登視点で、洋平への思いが軸になっていました。が、洋平とレンの複雑な思いは匂わせてあって、何があったのか非常に気になる。そこから表題作(洋平×蓮)につながっていきます。

語作品おなじみのろくでなしモノなんですが、これまでのものと一味違うのは、洋平が蓮と一緒に落ちていかないところ。それぞれが自分の道を自分のものと認識して進むのが潔く、切なかったです。

最後まで読んでから「ハートに風穴」に戻ると、洋平と蓮の短いやり取りに思いが凝縮されていたことがわかって、それがまた切ない。
保のキャラや、壊れた感に隠されてますが読み返すほど染み入るものがあり、やっぱり語作品。好きです。

3

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