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ピアニストを夢見る平凡な音大生・史樹は
客員教授で若手ピアニストの黒田から
コンサートの譜めくり係に指名される。
言葉はキツいが根は優しい黒田に惹かれていく史樹だが…。
クラシック音楽界の華やかさよりも、
毎日の地道なピアノ練習や、才能を持つ者への羨望、
ピアニストの「手」の温かさ、色気など
エピソードの一つ一つがとても身近に感じられる作品でした。
史樹が、真面目で大人しいタイプかと思いきや
思い余って暴走したり、いきなり黒田の頭を撫でたりと
天然でたびたび黒田を驚かすのが面白いw
黒田は、気難しく見えて、意外と親身で優しい年上攻。
史樹に謝るとき、わざわざCDとフィナンシェを持参する
ところに不器用な愛情が見えて好きですv
想いが通じ合ったあとの初Hシーンは堪らない甘さでした!!
黒田がすごく優しいのも良いけど
恋人だからこそ対等に愛したい!と
慣れてないのに口で奉仕する史樹の健気さにグッときます。
ピアノを比喩に使った官能表現も、情熱的で素敵♪
作中、何度も出てくる「ふめくり」のシーンが
史樹と黒田の関係の変化に伴って
ときにコミカルに、ときにエロティックに…と
雰囲気が変わるのも「おぉ!」と意表を突かれました。
特にラストの演奏、二人の一体感がリアルに伝わってきて
すごくドキドキしました~。
また、才能の有る無しを人に決めてもらうのではなく
ピアノが好きだから弾き続ける、という強い意志により
スランプを乗り越える史樹がとても印象的でした。
いつか黒田とステージ上で共演する、と約束するシーンは
史樹の前向きさや、二人の間にある愛情が伝わってきて
何だかじ~んときてしまいました(;_q)
本書が二冊目の作品となる小宮山ゆきさん。
前作の小説家の話といい本書といい、
一芸に打ち込む人々を大変魅力的に書かれる作家さんだと思います。
次回作も楽しみです♪
新刊が良かったので、既刊も読んでみよう〜とチェックしたら「ふめくりすとの恋」なんてのが目に入ってきたので、読んでみることにしました。
譜めくりすとって、演奏会でピアニストのそばに座ってページが来たら楽譜をめくる黒子みたいなあれです。
音大生の史樹は新進気鋭のピアニストである黒田のファン。
客員教授となった黒田の講義を受けたところ、ズバズバ批判するわ、俺様だわで幻滅。
おまけに、気難しい黒田の譜めくりを突然やらされる羽目になってしまいます。
腫れ物に触るかのように気を使う相手の譜めくりをやらなくちゃいけないなんて、ほんとお気の毒。
この譜めくりをすることになった史樹の本番状況が、すっごくリアルです。
実は、今月末に友達の演奏会で譜めくり頼まれてて「いいよ〜♪」なんてOKしちゃったけど、聞いたことない曲ばかりだし、諸事情でリハに立ち会えずぶっつけ本番になりそうで…ヤ・バ・い……(汗)と今更ながらヤバさに気づいている次第なんで、この譜めくり描写はまさに我が事のようで、読んでて変に汗をかいてしまったというか、胃が痛くなるような感じでした。
さて、初の譜めくりの出来はお粗末だったのに、なぜか「ふめくりの才能がある」と黒田に言われて、黒田と一緒に譜めくりの練習をする事になる史樹。
おいおい……
「ふめくりの才能」って何?(相性はあると思う)
おまけに「ふめくりの練習」って何?
あんな付きっきりの譜めくりの練習なんて、聞いたことないわ。
絶対そんなの言い訳で、手元に置いておきたいだけだろーが!
おまけに、後をつけて駅前で佇む史樹の様子を何時間も見てるとか、ストーカーか!と。
天才ゆえに傲岸な俺様攻めかと思いきや、史樹のことかな〜り気に入っちゃってるんですねぇとニヤニヤししながら読みました。
だけど途中で、どうやったら黒田みたいな音が出せるのかという問いに「音に艶が、色気が必要だ」という流れからエッチになるんだけど、リアル世界のセクハラを思い出してしまい嫌だったー。
というのも、オペラの指導と称して「歌に色気を出すためにスカートを脱いでみろ」とか何とか言って、レッスン時に下着一枚で歌わせる超大御所先生の話を門下生から聞いたことがありまして……。
(しかもその先生のレッスンは、パンツはNGでスカートしか許されないらしい)
狂ってるとしか言いようないんだけど、今もまさに超〜有名なオペラ歌手のセクハラ疑惑が報道されてますしね、こんなのはあり得ない!とは言い切れないのです。
この史樹も藁をも掴む思いで「音の艶」について考えていただけに、その必死さにつけこむかのようなエロ展開がイヤでした。
それは脇に置いといて。
良くも悪くも体の調子や精神面が音に出てしまうピアノというものと、黒田に恋をする自分に気づいて混乱する気持ちがうまく噛み合っていて良かったです。
最後に恋人となった黒田にピアノの才能があるか見極めて欲しいと史樹は頼むんですね。
その時の回答が100点満点だと思いました。
黒田のような音に史樹は憧れているけれど、史樹にしか出せない音もある。
ぶっちゃけ言うと、黒田みたいにメディアが注目するような一流ピアニストになるのは難しいと思うんですよね。
だけど、だからといって諦めることはなく、史樹は史樹の道を進めばいい。
その答えは自分自身の中にある。
「小さなものでも 拾い集めていけばいい」
これが私の心に響きました。
私が小学2年生の時に恩師からいただいた年賀状に「こつこつ積み上げて大きな大きなお山を作ってください。」とあったのを、思い出しました。
なんちゃってクラシック音楽ものではなく、きちんと描かれているところに好感が持てます。
ますます他の作品も読んでみたくなりました。
音大の教授と生徒のお話しです。
史樹がピアノやふめくりに対して真面目で一生懸命で真っ直ぐで。応援したくなります。
俺様教授がたまにデレたりヤキモチ焼くところも良かったです。
とても読みやすい文を書かれる作家さんで、音楽やピアノに全く詳しくない私でもスラスラ読めました。