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表題作こわいぐらい優しい

山崎成己,受の祖父の書生で画家
透谷ひかり,建築科の大学1年生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

遺言を託されたひかりは、亡き祖父の家で儚げな風貌の青年と出会う。山崎成己と名乗った彼は、素性を説明せず、そのまま祖父の家で同居をすることに。無表情な成己は掴みどころがなく、不思議な男だった。けれど時々、ひかりを探るように触れてくる。懐かない猫に気に入られたような嬉しさを感じるひかり。それが恋かもしれないと意識しはじめた頃、ふいに成己が「俺は心の声が聞こえる」と告げてきて…?

作品情報

作品名
こわいぐらい優しい
著者
鳩かなこ 
イラスト
香坂あきほ 
媒体
小説
出版社
ブライト出版
レーベル
ローズキー文庫
発売日
ISBN
9784861232701
3.2

(5)

(0)

萌々

(1)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
16
評価数
5
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

風情表現は流石ですが……

じつに四年ぶりの鳩かなこさんの新作。
時代物の印象の強い作家さんですが
本作は現代物です。

大学生のひかり(受け)は、亡き祖父の家で
成己(攻め)という美青年に出会う。
祖父の家の下宿人であった成己と
なりゆきで同居を始め、
寡黙ながら優しい成己に惹かれていき……

全体的に、風情豊かな描写が印象に残る爽やかな作品で、現代物ながらどこかノスタルジックな雰囲気が感じられます。
建築学を学ぶひかりの目から見た
祖父の屋敷の古式ゆかしさや、
画家である成己の制作風景シーンなど
時間がゆっくり流れていくような感覚が心地よいです。
一緒に過ごすうち少しずつ成己に恋していくひかりの心の動きも丁寧に描かれていて好印象。


しかし、物語後半では
成己を追い出そうとするヒステリックな叔母が登場したり、
祖父と昔の恋人の話が出てきたり、
成己が怒りに任せひかりを押し倒したりと
急ぎ足な展開になってしまい、前半の丁寧さが
なくなってしまったのが少し残念でした。

祖父の過去や、成己と過ごした日々についても
結局具体的に何があったのか
詳細に語られることはなく、やや消化不良。

また、成己の「人の心の声が聞こえる」設定は必要だったのか?
この能力が作中で生かされる場面はほとんどないし、孤独を強調するには天涯孤独の生い立ちで事足りるので、あまり意味のない設定に思えました。

萌×2には少し足りませんでしたが、久しぶりに鳩かなこさんの作品が読めて嬉しいです。
5/9にも心交社から新作が出るとのことで、こちらも楽しみです。

6

現代という箱には収まらない世界なのか?

久しぶりの鳩かなこ作品。
『帝都万華鏡』『東景白波夜話』の二つのシリーズで、
その美しい世界にすっかり魅せられていたので、
新作は本当に楽しみにしていた。

初の現代物、ということで、期待もあるが不安もありつつ手にとる。
漂うしっとりとした空気、建物や小物などの描写、
鳩さんらしい言葉の選び方や表現の仕方など、
魅力的なところはたくさんあるけれど、
全体としてはその魅力を生かしきれない作品になってしまっていた。

               :

馴染みのなかった祖父の家の遺品整理を任された、
建築を学ぶ大学生のひかり。
訪れた屋敷にいたのは、離れに下宿をしていたらしい成己
猫のようなマイペースさで、ひかりに近づいてくる無口で不思議な彼と、
少しずつ近ずいていく距離……

亡くなった祖父の過去や有り様、
ヒステリックに介入してくる叔母の痛み、
ひかりの着物趣味、人の心の声が聞こえるという成己の特殊な体質、
そのどれもが深まらないまま物語は流れていく。
詰め込み過ぎ……なのか、
全部がノスタルジックな光の中で、遠景のように迫らないまま過ぎていく。

それが作者の味わい、という意見もあろうが
今までの作品のあの濃密な世界を思うとなんとも物足りない。

主人公二人も、柔らかな繊細さは感じながら
強く訴えるものがないので、感情移入しずらい。
BLらしくちゃんと色っぽいシーンもあるのだが、
この二人攻め受け逆でもよかったかも……?
というより、自分の中で攻め受けが定まらない感じがあり
むしろリバこそがしっくりくるのかもしれない。

期待が大きかったからこそ、残念さも大きい。
鳩さんの作品だと思わなければ、
その表現などにもっと心惹かれたのかもしれない。
次回作も現代物のようだが、鳩ワールドの魅力全開を期待したい。

5

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