罪の名前

tsumi no namae

罪の名前
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神23
  • 萌×23
  • 萌1
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
5
得点
132
評価数
30
平均
4.5 / 5
神率
76.7%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
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媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
発売日
価格
¥1,550(税抜)  
ISBN
9784062209267

あらすじ

「あれの味は知っている。羽をむしると、どんな音がするのかも。」
――「衝撃」という言葉以外この作品を表現できない、怪作「虫食い」。
ほか、人間の弱さ、不思議さ、愛おしさを描き出す、4つの鳥肌短篇集。

表題作罪の名前

レビュー投稿数5

身近な罪の怖さ

タイトルの副題 Original sin 
原罪。人が生まれながらに持つ、どんな罪について書かれているのか。どきどきしながら読みました。

「罪と罰」
整形外科医の棚田のもとに、大けがを負った若い男・松雪が運び込まれる。松雪を繊細で優しい男と思い込んだ棚田は、親身になって世話を焼く。
次第にあらわになる松雪の嘘つきで冷酷な人間性。しかし、棚田はなかなかそれを受け入れられない。
松雪が連続殺人事件の容疑者であることを知った棚田は、思わず松雪の携帯を探り、同室だった老人を殺害した動かぬ証拠を見つけてしまう。
自分は悪魔を助けてしまったと、打ちのめされる棚田。

松雪は棚田の純粋でお人好しな性質を見抜いて、利用してやろうと思ったのでしょう。用済みになると途端にぞんざいな態度を取り始めます。
松雪のような人物はいるのだろうと思うと、他人とかかわるのが少し怖くなります。
犯罪はばれなければいいんだ。自分に都合の悪い人間はいらないんだ。そう考える松雪のような人間を罰することができるのか。暗い気持ちになりました。

「消える」
長い年月、弟に恋心と劣等感を抱き続けた長谷川は、弟の車に同乗して事故にあい下半身不随となる。長谷川は弟を一生自分に縛り付けるために、弟を罵倒し続ける。それは伝えることのできない卑屈な恋心の裏返しだった。
そんな長谷川の本心を綴った分厚い手紙を、弁護士だった父の書斎で見つけた菅野。長谷川は数年前に事故で死んだ。弟が兄をどう思っていたのか、好奇心に駆られ、菅野は長谷川の弟の元を訪ねる。
長谷川の暴君ぶりや、弟に肉体関係まで強要していたことを知る菅野。手紙の印象とはまるで違う兄弟の関係。
長谷川の弟に訪問の意図を問い詰められ、菅野は自分が何を知りたかったのか分からなくなる。
兄の恋情は、弟に微塵も伝わっていなかった。菅野はその思いが誰にも知られることのないよう、手紙を東京駅のごみ箱に捨て去る。

相手に受け入れてもらえない恋心は紙くず同然という、容赦ない事実が胸に突き刺さります。
菅野が、目の前にいる弟は兄を殺した犯人?…と恐怖に焦る場面が滑稽でした。他人の恋心に興味本位で踏み込んだ罰かもしれません。
長谷川の手紙だけ読めば、行き場のなかった片恋に同情しますが、弟を自分に縛り付けることで「弟の人生を手に入れられたのですから(十分です)」と書く自己中心さに闇の深さを見た気がします。嘘にまみれた罪深い恋だと思いました。

「ミーナ」
父の転勤で、友人のいない高校に通うことになった若菜。仲良くなったミーナは、自分の華やかな家庭環境を若菜に話す。
しかし、ミーナの傲慢な振る舞いと嘘、級友からの忠告が、若菜を揺さぶる。距離を置こうとする若菜を巧みな嘘で丸め込むミーナ。
決定的な嘘が明らかになり離れようとする若菜に怒り、ミーナは凶行に出る。若菜への暴力がばれたミーナは孤立する。やがて卒業した二人は完全に離れていく。
何年もたち、若菜が級友の家でテレビを見ていると、スポーツ選手と婚約した女性の姿が映し出される。それは顔も名前も経歴も変えたミーナ。嘘で完璧な理想を手に入れたつもりでいるのはミーナだけ。ツイッター上には正体を暴く投稿があふれて…。

ミーナが怒りにかられて若菜の背中をピンで突く場面に衝撃を受けました。
若菜の関心が自分から離れることが許せなかったにしても、です。
話を盛り関心を引くことは幼児がよくやることですが、ミーナはそれをずっと手放せずにいるのかもしれないと思いました。
虚栄心を満たすために嘘をつくミーナ。あまりに稚拙な嘘は、本人だけがばれていることに気づかない。でも、きっと本人は幸せなんでしょう。

「虫食い」
高校生の日向は学級委員長もつとめる秀才。彼の密かな愉しみは昆虫やカエルなどの虫を食べること。知っているのは、同じ高校に通う幼なじみの隼人だけ。日向は虫を食べる姿を隼人に見せつけることに快感を覚えるようになっていた。
あるとき授業で、菊池という男子生徒が隼人を侮辱する。日向は隼人を守るために菊池に窃盗という濡れ衣を着せて孤立させる。
その日の帰り道、隼人と日向は捨て猫を見つける。
昔、隼人がこっそり子猫を飼おうとしてカラスの餌食にしてしまい、日向がその子猫の皮を噛みちぎって飲み込んだ記憶がよみがえる。
日向は「(さっきの捨て猫の代わりに、隼人の指が)食べたいな」と催促する。
あきれながら隼人は日向の要求に応じる。日向は隼人の指をしゃぶりながら恍惚とした幸福に満たされる。

虫食いの描写が、もう気分が悪くなるほどリアルです。
日向が虫を食べる理由は、食感の快感、隼人に見せつける快感だけでなく、生き物の生死を握っているという支配感、人に言えない背徳感がたまらないのでしょう。悪趣味な高校生です。
気持ち悪い行為ですが、虫食いを文化とする人たちも世界にはいるそうですから、罪とは言い切れないと思います。
それよりも、大人がやれば罪になるようなことが、学校では罪にならないことをあらためて不思議に思いました。
日向が菊池に窃盗の濡れ衣を着せたことは大人なら犯罪です。菊池がしてきたいじめや、菊池を黙らせるためにバスケットボールをぶつける行為も、学校内というだけで罪の名前が付きません。「ミーナ」でも思いましたが、学校は大人が考えるほど安全な場所ではないのかもしれません。
おそらく日向は隼人に特別な好意を抱いていると思うのですが、具体的な心情は全く描かれません。
わざと隠されている気がして、日向が隼人の指をしゃぶりながら快感を覚える描写が余計にエロティックに感じてしまいました。

四つの短編に共通する人間の原罪は、「嘘」ではないでしょうか。
登場人物たちと自分は違う、ときっぱり線を引くことは私にはできない気がします。
何かきっかけがあれば、彼らの方に傾いてしまうような、そんな身近な怖さをこの作品に感じました。

11

胸くその悪い話

電子書籍版を購入。
あとがきなし、挿し絵なし。

「小説現代」に2013~2016に掲載された短編を集めたものです。
4話、それぞれ独立した話で繋がりはありません。

あいかわらず、胸くその悪い話です。
ぞくりと背筋が震えます。
怖くて、怖くて、続きは読みたくない。
けれども、ページを繰る手は止められない。

非BL作品です。
ラブはないので、萌えはありません。
でも、あえて「神」評価です。
心にズンととんでもない衝撃を与えられたから。

ラブはないけど、愛はある。
自己愛という名の、自分勝手で稚拙な愛情。

息を吐くように嘘をつく、サイコパスな人々のお話です。

木原節が好きなのでこれからもファンとして読み続けますが、完全にジャンルは離れたな。。。と少しだけ寂しく感じました。

6

生死と罪を決めるもの

文庫発売を機に再読しました。初めて読んだ時は箱の中・美しいことに続く木原作品3冊目でした。改めて読むとあからさまな性悪な人が居ないなと思ったり…

「75%ニア(BL)」と作者が仰ってますが、BLでは描かない終わり方がここで読めて面白いです。Lまで届かないで終わってしまう、または強制終了。または女子。

この短編集は4つ単独で登場人物やお話に関連は無いものの、人の表裏、人間より弱い生物の生死など重なる部分があり、そこにゾワッとさせられました。
嘘ばかりつく、半身不随、動物を埋める子供など。
この、ゾワッとする感覚というのは何処から来るのでしょう。話が繋がるかもしれない面白さの予測の他に、自分では考えが及ばないもの、自分には抗えないものを感じるからなのだとしたら、日向が虫を口に入れる時に感じていることも少し似ているのかもしれません。

とにかく強烈で、レビューで必ず触れられている「虫食い」
カエルや虫を料理で食べる人もいる。猫が弱い子供を食べる。健康を害すのでないのだとしたら、虫を食べる描写(何度読んでもゾワゾワ。もうほんと岸辺露伴もビックリだよ)に感じる嫌悪感から常識を抜いたら私たちはどう感じるのでしょう。やはりディテール的に無理でしょうし、好き勝手な殺生は罪でしょうけども(でも虫料理もあるし…という思考ループ)

「ラブセメタリー」「夜をわたる月の船」でもあった、罪か否か、擬態というテーマで読むと、この本には罪であろう事が描かれていても悪意という裏側は殆ど描かれていません、殆ど。
悪意と罪は関係がなく、普通かそうでないかも一定ではなく、不安定さ不確かさが読んでいてずっとあります。「心の中に闇なんてない」と言った「〜月の船」の部長のように、白黒判別つけられないほど複雑に内包した、その人にとってはありのままな当事者の視点が、面白いです。

1

胃のあたりがムカムカくる

大分胸糞悪いですが続きが気になるやつです。

こんな結末は稀だとしてもこういう人いる!って登場人物たちが怖く嫌~なかんじを与えてくれます。
それが友達だったり自分から見る姿は良い人…だったりするとかなり痛い目見てからじゃないと離れられないんですよね。
そういった描きがまた自然でリアリティあるからこそ惹き込まれてしまう。


「消える」と「虫食い」は特にお気に入りです。
これもっとガッツリ読みたいなー。
でもこの短さに萌え(個人の感想です)も突っ込んでくるのは凄いな。

「消える」は兄の手紙から伝わった印象と実際の弟から直に感じた印象の温度差というかが凄まじくて…。
兄はこんな最後でもやっぱりその名を呼んだのだろうか…。

「虫食い」は友人の隼人くんに注目していた。
ほんとそれさえなければ…と切実に思いつつも縁を切らないどころか日向の希望をちょこっとだけ叶えてあげているところに不覚にも萌えてしまった。

この二人の関係が行き着く先をとてもとても知りたい。
でもBLではないし…BLじゃないからこその自由度がたまらない。


中身は重いですが文章量的には軽いですよ!

1

先生、この人たちを幸せにしてあげて!

電子書籍で読了。挿絵はありませんが(一般書ですしね)短編のタイトル下にイラストがあります。

「ラブセメタリー」を読んだ後に友達が「あの話の後に豪腕をもって幸せにしてくれるのが木原さんの醍醐味なのにね~」と言っていたのですが、この本の感想はまさにそれでした。
私は木原さんの書く、主人公のくせに、いわゆる『正しさ』から大きく外れた人が、あるいは『The King of カス野郎』が、それでも幸せになる、もしくは「それだからこそ幸せになれる」話が好きなのだなぁ、と解ってしまった次第です。多分「ひょっとしたら自分も少しだけ外れているかもしれない」と思っているからなのでしょう。

読んでいる私を徐々に不安に追い込んでいく筆力はスゴイです。
「面白かったか?」と聞かれれば「面白かった。凄いよ」と答えると思います。
でも、ろくでもない登場人物たちがだんだん愛おしくなり、どんどん感情移入していかざるを得ない『木原マジック』を待ち続けた自分がいたことに読後気づくのは、少しばかりショックでもあります。

3

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