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表題作恋文代筆承ります

倉田青慈,倉田組の三代目
槙久弥,税務士兼恋文代筆屋,26歳

あらすじ

大正八年。新橋で税理事務所を開いた槙は、副業として恋文の代筆も請け負っている。その宛先のほとんどは、新橋界隈の芸姑や女給たちから絶大な人気の倉田組・三代目だった。ある日、槙は暴漢に襲われたところを偶然、倉田に助けられる。今まで何通も恋文を書いてきた相手である倉田を目の前にして、槙はなぜかずっと恋い焦がれていたような気持ちになってしまい…。

作品情報

作品名
恋文代筆承ります
著者
坂東蚕 
イラスト
ソライモネ(あびるあびい) 
媒体
小説
出版社
学研プラス
レーベル
もえぎ文庫
電子発売日
3.8

(6)

(1)

萌々

(3)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
23
評価数
6
平均
3.8 / 5
神率
16.7%

レビュー投稿数3

デビュー作のようですが纏まっております

デビュー作ということで申し訳なくもまったく存じ上げない作家さんでしたが、最近読んだあびるあびいさんの表紙にホイホイされました。
時代背景とあびるあびいさんのイラストが意外に合うんですね。
スタイリッシュな感じの作家さんだと思っておりましたが、意外や意外。

**********************
受けは税務事務所を営む槙、26歳。
しかし不況の為、本職でない恋文の代筆稼業をしていて、そちらの方が有名に。

攻めの青慈は、新橋界隈を仕切る任侠一家倉田組の三代目。
精悍な顔立ちで、若い女性たちから熱い視線を送られる存在。
**********************

女性たちの恋文はほぼ青慈宛。
青慈を直接は見かけたことはなかった槙ですが、恋文を何通も書くうちに気になる存在となっていました。
そんな時、事務所へ現れた暴漢から救ってくれたのが青慈でした。
すぐにポウッとしてしまった槙の恋は、もしかしたらそれまでの恋文による下地によるもので自己暗示に近いものかもしれませんが、なんというか槙自身が良い具合の天然さんで可愛いのでそこまで読んでいて気になりません。
青慈の方も言葉にはハッキリせずとも槙が喜びそうな場所へ誘ったりと、両片想い的なのはすぐにわかるのでちょっとした行き違いもスラスラ読めてしまいます。
その辺りは、もしかしたら物足りない方もおられるかもしれません。
が、青慈も気持ちの良いひじょうに男らしい攻めですし槙も可愛らしい。
嫌な気持ちにならない作品だと思います。

時代は日露戦争後の不況真っ最中。
そんな時代背景とぴったりな地の文の作品です。
おいおいとツッコミ入れたくなるような現代調の単語もなく、ストレスを感じません。
デビューされる前はどのような作品を書かれていたかは存じませんが、現代物よりも合ってらっしゃるのではないだろうかと勝手ながら思いました。
恋文というタイトルにも使われた題材もうまく結びに使われていますし、とても良く練られた作品でした。
そしてさりげなく存在を主張していた若頭のスピンオフがある模様。

3

日本の風情

電子書籍で読了。挿絵なし。あとがきあり(坂東さんによれば、あびるあびいさんのイラストが素晴らしいらしいです。あー、紙で買えば良かったかなぁ)。

『極道紳士と気まぐれ仔猫』をスピンオフと知らずに先に読み、面白かったので手に取りました。
あちらは横浜のハイカラぶりも楽しめましたが、こちらは新橋の芸子さんだったり浅草オペラだったり、屋形船で見る隅田川の花火だったりと、大正時代の風情が満載。

あらすじは先にレビューを書かれた方がとても上手にまとめていらっしゃるので割愛します。
私が「このお話、上手いなぁ」と思ったのは、心を込めて恋文の代筆をしている所為で、槙は出会う前から倉田を憎からず思ってしまっているということ。
真面目に代筆をしようと思えばどういう風に思っているのかを詳しく聞かなければなりませんし、代筆を頼んだ女性に寄り添って書かなければなりません。少女時代に『友達から恋愛相談を持ちかけられ、何度も何度も好きな人について聞かされていたら、気づかないうちに同じ相手を好きになってしまっていた』っていう経験はありませんかね?あれですよ、あれ!
その相手が暴漢に襲われていた時に、颯爽と現れてあっという間に助けてくれるんですよ。
これ、槙じゃなくても恋に落ちると思うのよね。

倉田が自分の気持ちをはっきりと伝えないため、また、槙があまりにも律儀かつ真面目でで倉田の豪勢な接待(と、槙は思っている)にただ乗り出来ず負担に感じてしまうためドラマが生まれる訳ですが、その中で描かれるのは古き良き日本の風情と古き良き日本男児。
これがとってもいい感じなんですよ!

1

なかなか良かったけど……

「手紙」が活躍する話が好きなので読んでみました。

不景気で税務士の仕事が少ないので日銭稼ぎとして恋文の代筆業を始めたところ、「返事がもらえる」「想いが通じる」など評判が評判を呼び、せっせと恋文代筆業に励む税務士・槙が主人公です。

毎日せっせと依頼された恋文を代筆する槙ですが、とくにヤクザの三代目・青慈宛の恋文依頼が多くて、彼宛に送った数はすでに何十通にもなっている。

そんなある日、暴漢に襲われた槙を助けてくれたのが、例のヤクザの三代目・青慈で……

それまで青慈に恋する依頼主に代わって切々と訴える恋文を何十通も書いてきたせいか、初めて会ったのに初めてではないような、まるで長らく恋心を抱いていた相手にようやく出会えたような気分になってしまい、これは錯覚なのか?と戸惑う槙に対して、「俺も、先生に恋文を代筆してもらいてえな」と言いだす青慈‥‥

青慈が恋文を送りたい相手というのは槙だなと読んでてわかるのだけど、槙はまさか自分自身だとは気づいておらず、チクリと心傷ませる……。

両片思いなのは読んでてバレバレなんだけど、青慈はハッキリ言わないし、槙も真面目で鈍チンだから全く気づかず色々心痛めてしまうんですね。
そこらへんのすれ違いが楽しめるというよりも、あぁ……余計なすれ違いをしててこいつら……みたいな。

というのも受けの槙にちょっとイライラしてしまいました。

槙はある女性を青慈の女だと勘違いしてしまうんだけど、青慈は「組の関係で面倒見なくちゃいけないだけで、お前が思っているような関係じゃない!」と必死に否定してるのに、槙は耳を貸さないんですね。
せっかく本人が必死に否定してるのにそれを信じずに、周囲の噂ばかりを信じようとする槙。
(結局、攻めの言ってたことは本当だった)

「周囲がなんと言おうと俺はお前を信じるよ」みたいなのが好きなので、その真逆をゆく槙の姿に何だかな……と思ってしまいました。

0

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