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表題作雪の下のクオリア

小林明夫
草木が好きで人嫌いな大学の先輩 ?
大橋海
同性と一度きりの関係を繰り返す大学2年 ?

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

草木が好きで人嫌いな小林明夫。同性と一度きりの関係を繰り返す大橋海。
二人は同じ大学で同じ学生寮だった。
海が明夫に懐き、明夫も少しずつ海に気を許すようになっていく。
だが、ある日、海は明夫に「先輩は寝なくても一緒にいてくれるから優しいです」と言う。
明夫はそんな海のことが理解できなくて……。

好きになった相手に愛されたい。そう思っているのはどちらだったのか?

作品情報

作品名
雪の下のクオリア
著者
紀伊カンナ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
大洋図書
レーベル
H&C Comics CRAFTシリーズ
発売日
ISBN
9784813031147
4.2

(222)

(125)

萌々

(45)

(34)

中立

(11)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
28
得点
918
評価数
222
平均
4.2 / 5
神率
56.3%

レビュー投稿数28

雪の下には、あたたかい春が眠る

-雪が溶けたら何になる?
-水
-雪が溶ければ春になりますよ

これは、作中の主人公たちの会話なのですが
この作品を表すのにぴったりな、とても好きなシーンです。

男にも女にも興味がないと言い切る草木・花好きの明夫と
ゲイで、恋愛において一度限りの関係しか築こうとしない海は、
それぞれの過去に、暗く寂しい影を宿していた。
そんなふたりが出会い、少しずつ心触れ合っていく内に
根雪のように覆われた冷たく悲しい傷が心地良く溶かされ、
次の季節、春へと向かっていくお話。

紀伊さんご自身はこの作品について
”話も萌えも地味”だと、インタビューで仰っていますが
(加えてとても難産な物語だったようですね)
わたし個人としては、すごく好みのお話でした。

物語の舞台が北海道がということで、
長くつめたい雪国の季節感と日常を交ぜながら
雪の下にしっかりと宿っている春を
ふたりの主人公の心情と共に丁寧に描き綴られています。

はじめはへらへら笑顔が目立つ奔放な海が
明夫と関わるうちに、ふてくされた顔を見せたり
明夫の心境の変化に驚き顔になったりする姿や、
眉間の皺が定位置(笑)の明夫の表情が
少しずつ解されるように柔らかくなっていく過程が
ごくごく自然で、非常に好感が持てました。

草木や花、動物、食べ物等の描写もたくさん出てきますが
さすが紀伊さん、画力に関しても言うことなし。
又、脇役たち、殊に毎度ながら女性キャラたちの逞しい、
男気溢れる感じも健在で、紀伊さんらしくてポイントが高い。

萌えに関しては、やはり明夫の表情や仕草の軟化でしょうか。
実家に帰る明夫が、鳴き止まない猫にキスをしたり
クライマックスで見せる、海に向けた優しい表情と笑顔には
胸に温かさが広がるようなキュンの連発でした♡
ふたりがキス止まりなところもイイ!

又、『雪の下のクオリア』というタイトルが
物語や作画と同じくらい素晴らしい。
あとがきによれば、紀伊さんは”クオリア”を、
”箱庭”の意味でつけられたそう。
調べてみると”クオリア”には、”~のようなあの感じ”という
心象的な感覚を表す意味があるようです。
”雪の下で眠る春のようなあたたかい、あの感じ”
といったような意味にもとれて、とても素敵です。

評価は、タイトルを含めひとつの作品として素晴らしかったこと、
草木や花、雪といった個人的に大好きなモチーフが
ふんだんに使われていることから、持ってけハート泥棒の”神”評価です!

20

どこか懐かしく、そして暖かい

植物が好きで、いつもお米を食べていて、
そんなイメージと違ってたばこを吸う人嫌いの明夫。
たまたま縁が出来た同じボロい寮に住む海は、
同性と行きずりの一度限りの関係を繰り返している……

前作のエトランゼでも感じた、どこか懐かしいような
映画を見ているような空気感はそのままに
ストーリーとしてはこちらの方が、素直に心に落ちる感じ。

ドラマチックな話ではないが、
遅い春が一度にやってくる北海道の、
雪や桜といった美しいモチーフを背景にして、
感情の流れが表情の変化で伝わってきて、とても素敵。

そして、最後の耳元で囁いた仲良く二つ並んだ花の名前。
その花はニリンソウで、その花言葉は……
「予断」「友情」「協力」そして「ずっと離れない」。

心の深いところで傷ついて、その傷を持て余しながら生きてきた二人が
初夏の日差しと風の中、草花に囲まれながら癒やされ始めた感じに
じんわりとする終わりでした。

評価は「神」寄りの萌×2。


ところで明夫くん。
最後にさりげなくキスなんかしちゃっているものの、
ネットでゲイビデオ見て勉強してみた物の「俺無理だわ」って(笑)
そちらは、今後どうなりますことやら!
私は君の「はぁ?」って不愉快そうにした顔がかない好きだよ!

話としては友情以上みたいなこの感じの終わりは良い感じだけれど、
ちょっとその先を見てみたい気もする、キス止まりでした。

5

君の隣で少しずつ、ゆっくりと癒えていく…

素敵な本を読んだなぁ…と心がじんわりとして、
やさしい気持ちで本を閉じました。

ぜひ、ゆっくりと時間をとって読んでいただきたい1冊です。


同じ大学に通い、同じ寮の向かいの部屋に住む、先輩後輩のふたり。
草木が好きで色恋には全然興味がない明夫(表紙右)が、
寮の廊下で倒れていた後輩の海(表紙左)をたまたま助けて、
それがきっかけで懐かれて…と、物語は始まっていきます。

海(表紙左)が男と一度きりの関係を繰り返しているのを知って、
突然そっけない態度を取るようになる先輩の明夫。
その理由は、
自分たち家族を捨てた父親と同じだ…と感じたから。
そして、
特定の人を作らずに男と寝ている海にも、辛い思いをした過去が…。

ふたり共、過去の辛い出来事が心に根をおろしたまま…

よくありそうな過去なのだけれど、
未だにその影響を引きずっているふたりを丁寧に描くことによって、
他人事ではなくその辛さが現実味を帯びて感じられるのが、いい。
そしてお互いの隣で、
心の奥に仕舞い込んでいた想いを言葉にして吐き出すことによって、
何気ない日常を共に過ごしていく時間によって、
ふたりはゆっくりとゆっくりと癒されていくのです…。
その様子がとても自然で、とても心地がいい。

過去と現在との描写の切り替わりが分かりずらくて、
ん??と手が止まることが何度もあったり、
人と人としての距離は縮まったけど、恋の面ではこれからかも?
とも思うので、神評価にはしなかったですが、本当に素敵な1冊でした。

ニリンソウのように、
一緒にキレイな花を咲かせ続ける…そんなふたりの未来が、
またどこかで見れるといいな。

※ 明夫と海は軽いキスのみなのですが、
最初の方では海は他の男性と寝ていて、セックスシーンも少しあります、
苦手な方はご注意ください。

10

受けのキャラだけが…

昔父親に捨てられた過去のため、人嫌いの明夫。あるとき同じ寮に住む大学の後輩、海と知り合いになる。ゲイで、同じ人とは2度寝ないという刹那的な関係を繰り返している海は、なぜか明夫に懐き、まとわりついてくる。邪険にしても懲りない海に、次第に心を許し始める明夫だったが…。


北海道を舞台に、丁寧に描かれた、どこかノスタルジックな美しい話でした。
でも、話は美しいんですけど、受け(作中で攻めとエッチしてないので推定)がどうも好きになれず…。昔の失恋を引きずって、男と一夜限りの関係を繰り返しているキャラなのですが、自分が好きな男に捨てられたのがトラウマなら、なぜ自分は一夜限りの男に誠実な対応をしないのか。遊びで近づいてくる相手ならともかく、中には誠実に「もう一度会えないか」と言ってくる人もいたのに。あとこのキャラはセックス中毒なの? 普通の人間は、一度手ひどい失恋をしたからって、不特定多数と一夜限りの関係を持ちまくったりはしませんよ。これがビッチキャラだというなら理解はできるんですが、なぜ男と関係を持たずにはいられないのかがさっぱりわからない。
あと、攻めに対して「先輩は寝なくても一緒にいてくれるから優しい」って言ってるんですが、また会ってくれって頼む男に一回きりだと切り捨ててる人が言えるセリフじゃないですよね。この先一緒にいてくれそうな人に対しても「一回きり」って言って逃げて、一体何がしたいんだろうと思います。

攻めのほうは、そんな受けを叱り飛ばすし、受けが襲われても「自業自得だ」って言うし、至ってまともな人だと思いました。爆弾発言しては言い逃げするのも、これまでまともに人間と付き合ってこなかったからコミュ障なんだな、と理解できました。今まで男のくせに花が好き、ということをバカにされ続けてきたから、受けが花が好きだったり、植物の世話を手伝ってくれたりするとだんだんほだされていくのもわかります。
こちらはよくわかるキャラでした。不器用さも可愛かった。

評価は萌ですが、受けの理解できなさは個人的にはかなりのマイナス点でした。ただ絵がすごく綺麗で、情景描写が美しくて、キャラクターも可愛くて、それは素晴らしかったです。

5

優しい物語だが・・・、私には合わなかった

読み終わった感想としては、
なんだか「ふわんふわん」とした心もとない感じ。
しかし、何か印象に残ったかと言われれば、何もないし、
ストーリーもキャラもおぼろげにしか思い出せませんでした。
何回かは繰り返し読んだのですが、あまり面白味も
感じられず、スラスラーっと斜め読みでした。

◆◆◆

≪CP(おぼろげ…)≫
大学で草木を研究する大学院生? × 天然ビッチ?

≪あらすじ(かーなりおぼろげ…)≫
大学で草木を研究する主人公の攻めは、ある日
エッチをしすぎて下宿?で行き倒れた受けを介抱することに。
優しくされたいと思う受けは、次から次へ相手を変えて、
寝るビッチでした。
しかし、それを悪いとは思わない受け。
そんな受けに対し、嫌悪のような不思議な思いを抱く攻め。
そのうち、受けは「優しい」という理由で攻めを好きになり、
その想いを告白するのですが……?

----------

登場人物は、いつでも柔らかい表情を崩さず、
機嫌を損ねた顔でさえ、その理由も単純で優しさを感じます。
全体としては、「ふわふわ~~」と読めて、
「ふわふわ~~」と頭の中を通り過ぎて行って、
後には何も残らなかった……ようなイメージです。

キャラクターの心中も全く読み取ることができず、
「あー、草花を愛しているんだなー。優しいなー」とか
そのくらいの印象でした。

受けは、いろんな人と次々と関係を持つビッチなのですが、
それが悪いこととは思わず、きょとんとしている天然なので
こちらもそれにつられて、あまり怒りを覚えることもなく、さら~っと
頭の中を流れて行ってしまいました。

雪のシーン、花吹雪のシーン、柔らかなシーンが2人を包み込みます。
優しい物語なんだろうな、ということは何となく伝わるのですが、
感情移入までは至らず。

最後は花吹雪の中のキスシーン。
図柄としては美しいのですが、何故攻めが受けにキスしたのか
「?」でした。
関係性が全然読み取れなかったのが、原因でしょうかね。

◆◆◆

読む人によっては、感慨深く読める物語だと思います。
しかし、残念ながら私には合わなかったです。
嫌悪感を抱くような物語でもなかったのですが、
何も感じるところもなかったというところで。

残念。

5

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