花嫁とは名ばかりの“生贄”として捧げられ……。

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表題作獣王の貢ぎ嫁

キリアン・フィッツジェラルド・オブ・レンスター,428歳,獅子王・冥界の王として恐れられているレンスター家公爵
紫生・ヒース・オブライエン,18歳,娼館の客引き兼下働きとして働く天涯孤独の少年

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

孤独な少年・紫生は、生贄の花嫁として嫁いだ獣王の島で、
獅子の化身キリアンに優しく迎えられて……!?

アイルランドの港町でひたむきに生きる天涯孤独の少年・紫生は、
呪いから町を救うため、生贄の花嫁として、
恐ろしい獣王が棲むという「妖精島」へ嫁がされてしまう。
そこで紫生を迎えたのは、紳士的な獅子の化身・キリアンだった。
優しい彼が本当に人々に恐れられる獣王なのか?
キリアンに愛されながら、紫生は次第に伝説に隠された哀しい真実を知ってゆく……。
妖精の国を舞台に繰り広げられる、真実の愛のおとぎ話。

作品情報

作品名
獣王の貢ぎ嫁
著者
華藤えれな 
イラスト
北沢きょう 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)
レーベル
B-PRINCE文庫
発売日
ISBN
9784048925600
3.5

(32)

(7)

萌々

(9)

(12)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
9
得点
110
評価数
32
平均
3.5 / 5
神率
21.9%

レビュー投稿数9

やっぱり不思議な読後感

華藤えれな先生の作品は、何を読んでも読後しばらくはぼっーとその作品の雰囲気の中に浸ってしまうのですが、こちらの作品もまたまた浸ってしまうほど作品に惹き込まれていました。

天涯孤独の身で暴力・レイプによる身体障害まで持ってしまったうえに、獣王に生贄として嫁ぐことになった受けさんの紫生も、獣王として恐れられ400年も生きていて本当の意味での生贄だった攻めさんのキリアンも、どちらも健気で不憫でこちらが切なくなる2人でした。
2人が出会ってから物語終盤までは、割とほのぼの感溢れ、スペイン人の無敵艦隊の亡霊達も、ディズニーのパイレーツオブカリビアンを想像しながら且つ異国感溢れる世界観にほわほわしながら読み進めていました。
でも、終盤からが切なくて華藤先生らしい進め方だったなと…。
ハッピーエンドで終わらないんじゃないか、とひやひやするほど最後の最後にキリアンが成仏(?)してしまい居なくなってしまうという展開があるなんて…。
紫生の大人になったら叶えたかった夢がこんな形で叶うなんて…。
と、悲しくなりながらも読んでいましたが、本当の本当に最後の再会のシーンで報われました(;Д;)
複雑な事情がありすぎただけに想いが通じ合えることが遅かった2人ですが、待たされた分焦らされた分ただただこの2人には幸せなってほしいと思わされるラストでした。

お伽話を盛り込んだ異国感溢れるこの1冊は、是非静かな環境で一気に読んで欲しいと思うお話でした( *´︶`*)

8

おとぎ話風BLです!

アイルランドを舞台とした、どこか懐かしく温かい印象のおとぎ話のような作品です。
神々と妖精と言った、ケルト神話の世界ですね。プラス「美女と野獣」と「蒼髭」。更にスペインの無敵艦隊と盛り沢山です。

孤独な公爵×健気な天涯孤独の少年といった、正におとぎ話の鉄板といった所。
「そして二人はずっと幸せに暮らしましたとさ」と締め括りたくなる、素敵な作品でした(*´ω`*)


内容は、アイルランドの港町で健気に毎日を生きる天涯孤独の紫生(受け)が、生贄の花嫁として恐ろしい獣王が住むという「妖精島」に嫁がされます。そこで待っていたのは、獅子の姿もとれるレンスター公爵(攻め)。紳士的で思いやりのある彼に惹かれますが、何故か「婚約の誓い」以降、レンスター公爵が触れてくる事は無く…。更に伝説に隠された真実が次第に明らかになり…といった感じです。受け視点で進みます。

受けの紫生はとても健気でひたむき。天涯孤独で借金の返済の為に、18才になれば男娼として客をとらなければいけません。そんな境遇でも、前向きに懸命に毎日を生きています。

攻めのキリアン(レンスター公爵)は、こちらもまた健気。獅子の姿もとれる「獅子王」です。モフモフですが、人間の姿の時に耳と尻尾は生えてません。ちょっと残念…。
思いやりが深く、嫁いできた紫生に対しても紳士的な優しい態度で接します。彼がグレンハーバーの町に呪いをかけ…と伝承されていますが、その伝説の裏に哀しい真実が隠されていて…。

獣王の花嫁として呪われた島に嫁がされ…と悲惨な感じですが、実際にはその「妖精島」ではほのぼのとした生活。
受けは、攻めや使用人から大切に扱われ、攻めの為にケーキを焼いたり、獅子姿の攻めと毎日一緒に眠り…といった、以前の娼館で住み込みで働いていた時より、よほど幸せな毎日を過ごしています。

そんな中、受けは本当の夫婦になりたいと攻めと繋がる事を望みますが、攻めは頑なに受けを拒むのですね。それには受けを思い遣った為の深い理由があり…といった所です。
更に獣王を倒すための陰謀に巻き込まれ、そんな中真実が明らかになってゆき…。といった感じで進みます。

萌え所としては、受けの健気さ。今居る場所で懸命に生きるのですね。そして、そんな受けに惹かれつつも、彼の為に身を引こうとする攻め。この作品は、攻め受け両者共に非常に健気なのです。
お互いに惹かれ合いながらも、前向きに攻めの為に生きようとする受けに、受けの為に死んでいこうとする攻め…。ここにおとぎ話風のテイストが加わり、なんとも切ない感じです。

絡みはちょこちょこ。受けの為に手を出すのを我慢しているのに、「あなたのものにして下さい」と迫ってこられたら、そりゃ攻めも辛抱が効かなくなるよね…といった感じで。エッチの時も紳士的な攻めに萌えます。

最後の方がちょっと駆け足気味なのが気になるし、詰め込み過ぎでちょっとごちゃごちゃした印象も受けます。更にラストは都合が良すぎる気もしますが、まぁハッピーエンドで素敵なラストなので、これでいいんじゃないかと!!

妖精に獅子王と、メルヘンな世界に興味を持った方はぜひ!!




7

久しぶりにあたり

久しぶりにアホの子萌え、健気萌えを楽しみました。
受けの子が、とにかくバカ正直だし、健気だし、あわれなほど。
正しく健気だったようなきがします。
いちおう現代ものらしいんですが、アイルランドが舞台のせいか、中世っぽいふんいきまんさいだし、おとぎばなしBLとはこういうものかもしれません。さいごに攻めがもどってくるところも、まさしくおとぎばなしチックだったような。
怖れられている呪いの原因だと思われていた攻めが、実は最大の犠牲者であり、生贄であるというラストの謎がとけるあたりもカタルシスがありました。

そんなわけで、やっぱり華藤えれな先生ってうまいな、と久しぶりに思わせてもらいました。ときどき、こういうヒットが出るので、どうしても手に取ってしまうんですよね。

4

ケーキが食べたくなる

アイルランドを舞台にした、謎の多い獅子の化身と、健気で薄幸な少年の恋のお話。
モフモフの王様と薄幸な少年の取り合わせ、海外の各地の色々な伝承風味は、近年の華藤えれな作品の定番パターン。
今度はどこの国の、どんな伝承がモチーフになっているのかって所を楽しみにして新刊を買う訳だが、実のところ、つい後回しにしちゃうと、どれが未読で、どれが既読か、、、ま、そんなこんなで、発行から1年以上経ってしまった。
今作の攻めの獅子の化身のキリアンは、とっても健気で一途なスパダリだし、今作の受けの生贄の花嫁の紫生は、愛された子ども時代を持っているので、人にも惜しみなく愛を与えられるしで、作品全体の雰囲気はいつもに増して甘々です。
この手のファンタジー系の作品って、やっぱり好きだわ。

2

史実織り交ぜたファンタジー

アイルランドが舞台のファンタジー。
史実にあるスペイン無敵艦隊のエピソードから着想を得た物語で、中東欧の伝承も盛り込まれており、単なるケルト神話路線にとどまっていないところに工夫を感じます。

あらすじ:
アイルランド北西部の港町に住む紫生(受け)は、「妖精島」に棲む獣王・レンスター公爵のもとへ生贄として嫁がされることに。
島で出会ったレンスター公爵ことキリアン(攻め)は、噂とは異なり優しい紳士で…

紫生は両親を事故で亡くし、親戚の営む娼館で客引き兼下働きをやっている少年。
昔、客をとらされそうになり逃げ出したところを男たちに暴行され、今も足と片目に後遺症が。
そんな境遇でも他者への思いやりを忘れない、おとぎ話の主人公にぴったりの健気なキャラクターです。

そんな紫生が嫁いだ獅子王・レンスター公爵は、昔人間だった頃、イングランドに破れ漂流するスペイン艦隊を助けた過去が。
そのことでスペイン内通者の疑いをかけられ、親族を処刑されてしまいます。
怒りで獅子王と化したレンスター公は、嫁いでくる花嫁を次々殺しているとの噂。
作中でも指摘されているように、ちょっと青ひげ公を連想させるような設定です。

島に着いた紫生は、まずは7日間誰とも口を利かず一人で僧院で過ごすという試練を与えられます。
それをクリアした後は、レンスター公爵ことキリアンと難なく仲良くなり…
と、物語中盤以降の展開は思いの外平和。
青ひげ公の物語にちなんで、マルスがキリアンとの約束を破るような展開を予想していましたが、そんなハプニングは起こりませんでした。

黒幕との戦い、キリアンとの再会などクライマックスに仕掛けはあるものの、敵との戦いのシーンがダイジェスト気味でカタルシスはいまいち。

また、ラストに明かされるキリアンの正体は意外でしたが、種明かしのシーンが駆け足気味で、感慨に浸る間がないのが残念。
「あのときの…!」くらいのシンプルなやり取りで片付けられており、どのときの?と一瞬分からなくなりました。
また、獅子王に青ひげ公に…とただでさえ属性豊富なキリアンにこれ以上新たな設定を追加しなくても…という感じも。
キリアン自体は優しくてカッコよくて素敵なキャラクターですが、設定的にやや欲張り過ぎな感がありました。

複数の史実や伝承を組み合わせた独自の世界観には華藤さん作品らしい魅力があるだけに、後半失速気味なのが少し惜しい感じがしました。

10

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