おまけ漫画付きRenta!限定版
10年ぶりに再会した彼は男娼になっていた――
突然転校して消えた同級生と、偶然夜の街で再開する場面からはじまって、泊めて欲しいと言われて、自宅へ案内して同居を始める。
・・なんで?と思うのですけど、流されるように共同生活が開始。
「二月のエデン」もそうですが、
きゆひこさんは、苦しんでもがきながら生きることを諦めない人を描くのが上手です。ほんのりですが、未来になんとなく明るい事が起きる予感を残す終わり方です。
多分、丁寧すぎない人物の描き方が醸し出す味わいなのだと思います。すこし哀し気で優しい表情です。
私が知る人も、親の治療費を街金に借りて3倍に膨らんだ借金を、業者が紹介する仕事を昼の仕事の後に続けながら完済して、年下のよく尽くしてくれる優しい人と知り合い結婚して今それなりに幸せです。彼女が言いたくない事、触れたくない事には、本人から話してこない限り話題に私は出さない、という暗黙のルールを今も置いています。嘘だと分かっても、本当のことを彼女が言える日を待つ必要もないかもしれません、生き辛さが軽くなればそれでいいです。
頑張って生き抜いて今居るだけでも賞賛に値すると私は思います。生きることを諦めなかった彼女の事を、読んで思い出しました。
共感する部分が多かったので、神評価。
作品の完成度うんぬんではなく、ふたりだけの空気感がとても良くて、自分の心の中で大切にしたい一冊になりました。
人嫌いのサラリーマンと、親が残した借金を抱える男娼。
中学時代に友人だったふたりが、10年ぶりに再会するストーリーです。
一緒に過ごす時間に幸せを感じながらも、生きる世界が違うという意識がふたりの障壁となってしまいます。
ざっくり言ってしまえば不憫な男娼が攻めに愛されて救われるストーリーで、特に目新しい設定ではありませんが、攻めの本谷の性格が一癖あって良い。
人付き合いが苦手で、会社では孤立。
親しい友人もいない。
それを淋しいとも思わないのです。
受けの朔弥が幸せを諦めた人間なら、本谷は幸せを知らない人間なのかもしれません。
朔弥が男娼をしていることについても、否定することなく静かに受けとめちゃうんですよね。
うーん…受けとめちゃうのかぁ…
本谷のその感情は本当にLoveなの?
と、最初こそ疑ってしまったけど、どこか人間味の欠けた本谷が朔弥にだけは感情を揺さぶられていく様子を見て納得しました。
本谷らしい形の優しさを見せられて、好きな人がウリをやっていたら当然嫉妬するし辞めさせるものだ、なんて短絡的な固定概念を持っていた自分がちょっと恥ずかしくなりました。
そして再会ものの醍醐味のひとつである回想シーン。
ふたりの中学時代のエピソード、これがまためちゃくちゃ良い。
恋だとか友人だとか名前の付いた枠組みを超え、お互いだけが自分に安らぎをくれる特別な存在なのだと感じられる雰囲気が素敵でした。
タイトルに込められた意味が気になったので、野アザミの花言葉を検索してみました。
『独立』『素直になれない恋』
どちらもふたりに当てはまる言葉だなと思ったけど、もう少し調べてみたらアザミ全般の花言葉の中に、『触れないで』という言葉を見つけました。
朔弥にぴったりじゃないですか?
そう思ったら、昔も今も多くを語れなかった朔弥の健気さがより一層ジワジワと胸に滲みて…
タイトルを見るだけで切なくなっちゃいます。
最初はKindleUnlimitedで読んで、一年後くらいにまたKindleUnlimitedで読んで、結局購入に至った本作。
ふとした時にこのじんわりとした幸せを読みたくて結局購入してましたね……
中学時代に仲が良かったのに突如攻め・本谷さんの目の前からいなくなってしまった受け・サクさん。一人暮らしのサラリーマン生活を送っていた本谷さんの前に再びサクさんが現れるところから始まります。
ごはんをいっしょに食べたり、たたいまおかえりのあいさつを交わしたり。一人暮らしの寂しい生活(本谷さんはそう思ってないけど)に人との交流が増えて、温かみがだんだん増していく描写が好きで、何度も読んでしまう理由の一つです。
受け・サクさんはだいぶ大変な人生を歩んできていて、自分が幸せになることとか誰かと一緒に楽しく生活することに大きな躊躇があったようです。いつのまにか好きになっていた本谷さんのことを傷つけたくなくて出て行ってしまうのです。
お互い好きになっていたんでしょうね、サクさんは本谷さんのこと忘れられないし、本谷さんは片っ端からデリヘル探す感じ……。もちろん最後は気持ちが通じてよかったね、本谷さんよく頑張って探してくれたぜ(´;ω;`)っていう幸せストーリーです。
物語のポイントポイント自体はすごくドラマティックに展開できそうなお話なのに、リアル感のある雰囲気でしっとりお話が進んでいくところがすごく好きです。
疲れていてもスッと入ってくる感じ。
作者様があとがきでおっしゃっていた、”一緒にいてしっくりくる”という感情、にじみ出ていると思います。
この雰囲気すごく好きなんだ~、これからも定期的に読み返していきたいと思います。
人付き合いが好きではないサラリーマン×売り専。中学時代の同級生。
受けは親の借金返済と生活のために身体を売っているだけで根っからのビッチというわけではないため、ごくごくふつうの男の子の雰囲気を残しながら、ときどき無意識裡にかプロっぽい振る舞いをするのがなんとも言えず気の毒でエロいです。
攻めは……この作品は攻めがおもしろいなと思います。人とのコミュニケーションを可能な限り避けてひとりで都会生活を送る凪の心のサラリーマン。そんな彼が、町中で10年ぶりに再会した中学時代の同級生をなんのためらいもなく自宅に上げるところから物語がはじまります。
彼は早い段階で受けが売り専であることを知るのですが、結局最後まで「売春をやめろ」とは言いませんし、客に嫉妬する様子もなく、受けとのデートの帰りに平然と「(事務所まで)送っていこうか」と言い放ちます。彼は、受けのことを「違う世界に住んでいる」と認識しながら、決してその世界との境界線を跨ごうとはしないのです。違う世界から越境してくる受けをそのときどきに愛でつつ、違う世界へ戻っていくのを引き留めることなく笑顔で見守っている感じが、家に寄りつく野良猫に餌をやる人のようで、なんとなく不穏な感じがしました。
受けの身を過ぎていった出来事はハードに描こうと思えばいくらでもハードにできるところ、絵柄も相俟って全体として優しい物語に落ち着いています。ただ、攻めの人格のわずかなゆがみ、そしてそのゆがみにまったく気が付いていないらしい受けのすなおな笑顔が、この作品を単なるほのぼのBLに終わらせていないように思います。
売り専受けBLとしては教科書のようなきれいな流れでとても良いですし、うがった読み方も可能なおもしろい作品だと思います。
kindle unlimitedにて
シンプルなお話ながら雰囲気のある絵柄で良かったです。食事風景や洗濯物(描き下ろしのページが愛おしい!)など生活感と部屋主の居心地良さそうな雰囲気があって、あたたかい線で描かれていて読んでいて癒されました。二人ともほぼ同じ顔ですが性格と色味が違うので大丈夫…表紙も対照的な二人と花が素敵。
「でも本当に怖かったし 本当に嬉しいから」
今の幸せが夢だったら怖いと泣くサクと抱きしめる本谷が優しくて沁みました。
ささやかな日常を大切に過ごす二人が良いなぁと思いました。