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表題作白の無言(しじま)

父が大蔵省の士官学校生 高橋雄一郎 
母が芸妓の同期生 桐島信夫

同時収録作品紅蕾

源九郎義経
平敦盛

同時収録作品古瘡

陸軍将校の叔父 喬太郎 
母親が芸妓の息子 信夫

同時収録作品青蝉

森で出会った軍医 森
夏休み中の少年 大樹

同時収録作品患者H

森月彦 元軍医の医師
安藤大樹 元兵士の看護師

その他の収録作品

  • あとがき(描き下ろし)

あらすじ

高橋と桐島は陸軍士官学校で首席を争うライバルかつ親友同士。高橋は桐島の何事にも動じない強さに憧れていた。官僚の父親への反発から軍人の道を選んだ高橋だったが、父の日本を憂う深い心を知り、父の後を継ぎ官僚になるべきか迷う。その晩遅く桐島を訪ねた高橋が偶然目にしたものは、上官に弄ばれる桐島の姿だった…!?二・二六事件を背景に激動の時代を駆け抜けた青年達の純愛を描いた表題作他四編を収録した待望の著者麗人初コミックス!!

作品情報

作品名
白の無言(しじま)
著者
大竹直子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
竹書房
レーベル
バンブーコミックス 麗人セレクション
シリーズ
白の無言(しじま)
発売日
ISBN
9784812459683
4.2

(21)

(12)

萌々

(3)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
9
得点
88
評価数
21
平均
4.2 / 5
神率
57.1%

レビュー投稿数9

お耽美!!!!!!

昭和初期、士官学校で共に高め合う2人、強くて気高くお耽美!!
この時代の男子感がなんとも…重苦し。
もう1編の軍事物は総ツッコミしたくなる振り切れ方、
義経×敦盛は麗しく、濃ゆい世界でした…

表題作はもう少し感情、腹の内で思っていることを知りたいところだれど、
安易に口にするものでないって、この時代特有の日本男児感にも感じられ…耽美!!
めちゃくちゃ、ずーーーん。って気持になりました。
それはそれで心地良いんですが!!

幼年学校時代を描いた「しのぶれど」はコメディ風らしく、
レビューを拝見すると過去を知れて良かったと本作の雰囲気のままでいたかった派があり読むかどうか悩ましいところです。

あと、本作は2004年刊だからか、Rentaでも白抜きでした…
そこまで気にならんかったけど、けど!!
麗人25周年記念小冊子にも入ってて、そちらは手まで白抜く雑修正…
小冊子だからか、シーモアだからかは謎だけど、泣いちゃいました。

1

友を愛し。國を愛し。その愛ゆえに死ぬ男

2020竹書房の日にてget。
前からずっと読みたかった作品。内容は、5作品収録の短編集。
どの作品もとにかく絵が素晴らしい。

「白の無言」
二・二六事件に絡めた士官学校の親友同士の、実らずに散った心。
いやらしい権力者たちに体を貪られる桐島を「聖セバスチャン」になぞらえる…それは完全に三島的。
非常に劇的で、戦争や一方的な思想の愚かさを感じさせる一編。

「古痕」
桐島信夫の過去。
兄の喬太郎に憧れる信夫だが、戦争の途中で脱走兵となりやさぐれた喬太郎はまだ幼い信夫を踏みにじる…!
だが信夫は幼いながら肺病に侵され死と向き合った経験から、心に剛を持っていた。
死の淵に際して何を感じ何を悟り何を選ぶのか。その究極が描かれた作品。

「青蝉」
虫捕り。独り森の中。現れる医者。
『蝉を採ると局部に毒がまわる』
そう言いくるめられて、pニスを舐めまわされ、aヌスをfxxkされてしまうまだ少年ですらない幼い大樹。
学徒になっても医師/せんせいが忘れられない…
トラウマと快楽の記憶の物語。

「患者(クランケ)H」
大樹は看護士としてアノ医師と診療所を開いている。
大樹はせんせいが大好き。だから「青蝉」が正当化されるけど…
わざわざ小児科を開いて男の子を丁寧に診るせんせいにヤキモキする大樹がコミカルに描かれてはいるが、なんとも危うい一編。
何と言ってもキメの一文。『大樹 私の坊や』…!

「紅蕾」(こうらい)
平安の源平BL。九郎義経と平敦盛が出逢っていたら…
装束、かんばせ、しつらえ、全て美しく精巧。
美しい敦盛はまだ盛りではない梅の蕾…だが源氏の敵である平家の若人ならば斬られるしかないのか。
その美しすぎる生首が哀しい…

1

追憶の彼方に。

「しのぶれど」と「貴様と俺」を先に読んでしまっていたので、この作品がこんなにも悲しく、ダークネスな物語であるとは思いもよりませんでした。この士官学校で出逢い、
ほぼ高橋の一方的な、桐島への恋慕がコミカルに描かれていく2作品と違い、非常にシリアスでダーク。もしかしたら、だからこその他の2作品なのかも。

士官学校で出逢った美しい桐島は、妾の子だと揶揄されている。
事実、新橋一の芸者の息子であった桐島は、その美貌が災いして、上級生や将校達の嬲りものにされていた。その様子を見てしまい、欲情した高橋は 桐島を犯してしまう。
殉教者聖セバスチャンにも似た桐島の、健気に受け入れるさまを見た高橋は、恥ずかしさと後悔で、桐島の元を去る。時は太平洋戦争直前、ニ・ニ六事件の最中、桐島が自刃したとの報せを受け取った高橋は、そこに確かに桐島の愛情を見た。
…という、何とも言えない気持ちになる物語。これぞ悲恋、と言っていいだろう。
続いて、この桐島の非常に哀しみを背負った背景が描かれていく「古痕」
桐島がまだ、士官学校に入る前の幼ない頃に遡る。当時、芸者である母の弟、軍人の喬太郎に憧れていた桐島は、肺病を克服して叔父の様な強い軍人になろうと志していたが、
シベリア遠征から帰国した喬太郎はその夥しい戦争体験から心を病んでしまっていた。
士官学校を目指すという桐島を眩しく感じた喬太郎は、その清々しさを汚したいと、まだ14歳の桐島の無垢な身体を犯しつくす。その上、喬太郎を案じる婚約者の佳世を犯せと命じる。狂ったように見えて、その実 逃げているだけだろう、と幼ない桐島に看破された喬太郎は 後日、変わり果てた姿で戻ってくる…。

同時収録には、戦争中に軍医に騙されて犯されてしまう無垢な少年が、彼が18になり赴いた戦地で再会を果たす。「青蝉」
少年の「初めて」が、暴行によるもので、その痛々しさったらない。
しかし、軍医の方にも、死を目前とした生きる事への渇望がそこには確かにあったという事が後には分かる。少年は無償の愛でもって、彼のそれを受け入れた。と言えなくも無いけれど。
彼らの再会後の後日談はまだあって。「患者(クランケ)H」として続く。
重たかった展開はここで一息ついたところ。
医師の愚行をも受け入れた元患者、大樹は、自分が犯されたのも少年時代だった事もあって、医師にショタ疑惑を抱く。医師は医師で、美しい大樹に変な虫がつかないかと気が気では無い。という、バカップルの甘あま後日談。
身体検査と称して、括約筋や前立腺を真顔で確認する医師が変態です。

そしてさらにさらに時代は遡って。平安末期。「紅蕾」
助けた敵陣の捕虜、美少年を愛しく想い、手をつけずにいた九郎義経だったが、同門の梶原に強姦されてしまう。それを恥じて九郎義経の元を去ろうとする少年だったが、生きる意味を請われ、結局抱いてしまう事に。戦は始まり、少年は源氏の軍に遭って命を落とす。
咲かせる前に散ってしまったと、義経は涙を流す。
非常に短い物語ですが、耽美!とっても耽美な余韻があります。

戦時中や平安末期。本当にあったかもしれない、BL物語として、何だかリアルな気もして来て、読後のゾワゾワ感がたまりません。
エチシーンは恥じらってる筈なのに、濃厚で大胆です。
作者もあとがきに担当さんから「BLでは無く、男色」と言われたというだけあって。普段読んでいるBLとは明らかに違う感じもしました。
近代史も興味が湧くかもしれない時代設定なので、ちょっぴり勉強した気にもなります。

4

華麗なる昭和青年将校文化ーかりそめの恋

【白の無言】・・・・226事件を背景に、すばらしい時代考証が戦前の重苦しい時代を耽美に描いております。陸軍士官学校に通う成績優秀な二人の美青年 軍人の父の愛人ー芸者の子桐島と高級官僚を父に持つお坊ちゃま高橋の青春時代、黒髪・めがね美青年桐島がひたすら犯されるかわいそうなお話です。
どんなに犯されても、凜として自分を曲げない強い桐島に惹かれる高橋、おぼっちゃまの高橋がもっと強ければ悲劇的な最後にはならなかったのにと思います。

【古痕】・・・・上記の作品の続編です。桐島の子供時代、生い立ちです。
芸者の置屋で生まれ育った霧島は、軍人であった義理の兄と仲良しです。でもシベリア出兵で招集されて、帰ってくると別人のようになり、つらくあたるようになり、ついには純真無垢な桐島を犯してしまいます。犯されてもその心は変わらず、凜とした目がたまらなくセクシーでした。

【青蝉】【患者H】・・医者と助手のかりそめと、古き良き時代のセクシュアルな行為を描いています。戦後のお話がメインなので、ほのぼのとしたコメディータッチで描かれます。

【紅蕾】・・・平安時代の 義経と清盛の甥との美しく耽美な時代絵巻です。
       筆も細やか、着物の柄もすばらしく時代考証が大変素晴らしい


  

             


8

散り際が美しい

【白の無言】
陸軍士官学校を舞台に官僚の息子である高橋と芸者の息子の桐島という二人のお話です。

高橋が幼い頃好きだったという絵本の「聖・セバスチャンの殉教」これを見たときに、お!と思いました。
そして優秀な桐島が将校たちに陵辱される姿を覗き見てしまった高橋が思い重ねるのはまさに聖セバスティアヌスの姿。

聖セバスティアヌスはほぼ全裸&たくさんの矢で射抜かれた姿で描かれる事が多い聖人で、痛いはずなのに苦悶ではなく恍惚の表情を浮かべている作品も多数存在します。絶対にこれ信仰心目的以外でも描かれているよなぁ…と思う事が多々あり以前調べた事があるのですが、やはりそういう何かを見出された結果、歴史上で一番古いゲイ・アイコンとされていたり、ゲイの守護聖人とされていたりするらしい。そして三島由紀夫がコスプレしていたり…。
聖セバスティアヌス=ゲイの隠れアイコン=三島由紀夫=男色。私の頭の中でこう繋がりまして、もうBLというよりも男色を強く感じました。(と思ったら作家さんもあとがきでそのように書かれていらっしゃいました。)

そして桐島と将校達との交わりを目撃してしまった高橋は混乱と失望の勢いのまま桐島を力づくで抱いてしまうのですが、桐島が達した際に発した言葉は「大日本帝国万歳」。
「大日本帝国万歳」ですよ。衝撃を受けました。
こんなBL読んだ事ないなぁというのが正直な感想です。
でも現代ものの作品には存在しない、古き日本男児の美学に満ちています。それが最高潮に達するのはやはり最期だと思います。何も言わずに散っていく…。

【古痕】【青蝉】【患者H】はショタが少し入っているので流し読みで終わってしまいました…。ゴメンナサイ。

【紅蕾】
義経と清盛の甥との美しくて悲しいお話。これが一番好きです。

答姐の「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」で教えていただいたのが、こちらの作品です。
片割れが死んでしまったりするバッドエンドは苦手なのですが、バッドエンドというよりも悲恋ものといったほうがいいかもしれません。
【白の無言】も【紅蕾】の二人も時代が異なればあのような結末にはならなかったのかもしれない、二人で仲良く暮らせたのかもしれない…なんてぼんやり思いましたが、読後感は悪くなかったです。
それは事故などに巻き込まれて不本意に死んでしまうのではなく、散り際が美しく覚悟を持って死に臨んだ、死を迎えたという事で切腹の美学に通じるような、美意識を感じさせるものだったからかもしれません。
おすすめされない限りきっと手に取る事はなかったであろうこの作品を読めて本当に良かったです。教えてくださり本当にどうもありがとうございました。

4

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