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表題作至福の庭~ラヴ・アゲイン~

カウンセラーに来た社会人・藤堂大司(26)
過去の事件で対人恐怖症・鈴木佳人(26)

その他の収録作品

  • ツートン・ハート

あらすじ

カウンセラーである兄の仕事を手伝いながら暮らす鈴木桂人は、過去の事件が元で心に深い傷を抱えていた。
 ある夏の日の午後、桂人は唯一の安らぎの場である庭で、藤堂大司という男と出会う。男性的な力強さをもつ藤堂に怯えを抱きつつも、魅力的で真摯な態度に惹かれていく佳人。彼と過ごした僅かな間にも、佳人は不思議な離れがたさを感じていた。別れ際、自分に向けられた藤堂の、何かを訴えかけるような瞳に佳人の心が揺れ動き……。

作品情報

作品名
至福の庭~ラヴ・アゲイン~
著者
六青みつみ 
イラスト
樋口ゆうり 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344804487
3.8

(28)

(10)

萌々

(7)

(7)

中立

(4)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
9
得点
103
評価数
28
平均
3.8 / 5
神率
35.7%

レビュー投稿数9

過去を許せるかどうか

トラウマがあって対人恐怖症という主人公のお話です。
主人公が悲惨なめにあっていて大きな傷があるという、ある種の王道的なストーリーだと思ったのですが、攻めキャラの一連の行動を誠実と思えるかどうかで評価が別れそうな気がします。

主人公の佳人のトラウマは攻めキャラの藤堂に起因しているのですが、藤堂のしたことはかなり酷いと読んでいて感じて、前半は藤堂に対してムカムカ…。
もちろんそこで終わりでなくて、藤堂は自分のしたことを酷く後悔し、佳人の傷が癒えるまで、家族に疎まれても、佳人に拒絶されても、雨の日も風の日も佳人のもとに通います。
それはなかなかできることじゃないし真摯だと感じるのですが、それでも藤堂のしたことの酷さがどうも、自分なら簡単には許せないなあと感じてしまいました。おそらく佳人視点が多かったからだと思うのですが。

酷い攻め、いわゆる「クズ攻め」が心を入れ替えて受けを大事にする、という展開のストーリーです。前後編になっているのですが、前半がう~んと思った分、後半半分が個人的とてもよかったと思います。
過去自分に酷いことをした藤堂と、心を入れ替えた藤堂を頭の中で無意識に別人だと分類している佳人。藤堂を愛しているのに、藤堂に傷つけられた恐怖がまだ残っているんですね。

お互いに傷ついて長い時間をかけて許し合うカップルのお話です。
スッキリ明るいお話ではないので手放しで楽しめた!という感じではなかったのですが、トラウマのある受けのお好きなかたには、痛々しい部分も含めて楽しめるのではないかと思います。

2

クズ男が心を入れ替えて純愛…?

書棚にあったものを久しぶりに手に取りました。
ふと目についてどんな話だったのかすぐ思い出せず再読しました。

発行から10年以上経ちますが、持っていても再読しなかった理由と結末を思い出せなかったのはメインカップルの一人の大司が好きになれなかったからだと思い出しました。
佳人はとても健気で困難なことにも精一杯努力をして乗り越えていこうとする頑張り屋なところが好きです。
けれど何しろ受けた傷が深すぎて、何年たっても癒されるどころか無意識に封印してなかったことにしてしまわないと精神が保てないくらいに心と体に傷をつけられているのです。

大司は、佳人がずっと憧れていて告白の末付き合うことになった中学からの同級生です。
けれど、田舎から上京した途端に大学生デビューの末ちやほやされ労せずしてなんでも手に入る状況に毒されてしまったんですね。
『健気で控えめな恋人』が『地味で冴えない人前に出すもの恥ずかしいだっさいヤツ』としか見えなくなり、心から理解し常に癒してくれた優しい恋人をもう飽きたの一言で棄て去りました。
それも、大司への逆恨みのターゲットにされ乱暴されて心身ともにボロボロ状態で会いに行ったら浮気相手と一緒だった、というクズ具合です。

それから6年後、大事な人を傷つけて失ったことを後悔していると言われても、そこに行き着く心情の変化や心を入れ替えた経緯が弱くて「失くなってからその存在の大切さに気がついた」というのもだからなんで急に?というのが納得できずにもやもやとしてしまいました。

弟を大事にする極度のブラコン兄や、佳人を大事に育ててくれるセラピストの薫がとても魅力的で、彼らの話がもっと読みたいと思いました。

1

スピリチュアル臭…

六青作品に常に漂っているスピリチュアル臭がこの作品ではMAXでした。そういうものが好きな方にはいい・・のか?これ。わかんないけど。
どうしても消化不良になってしまったのは、健気受けはこの作家さんの十八番ではありますが、これは健気というより受け身というか頼りなさすぎて好きになれなかったです。人としてどうなの?と思ってしまった。
トラウマを受けてしまった後はまあ仕方ないかと思うんですが、それ以前がちょっと。攻めの心変わりがわかる気がしてしまい。
いまいちのめり込めなかったもう一つの理由が、攻めが事件後に豹変して受けに執着し始めるところです。それだけ執着できる強さがあったら、そもそも受けに惹かれたかな?とか。主人公が二人ともどこか違和感を覚えるキャラで、あまり楽しめませんでした。現代もので非ファンタジーではなかなか納得しがたいキャラでした。これ、中世ファンタジーとかで、お兄ちゃんもカウンセラーとかでなくセラピストとか出てこなかったら、アリなキャラだったかも?
屋久島での出来事も、あまりに都合よすぎ、っつかなんつか。
スピリチュアル臭のあまりの強さに苦笑。というのが正直なところでした。

0

萌えるんだけどちょっと物足りない

六青作品を初めて読んだのですが、全体に漂う透明感のあるせつなさと痛さとほのかに甘いトーンは、もう神領域だと思いました。
なのに何故、神評価でなく萌え評価にとどまったかというと、他にも書いてらした方がいらっしゃいましたが、ラストの方の駆け足っぷりが物足りなかったから。
思い切って2冊とかにした方がよかったんじゃないだろうか。この作品。
とにかくラストが物足りない。
紙面が足りなかったのでばたばたと書き急いじゃいました的な放り投げ感があります。
物語的にもどうもいろいろごまかされた感があって、勢いで読まされるんですけど、読後しばらくして、「あれ?何にも解決してなくね?」と小首を傾げてしまいました。
過去の出来事のせいで、受けは一部の記憶を失い、対人恐怖症と冷感症にもなっているんですが、記憶こそ戻るのですが、対人恐怖症と冷感症は解決されないんですね。
ラストで攻めとの最後のわだかまりはなくなり、二人が一緒に暮らそうと示唆するシーンがあるので、恐らくは完治したか、もしくは今後二人でゆっくり治していくのだろう、と感じ取ることができるのみ。
できればここらへん読者任せにしないで書いてほしかったなぁと。
ことに、全体を通して受けは痛々しいSEXを強いられていて、幸せな人肌の感触というものを知らないままラストを迎えるので、一度くらい受けにも幸せなエッチを味わわせてあげてもよかったんじゃ…と思わなくもなかったです。
それから、前半の受けは、記憶を失って対人恐怖症がありつつも、自らの足でちゃんと立とうという前向きな意思と、自分が対人恐怖症であるにもかかわらず他人を癒そうという、痛々しいながらもしなやかな包容力があったのですが、後半で記憶が戻ると、記憶のなかった六年間が逆行したかのように急に幼稚なうじうじくんに変貌するので、痛々しい受けが好きな人にはツボなのですが、うじうじ受けが嫌いな人には苛々するかと思います。
この辺ももう少し丁寧に描写されていればよかったなぁ。
なんかいろいろ惜しいというか、やっぱりこの倍のボリュームがほしかったように思います。

4

こんな痛々しい(心理的に)セックス描写・・・これBLですよね?

受けの過去を知ってるらしい攻め×過去の事件で記憶の一部が欠けた受け

カウンセラーの兄と暮らしている対人恐怖症の鈴木佳人は、ある日自宅の庭に入り込んできた藤堂大司に怖れつつも魅かれていく。

対人恐怖症(特に大きな男)と記憶喪失と過去の事件といったら、もうもちろんアレしかないわけなのですが、BLによくある(?)レイプものと一線を画しているのは、セックスに対する恐怖と、元恋人に対する無意識の恨みが最後の最後まで持続している!という点です。特に体を合わせるシーン、受けの体が快楽に流される的シーンが最後までありません。記憶が戻る直前ちょこっとおさわりされたときにムクッとしたぐらい。確かにレイプされた直後に恋人に捨てられる(二股)というなんてことがあったら一生のトラウマもんになるのは当然だとは思いますが・・・BL世界ではみんな克服するのが早いので(笑)。意外と深刻な事態になってしまう展開は無かったのではないかと(と思う)。佳人の記憶が戻ってから何度か大司と寝てはいるんですが、後半の、受けの心理が超痛々しいセックスシーン!大司が他の男に気があるのではないか、自分はまた捨てられるのではないかと思った佳人の行動ですよ!まだ全然セックスの恐怖があるのに、自ら催淫効果アロマ使ったり、「体勢が整ってないから」とか言い訳。なんかもう必死で必死で、健気を通り越して読んでるこっちが物悲しくなるのですよ~。ここでももちろん受けの "気持ちいい" 描写はありません!徹底してますね。好きです、そういうの。
そしてさらに痛いのが、攻めの大司もその状況を分かっているのです。もうなにもかもがかみあってない濡れ場。新鮮でした。
そして以前の呼び方「大司」ではなくて無意識で「藤堂さん」と呼び続ける佳人。全く許してないし信用ゼロ。
さすがにここまでくると大司が哀れに思えてくるのですが、ちょっとこの人も辛抱強そうに見えて理性が弱い。無理だっつてんのに、ちょっと部屋に上げたり、ライバルの匂いを感じたりすると車のなかでもやっちゃう。6年待ったんだからもうちょっと待てよ!って感じでした。
やり直すってタイミングしだいでこんなにも大変になってしまうものなんだなとしんみり。レイプ事件がなければ普通のケンカ別れで終わってたかもしれないし、事件の直後の対応次第でここまで傷つくこともなかったかも・・・。
ラスト駆け足なのが残念でしたが、「最後はエッチで解決!」の流れにならなかったのがとてもうれしかったです。
なかなか痛いストーリーのなか、佳人のお兄ちゃんの大司いびりがほんわかさせてくれました。

4

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