• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作ラピスラズリの約束 下

草鹿将秀(県庁勤務)
真理(ウリ専ボーイ)

その他の収録作品

  • キャラクタープロフィール
  • Epilogue
  • あとがき

あらすじ

売り専バー『ラピスラズリ』。
ボーイの真理は、行為のあと鏡に映った自らの姿を見て妖しく微笑む。〝酷くしてくれること〟を条件に女装をして客をとり、過激な行為を繰り返した白い肌には生々しくいくつもの傷跡が残っていた。
そんな真理のもとに客として現れたのは、虫も殺せないような顔と雰囲気を持った男、草鹿将秀だった。
互いを知るほどに惹かれ、近づいていったふたりの距離。
だが草鹿のあずかり知らぬところで見合いの話が進んでいて…?

作品情報

作品名
ラピスラズリの約束 下
著者
三七十 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ジーウォーク
レーベル
ムーグコミックス BFシリーズ
シリーズ
ラピスラズリの約束
発売日
ISBN
9784862977168
3.7

(8)

(5)

萌々

(0)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
2
得点
28
評価数
8
平均
3.7 / 5
神率
62.5%

レビュー投稿数2

読み返すたびに涙ぐみます

電子版でレビューさせていただいたのですが、完結して改めて紙で拝見したので投稿します。
※冒頭はコピペですみません。

「酷くしてくれること」を条件に女装してお客をとっている、売り専バーのボーイ真理。
彼はある理由から、自分の体に傷をつけることを強く望んでいます。
痛い描写が苦手な人には辛くなるくらい痛めつけられることを好むんですが、その痛々しささえも美しく感じるような受です。

攻は、ゲイであることを隠しながら生きてきたエリートリーマンの草鹿将秀。
真理いわく草食系通り越して「草」とまで言われた優しげで真面目そうな彼が、ある夜「酷くされるのが好き」な真理を買いにくるところから物語りは始まります。

とても噛み合わなそうな2人が、真理からの「ある条件」つきでお客とボーイの関係を始めるのですが…。

もう、この2人の抱えている問題が本当にしんどくて、読んでて何度も泣きました。
そんな2人がお互いの環境に理解を深めていきながら、少しずつぎこちなく距離を縮めていくのが上巻。

この下巻は正直、受の真理と攻の草鹿お互いがお互いをとても強く思いあっているからこそではあるものの、結構後半まですれ違い続けます。

ようやく草鹿への思いに気がつき全てを草鹿に預けたかに見える真理は、草鹿の幸せを思うあまりかなり極端な行動に出ますが、それもまた違う形で真理を思う大神という存在あってのこと。

メイン二人の間に入ってくる、この大神というキャラが非常に曲者で魅力的です。
彼のおかげで下巻はこれだけの盛り上がりを見せたといっても過言ではないかも。

草鹿の両親、草鹿、真理、大神、それぞれがそれぞれの持つ形の違う〝愛情〟に翻弄されながらも、ある結末へと向かっていく下巻は、苦しくて辛くて、でもあたたかくて優しくてとにかく泣けました。

上下巻しかないですが、とても濃厚でしっかりキャラが描かれているので十分満足できると思います。
新人作家さんですが、BLという枠に収まらない帯にあるような良質なBLドラマですので、是非いろんな方に読んでいただきたいです。

4

綺麗な月を見ると、ときどき思い出す作品です。

先日、綺麗な月を見たときにこの作品を思い出し、心がジーンとなりました。

弁護士一家に育ち両親の操り人形そのままの攻めと、女装姿が母そっくりの容姿である自分に気づき、女装姿の自分を痛めつけることによって自分を虐待し捨てた母への復讐心を満たしている受けという組み合わせです。
隠れゲイであるエリートリーマンの攻めは親から結婚を急かされており、女装姿の男ならもしかしたら抱けるかも…という理由で女装のウリ専ボーイである受けの店にやってきて…という出会い、そしてタイプの異なる二人が、恐々と、不器用ながらも距離を縮め惹かれあっていく姿が描かれているのが上巻です。

下巻は、攻めに別れを告げる受けの姿からスタートします。
自分を悪者にしてまでも攻めの幸せを願い、別れを決意する受けの姿がなんとも痛々しいです。
それを見て攻めも実家と絶縁する決意をするのですが、受けは暴力を振るう当て馬客の元へと戻ってしまう…。

上巻の最後で、受けの母親の過去を知る人と出会い、自分さえ生まれてこなければ母は不幸にならなかった、頑張り屋の優しい母を鬼に変えたのは自分の存在だと思ってしまった受け。
女装姿の自分を客に痛めつけてもらうことで母に復讐しているような気持ちでいたけれど、本当に痛めつけられるべきなのは自分だった…と思う受けの姿が本当に痛々しい。

でもその痛々しさがあるからこそ、後半が光ります。
ずーっと両親の言いなりで、30近い男が初めて両親の好みではないネクタイを締めただけでも大ごとになるような家庭で育ってきた攻め。
その攻めが実家と断絶を決意し、初めて欲しいと願ったものに手を伸ばし求める強さ。
そして初めて「ずっと痛かった」と泣けるようになった受けの姿。
出会って本当に本当に良かったと思える二人の姿にジーンときます。

そして闇に引きずり込もうとした当て馬すらも「赦す」という二人がいいと思いました。

「自分を酷く痛めつけること」が客を取る条件のウリ専ボーイが受けなので、 痛いシーンが時々あって暴力耐性が低い私はそこが苦手なのですが、それでもこの作品に神をつけます!
(もちろん攻めは酷くするどころか暴力行為は絶対にできないと、受けをそれはそれは大切に扱うのですが、受けに執着している当て馬客がタバコを腕に押し付けたり…という描写があります。)

本編もいいけど私が一番好きなのは描き下ろしなんです。
満月のもと、月が綺麗=夏目漱石のI Love youって意味ですよと教える攻め。
その後「愛してます」「あなたが愛しいです。」と告げる攻めに、この流れなら「月が〜じゃねーの」と受けは悪態をつくんですが、この後のやり取りを私は忘れられません。

「…… あい、… あい…」となかなか言い出せない末に、ようやく言えたあの言葉。

愛を知らず、愛から一番遠くにいたような存在だった受けが、攻めによって愛を知り、愛を伝える受けの姿に心がめっちゃ揺さぶられます。

この作品に出会ってから綺麗な月を見ると、月なんか見ないで、俯いて、絞り出すかのように愛を伝えた受けの姿を、私は時折思い出すようになりました。
そしてその都度、心がジーンとする。

答姐で教えていただいた作品でして、なかなか言葉がまとまらずレビューが大変遅くなりましたが、素敵な作品を教えてくださり本当にありがとうございました。
そして9月に「ラピスラズリの約束 甘い日常」という短編が発売されるようなので、そちらも読んで幸せを見届けたいと思います!

3

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(コミック)一覧を見る>>

PAGE TOP