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読みながら涙がボロボロ出てきて止まらなくなってしまい、どうしようかと思いました…
以下、ネタバレ含むレビューとなります。↓
幼馴染同士の、一方(攻)が一方(受)を追いかける恋。
様々な出来事を経て、やっと苑(受)が明渡(攻)にイコールの気持ちを返せるようになった時、衝撃的な展開が待っていてー
序盤、半ば一方的に苑の体を開いた明渡に少しもやっとしたりしたんですが…
それと同時に、明るくなんでも持っている明渡が、縋り付くように苑を愛する姿に、哀れみのようなものを感じてしまいました。
たとえ自分と同じ「好き」を返してくれなくても構わない、それよりも苑が本当の「恋」を知ってしまうことが怖い。
「好きになるってこんな気持ちかって、苑が知って…俺としてたこととか、俺との生活とか、後悔する日がきたらって考えたら苦しい。それなら、誰も、俺も、好きじゃないままでいいから傍にいてくれって思うよ」
ああ恋って、こんなにも人を弱く脆くしてしまうものなんだな、と。。胸が締め付けられるって、こういうことか、、と。
作中で苑が自分自身でも語っているように、二人の関係は常に一方的で、苑は明渡のことが恋愛的な意味で好きだったわけではないんですよね。むしろ明渡のはとこの女の子にほのかな好意を抱いていたぐらいで…
そんな二人の関係が、明渡の頭痛から始まった病気の発覚、そして手術後に大きな変化を迎え、もう切なくて涙なしにはページを捲ることができませんでした。( ; ; )
衝撃的な別れからの再会、そして希望の残るラスト…
”あとがきにかえて”のSS「アイス」には本当に救われた気持ちになりました。
続編があることを今知ったので、これから続きも読んでみます。
二人の未来に明るい光がありますように、と心から願わずにはいられない、切なく美しい作品でした。
もうすっごいとしか言いようがない
自分自身が親から邪険にされていた人間が読んだら、まぁ居心地悪くて…他を読んでいて信頼があるから読み進んだけれど、果菜子の母がもう…私にとっては果菜子母の人柄が1番しんどくて、なんでこんな、ぼんやりしてでもいい脇役がこんなに生きた人なのかと本当、すっごい
苑の父が一人になって、お金を取っておいたり自転車を大切にしたり、自分の寂しさから息子がいるという事実に縋っていただけのことを明渡みたいな人が丸で意味があるかのように告げてくる感じとかも、本当、そんな風だよね世間て
明渡て、強引で優秀なんだろうけれどあんまり良いやつではないような…てか、単純に無神経なのがひどい
脳に電極入れて操作すると欝の人がとても元気になったりするって話しも最近みかけたし、頭の怪我で脳に影響が出て人を愛したってことあってもおかしくない
でもやっぱり複合的に色んなものとその気持ちは絡み合って記憶されているんだろうし、明渡が後悔したりする人柄じゃないことがそれまでの描写で十分に解っているところがとても良かった
高校生のときの離でのとか、自分が好きならそれで良いってこんな自分勝手な…て思ったし、連絡も取らずに若者が2年も…とか色々思ったけれど、明渡みたいな性格の人じゃなかったらこんなできごとのお話読んでられなかったかも
虐待のところでだいぶ重たいからね
田舎町で、経済的に裕福とはいえない家庭で、両親からわかりやすい愛情を得ずに邪険にされて育った主人公の苑が、どのような小学生時代を送ったのかが冒頭で描かれます。
最初、読み始めた時には、主人公の境遇の悲惨さや人の翳りの描き方が木原音瀬先生の作風を思わせ、何度か著者名を確認しました。
心を閉ざし、何もかもを諦め受容する姿勢は決して子供らしいものではないのですが、中学生になり高校生になり、成人するその過程を苑の心に寄り添いながら読み進めました。
苑が影に居る少年だとすれば、地元の大手企業の息子である明渡はまさに対極で、完全なる光の中にいる存在。その明渡がどうして苑に拘るのか、一緒にいようとするのか、決して近い距離でもないのに毎日家に来るのか、戸惑いながらも苑はその理由を深く考えることなく、自分はじっと冷たく静かな深い水の中に閉じこもっている、その構図がまだるっこしくもあり、今後二人はどうなるのか、いつ頑なな苑が殻を破るのか、見守るように夢中で読みました。
成人になり、二人は東京で暮らすようになるのですが、それでも苑は基本的には子供の頃と変わらず、自分自身の中に閉じこもり淡々と日を過ごしていきます。
そんな苑がとうとう明渡への恋を自覚した、その場面から、明渡の脳の手術を機に二人の関係が少しずつ変わっていく一連に、ぐっと掴まれました。
硬膜下血腫の手術の後、明渡が自分を見る目がこれまでとは異なることに気が付き、医者を介した明渡の告白音源を聴いて、苑は大いに悲しみつつも、心のどこかで「やっぱりな」と考える。自分が人から愛されるわけがないと。明渡の勘違いだと考える方がしっくり来ると。そして、彼の人生を本来のあるべき姿に戻すのが最善だと自分の中で折り合いを付け、全てを手放すまでがとにかく震えました。
明渡が自分を好きだなんてそんなことあるわけがなかったんだ、と「魔法が解けた」と解釈する苑が悲しくも愛おしかったです。
不器用で頑なで、ようやくほんの少し水の底から浮上しかけた時に押さえつけられる。それは、小学生の時に、普段は興味も無い神社のお祭りに行ってみようと思い立って酷い目に遭い、この世の何処にも自分の居場所がないと絶望したあの雨の夜を想起させられました。
最後も、安易に流れないのが良かったです。
ハッピーエンドがお定まりのBLだけど、このお話の場合は簡単に元サヤに戻るのは違うと思っていたので、距離感を保とうとする苑にほっとしました。「さわらないで」と手をはたき落とす場面も、できるだけ会わないようにしようとする姿も私には好もしく映りました。
終始、苑の視点で語られるので、読んでいる時にはこちらも当事者。
それが読後、俯瞰してみると、読書中には見えづらかった明渡や周囲の様子が少し見えるようになります。
それは、苑が大人になって、明渡のことを思いやることに似ています。
小さい明渡はこんなに暗く寂しい道を、自分の家まで毎日自転車で来てくれてたんだなとか。いつものように強引にしているようだけど、手が震えていることに気付いたりとか。
そういう目線の変化が、苑の成長でもあり同時に明渡の行動の解釈の助けにもなるのがとてもいい。
前述と違ってはっきり語られてはいないけれど、両親についても、苑を邪魔にするなど愛情表現がほぼ無いわりに、食事は一緒にしていたり、お祭りに行くのを止めたり、離婚したことを報告してきたり、未払いだったバイト代に手を付けなかったり、自転車が磨かれていたり、そういう小さい一つ一つも拾っていけば違う像が見えてくる。
細かい仕掛けが、一穂先生だなあと嬉しくなりました。
続巻も楽しみです。
勝手な見解なんですが、私の中で、凪良ゆう先生、朝丘戻先生あたりの作品は切なくて苦しいので、安易に手をつけられないというジレンマがあります。
そしてその先生達を抑えて、一穂ミチ先生。
この方の作品はどうも切なさ苦しさに不穏さを感じて(文章が上手いので入り込みすぎてしまうんですね)、1冊も手をつけられずにいました。
が、挿絵をyoco先生が書いているというのを盾に(?)、満を持して購入。
結果、放心状態でこの文章を書いています。
物語の概要や、登場人物については省きますが、なんといっても、苦しい、切なさい、苦しい、せつない…せつない…せつない…くるしい…のオンパレード。
そもそも高校時代までのあの不安定な距離感や、苑の生い立ち、家庭環境、明渡に対する怖いという負い目のような感情、罪悪感。
どれもリアルすぎてギシギシと容赦なく心が削られました。
それもこれも一穂先生の文章力と言えばそうなのですが、あらためて、安易に手を出してはいけない神作品だなと実感。
会話一つ一つ、モノローグ一つ一つが、いちいち心を抉るんです。
どちらかと言うと苑と共感する部分が多かったので余計に辛かったんだと思いますが、はっきり言って全然甘くなかったです。
(2人の関係がギスギスしてるから甘くない、とか喧嘩したから甘くないとかの問題ではなく、作品中に漂う雰囲気が切なすぎて苦しくて甘くない、という感じでしょうか…文体がそもそも切ないのです)
「自分の前に時間や未来や将来といったものが存在するのが恐ろしかった」と語った苑。
自分を養っていけるという手応えは自分にとって大きな収穫だった。
自分は大人になれる、なっていい。
そうやって、バイトを初めてしてみて、やっとそう思えるようになった苑。
そんな苑が、明渡宅で出された夜食に対して、
「人の家で、出来合いでない温かい食べ物を出されること、箸がちゃんと箸置きに載っていたこと、皿が真っ白にうつくしいこと。
それらが胸をつかえさせた」
と語ったシーン。
…………ぐううう……
感想さえ言葉になりません。
読んでいる最中ずっと唸っていました。
なんて苦しいんだろう。
攻めの明渡がまた、日向の人間なだけではなく、賢いんですよね。
明渡の光は苑にとって、強すぎて怖いというように、
確かに明渡は日向の人で、容姿や家柄にも恵まれている。
けれども、それを補っても有り余る優しさや賢さが明渡には見え隠れするんです。
よくいるクラスの日向の人ではないんですね。
上手く説明できないのですが、そこがまた物語を切なくさせるポイントでもあって、終始、明渡から苑への愛情は示されているのに、いたのに、ずっと通じあえない。
これまでの人生の片隅を照らし続けてくれたのは、紛れもなく明渡だから。
そんなふうに思っているのに、明渡への愛情がきちんと苑から相手へ繋がっていかないのがものすごく苦しかったです。
そしてちょっと展開が急だったなと思った部分もあったんですが、最後まで怒涛のどんでん返し。
本気で気を抜けない作品です。
またこの作品の題名にもなっている「キス」ですが、物語の要所要所でとても上手く絡んできます。
土砂崩れに巻き込まれて全て流されてしまいたかった11歳の時のキス。
それが全ての始まりでしたが、なによりも記憶に残ったのが手術の前、たった5秒足らずで交したキス。
手術後の別れのシーン。
私は勿論、疑わなかったんです。
5秒?
いや、10秒、とやり取りした2人が、
キスをせずに別れるなんて。
振り返りもせず道を分かたれるなんて。
こんな、こんなことってあるのか………!!!
一穂先生…………!!!
泣きました。
もう、次の行を読み進められないほどの切なさと苦しさに持っていかれて、もうグズグズでした。
家族に笑われるほど泣きました。
キスをしないで別れた2人。
泣きたいから泣いているので大丈夫です、といった苑。
全然大丈夫じゃないよ………!!!
号泣だよ………。
やっとの思いで読み終わり、最後は余韻の残る素敵な終わり方でしたが、正直、続編のラブも読み始めるまでに何日もかかってしまいそうです。
そのくらいに苦しくて、切なくて、けれど全てを鷲掴みにするような神作品でした。
一穂先生…他作品も絶対に読みます。
思わぬほうに話が展開していって不穏な雰囲気に読み進めたい気持ちが逸った。明渡(攻)みたいに自信があって強引で、生きていく能力の高い男、物語の中で読む分には大好き。実生活では関わりたくない(笑)言葉の表現がとても綺麗で読んでて幸せな気持ちになる。一穂先生はあまり言語化されない気持ちを言葉にするのがとても上手で、ちょっと後ろめたかったり、隠したい気持ちを表現されて切なくなる。1巻特に胸が痛かった。1巻面白かったけど2巻少しもだもだを感じたかなー。