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表題作深窓の王子の秘密

吉武亮司,サラリーマン,大学時代の先輩
青葉潤也,25歳,プログラマー

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

あなたから溢れ出る黒い感情ーーー
それは俺への欲情、それとも憎悪⁉︎
いつも清涼な空気を纏っていた先輩・吉武に、突然黒い霧が発生‼︎
負の感情が見える青葉は、自分へ向けられた激しい想いに怯えて⁉︎

人の怒りや悲しみが、黒い霧となって見えるーーー負の感情を感知する力を持つプログラマーの青葉潤也。おかげで人混みが苦手でほぼ引きこもりの生活だ。唯一心を許すのは、大学時代の先輩・吉武。おまえは本当に俺が面倒みないとだめだなーーーいつも笑って軽口を叩く吉武に、安心して甘えてきた青葉。けれどある日、吉武に黒い霧が出現‼︎初めて自分に向けられた彼の負の感情に怯えるけれど⁉︎

作品情報

作品名
深窓の王子の秘密
著者
 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199009129
3.2

(12)

(0)

萌々

(4)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
38
評価数
12
平均
3.2 / 5
神率
0%

レビュー投稿数6

引きこもりくんの勇気

一言で言ってしまえば「対人恐怖症の受けが太陽のような男性に愛されて幸せに…」というお話。
そこを彩るのが、特殊能力設定。
主人公の青葉潤也は、幼い頃から人の負の感情が「黒い霧」として視えてしまう力を持っていた。
しかし、それが怒りなのか悲しみなのか軽蔑なのかその区別もわからないし、誰に向けられた感情なのかもわからない。だから黒い霧を見た青葉は、それを自分のせいだと思ったり、人を怒らせたり嫌われることを恐れるようになった…
そして今、青葉は在宅ワークのプログラマーでほぼ引きこもり。他人と極力関わらないように生きている。
そんな青葉にも、一人だけ信頼できる人間がいました。
それが大学の先輩・吉武。
吉武にだけは一度も黒い霧を見たことがない。だから青葉も安心して吉武に接することができる。
もちろん青葉は誰にも黒い霧が見えることを言っていません。
しかし、吉武が勧誘された事業への投資話。
その投資家に吉武と共に会った青葉は、今まで見たこともない渦巻く黒霧を見てしまった…!

今まで他人の悪意や怒り苦しみが見える事に悩み、誰にも言えず一人他人に関わらないように身を潜めていた青葉が、吉武に降りかかる悪意に立ち向かっていく…
その勇気と成長が描かれます。
そして、ずっと青葉が好きだった、という吉武との恋の成就。
他人を避けていた青葉はとても純粋で天然で、そんなところも吉武には嬉しい事だったでしょうね。
吉武と恋人同士になった青葉は、以前より黒い霧が見えなくなりました。吉武を通じて他の人たちとも自然に交流ができるようになる予感で物語は終わります。
青葉は自分の殻にこもり、人になかなか自分の思いを伝えられず、かなりウジウジとした人間に見えます。ここが容認できない方には、前半イライラする物語に思えるかもしれませんが、青葉の感じていた生きづらさも優しく昇華する読後感の良い作品です。

1

キャラクターが受け入れられるかどうかに尽きる

設定や展開は置いておいて、主人公のキャラクターで評価が左右されるのではないかと思われます。
バックボーンの所為ももちろんあるとは思うのですが、それでも弱気で消極的な態度にウジウジ、イジイジしているタイプと受け取られても仕方ないのでは。一本筋が通った所もあるし、真面目で誠実で、良い面ももちろんあるんですけれど、それにしても。
意外に大胆な所はいいぞ!と思いますが、こんなに三点リーダー(…)を酷使されるキャラクターもそうそういないぞと(笑)

普通だったら「多分そうだと思います。」というところ
「た、たぶん、そうだと…。」といった感じです、ずっと。
キャラクター設定がしっかりされてる分、より一層キます。
これが受け入れられない人は、ものすごくイライラするんじゃないかなぁ。自分は許容範囲の端っこでしたので大丈夫でしたけど、逆にこれ受け付けない人いるんじゃないの?と心配しながら読んでしまいました…(まねっこ三点リーダー)。

2

マイノリティの孤独

電子書籍で読了。挿絵、あとがきあり。

事前知識なしでタイトルに惹かれて読んだのですが、大変引き込まれました。
あらすじはオカルトっぽい感じですが『マイノリティの孤独』について描かれていると思います。

子供の頃に発熱したことをきっかけに、青葉は人のネガティブな感情が見える様になりました。その人の周りに黒い霧がかかっている様に見えるのです。母や友達に話しても信じて貰えず疎まれるばかり。人が自分に向ける悪感情が怖くて、青葉は出来るだけ人と関わらずに暮らしてきました。唯一心を許すのは、大学時代の先輩である吉武。彼に霧がかかっているのを青葉は一度も見たことがありません。吉武は隠れる様に暮らしてきた青葉を競技プログラミングのサークルに誘い出し、現在も自分の会社の外注仕事を依頼してくれています。ある日、青葉は自分の家に成果物を取りに来た吉武に黒い霧がかかっているのを始めて目にします。今まで親切に接してくれた吉武が悩んでいることで、青葉は吉武の力になりたいと思うのですが……

自分が信頼している家族や友人が『黒い霧』の存在を誰も信じてくれなかったことが、まず第一のショックですよね。信じてくれないとその黒い霧が更に色濃くなっていくのは第二のショックになって青葉に襲いかかってくるんです。霧を濃くしているのは自分だって解っちゃうのは、子供の青葉にとってとても辛いことだったと思うんですね。出来る限り人に迷惑をかけない様におとなしくしていようとなってくのは当然の様に思います。

だからこそ、一切、霧が見えない吉武の存在がどれだけ青葉にとって大切だったのか、それが繰り替えし書かれる度に、胸がぎゅーっと苦しくなりました。だって、青葉はひとりぼっち。吉武はそんな青葉の、本当に唯一の人なんですもの。

「この世でたった一人だと思っていても、きっとどこかで見ていてくれる人がいる」というラストは、とても素敵でした。文章が読みやすい所為でさらっと読ませますが、大きく普遍的なテーマを扱っていると思います。でも、大上段に構えた大げさな話ではなく描いている所が好きです。
孤独を感じてやるせない時に、良く効く薬になってくれそうな一冊です。

4

見えてる

表紙が金ひかるさんなら無条件に買う主義なので、あらすじ等は全くノーチェックのまま購入。
主人公の青葉は周りの人間の負のオーラだけが見えるっていう設定だが、オカルトとかファンタジーという面で読むよりは、他人と関わることに臆病な青年が、恋愛を通して対人関係にしっかり向き合うようになっていく、そんな普遍的な成長物語として面白かったです。
誰もひどい目にあったりしないし、最後はすごく甘々のハッピーエンドだし。
後味スッキリで、当たりでした。

1

何かと心配させられる二人

”黒い霧"といった形で人間の負の感情が見えるせいで常にビクビクしてしまい、引きこもり気味になってしまったフリーのプログラマー・青葉と、社会人になってからも仕事の面倒を見てくれる先輩・吉武。

二人が大学にて出逢ったという回想にて”競技プログラミング”なるものを初めて知ったが、「青葉の書くコードは俺好みだ」っていう吉武の口説きがマニアックではあっても変ではなかった。
何かと吉武の庇護を受け続けている状態からどのように青葉が変わっていくのだろうと思っていたところに、吉武にも”黒い霧”が出てきたり、彼の元恋人に遭ったりして青葉の心はぐらつくのだった。

しかし、青葉は引っ込み思案な性格なのに吉武を気遣うのを隠して甘えるのが上手いし、彼が厄介事に巻き込まれそうな心配から単独で疑惑の人物に詰め寄って問い詰めるといった意外な行動力もあった。
もう少し自発的に動けばいいのにって感じたところで、いい具合に青葉が行動を起こすので、ネガティブな要素が幾つかあっても不思議と苛つく事はなかった。
17年という長い年月がかかったものの、”黒い霧”が見えるのを彼なりに受け止められるようになった(成長した)のも良かった。

吉武は包容力はあるが抱えている悩み事を青葉に悟られて不安にさせるし、青葉は華奢で非力なのを顧みずに強面な相手に飛び込む危なっかしさがあったりと、似合いのカップルなのに何かと心配させられる二人だった。

2

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