この喝采を彼に

kono kassai wo kare ni

この喝采を彼に
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神2
  • 萌×22
  • 萌1
  • 中立0
  • しゅみじゃない0

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レビュー数
2
得点
21
評価数
5
平均
4.2 / 5
神率
40%
著者
T・A・ウェブ 

作家さんの新作発表
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イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
発売日
価格
ISBN

あらすじ

記者のポールは、クラブの楽屋でマシューというドラァグクイーンにインタビューする。大柄で毛むくじゃらのマシューは18歳の時から30年近いドラァグクイーンのキャリアを持ち、エイズ対策に100万ドル近い寄付金を集めている。そのモチベーションは、とたずねられたマシューは、昔の恋の話を始めた。1980年代、それは甘く苦しい運命の恋だった。

表題作この喝采を彼に

マシュー・トランメル・高校生→大学生
パトリック・ホルトン・高校生→大学生

レビュー投稿数2

レスト・イン・ピース

電子での海外BL短編。

一読して。
あー…そうだったよね…と。
私は今50代なんで、この物語の語っている年代の、AIDSが恐怖の病だった時のこと、ものすごくリアルに知ってる。
そして私はその頃、興味半分面白半分にゲイカルチャーを野次馬として消費していた。
エイズがゲイにとっての天罰、と言われてたこともリアルに知ってて、完全に他人事で、それどころかエイズで死んでいくアーティストたちを、正にエイズで死ぬがゆえにカッコいい、と思ってた…
他の死因より、エイズで死ぬことこそが最先端でお洒落だと思ってた。
この物語を読んで、今さらすごく打ちのめされてる。
感染した一人一人、その周囲の一人一人。あの頃私はそこがまるで見えてなかった。

主人公は、今47才のドラァグクイーン。
学生時代の初恋の相手をAIDSで喪っていく過程を振り返る物語。
今若い世代はこれ読んでどう感じるんだろう?
エイズは正に絶望、死神、天罰。
家族に言えず、差別の中で、愛を喪い死にゆく。
80年代NY。仲間、友達が次々死んでいく中で死ななかった自分。それはサヴァイヴとは捉えられず偶然生き残った、というような感覚だと思う。
死にゆく恋人/友人を見ながら何もできない自分。どれほどつらかっただろう。

今、生き延びて華やかに夜を生きるマシュー。
今はいない初恋のパトリックの思い出と共に生き続ける事を自分に課して。
そうやって今までいくつの出会いと別れを繰り返してきたんだろうね。今目の前に現れたポールとはどんな出会いなのかな。
クラウス・ノミ、ロバート・メイプルソープ、ティナ・チャウ、デレク・ジャーマン、ジョルジュ・ドン、ルドルフ・ヌレエフ、キース・ヘリング、フレディ・マーキュリー、古橋悌二etc…
R.I.P.

0

あの時代、あの病

『小説ディアプラス2016年アキ号』掲載作品。

う~ん……重い。
そしてかなり哀しい。
47歳のドラァグクイーンが雑誌記者のインタビューに、若かりし頃の恋の思い出を語る形式の物語なんですけれども、1984年から3年未満のお話なんです。

高校3年生のマシューは、幼馴染みのパトリックに恋をしていました。でも、レズビアンのソニアと3人でつるんで遊んでいるばかりで、告白する勇気が持てないまま。いつものクラブに遊びに行った日、パトリックは別の男としけ込んでしまいます。傷ついて帰ろうとするマシューの車に戻って来たパトリックこの喝采は、その男の体には赤く腫れた斑点があり、コンドームなしのセックスをしたことを話します。「1人でいたくない」というパトリックをマシューは自宅に泊め、医者にも同行します。高校を卒業した夏、進学の為に地元を去る予定のソニアも含めた3人で出かけた別のクラブは『女装ナイト』。ステージにヤジをとばしていたマシューは行きがかり上、ウィッグをかぶりステージ上で踊ることになりますが、これが大ウケ。その夜、パトリックはマシューにキスをし、愛し合おうとするのですが、その途中で「やっぱり、お前にとり返しのつかないことはさせられない」と言うのでした……

1984年って、検索してみたら、日本でエイズ発生動向調査を開始した年であり、フランスの哲学者ミシェル・フーコー(読んだ事はありませんが)が亡くなった年なんですね。この頃からエイズがセンセーショナルに知られ始めました。

最初はパトリックの軽率な行動に疑問を感じていたのですが、話を読み進めるにつれ、彼が家族(特に父)と上手くいっていないこと、暴力を受けているらしいことなどを知り、納得しました。
家族に愛されていないと感じているからこその無軌道な行いであり、たぶんそういう行いは、自暴自棄であることが必要とされていて、大切な友人であるマシューが相手ではダメだったんだろうと思ったんです。

このお話が切ないのは、マシューが図らずもドラァグクイーンとしてデビューしたその夜の煌めきが、とてもとても美しいからなんです。
長い間、ずっと想っていた一番の友人から愛していると告げられ、夢見心地で一緒に帰り、ベッドインする。そこまでの夢の様な描写が、その後、マシューが突き落とされる哀しい出来事と対比して、胸が裂かれる様に哀しい。

秋○和○さんの某コミックで号泣した私にとっては、たまらない物語でした。
藤たまきさんのイラストも美しく、涙をそそられました。

3

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