うさぎだった頃から、ずっと狙ってたんだよ

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作愛は脱兎のごとく

シマ、元うさぎで獣人ワールドのS級キックボクサー
小平守、農学部学生でシマの元飼育係

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

ペットが人間化した獣人の世界へ迷い込んでしまった小平は、
昔飼っていたうさぎのシマと再会する。白くふわふわだったシマは、キックボクサーとなっていた。
「俺とつがいになってくれ! 」
獣人の世界でモテ期到来!? なぜか獣人たちに求愛されまくる
小平を守るため、シマが小平のつがいとなることに!?
ふわカワうさ耳の格闘系オヤジが大活躍! かっこいいのにもふもふ

作品情報

作品名
愛は脱兎のごとく
著者
中原一也 
イラスト
幸村佳苗 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773089585
3.8

(26)

(7)

萌々

(11)

(6)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
8
得点
98
評価数
26
平均
3.8 / 5
神率
26.9%

レビュー投稿数8

最初からうさ耳に笑っちゃった!

プロローグはなかなかショッキングで、
ちょっとうるりとしますが、
本編が始まると、
その奇妙な光景につい笑ってしまいましたw

今回はファンタジーと言うよりは、
メルヘンな感じで!
ペットを飼ったことのある方ならば、
この物語の世界に飛んて行きたくなりそうですv

そして、やはりポイントは
攻めが「うさぎ」な事でしょう!
うさぎのイメージといえば、
ミッ○ィーやマイ○ロディーなど、
『可愛い』の代名詞でありますが、
中原さんの手に掛かると、
イケメンえろうさぎに変身です!
可愛いお耳もふわふわ尻尾も、
えろの小道具に!!
カッコよさは、某細田監督アニメの
アバターキャラを思い出してしまいましたv
(あ、そういえば守さんだv)

そして今回も、やはり周りのサブキャラ達が
いい味出しているのですよねv
このサブキャラ達の大活躍も
中原作品の一つの魅力ですv

独特の世界観と、
動物たちの設定がなんとも面白いです!
最後は続編も行けそうな感じで!

一つ難点といえば、やはり小平くんが
ヒロイン気質過ぎな所でしょうか!
思い込み過ぎ、ピンチになり過ぎ!w

そこだけがちょっと引っ掛かって、
評価は「萌☓2」で!

1

ウサギで人間でパラレルワールドで

やっと全部読めました。
不思議な感覚ですね。
小学4年生が飼育してたウサギに対する気持ちと、ウサギが世話される飼育係に抱く気持ちと。

ずっとウサギのシマを忘れられずシマの為に美味しい野菜を研究して。美味しいニンジンを食べてほしかったから。
守は優しいまま大人になったんですね。

ひょんなことからケモ耳の世界へ迷い込んでしまった守。しかも助けてくれたのは異世界で人間に転生したウサギのシマで。

シマの男ぶりや色気が守視点でこれでもかと書かれています。ウサギのシマへの憧れから男としてのシマへの恋心へ育って。

シマもウサギの頃からなんとか守を自分のものにしたかったと。

スラスラ読めて配分も申し分ないのですが…。
なんだろう何か物足りない。
守が裏目に出てばかりなとこ?ウサ耳とオヤジの相性?
ラスト?うーん。
中原さん作品なのに社会派でもエロ変態でもオヤジ度も人間臭さもあんまりなかったからかなあ。

1

期待し過ぎた

「花吸い鳥は高音で囀る」を読んだばかりだったので、期待し過ぎていたのかもしれません。

小学校で飼育していた兎のシマが野良猫に襲われて死んだ事でトラウマを抱えた小平は、農学部へと進学してシマに食べさせたかった人参の品種改良に取り組んでいます。

そしてそれが完成すると学生の間で噂の、死んだペットに会える扉の話を聞くのです。半信半疑で図書館に行き「魔法の術書」をみつけて魔法陣を書き呪文を唱えたのです。

翌日に小平が大学で野菜を育てている場所に行くと、兎の耳を付けた男達が食べて荒らしていました。その男達に襲われそうになっていた所を助けてくれたのがシマだったのです。

小平の大学の大木のウロの扉を通った先には、人に飼われて死んだペット達が獣人として暮らしているパラレルワールドがありました。死んだ年で転生するらしく前世の記憶があるのです。シマは30代後半の美丈夫で逞しいからだと、野性的な色気がある魅力的でしかもボクサーなんです。

シマの世界ではひと月ほど前から人間界に行って来た獣人がいると言う噂がありました。それは小平が開いた扉で、どうやら人間界とシマの世界では時間の進むスピードが違うみたいなのです。

シマや他の獣人の力を借りて、小平は元の世界に戻る方法を探すのです。そのうち小平の事が評判になりプロポーズしてくる獣人が沢山現れました。シマは小平のつがいだと公言する事により、獣人達が自分と決闘するように仕向けて小平を守ります。

獣人は好きな相手につがいがいたら、決闘を申し込んで勝てば奪えるというルールがあるらしいです。シマは圧倒的に強いのですが、一対一と決まってるので4人続けてとか汚い方法を取る奴らも現れるのです。小平の応援が力になると言われているのに、これ以上戦わせたくないからと相手の所に行くと言ったり、小平の中途半端さにイライラくるんです。

それは人間嫌いの獣人達に攫われた時も同じでした、小平の中途半端さがピンチを招いて腹が立ちました。

不器用だけど一生懸命で優しいという獣人達の評価でしたが、偽善者ぽくて嫌でした。

そして元の世界に戻って来てからの再会までも、上手く誤魔化したような結論でした。

2

ウサギの魅力は可愛さだけじゃないようです

今回は元うさぎのS級キックボクサーと
美味しい野菜つくる大学生のお話です。

獣人ワールドにトリップした受様が
攻様の助けで元の世界に帰還するまで

子供の頃から
「もやしっ子」とからかわれ
体力もあるとは言えない受様は
見た目は平凡な大学生です。

黒縁眼鏡でファッションにも興味なく
趣味は研究と答えるほど
真面目な性格でもあります。

しかしながら研究に関しては
天才的と言える成績を残していて
教授たちからは一目置かれています。

受様の研究は
野菜の品種改良に関するもので
栄養価が高く、よく育ち美味しい
ハイパーな野菜作りを目指すもので

研究室に泊まり込む日々の中で
受様は激うま人参を生み出します。

受様は小学性生の頃
怪我をして保護したウサギを
飼育係として世話した過去があります。

そのウサギは凶暴で
受様に懐くどころか威嚇したり、
指を齧ったりしましたが
受様は彼の誰にもなびかない様が
とてもカッコよく見えて
大好きだったのです。

しかし、そのウサギは
ある時野良猫に襲われて死んでしまい
美味しい人参を食べさせたいという思いが
受様を今の研究へと駆り立てたのです。

美味しい人参が出来たのにと
かのウサギに思いを馳せていた受様に
同じ研究室の学生が大学の七不思議で
「死んだペットに贈り物ができる」という
噂を教えてくれます。

心残りのある飼い主が
ペットのいる世界との扉を繋ぐ

半信半疑ながらも図書館に出向き
噂の「魔法の術書」を見つけた受様は
魔法陣を描き呪文を唱えますが
特に何の変化もありません。

ところが翌朝、
受様は大学構内の畑でウサ耳の男達が
畑の野菜を食べているのを見てしまいます。

男達は受様がその野菜を作ったと知ると
今度は受様を捕まえようとするのです!!

慌てて逃げだす受様を助けてくれたのが
ウサ耳のワイルドな偉丈夫でした。

この偉丈夫こそが今回の攻様です♪

攻様は男達から逃げ切るためにと
大学構内の老木のうろに飛び込みます。

なんと攻様の前世は
受様が小学校で可愛がっていたウサギで
受様とともに飛び込んだうろは異界の扉で
攻様の様な元ペット達が暮らす
獣人ワールドだったのです!!

彼らが飛び込んだ後
扉は閉じてしまったらしく
受様は攻様ととも戻る方法を
探す事になります。

受様は元の世界に帰れるのか!?

元ウサギだった攻様が暮らす
獣人ワールドにトリップしてしまった受様が
攻様やその仲間達に助けられる中で
攻様と恋に落ちるという
ファンタジックな擬人化ラブコメです♪

獣人ワールドには
ウサギだった攻様と同じ小屋で飼われていた
ニワトリだった青年もいて
受様は彼らに助けられ帰還方法を探します。

受様は偶然もってきていたハイパー人参の種から
美味しい人参を育て彼らに振舞ったり

美味しい野菜を作る受様と結婚出来れば
喰うに困らないと考えた獣人達から
次々と求婚される羽目になったり

受様を助けるためにと
攻様が"つがい"の名乗りを上げて
求婚者達と決闘を繰り広げたり。

獣人ワールドにやってきた受様は
次々と思いもかけない騒動に巻き込まれ
テンヤワンヤの大騒ぎ!!

攻様はウサギだったころから
受様に好意を寄せていたので
受様が誰かのものになるくらいなら
俺のものにする!!と吹っ切っちゃうので

決闘でボロボロになっても
受様の勝利のキスは誰にも譲らないし
そんな攻様に受様もメロメロなのです♡

そんな2人が結ばれた後にも
更に2人の間には難問が発生して
受様が元の世界に戻った後にも
更なるドンデン返しがあって

エンドマークがつく
最終頁までドキドキがとまらず
とっても楽しく読めました ヾ(≧▽≦)ノ

獣人ワールドの住人達に残っている
ペットとして生きた動物の性質が
とっても愉快で面白いです。

ペットを失う悲しみや
ペットとして生きた事の理不尽等
悲哀もボコって混ぜられていて
しんみりするパートもあって

コミカルな笑いだけじゃない
中原ワールドを堪能させて頂きました。

今回は本作と似た不思議テイストなお話で
榎田尤利さんの『神さまに言っとけ』など
いかがでしようか。
こちらも純で健気な受様です♪

3

ワイルドうさ耳おやじ

先生が、おやじおやじと楽しそうにつぶやいておられたので、どんなんだろうと思ってたら、そんなおやじ臭くは感じなかったです。無精ひげ似合いそうだなーという印象(あ、これをおやじというのか?)。まじのうさ耳姿で人参ぽりぽり食べてるのが可愛かったですが、なぜかそーんなに萌えなかったので萌にしました。本編230P超+あとがき。

大学の農学部で野菜の品種改良の研究を行っている守。栽培していた野菜の分析結果で、狙い通りのものができて研究室の教授や学生から祝福されています。守がこの研究を始めた動機は、小学校で飼育していた兎のシマ。シマに美味しい野菜を食べさせたかったのですが、シマはある日飼育小屋で冷たくなっていたのです。それを思い出して少し落ち込んだ守に、研究室仲間が「死んだペットに贈り物をする方法がある」と教えてくれて・・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
同じく飼育していたコッコ(元ニワトリ)、教授(元ヤギ、爆笑)、ホイ、コー、ロー(元ブタさん)、守に言い寄ってくる方々多数。

**以下は好きだったところ

攻めさんがカッコいいんです。すごくカッコいいんだけどウサ耳がくっついていて、とても可愛いくもあるんです。無精ひげが似合いそうだし、キックボクサーでシックスパックなんだけど、お尻には可愛いぽふぽふ尻尾(笑)。こういうの萌える方はおられるんじゃないかな。

ただ受けさんが黒縁眼鏡の地味目男子で、健気め優しいいい子さんだったので、さらっと読んでしまいました。うーん。飼育係を一生懸命やってた小学生さんと飼育されていたやくざウサギということなので、受けさんがこのような設定になるのはもっともらしいんだろうと思うんですけど、個人的には何か刺さるものがある方が嬉しかったです。研究熱心だったんだから、ちょっと斜め上いったような、オタクな研究者っぽいところをもう少し読めると、より笑えたような気がするんだけどな。コメディ路線を求め過ぎかしら。

最後にクロスノベルスさんの装丁?デザイン?について。
表紙も中表紙もタイトルの「の」が黒い兎耳マークの白抜き文字になってるんです、フォントも可愛いし、中表紙にはうさぎの足跡がてててっとあってめちゃラブリー♡デザインご担当された方、有難うございます♡ちょっと一工夫あって、大好きなんだ、クロスノベルスさん♡

3

ペットと死別したことのある姐さまは読むべき、そして泣くべき

中原さんの新作は、またしても『擬人化もの』だっていうじゃないですか。
それも今回の題材は、数多くのBL作家さん達が書いてきた『ウサギ』。
可愛らしい見た目に反して、繁殖行動が盛んだわ、雄同士で派手な喧嘩をするわの『ウサギ』。
凄く期待しちゃいますよね。
期待通りで笑った、笑った。
でもね、
動物好きの幼少期を過ごした皆さまであれば、過去に経験した心の痛みを思い出すはずです。全体的に楽しいお話の中に混じっている、この一滴の痛みが、物語を奥深いものにしている様な気がします。

主人公の小平守くんは絵に描いた様な『飼育係』ですねぇ。
もやしっ子で温和しくて、自分のことを噛むウサギ、シマのことが気になって仕方がない。自分のお小遣いで人参を買ってきて食べさせようとする。しかも、そのことにとてもウキウキしちゃう。
いるよ、こういう子。
ってか、温和しくはなかったけれど、私もそういう子の一人だったんですよ。

人参を持っていった日、シマは野良猫にやられていて小平くんは哀しい別れを経験します。長じた小平くんが農学部に進んで人参の品種改良に成功した時、一番に思ったのが「シマに食べさせたい」っていうこと。
泣けるじゃありませんか。
そうなの!
子どもの頃に接した動物って、何かある度に思い出しませんか?
「ああやってやれば良かった」とか「あんな風にしたらもっと喜んだろう」とか。

「死んだペットに会える」という大学の伝説を友人から聞いた小平くんは、その方法を試してみることに。そして、ペットとして死んだ動物が暮らす世界に行っちゃうんです。そこでキックボクサーとして暮らしている『ウサ耳イケメン』シマと出会います(『キックボクサー』と表記されていますが、個人的には『ムエタイ』と言った方が私にはしっくり来ます。お話の最中に自分のつがいを賭けて闘うシーンが何度もありますが、これ、見世物になってるんですよねぇ。「こいつら絶対金賭けてるぞ」と思いましたもん)。

『梟はなぜ烏を~』をお読みになった方は解ると思いますが、ここからは中原さんのエスプリが爆発。
なにせペットですからね。色んな種類の『動物人間』がいる訳ですよ。
それぞれの特徴・習性に合わせたギャグが満載。
中原くんのピンチになると風の様に現れて救ってくれるシマの格好良さ(ウサ耳だけどな)も併せて、この辺は是非楽しんでお読みになっていただきたいと!

でもねぇ、シマが現世(っていう書き方で良いのか?)で死んでしまった原因に触れる部分に入ってからは、私、すごく悲しくなっちゃったんですよ。
だって思い出すじゃないですか。死んじゃったあの子とか、あの子とか、あの子とか。
その思い出は、後悔に直結するんですもの。
だから、中原くんが大好きなシマに『彼を殺してしまった原因』を打ち明けられないっていうの、よく解るんです。
……このお話、私基準では一二を争うほどの『痛い』話だわ。

色々あって(お読みください。面白いからっ。で、動物を愛したことのある人なら泣けるからっ)お話は大団円で終わります。
私の感じた痛みは、この終わり方のおかげで甘い疼きに変わりました。
中原さんって、本当に動物が好きなんだなぁ。
途中で途方もなく悲しくなっちゃってどうしようかと思ったけれど、あの子とも、あの子とも、あの子とも、確かに互いに愛があったと思い出して、四つ足野郎に何度もマウンティングされかかったことのある私は、感無量になったのでありました。

あ、最後に、
シマはいつもの中原さんよりも『おやじ度』は低いです。
オヤジスキーではない方も、かなり楽しめると思いますよ。

9

ウサ耳オヤジが格好良すぎるよ!!

こちらの作品ですが、設定を生かした小ネタなんかがもうそこかしこに散りばめられてて、大変笑えるのです。
いちいち「ブフッ」と吹き出しちゃう感じで。
私はとにかく、中原先生のこういうトンチキ系の作品が大好きなんですよ~。
こう、楽しく笑って読めるんですけど、それだけでは無く、しっかり心に残る部分があるのが上手いのです。

今回もですね、最初はとにかく笑えるのですが、そこから意外な事実が分かって切ない展開ー。
からの、「ええーっ!?」となるオチ。
そう来たか!!

とまぁ、とても楽しく読めました。
また、元うさぎの攻めが格好良すぎるので、オヤジ好きの皆様にはぜひぜひ読んでいただきたいです!!


内容ですが、元ウサギのキックボクサー・シマ×シマの飼育係だった大学生・小平による、異世界トリップものでギャグ満載のラブコメになります。
ペットが人間化する不思議な世界に迷い込んでしまった小平。
彼が、飼育係として面倒を見ていた元ウサギのシマと再会し、自身が育てた美味しい人参を食べて貰いたいと言う夢を叶える事。
また、元の世界に戻る為、シマ達の手を借りて奮闘すると言ったのが大筋になります。

で、こちら、しつこいですがとにかく笑えるのです。
ペットが獣人化した世界と言う事で、住民達は皆元ペットです。
爽やかイケメンが元ニワトリでコッコと言う名前だったり、元ブタ三人組の名前がホイ、コー、ローみたいな。
完全に笑わせに来てるがな。

また、絶妙に元の生物の性質なんかを持ってるのが面白くて!
ブタはですね、実は体脂肪率が低くて、凄く筋肉質との事なんですよね。
そんなワケで元ブタのホイ達はモデルを生業にしてたりするー。

そう、元ペット達が、普通に人間のような生活を送ってるのがシュールで笑えるんですよ。
で、攻めとなるシマですが、キックボクサーでフワフワのウサ耳を生やしたオヤジ!!
シマは生前(?)から飼育係の手を焼かせる、かなりの乱暴者だったのです。
そんな彼が獣人になるとですね、懐が深くて頼り甲斐があり、下ネタなんかが好きなオヤジになる。

小平ですが、生真面目でウブウブな大学生なのです。
そんな彼が、オヤジくさいシマに、いちいち下ネタなんかでからかわれてるのが楽しいんですよ。

また、小平の作る野菜がとても美味しい事から、獣人ワールドで彼はモテモテになります。
次々表れる小平への求婚者達を、シマが蹴散らしてくのにニヤニヤなんですよー!!

そんな中、ウサギとして飼われていたシマが死んだ、意外な理由が分かります。
自分がしでかした事に強いショックを受け、罪悪感からシマを避けるようになる小平ー、と言う流れ。
ここまでゲラゲラ笑ってた分、こちらも結構なショックを受けるんですよね。
ホント、小平が痛々しくて・・・。
まぁただ、これのオチが「ええーっ! そうなの!?」と一気に脱力ってトコなんですけど。
思わず笑っちゃう感じで。
うん、これぞ中原作品ですよ。

あとこれは私の勝手な解釈になりますが、この脱力系のオチ。
小平の事を思いやり、シマが嘘をついたんじゃないのかなぁと。
シマは本当に包容力があるんですよ。
彼だったら、それくらいはしそうだなぁとか思っちゃうんですけど。
と、勝手に深読みして楽しむ。
こういう、読者が勝手に想像して楽しむ余地を残してくれるのも、中原作品の素敵な所だと思います。

と、ゲラゲラ笑えてちょっぴり切ない。
そして心に残るー。
とても素敵な作品でした。





14

今回は「ウサギ」

作家買い。最近中原さんは「擬人化」ものを多く書かれているイメージがありますが、今作品も擬人化ものでした。

今回の擬人化のテーマは「うさぎ」です。






主人公は大学の農学部で学ぶ守。
彼は「おいしい人参を作る」研究をしている。きっかけは小学生の時に学校で飼っていたウサギのシマ。

登校中にケガをしてうずくまっていたウサギを保護し、そのまま学校で飼ってもらえるよう交渉して、学校で飼育し始めた。ケガをした部分の毛が抜け、そして時に暴力的な行為をするシマは「ヤクザ」とあだ名をつけられ、悪ガキたちに苛められることも多かったけれど、それでも守はシマが好きだった。

シマと仲良くなりたい一心でおいしい人参を食べさせたかったが、ある日、野良犬に襲われ還らぬ人、ならぬウサギになったシマ。

「シマに美味しい人参を食べさせてあげたい」という動機が、守の研究のモチベーションであり、彼の行動すべてに起因している。

が、おいしい人参づくり、に成功したものの、当のシマはすでにいない。
しょんぼりする守に友人が教えてくれたのは、「死んだペットに贈り物が出来る」という噂。それを信じたわけではなかったが、試しに図書館でそれを試みた守はー。

というお話。

はい。

守はその「死んだペットに贈り物が出来る」という眉唾な行為に成功し、シマのいる場所にワープしちゃうんです。

人間に飼われたことがある動物たち、だけで構成された世界。
そこで、シマは人の形をして生活しています。

が、ウサギの耳としっぽ付き。
そこで暮らす動物たちは、前世の動物の姿が分かるものが身体にくっついている。

中原さんの描き出したこのストーリーの設定に爆笑しました。

こういうストーリーを思いつく中原さん。
天才か。

その世界には、シマと同じく、守の学校で飼っていたニワトリのコッコもいる。
基本的に、守はシマとコッコに助けられる形で、元の世界に戻る方法を模索したり生活していく、といった展開です。

シマたちがいる世界は、基本的に守が暮らす世界と同じ。同じだけれど、そこで守るべきルールも存在している。そういったものに驚きつつも、イケメンであれだけ会いたかったシマと再会できた守は複雑な心境を抱えつつ生活を始めるが。

「人間の暮らす世界」を研究する大学教授がいて、その教授に元の世界に戻る方法を聞きに行ったり(この時の教授の行動が、これまた爆笑を誘います)、「おいしい野菜」を作れる守がこの世界で人気者になり求婚されまくったり、守に求婚してきた人(いや、動物か…?)と守の所有権をかけてシマが闘ったり、とコメディ色満載でストーリーは展開していくのですが。

共に生活していく中で、シマと守の間に育っていく恋心が、萌えを滾らせます。

もともとは人間とウサギ、という関係だった二人が、少しずつ恋愛感情を育てていく。その過程に無理がなく、コミカルな中に潜む萌えが非常にツボでした。

で。
バックボーンもよし、コミカルに進む展開もよし。
さらに、とにかく登場人物たちがみんな等しく魅力的、なんです。

シマ、という男性がめっちゃツボに入りまくりどうしようかと。

こちらの世界でキックボクサーという職に就いているシマ。
強いし、守に対する愛情は本物。しかもイケメン。
「ウサギ」ゆえに性欲が強く、しょっちゅうtnkさんがおっきしている(ここ、爆笑ポイント☆)。

なのに、

ウサミミとウサギのちっこいしっぽがついてるんですのよ、皆さん…!
これが悶絶せずにいられますか?という感じ。

彼の感情に合わせてピンと立ったり、ショボーンとうなだれるウサミミの凶暴なまでの可愛さにKOされました。

そして守も。
ええ子や…。
優しくて、愛情深く、そして思慮深い。

それゆえに、「シマのいる世界」と「守が暮らす世界」という、異なる時空軸で生きている彼らの「これから」がどうなってしまうのかやきもきしながら読み進めました。

なので、最後、彼らが落ち着く先にほっと一安心。
これからも彼らがずっと一緒にいられることを願って。

中原さんはシリアスな作品も書かれますが、今作品はコメディ色が強い可愛らしいお話で、読後気持ちがほっこりしました。

幸村さんの描かれた挿絵も良かったです。

イケメンのシマと、純真で素直な守がイメージにぴったりで、この作品に漂う優しく甘い雰囲気を見事に描き切っていて、萌え度は確実に上がりました。

10

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP