先生の作品はシリアスめなお話が多いイメージだったのですが、
今作はラブコメということで楽しみにしていました。
イツキの元気なキャラとダウナー系のチカの組み合わせ、バランスが絶妙。
それがストーリーにメリハリを与えていてすごく面白かったです。
『恋人』だと言ってもおかしくないくらい近くにいて実際友達以上のこともしているのに、
なぜか関係を変えられないままのイツキとチカ。
どう見ても両想いなのにお互い向き合う勇気が出なくて、どうしても踏み出せないでいるふたりにヤキモキしつつ。
それが相手を好きすぎるがゆえに後ろ向きになっているだけなのがわかってくると、
うまく交わらない気持ちを抱えてグルグルするところごと愛おしいと思える展開でした。
一見イツキのほうが好き度が高いように見えるけれど、実はチカも重たい想いを拗らせているのがこれまたイイ…!
わかりにくい大きな愛って最高だな。と、しみじみ思ったのでした。
そしてドロっとした感情を持っていた過去が描かれていたのもすごく良かったです。
明るく楽しいだけではなくちょっぴりビターな部分を知るとより甘さが増した気がしました。
それぞれ『どうして大好きになったか?』というところは入り組んでいないのでさらっと読めるけれど、尊さはしっかり摂取できてものすごく美味しいお話でした…!
装丁があまりにも綺麗で思わず手に取った作品です。
(手触りもすごく好き)
色合いはちょっぴり物悲しげなんですが、
それぞれの表情からはふたりの間にある温かな繋がりが伝わってくる、そのコントラストが美しい…。
そして中の表紙には物語に関わる楽譜があって、細部までのこだわりを感じることができました。
調律師とピアニストという関係であり、昔からの友達でもある当真とすず。
でもお互いに"友達"以上の熱をこめた瞳で相手を見ていて、どのキッカケでその関係性が変わるのかとドキドキしていましたが…
ふたりに訪れるのは甘い変化ではなく、苦しい過去が絡まったすれ違いでした。
同じ気持ちでいるのは明らかなのに、
過去に阻まれて真っ直ぐに伝え合うこともできないなんて。
何かを選ぶために離ればなれにならなければならいのが本当に切なかったです。
でもその不器用なすれ違いの日々があったことでピアニストとしてのすずは大きく成長し、
ふたりそれぞれの意識が変わるキッカケにもなっていたので読み手としても救われた気持ちでした。
回想シーンはかなり胸クソで、その後もすっごくハラハラしたけれど。
お互いに本心を明かしずっと胸にわだかまっていたモノをようやく手放すことができて、
ふたり揃って前を向くことができる結末になってくれて本当に良かったです…!
彼らを結びつけた「ピアノ」はしっかりとストーリーの真ん中にありつつ、そこに絡めたふたりの想いを知ることができたのが良かったです。
井波先生の繊細な絵柄にマッチしたとても素敵なお話でした。
旅先で絶対よくないことが起こるな。というのは
タイトルを見ただけでも伝わりましたが、
思っていた以上にしっかり"事件"が起こる展開に釘付け。
ぐいぐい引き込まれて一気読みでした。
他の方たちも書かれていますがネタバレなしで読んだほうがよりストーリーに入り込めると思います。
でもお話自体がなかなか入り組んでいるので
もしも先に結末を知ってしまっても
ネタバレ部分を読みながら噛み砕いていく楽しさもあるのかなと感じました。
ただ、ミステリーとしては前のめりになるほど良かったけれど
あまりBLっぽくはなかったかな?という印象です。
というか、それほど恋愛要素を必要としないストーリーだった気もする。
とはいえ、ああいう状況で生まれた恋なのでドキドキできるところはしっかりあって、無理矢理感なく恋愛部分も楽しめました。
全体的にシリアスで重ためでしたが、ものすごく読み応えのあるお話でした。
「いつか自分の店を持つ」という夢に向かい、見習いコックとして日々努力している郁生とそんな彼を気に入っているヤクザとの恋が繰り広げられていくのかと思って読んでいたら、わりと序盤で方向性が変わって驚き。
ふたりの関係が変わるキッカケもなんとなく非現実的で、今どきこんな展開ある…??なんて最初は思ってしまいました。
でも。そこからの距離の近付き方や気持ちの移り変わっていく過程で起こるすれ違い具合がなんとも絶妙で、非現実的に感じていた部分をうまーく萌えに変えていってくれて。
恋愛になんて発展しそうにないところからひっくり返っていく様子に引き込まれまくりでした。
大人たちの意識が子どもに向きすぎてしまうお話は得意ではないのだけど、桜太朗の立ち位置もこれまた絶妙で。
パパ大好き!いくちゃん大好き!で、子どもの可愛らしさをしっかり見せてくれるのにふたりの邪魔は一切しないのです。
家族の温かいやり取りがありながら恋人時間もしっかり!というのは、子どもが登場するお話の理想形だなと思いました。
ちょっぴりドタバタした雰囲気もありつつ、エロありほのぼのありですごく面白かったです。
家事代行のバイトと雇い主という関係を少しずつ変化させていくふたりの日々には、微笑ましさとドキドキがたっぷり。
契約ありきの繋がりなので刹那的なところもあるんですが、幹太の気持ちがはじめから明かされていたことで
変わり者な柳の本心が見えてくるまでの『恋人代行』としてのアレコレを
それほどハラハラせずに見守れていました。
ですが…
それぞれの駆け引きが全然噛み合わないのでお互い相手の想いに一向に辿り着かず、どこまでいっても平行線な関係が続いていくことに段々「あれっ?」という気持ちになってきて。
好きだからこそ一歩踏み出せなかったのもわかるけど、ふたりともあまりにヘタレすぎやしませんかね…。
セックスする度に毎回5万なんて大金が動いてるのも理解できない。例えそれに手を付けていなくても"渡す→受け取る"という流れが繰り返されている時点でアウトな気がしました。
さらにそれを自分らで解決できなくて叔父に泣きついてしまうというところでスッと冷めてしまって。
ぶつかるのが怖くても、そこは自分で線を引く強さを幹太には見せて欲しかったな…。
最終的には無事両想いとなるわけですが、最後までモヤモヤを引きずったまま読み終わってしまいました。
幼い頃の微笑ましいエピソードからはじまるお話だけれど、純粋に「微笑ましい」と思えたのはわりと序盤まで。
幼馴染たちの可愛い思い出の中に豊加のみつへの執着がそれはもうたっっくさん散りばめられていて、怖くはないけれども妙にゾクゾクしてしまいました。
『はじめて厨』だなんて面白い感じに変換されているけれども豊加のソレはかなり振り切れていて、だからこそ逆にどういうところに着地するのかわからなくてすごく引き込まれました。
豊加の気持ちはわかりやすすぎるくらい真っ直ぐなのになぜかみつにはそれが伝わらない。という両片想いあるあるな流れではあるのですが、
一度拗れてから豊加の言動が読めなくなってしまうところがあって。
途中で「あれ…?本当に蒐集したいだけじゃないよな…??」と思わせてくるような策士っぷりに何度騙されそうになったことか(笑)
そんな風にマイナスな方向に考えていているみつの思考に引っ張られるカタチになりながら読み進められたのも面白かったです。
『はじめて』を求める豊加の言葉をどう受け取るか?という部分に振り回されヤキモキしつつ、一番苦労したのは唯人だったのでは…?という感じもありつつ(笑)
周りを巻き込みながらも最終的にはふたりにとってこれ以上ないくらいの幸せに辿り着いてくれてすごく嬉しかったです。
ド直球なタイトル通り、
裏方さん(ステージデザイナー)とキラキラ人気アイドルくんとの恋のお話でした。
あらすじや帯からは濃厚なエロの匂いを感じたけれども、それほどエロい!というわけではなく。
ハプニング的なエロを挟みつつ、ゆっくり優しく育まれていくふたりの気持ちは思っていたよりずっとピュアでした。
そして。
それぞれアイドルとしてステージデザイナーとして、自分の仕事に誇りに持ってその場所に立っているふたりが本当に素敵だったんですよね。
真っ直ぐなふたりらしい恋愛模様が微笑ましくて、わかりやすく距離が近付いていく様子にはニンマリしてしまいました。
微笑ましさがたっぷりなせいか背徳感はほぼないし、なんならふたりの想いは外側にダダ漏れなのが逆に心配になるレベルで(笑)
ものすごく平和な展開なのは良かったけれど、人気アイドルの恋なのでもう少しヒリヒリしたところが欲しかったです。
番外編の足助さんとRoSのマネージャーさんとの優しくて甘い関係を描いたお話も素敵でした。
バイ限定の恋愛リアリティショーに参加した者同士の恋を描いたお話。
誰とも恋愛をするつもりはなかったけれど、頼まれてサクラとして番組に出演することになったトワ。
バイではなくゲイで他の参加者と性指向が違うということもあり、ただ"サクラとして"の役割を果たそうと思っていたはずなのに。
そこで出会った南に少しずつ心が動いていく、というような展開でした。
わりと序盤でサクッと流れるようにセックスまで進むので、ある程度先は見えていましたが
恋リア番組らしく他の人との関わり合いもある中で、少しずつ距離が縮まりやがて核心に辿り着くまでを見守る楽しさがありました。
ただ、それぞれの重たい過去をもう少ししっかり知りたかったな。という感じです。
過去の恋愛でツラい思いをし、それぞれ違う種類の傷を抱えた彼らがお互いを知って心を通わせていく様子はすごく素敵だったのに
過去のことがさらっとしか紹介されていないのでその痛みがわかりにくくて…。
トワの元彼も結局何がしたかったの?みたいな中途半端さがあり、過去の感情とのバランスがちょっと気になりました。
重たさに沿ったふたりの気持ちを知ることができたらもう少しお話自体の印象は変わったかも。
登場人物は多めですが、わちゃわちゃしたところがほぼ無いのはとても読みやすかったです。
いつもほんわかあたたかい気持ちにさせてもらうことが多い月村先生の作品。
yoco先生も大好きなので迷うことなく手に取ったのだけど…
これは思わぬところでだいぶ抉られたなーという印象です。
もう、律の母の言動すべてがムリ。
少しずつふたりの距離が近付いていく様子にドキドキしたり、わりとわかりやすく倫太朗にモーションをかけられても律には響いていない感じにヤキモキしたりと倫太朗と律の恋模様にはキュンとするところがたっぷり。
健児くんの若さあふれる真っ直ぐな感情表現もすごく良かったし、健児くん含めていい関係性を築いていく未来を予感していたくらい素敵だったのに。
律の母親の登場によってこれまでとは印象の違うお話になってしまった感覚でした。
ただただ甘い恋のお話ではなくピリッと痛みのある展開が良いスパイスになっているのは間違いないんですが、あまりにも酷い毒親っぷりにどうしたらいいのかわからなくなります…。
あんな親のもとで幼い頃から自分を押し殺して生きてきた律が不憫すぎて、そして大人になってからもその繋がりから逃れられないでいるなんて、救いようがなさすぎる。
この先何があっても母親の考え方は変わることはないだろうに
倫太朗が母親へ優しくしたり律に歩み寄りを提案したのもものすごくモヤっとして、
ふたりの幸せな着地点までそのモヤモヤを引きずってしまった感じです。
ふたりの恋だけを見ればものすごく良かったのですが、すんなり飲み込むのが難しいお話でした。
ふたりの関係性だけを見れば、
演劇をキッカケに知り合って距離が近付いていく大学生同士の恋愛模様を描いたストーリーに受け取れるお話だけれど、
あらすじにもあるように『ロマンティック・アセクシャル』という大きなテーマがあるので
読み手としても"BLとして"ではない部分で考えるところがあるなと感じた作品でした。
メンタルがボロボロのときに古葉の演技に魅了されて、いわば勢いで演劇サークルに入った末永ですが。
演劇を観て最初に感じた熱を失わずに、いろいろなことを吸収しながら成長していく末永の姿がすごく眩しくて。
時には後ろ向きになったり凹んだりもするけれど、その傍らにはいつも古葉がいてさらっとプラスになる言葉をかけてくれるので
末永の気持ちが古葉に向かうのはとても自然な流れだったなと思います。
古葉の恋愛的指向を理解したうえで彼を好きになって、そして古葉もまた末永に惹かれて晴れてお付き合いすることになるけれど
やはり性的な接触についての問題は恋人同士には切り離せないもので、目を背けたままではいられない場面がきてしまうわけです。
お互いがお互いを思い遣るあまりに距離が生まれるのが本当に切なかったけれど、でもすれ違うのも仕方ないなと思ったりもして…
ふたり同じ気持ちでいるのに『付き合うこと』の意味を求めるような苦しさに何度も胸を締め付けられました。
でも末永は一生懸命言葉を紡いで、過去の悲しい恋に縛られている古葉へ自分たちなりの"好き"を大切にしていこうと届けてくれるのです。
その想いを受け取った古葉とふたりそろって幸せなところに無事に着地してくれて感動…!
涙ボロボロでビシッと決めきれない末永の年下感にほんわかしつつ、
この先も彼ららしいお付き合いを続けていくんだろうなとほっこりしました。
ふんわり優しく進むふたりの関係のなかに、
恋愛的指向というのは様々で、"普通"の中で生きづらい思いをしている人がたくさんいるんだよなぁ。と改めて気付かされるような深いストーリーだったなと思いました。