誰かが「日本では良いとされる小説は、終わり方が読者にその話の続きを考えさせる作品」と言われていましたが、長船先生の「瞞」はそんな作品だと思います。キャラクターのその後や、心の動きをいろいろ考えてしまいました。長編小説でなく、質の良い中編小説を読み終わったような読後感でした。ドラマティックなプロットを盛り上げる美しい絵。漫画や、ラノベでは殆ど見ることのないセッティング。とても個性的で惹きつけられます。明治時代でしょうか?永井荷風の「すみだ川」を思い出しました。作者様の作家性がよく現れた、芸術的な作品だと思います。作品は伝統芸能、延年会から始まっています。作者様の教養の深さが伺えます。BL、もしくは漫画の「質」の向上に一役買った作品、と言ってもいいのではないでしょうか。人間の理性では割り切れない部分が、美しく、悲劇的に描かれています。長船先生の次回作を心待ちにしております!(ひとつ、難を言わせて頂けば、コマ割りをもっと大胆にしてもいいのでは?大塚英志先生の漫画の映画的手法についての説明を読んでいるとそんな気が致します。)
一年前に2、3回読みました。一回読んだだけでは意味がわからなくて。読後感がものすごく、ずーっと忘れられない作品になりました。一年前に読んだときは、環くんのお母さんがとても気持ち悪くて、今後、どれほどの愛情と執着をみせるんだろうと思うと、書いている作家さん、神経すり減らすだろうな、と思いました。3巻目がまだ発売されなくてとっても悲しいですが、作家様、環くんのお母さんに、心を持って行かれないように、気をつけてください。(でも頑張って書いて〜)一年たってまた読み返した時の感想は、「紛れもないホラー作品」でした!環くんのような目に遭うなら、夏のお化け屋敷に何度も入った方がマシかも。志井くんの執着も、今後、常軌を逸するかもしれないし。いや既に、ちょっと逸しているかも。傑作と言うのは読者の感情に訴えるものだと思います。作品から流れ出るキャラクター達の感情が半端ない傑作です。