原作の連載がゆっくりすぎて関心が失速しそうになっていたところのこの9巻の発売。買ってよかった。声にしてもらって物語が頭にはいりました。
とはいえ起きている事件そのものが、影で起きていることが多くてしかも何重もの利害関係があってわかりづらい。でも確かに今の裏社会はこんな感じなのだろうと。
登場人物は、メインのお二人のほか、比較的新しいキャラの上田耀司さんの綱川、増田俊樹さんの神谷に加え、興津和幸さんの七原、大川透さんの三角、佐藤拓也さんの天羽、安元洋貴さんの影山、小野友樹さんの久我と懐かしい初期メンバーの健在ぶりがうれしい。声優さん全員がキャリアも実力もある主役級で超豪華。短い登場シーンでも役作りが光ってます。
で、新垣さんの矢代がどんどんエロくなるのは何故?
9巻冒頭からいきなりぶっ飛んでおられますので、8巻に続けて聴くことをお勧めします。
それにしても新垣さんはますます巧くなられていますね。
第1巻でも、巧い!誰この人?、と思いましたが、この作品においてはBLにおける、というより対話劇における表現が前人未踏の境地に到達されており、歴史が作られる瞬間を目撃した感動を覚えました。
そういえば第1巻のCDと、同じ内容のアニメ版と比べても違いました。
たとえば「七原、出てな」というセリフ。後者のほうがずっといい。
そんなちょっとしたところを変えるのにどれほど研究されたことか。
今回のキャストトークではいつになくハイテンションで、本作の収録を迎えるまでの役作りの集中の大きさが伺えます。
羽多野渉さんの百目鬼は相変わらずですね。
あの低音、安元さんのビロードのようなナチュラルなバスではなく、羽多野さんが創造した百目鬼の声なのでしょう。人工的な声だからこそ感情を殺せていたのでしょうか。これまでは羽多野さんと百目鬼の声が同じ人だと信じられなかったのが、今回の百目鬼はかなり感情を表しますので、羽多野さんの声だとわかるところがけっこうありました。
大川徹さんと上田耀司さんの、このドラマではなくてはならない「本職」の感じ。
お二人の凄みが怖いよ。ここに高瀬右光さんがいらっしゃらないのが寂しいです。
対して安元さんの影山の声は温かく、小野さんの久我は幸せそう。この物語で数少ないカタギの人が出てきたとたん、陰鬱なストーリーの中に光がさしたようでほっとしました。佐藤拓也さんの優雅な天羽の声もちょっと聴けてよかった。
そして興津和幸さんの七原が久しぶりの活躍。七原はもう30台なかば過ぎでしょうか。明るいだけでなく少し落ち着いて頼りがいがある感じが出てきてましたね。決して三枚目ではなく、とてもいい男になってきたと思います。女性目線で見ても、お付き合いしたら楽しかろうなあって思える唯一のキャラ。矢代も彼をかなり気に入っているから常にそばにおいており、頼りにもしているのに乱暴にあつかうツンデレ感も、らしくて良かった。
今後、これほどの技量のベテラン声優さん達が一堂に会して阿部信行さんが演出をするBL作品なんて、この先もうないかもしれません。原作が続けばたぶん10巻以降のCDも出るのでしょうが、いつになることやら。キャストの皆さんが揃ううちにぜひ原作もCDもコンプリートしていただきたいものです。
同業者どうし、付き合いの長い人たちどうしの狭い人間関係でのお話で、突出した人物がいるとか、すごく劇的なことが起きるとかじゃないけど、会話の絡み方が絶妙、キャラ設定のバランスもよくて、それぞれの個性が声の力でしっかり表現されているし、4人か5人で話すところもキャラが立っていてわかりやすかった。
要するに嫌なところが一つもなくて最後まで気持ちよく聞ける作品でした。
まず主人公の作家の成瀬(平川さん)が男らしく潔くて、至極まっとうな倫理観で、しっかりと自分を持った知的な人物だということ。
つぎに変な女性モブが出てこないこと。そういうときはおネエキャラが一人からむとバランスが良いよね。
そしてメインカップルの出会いから現在まで、それぞれの心情の変化が簡潔かつ要点を抑えて語られていて、しかも会話のつながりがとても自然でBGMも心地よい。つまり脚本と演出がいいんだと思う。
エロも必要かつ十分。
小品だけどリピ必至の佳作です。
こいうのを聞きたいんだよね。
本命カップルに当て馬一人加わった短いドラマが4つということですね。
4つの恋話を簡潔にまとめてあって前のお話のキャラが次の話をつないでいるから、一話完結でありながら全体がまとまった「リンクス」のような巧みな構成。
ラブストーリの一つずつが短いので、ただでさえ美声祭りのうえ、どなたも凝縮された好演を聴かせてくださってます。どのお話もハピエンでBGMも素敵、嫌な奴が一人もいないので聞きやすいです。
野島兄さんの魔性のエロさはむろんのこと、安元さんの落ち着いた低音のなかに揺れる心の表現、立花さんの泣きながらのあれそれ、羽多野さんのすんごいやさしさ、ピュアな梶君が可愛く泣きじゃくれば、鈴木さんは大人っぽい屈折をみせ、岸尾さんは初々しく、臆病な鳥海さんは振り幅最大限の二重生活(夜は滑稽なおネエに化けて傷つきやすさを隠していたのね)、なにより傍観的な立場の女の子(ヨーコ)が賢くて優しくて魅力的なのがとても好感がもてました。ラストのお話では、当然ネコだと思われていた童貞美少年が寸前で巨根のバリタチだったことが判明、コミカルに締めてもらいました。皆さん、ごちそうさまでした)
主演二人の声優さんの好演で、穏やかな佳作になっていますね。
だけどこの作家さん、女性モブを出してきたとき不必要に悪く描きますね。
ひどく幼稚か、打算的で性悪に。ほかの作品でもそう。
本作では、主人公の一人が別れた元カノと偶然に会って、彼女がいわゆるハイスペックな男をつかまえて結婚することになった話になり、「荷物を整理していたら、付き合っていたときにあなたに借りた本が出てきたけど捨てたわ」と言い放ったところが、あとに引くぐらい不快でした。身辺整理のときにひとに借りたものを誤って捨てたのだったら、まずは新たに買って返すことを考えるべきです。故意に捨てたのだったら忘れたふりして黙っていればよいし、正直に言うとしたらそこで謝罪するものです。まともな大人の世界ではそうです。だからストーリーでは「本を借りっぱなしだったわ、ごめんなさい。返さなくちゃ」「そんなのもういいよ。捨てといて。」でよかったはずで、不必要です。コミックでは大して気にならくても、音声で聞いてしまうと記憶にそこの部分の不快な印象が刻みつけられました。この作者は女性に恨みでもあるのでしょうか。視聴者のほとんどが女性だということを忘れているのでしょうか。この一点で、作品の後味が非常に悪くなってしまいましたので、CDは早々に手放しました。
巻末フリトでは、声優の皆さんは関西弁の出来不出来を気にしておられましたが
当地人の私の意見としては・・・上出来
関西弁も多種多様、ミナミだから「大阪弁」ですね
大阪弁もピンキリです。
一番上品な大阪弁は北船場の旦那衆の言葉、米朝落語のような。
辰巳(cv 大川透さん)の大阪弁の発音はヤクザにしては上品、そしてセクシー。言葉の選び方や凄むシーンで品を落としてヤクザらしい下品さをチラ見せしてます。ちょっと可愛く甘い響きもあって年下感も感じます。魅力的な辰巳でした。
対して悪役の馬場刑事(cv 古澤徹さん)はかなり下品で聴いててしんどいくらい。
神崎(cv 浜田賢二さん)はスマートな山の手言葉で、ちょっとアンニュイな美人感と育ちの良さが出てます。
辰巳の腹心、平(cv 成田剣さん)は東京弁というより標準語で、切れ者感が出ていて、辰巳の火に対し水のようにコントラストがついてました。二人で会話するとことは多いし、同レベルの美声でやりとりされたら混乱したでしょうからこれが正解です。
他の方たち、河野裕(高井賢治)は若々しく可愛気があり, 宝亀克寿(向坂)は渋く慈愛を感じさせ、多少は演じている感があるくらいで、大阪弁はごく自然に聞こえました。
花輪英司(カオリ)はオカマで水商売で大阪弁、とハードルが高かったでようですが、多少は不自然とはいえ、そもそもが不自然なキャラですからOKです。
ドラマCDで出てくるのはトンデモ関西弁や、関西弁キャラ違いの残念なものがほとんどのなか、この作品はかなりの上出来で、引っ掛かりなく心地よく聞けました。
これで一人も関西出身の声優さんがいなかったとは驚きです。
よく研究されたんですね。
プロデューサー・音響監督の阿部信行さんで検索して見つけたCDです。
BGMも声優さんともに豪華で丁寧な作りです。
この森川さん、低音で寡黙でエロ怖い。ドSかと思えば妙に優しい。冷たいと思いきや熱い。声を張るところが少ない分、森川さん持ち前の気品と威厳と美声がもの凄いことに。対する寺島さんも森川さんにひけを取らないほどに上品で若々しい美声です。そこへ三木さんの声が絡んでくるわけで、三人とも発音がきれいなこと、耳福でゾクゾクしました。
羽多野さんと鈴木さんは、この作品では可愛く軽やかに決めておられて好感が持てます。千葉一伸さんも少し窶れ感のある渋くもエロい脇役で印象に残りました。
また、この作品は脚本の言葉遣いがきれいなので聴きやすかったです。
BGMも秀逸でした。オリジナルなんでしょうがなんかずっと聴いていたくなりました。
ていねいに作られた、聞きごごちのよいCD。
嫌な奴が一人もいないし、女性キャラも魅力的、
エロが少ない分、ピュアで上品は仕上がりです。
メインの一人はフォトグラファーの天瀬で、声は水中雅章さん。聞いたことがない声優さんだと思ったら、これがBLメインのデビューだそうで、この作品を起点として将来どう化けていくのか楽しみです。素敵な作品でBLのスタートが切れてラッキーでしたね。ちるちるの声優データベースにはまだお名前がなく情報修正ができなかったのですが、私の自作の声優データベースでは、あいうえお順で三木 眞一郎さん、水島 大宙さんの次、緑川 光さんの前となりなかなかのポジションです。
キャラの天瀬はフォトグラファーですから写真で心象や愛情を表現するところがあり、もう一人のメインキャラ、デザイナーのすばる(きれいな名前です)が大きな目をくるくるさせる愛らしさや車いすでの動き、彼を抱きあげる天瀬の力強さなど、絵があったほうがわかりやすいです。コミックの絵のカット割りも映画的でとても良いので、原作を追いながらのCD鑑賞がおすすめです。
メインの声優さん、安元さんも佐藤さんもいいお仕事されていていました。成熟した社会人の話しぶりは落ち着いていて、二人の会話は聴きごごちが良かったです。双方とも同じくらいスペックが高く男らしいキャラクターのカップリングは好みなので、それも良かった。
けれど二人の仕事上の立場やステキ度を説明するためか、あるいは引き立てるためなのか、周囲の女子社員モブがあまりに浅はかで、偏差値低い女子高校生かというくらい知性が欠けているのはウザすぎました。これは原作段階からなので、作者は会社勤めしたことないのだろうかと思いましたが、それにしても働く女性を馬鹿にしすぎて不快です。世間にこんな女たちしかいないなら、男に走ろうかというもので、作者はそういうことを言いたかったのでしょうか。
結婚を控えた若い女性が婚約者のためのプレゼントの買い物を他の男(南海)に付き合わせるというところも、あまりに軽率な行動で意味がわかりません。彼氏以外の男と楽し気に街歩きしているところを人に見られてどんな噂を立てられるか。実際それを北條が見て南海の新しい彼女と誤解するわけだし。北條の元カノは頭は悪くなさそうでいくらか大人のイイ女のようでしたが、おためごかしと悪趣味な興味をむき出しにして無遠慮に元カレの新たな恋愛に首を突っ込んでくるし、でもそれがないと二人の関係が進展しないわけで、つまりウザい女たちが、慎重になりがちな年ごろの男たちの物語を動かす構造でした。そういうのはサラリーマン系BLではありがちで、原作だとそれほど気になりませんでしたが音声にすると女声がキャーキャー、キーキーでひたすら耳障りでした。男声部分はまた聴きたいけれど女声部分は二度と聴きたくないからスキップして聞き直そうと思いますが、面倒だからリピしないかもしれません。女性声優さんにはお気の毒ですが。
この作品に限らず、男性メインを説明し引き立てるために女性を嫌な奴や愚かしく騒がしいモブに演出する安っぽい作りはもうやめて欲しいと思います。メインの四十路カップルの設定はとても良かったから、ほかにも魅力的な男性サブキャラを配して話を動かせたでしょうに、もったいない。現実の女はそんなにバカでも無神経でもありません。女性に対する侮辱的表現です。これを聴いた女性視聴者が嫌な思いをするとか、制作側は考えないのでしょうか。
密かに好きだった男Aに失恋したことを機に、新しい男Bと出会うという話はありがちです。Bとお付き合い的なものが成立したところで元彼Cが出現してBに嫉妬させ、Aも実はまんざらでもなかったようで、A,B,Cの全員がイケてて全員が自分に惚れるけれど、惚れられたほうは曖昧な態度で三人の男を振り回す、というお話です。受けに感情移入しがちな女性読者にとっては大変おいしい立場に酔えるヨロメキ(オルタナティブ)ストーリーですが、受けの水原という人物、考えることや行動に男らしさが全くなくて、これなら水原を女性にしても同じ話が成立します。しかしもし水原を女性に設定していたら、女性が最も嫌う女となっていたでしょうね。ヨロメき迷うのは人生にあることだし、曖昧な態度で男たちの関心を引いておいて天秤にかけようとするのは恋愛適齢期の女の本能的な打算で、女性が有利な条件で子孫を残すために備わったサガですから仕方ないところもあります。しかしそれを男の設定でやるとひどく女々しく小狡いので、私はこのような人物は嫌いです。とはいえお話の運びがうまいからそれなりに面白く読めました。
大正浪漫の雰囲気をよく表現されており、主役お二人の安定感はむろんのこと、この作品を特別なものにしているのは、円城寺伯爵を演じられた一条和矢さん。この方のお声は相変わらず凄かったです。色気も技術も備わった今を時めくトップクラスの声優の野村さんと興津さんのさらに斜め上を行く、神秘的で破壊的な超絶美声で退廃貴族を演じておられ、神託を告げるようなその声にこそ幻惑されて催眠術にかかるのではないかと思いました。
聴きところが多い分、少々苦言もあります。本作は時代もので、主たる登場人物はいずれも上流階級や知的エリートなのだから、言葉遣いはクラシックで上品であってほしい。「十二月いっぴ」はないでしょう。「いっぴ」って何?「ついたち」と言っていただきたい。「見れない」などの「ら」抜き言葉もキャラの知性と時代感が吹っ飛んで一瞬で興ざめ。これは原作どおりなのですが、音声化するとこういうのが悪目立ちするから脚本段階で直していただきたいものです。
とはいえBGMが独特で心地よいし、ストーリー性とエロのバランスもよく、一条さんのお声を久々に聞けたので元はとれたと思います。