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純文学と官能小説はある意味表裏一体、ただこれはBLではない!

かの有名な団鬼六先生の原作を、小野塚カホリ先生が漫画家した作品。
思春期の残酷性と性への動揺と混乱を、荒唐無稽でありながら空恐ろしい現実味をもって描かれています。

こんなこと、自分の人生には起こらなかった。
でも、でも―――
起こり得たかもしれない―――
もしどこかで別の選択肢を選んでいたら――――

主人公「私」の菊雄への愛は確かにあるとき存在した、ただ「私」は若さ故彼を相手の本質を見ずに偶像化してしまっただけ。そして若さ故醒めるのも早かっただけ。
身体にべっとりとまとわりつくような高湿度の菊雄の想念、執念と愛は、不快と隣り合わせ、むしろ不快を含んだ日本の美だなぁと思う。

性春失格 コミック

カシオ 

鬼才の実力を最大限には活かしきれなかった作品

万人受けはしないであろう、そして天才でもあり実力派でもあるかもしれない、しかし鬼才という呼び名が一番相応しい、そんなカシオ先生。
やる気がないかのような力の抜けきった雑な絵。定規など使ったことないかのような背景の描き込みに、飽和状態の現代のけだるさを漂わせた線の細い少年たち。力の抜けきった絵でありながら、コマ割りは秀逸で、人物の感情表現も多彩。しかし、カシオ先生の本当の実力と個性は文章。

その鬼才が新境地を開いたのが、前作「三上くんのおもちゃ」。エロだけではなく、何か退廃的で背徳的でありながら、とても楽しい佳作でした。
その評判を受けて、なのか、またピアスシリーズで描いてくださったのが今作。とても楽しみにしていました。書名は評判は悪いようですが、文学作品や文豪へのオマージュが時折みられるカシオ先生らしいな、と思いました。
しかしながらカシオ先生は話のスケールをページ以上、そして掲載雑誌のレベル以上に広げるきらいがあり、ここでもそれが如実に表れています。端的に言うと、ページ数が足りない。広げすぎた風呂敷が畳まれずに終わってしまったかのようです。広げた風呂敷はとても魅力的ですので、とてももったいないと思いました。

カシオ先生には是非単巻ものではなく、続き物を描いていただきたいです。きっとBLの枠にとどまらない深い話を書いてくださるはずです。もしくは、制限がゆるくなるのか短編の印象はいつもとても良いので、短編集もまた読みたいと思っております。この作品に収められている、「本当にあったエロい話」も少し間抜けな題名に相応しくない、シュールで味のある作品でした。

まさお三月作品をぜひもっと!

まさかの陰鬱な病み展開の様を呈してきたテンカウントが異彩を放っていましたが、全体を通して比較的幸せな気分で読める印象。

まず、まさお三月先生の連載が終わってしまうのが、とてもさびしい。珍しくカラーページがあるということで楽しみにしていました。もうこのために買ったと言っても過言ではないほど。カラーでも相変わらず、ミニマリズムな絵でした(笑) 背景とかあるのかとか期待した自分に、笑えました。いつも通り安定感があり、まったりと幸せな作品でした。独特の線の少ない白い絵の中に踊るチャーミングなキャラクターたち(しかし美形)はするめのような味わいがあり、コマ割りなどの進行もとても分かりやすいので、好きな作家さんです。ぜひすぐに連載で帰ってきていただきたいです。ディアプラスでなくてもかまわないのですが、どこでそのような情報をゲットすればよいのでしょう・・・?

そしてトリ子先生の「高島孝一郎の理想の恋人」が破壊的な面白さでした。こんなに笑わせていただいて、ありがたいことです。このままギャグで突っ走っていただいてもいいのですが、恋愛模様になっていくのかな? いや、でも一向に目覚める気配のないEDの局部、まさかの修正無しに、まさかの顔付き。取り合えず今のところは全力で、この作品を推したいです。

テンカウントは、いつの間にかすっかり病み系に。
城谷さんは、性欲と自分の感情の境目がどんどん曖昧に、というか生命エネルギー全てが性衝動というアウトプットに向かってしまっている状態です。これはもう精神科の領域では・・・。しかし、生命エネルギーとは性衝動であるのも事実、彼がこの莫大なエネルギーを今のようにネガティブに爆発させるのでなく良い方向につかい、黒瀬くんとふたりで仲良くしていけるように願います。

「生徒会長に忠告」はやっぱりページが少なすぎて、前回で何が起こってたか私には思い出せないような状態です・・・。すごく巧い方なので、単行本だととても楽しめるんだけどなぁ・・・。

最高に格好悪く等身大のふたりの恋の序章が終わった。

 同じ日高ショーコ先生の作品である「憂鬱な朝」と合わせて、BLコミックの最高峰であると思っていました。この作品には、恋愛事情以外の困難が多発することもなく、起承転結も非常に緩やか。飽くまでも、重きが置かれているのは、主人公二人の心の動きでした。二人の心の成長するスピードは違いましたが、最終的には二人寄り添い歩調を合わせて歩んでゆく未来を予感させ、とても幸せに満ちた作品となりました。
 10年後、20年後にもBLコミックの金字塔として残るであろう今作、何が凄いのかというと、基本的に設定に特筆すべきところは特にないし、特に劇的な出来事も起こらない。でも目を離せない。登場人物全員のことを忘れられない。男性同士という点を除けば、自分に、隣人に起こりそうな、そんな等身大の恋愛。BLに多い大正時代でもなく、スパイも出てこないし、性虐待等もないし、登場人物全員善意を持った普通のひとたち。
 蓉ちゃんはご両親の死について疑問を持っているし、心を閉ざしがちだけれども、本人なりに頑張って生きている。桜井さんは、仕事に明け暮れ、疲れてよれよれで、おじさんらしく保身に走ったり、孤独感を感じていたりする。
 そんな二人のエッチシーンも最高に格好悪い。ロマンチックに、そしてスマートにエスコートできるひともなく、右往左往でなんだかえっちらおっちら。でも初めてって、確かにこうなんですよね。

 神評価と迷ったのですが、萌萌評価にさせていただきました。その理由は主にふたつ。すっかりひねくれてしまった私には、旧家、そしてもう20年来密接なクローズドサークルのようになっていた柏木さんや吉富さんもが赤の他人である桜井さんをこんなにすんなりと認め受け入れるか疑問、ということ。菖太のようにしなやかな若い魂を持っていれば、理解できるのですが。勿論柔軟な考え方の大人も大勢いらっしゃいますし、基本的にこの作品の登場人物は皆善人なのですが、ひとりぐらい最後までもっと抵抗してもよかったかなと思います。ふたつめは、こんなに絵が主軸になっている作品なのだから、父親の絵を隠さないでほしかった。どんな作品であったのか読者に委ねたのはわかりますし、漫画で絵画を表現するのは難しいとは思いますが、一度も絵画が登場しないのは消化不良でした。桜井さんが語る絵についての言葉も、上滑りするようです。私だけでしょうか。絵にもっとも顕著に、父親と息子の確執、愛情、そしてそれぞれの人生が現れると思うのですが(そしてそういう設定だと思うのですが)、それが一度も描かれなかったのは残念です。

 しかしながら、ここまで自信を持っていろんな層にお勧めできるBLもそうそうないですし、まれにみる名作であることには変わりないと思います。このような作品がまた現れることを期待しています。

営業二課っ! コミック

金井桂 

底抜けに明るくて前向きで可愛い会社員二人の恋物語

 金井先生の作品は画面が文句なしに華やかで明るいので、いつもなんだか買ってしまいます。今回の表紙は、これまでで最高に可愛いです。丸まっているほうが先輩で攻めの東條さん。寝そべっているほうが、咲坂さんです。二人ともとても楽しそうで幸せそうですが、内容も作品全体を通してこのような晴れやかで若い活力に溢れています。悩みもキラキラとしていて、なんだかまぶしい二人です。作品としての深みには欠けるのかもしれませんが、このような恋愛に触れたら自分まで幸せを分けてもらえそうです。

 少し釣り目で目元涼しげな文句なしの色男、東條さんですが、中身も文句なしに男前です。とても頼りになり、誠実で全力でぶつかってはくるのですが、BLにありがちな「引っ張っていってやる」というアルファメール的攻めではありません。
 受けだけが、攻めの幸せや未来を奪っている、と身を引いたり悩み勝ちなBL世界の中で、満面の笑顔で自分も同じ立場だと答えるシーンは、憎らしいほどにすがすがしく格好よかったです。これぞ男の中の男。このシーンは、圧巻でした。
 その後の濡れ場がのりきらず、むしろ必要なかったかなぁと思ってしまいましたが、この愛おしすぎる二人のポジティブなエネルギーに当てられて、皆さんにも幸せな気持ちのおすそ分けが届くはず。

京極堂+御手洗潔+ホームズ+BL

 なんとも素敵な表紙に、どう転んでも失敗しようがないだろうと思えるほど魅力的な設定と内容紹介。腐女子として、推理小説マニアとして、そしてホラーや怪しいもの好きとしてすぐに食いつかずにはいられませんでした。
のはずが、電子書籍のほうで立ち読みしてみた折に、失礼ながら絵の乱雑さが目につき購入断念。きっと面白いだろうになぁ、とは思っていたのですが・・・。2巻も発売されたこの機会に良い口コミを信じ、両巻そろって購入してみました。
 結論から申しますと、なぜもっと早く読まなかったのだろうと思える良作でした。BL要素は今のところほのめかす程度ですが、しっかり存在しています(これを一般男性向けの商業誌でやると、混乱して男性は敏感に反応すると思います。しかし、ミステリー好きの男性陣からもきっと支持されるはずの文句なし面白さです)。ここまで面白いなぁと思えた作品は近頃なかったので、本当に幸運でした。
 京極夏彦の怪奇趣味に、島田荘司の荒唐無稽な死体と美男、ホームズのパートナーに対する愛着を超えた執着、これが私たち腐女子のために昇華された、唯一無二のBLです。これらの要素に、特にオカルトや怪奇趣味に興味がない方には本当はお勧めすることはできませんが、個人的に怪奇趣味と腐女子は親和性が高いと思っていますので、皆さんに是非読んでいただきたいです。私のように百戦錬磨のホラーファンでも、背筋が寒くなるようなコマが何個かありました。主人公ふたりはもちろん、周りを固めるキャラクターもとても魅力的です。特に、ラスボスとなりそうな人物は非常に魅惑的で、人間の魔力はやはり目にやどるのだなぁと思わせるのです。

とても耽美。しかし、ギャグだけがとても残念

 表紙詐欺なんて言葉もありますが、金井先生に限っていえば、むしろ中身のほうが壮麗です。すみずみまで描き入れられた背景や少女マンガのようなトーンや効果、どのページをとっても手抜きのされたページはありませんし、白っぽいページなど存在しません。キラキラとした、いつも花々が咲き誇っているような、みすぼらしさなどという価値観など存在しないかのような、そんな少女マンガのような世界にどっぷりとひたれます。物語の内容は王道ですが、進行やコマ割り等もさすがプロの技と思わせます。つまりは、基本的には非の打ち所のない作品です。
 のはずが、こちらが盛り上がってくるところで突として挿入される、チビ絵やギャグにかなり気を削がれます。受けの兄のほうは基本的に表情にとぼしく憂えて幸薄そうな美少年なのですが、頻繁にそのキャラが崩壊しとても混乱します。これさえなければ、切ない義理の兄弟の許されぬ恋愛ものとして本当に楽しめるのですが、何せキャラクターを確立させる肝心な物語の初め部分に、こちらが混乱するギャグが散見されるのでとても残念でした。試しにギャグ絵の部分をとばして再読してみましたが、このほうが絶対にいい。金井先生は少しライトな空気も欲しかったのだろうとは思うのですが・・・。
 表紙をご覧になって絵に惹かれた方は、是非読んでいただきたいとは思いますが、差し出がましいことを言わせていただくと、ギャグ絵の部分を流し読みにしていただけると、更に楽しめるかと思います。

熟考の末、限りなく「しゅみじゃない」に近い神評価

 率直な感想を申しますと、2巻でもその傾向は見られたのですが、ここ3巻にきて、私をはじめきっと大多数の読者が初期の時点で想像したであろう方向性とは間逆の方向へ舵を切られ、あれよあれよという間に物凄い速度で突進され、大海原へ振り切られ放り落とされたような気分です。1巻の時点では、とても丁寧でゆったりとした心理描写に重きをおいた作品なのだと感じ、どのようにして不潔恐怖症という二人が恋人同士になるにおいて決して小さくない障害に取り組んでいくのか、こちらも腰をすえて見守りたいと思っていました。もちろん何年かかっても最終巻までついていく覚悟でした。
 ところが、城谷さんが黒瀬君にすっかり心を奪われ、黒瀬君が腹をくくって城谷さんを口説くと決めたあたりから、雲行きが怪しくなってきました。初期の「生徒会長に忠告」に近い作風になってきたような。そうです、齢30過ぎにして城谷さんに高校生程度かそれ以上のように性欲があるのです・・・。他の作家先生の作品と比べるのはとても失礼でマナー違反なのは承知で、ある一腐女子の戯け言と思って聞いていただきたいのですが、私は「生徒会長に忠告」の大ファンでもあるので、ある意味歓迎すべき方向転換でもあり、大変混乱しています。ただ、骨のある題材を持ってきたな! と思わせた不潔恐怖症をここまでなおざりにされてしまうと、正直戸惑いの気持ちが消えません。
もし宝井先生に濡れ場においてのこれほどの画力がなければ、「しゅみじゃない」ボタンを期待を裏切られた遺憾の想いと共に連打したと思うのですが、悲しきことに腐女子として、美男子のあんなに良い表情を描かれると絆されてしまうのです。しかも私はキスシーンが大好きなので、中盤の二人の唇が触れそうなあたりなど、そこの数ページだけスクリーンセーバーにしたいくらいです。
 城谷さんだけでなく、私も一読者としてジレンマです。人間ドラマを描いてほしい、こんな方向性に進んでほしくない、でも城谷さんがあまりにも扇情的で麻薬のようで惹かれずにはいられない! 
 暫定的に官能的すぎる城谷さんに神評価をし、腐女子として腹をくくり、二人の濃厚なキスシーンを見れるまで追いかけてみようかと思います。ただキスシーンを見る前にとっくにライトな性行為がきてしまい、遂にはお尻開発がきそうで、何のプリティウーマン? 罰ゲーム? と思っております。私は頑として、キスを希望しております!

 蛇足ですが、最終話は雑誌ディアプラスに掲載されてから1ヶ月もたたずに単行本になっているのですが、宝井先生はこのようなスケジュールで思い通りに仕事をこなせていらっしゃるのでしょうか? 他の連載も抱えていらっしゃいますし、イラストのお仕事もなさっているようなので、とても気になります。出版社としては大人気作家を最大限に働かせたいのはわかりますが、読者はいつまでも待ちますので、無理のないペースで仕事をしていただきたいです。

玉響 コミック

ゆき林檎 

匂いたつようなあでやかさ

漫画というものの本質はプロットだけではないのだなぁと思うのです。小説の本質がそうでないように。プロットに一ひねりも二ひねりもあり読者に息もつかせぬような優れた大衆小説家も、何の変哲もない文章、そしてストーリー進行の中から美が薫りたつような小説家もいる。漫画家もしかり。
ゆき先生は、少なくとも最近の傾向としては後者のほうの方向性に向かっていらっしゃるのかな、と思いました。そして実際、特に目新しい設定があるわけでもなく、読後のカタルシスがあるというわけではないのに、この玉響はなぜか心にとどまり忘れられない作品です。

表紙も題名もとても印象的ですが、読み返さずともすぐにまぶたに浮かぶシーンが沢山あります。ゆき先生のカメラワークは本当に唯一無二の秀逸な美しさで、その場所の気温や湿度、匂い、手触りまですべて体感できるかのようです。この個性にはすごい運動量があり、難もあると言わざるを得ないこの作品を最後まで立ち止まることなく引っ張っていきます。

主人公二人はとても美しく、特に麻倉くんのあでやかさには惚れ惚れします。二人が控えめに寄り添っているところなどは、実際のスキンシップよりもずっと退廃的で後ろめたいむせかえるような色気がにおい立ちます。布団の中で唇で首筋に触れられたところなどは、もう色気に当てられそうでした。もちろんその後の本格的な情事シーンも官能的ではあるのですが、あのキスシーンが官能という意味でのクライマックスだったかな、と。

ふたりは最後に幸せにふたりで暮らすようです。ふたりの幸せは、彼らが残念ながら傷つけなければならなかった沢山の人間の傷心と涙の上に成り立っています。そこには何の救いやフォローもなく、特に女性の扱いについてはご不満がある方もいらっしゃるようですね。私の個人的な思いとしては幸福を求めるならそれ相応の覚悟が必要だと思いますし、結果的に残念ながら誰かを傷つけることは不可避だと思います。大抵の人間は、最初からなるべく誠実であろうとするでしょう。でも同時に沢山の人間も、それと同時にこの二人のように優柔不断であったり、沢山の他人を傷つけ、ないがしろにしてしまうことがあると思います。その後の長い人生では誠実に生きた二人に、私は祝福を送りたいと思います。

最後のカットである光の差した和室は、涙の出そうなほど美しいものです。動きの描写などデッサンが安定しない箇所もありますが、BLにとどまらず幅広いジャンルでそのセンスを活かしていただきたいと思える稀有な作家さんです。次回作が楽しみでなりません。

成長痛 コミック

梶ヶ谷ミチル 

浮世離れしてはいる、でも何とも比較しがたい魅力があります

批判を恐れずに言うと、私にとってはジブリに近い空気です。
こんな純粋な発言する子供いないよー、こんなリアクションしないよー、とそこここで思う。でもそれを振り切る、神々しいほどのモメンタムがあると思います。

この作品は、合宿で行った田舎の年上の男子高校生に恋をしてしまった、まだまだ幼い高校一年生のお話です。時間がたつのは早く、物語が終わるころには相手は大学へ進学し、主人公は高校二年生になります。

主人公すばるは本人が自覚してないまでも明らかに、いい意味でいもくさいのに小悪魔的な魅力があふれる夏目先輩に一目ぼれをしてしまい、コケティッシュな先輩の気持ちはわかりにくいものの、たった数日の間に二人の間には不思議な絆が生まれます。この未来への期待や緊張を秘めた、でも未だ煮え切らない二人の絆を、夏目先輩の文通をしたいという浮世離れしたリクエストにより、二人は紙とペンにより深めていきます。色々な困難は途中であるものの文通が途切れることはなく、一年のうちに何度か再会を果たします。

性的な興味と愛情を夏目先輩に持っていることを自覚し、それに戸惑いどうすることもできないでいるすばるを、夏目先輩は不思議な距離感でずっと暖かく受け入れて寄り添っていきます。時には寄り添い、時には距離をおいて待ち、時には自分から働きかける。自身も戸惑っているにもかかわらず、すばるを想い、包み込むようなその様子に、こういうひとこそがステレオタイプとはいえ日本人の美徳であり、所謂灯台のような女であり、やはり生涯愛される人間なんだろうなと思わざるを得ません。

夏目先輩には本当に語りつくせない魅力があります。彼にとっては注意や興味、愛情がすべて外に向いているのでしょうか。出身地や年齢の差、同性であることなど気にするふうではなく、しかし目をそらすわけでもなく、今あること、変えられること、受け入れなければならないこと、それを自然に現実的に理解できるひとなのでしょう。
そんな夏目先輩の浮世離れしたあまりのいい漢っぷりに、比較的普通で俗物なすばる君も影響され、目を見張るほどの成長をとげます。彼にとっては距離であったり、年齢差、体格差など自分で気になるところもありましたが、最後には身長も追い越し、夏目先輩にふさわしい重みのある人間に成長します。体格というのも、作品としてわかりやすいバロメーター、メタファーにしてあるだけで、彼が小さいままだとしても、とても頼りになる魅力的な男性に成長したのではないかと思います。

悩みは人間に深みを与えますが、やはりいつも地に足が着いて落ち着いた夏目先輩のようなひとが、愛や幸福を他人に与え、そしてまた与えられるのだろうと思います。彼の魅力だけで、文句なく神評価です。