消防士で特別救助隊になるために訓練を受けている鳥飼と矢島のお話です。鳥飼と矢島は消防学校時代からの同期ですが、矢島は何でもそつなくできてしまう鳥飼のことが気に入りません。訓練を受ける班でも二人は一緒なので、訓練中も毎回衝突が絶えないのです。
鳥飼と矢島が一緒に飲んだときに、鳥飼がゲイであることが分かりますが、自主トレ、片手懸垂をした後はわだかまりがなくなっています。このシーンはたった数ページですが、男性ならではのコミュニケーションの取り方なのかしらって思うと萌えます。
普段市民の安全な生活を守っている消防士の過酷な訓練、そして二人とも自分の気持ちを隠さずに男気溢れる恋愛が見られたのは良かったです。鳥飼と矢島が愛し合うときの矢島の手がフェザータッチだったのかはとても気になっています。
幼い日に未来は悠のことを「一生かけて守る」と誓いますが、未来は金髪の美少年に成長してしまいました。その上、未来はいつも悠に助けられています。容姿は生まれ持ったものなので仕方がないのですが、未来は筋肉を鍛えるために御神輿を担いでみたり、乾布摩擦をしたり、どじょうすくいをしたりなど、騎士になるべく、あらぬ方向へ努力を重ねてしまいます。本来なら悠が止めるべきなのでしょうが、悠は大きな包容力でやさしく受け入れてしまいます。
幼い日に未来が悠に約束した騎士になる、悠のことを守る約束は、騎士ではないですが、恋人として実現したのではないでしょうか。
悠と未来のお話ですが、悠と未来の友人、囲良町(かこいいまち)の皆さんも未来を温かく見守っているようです。町の人が未来を見ていた感想がとても良かったです。
脳外科医の富岡先生と看護師の珠洲太、珠洲太の異母兄弟であるレオ、そして猫のボーボーとの同居生活も落ち着いた頃、珠洲太は義理の兄が通っていた高校の文化祭に行くことになります。もちろん珠洲太とレオと富岡先生と一緒ですが、珠洲太にとって義理の兄にいじめられた経験を考えると、そこはあまり良い場所ではありません。
富岡先生は全力で珠洲太のことを守りますが、医者という地位よりも、ひとりの人間としてスパダリなのだと思います。
さらに、珠洲太は実父からのいきなりの連絡でレオの母親とアメリカで会うことになりますが、二人ともレオのことに急に関心を持ち出したのも信じられません。だけど、富岡先生はずっと珠洲太、珠洲太はレオの味方です。
珠洲太は、身勝手な父親、義理の兄に苦しんだ過去を持っていますが、それでも立ち直って看護師として働き、レオを育てています。こういう人だからこそ、富岡先生とずっと一緒にいられるとよいと思います。富岡先生、珠洲太、レオは血縁関係上の家族としては薄いつながりかもしれませんが、他人同士が家族になれること、家族として立派にやっていけることを証明してくれた作品だと思います。
このお話は、バスの中でいつも一緒に乗り合わせる社会人の辻さんとイケメンで頭も良い杉浦くんのお話です。杉浦くんは、おじいちゃんに席を譲ろうとする辻さんが気になり、無事に!席を譲れたその日に声をかけます。
杉浦くんは何でもできてしまうタイプの学生で、これまでも女性と恋愛経験はありますが、辻さんを前にすると何でもできてしまう学生というより、どこにでもいる男子学生になるから不思議でした。
辻さんが自身と杉浦くんとの年の差、社会人と学生の立場の差を考えるとこの恋愛が難しいと考えるのは理解できますが、後で杉浦くんに「諦められない」と言っても、杉浦くんは納得できないのは共感でした。辻さんが一度断ったからこそ、杉浦くんの本心を知れたのは皮肉だと思いました(笑)
大人しい航平と明るく元気だけど、誰とでも衝突してしまう太一のお話です。太一が転落したことでお弁当を食べようとしていた航平と出会いますが、よく考えてみれば最初からお弁当、食べ物つながりです。お弁当や航平の母親が作ったケーキを食べる場面がありますが、何でも心からおいしく食べられるのは才能なのだと思います。
航平は難聴のため、周囲とのコミュニケーションが上手くとれないときもありますが、読唇やノートテイクを使って大学生活を送っています。
航平は、積極的に自身が難聴であることを言っていませんが、周囲から誤解されてしまうこと、誤解されたまま諦めてしまうことにはやりきれなさを感じました。自分で自分を受け入れること、納得できることは難しいものですね。
アオイは、かつて好きだったバンドのサイトでヨウと名乗る男と出会います。アオイは重度の不眠症で夜に眠れず、チャットで時間を潰していたのですが、同じ時間に年が近くてバンドが好きだったヨウと実際に会い、二人の関係はぐっと近づいていきます。ヨウはアオイのことを抱きかかえるようにして寝ますが、アオイが自然と眠ることができたのが驚きでした。
ヨウはアオイのことをかつて好きだった女性と性格が似ていると言いますが、ヨウとその女性との関係、過去は分からなかったので、ミステリアスな雰囲気でした。
お話の中でアオイが海の中に落ちていく場面があり、海というモチーフが何を意味しているのかも気になりました。
ちょっと無愛想な太雅と明るくて誰にでも優しい咲哉のお話です。
咲哉は誰からも話しかけられる明るくて容姿が整っています、周囲から話しかけづらいと思われている太雅とも当然のごとくコミュニケーションをとってしまいます。
太雅も容姿が整っていますが、太雅の目的は咲哉の体です。咲哉がどんな顔をするのか見たくて、咲哉との関係が始まるのです。
咲哉はセックスにあまり抵抗がないどころか、一瞬で受け入れて実行してしまうところは咲哉らしさなのかなと思いました。
咲哉が太雅に友達の丸と裕也、担々麺と太雅も「好き」と言っていますが、咲哉は後で好きがもっと好き、恋人としての「好き」があることを実感します。「お前がいい」と言った意味がよく分かりました。