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女性渋茶さん

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人間を好きになってくれてありがとう

2014年刊。
『ファラウェイ』のスピンオフ作。
前作カップルのアモンと珠樹もがっつり絡んでくる。
アモンとアシュトレトの二人は関わってきた歴史によって神、悪魔と概念が変わる存在なので、その辺りの設定に馴染む為にも元の本編を先に読んでおく事をおすすめしたい。
アシュトレトってば何だかんだ言っていても珠樹の事を気に入っているし。

一見高慢なようでいても、人間の一生というものに愛着を持っているアシュトレトは憎めない男だ。
彼なりの斜めで皮肉な考え方は少しは同意できる部分もあるし。

彼の大雑把な性格は、当人は全く意識していないが、永い年月をかけて人間を観察してきた影響なのだと思うのだけどね。
そんなアシュトレトが、よりによって目の前で即死してしまったノーブルな牧師・アシュレイの中に入り込んで彼の人生を真面目に引き継ぐとはね…
最初、性格の悪さはアシュトレトのまま、元のアシュレイの人柄を無視して一時はどうなる事やらとは思ったものの、残された幼いマリ―と、パティシエとしての腕から惚れ込むきっかけになった達郎への愛情は本物だった。

アシュレイ(アシュトレト)のほうが達郎にベタ惚れだったのが何だか微笑ましかった。
アシュレイとして生き抜いて達郎とマリーへの家族愛を貫いた姿には感動した。

この話も本編同様に輪廻転生が絡んでくるが、アモンと珠樹の時と同じように『魂は引き継いでも人間にとっては前世と今世は違う』といった概念を引き継いでいる。
それでももう一度達郎に逢いたいと願ったアシュトレトの想いには涙がでてきた。
まさかこの一冊が『泣けるBL』だとは思わなかったよ…
アシュトレト、人間を好きになってくれてありがとう。

ちなみに、巻末の『終わらないお伽噺』は粋な話だったけれど、何だか次の転生をいうよりも、パラレルワールドのような不思議な感覚だった。

天候からのヘビーな祝福(笑)

元は2003年・リンクスロマンスから刊行されたものだが、2013年刊のガッシュ文庫版を購入。
実相寺さんの挿絵が美麗だ。
ちなみに攻め・志水が雨男、受け・泉が晴れ男となる。
といっても迷信、非科学めいた話ではなく、仕事ぶりを通してのいい男ぶりを堪能できる。
一冊の中で前半・二人がくっつくまでは攻め・志水視点、後半・恋人になりたての微かな不安を抱えた胸中は受け・泉視点となっている。

さて相対するこの二人、泉が志水のいる大手総合商社に途中入社した事で再会する。
志水が自ら率いる課に引き抜いた当初は、自身の雨男効果が相殺されると内心ほくそ笑んでの不純な動機でつれ回す魂胆がガキっぽいなとは感じたが、いい大人なのにどこか憎めないお茶目さがある。

志水が子供の頃から疎ましいと思っている雨男ぶりだが、泉から見るとポジティブな考え方に変わるってのも何だかいいなと思える。
本当は高校生の頃に泉が志水を好きになったのが先だったのだが、自身を晴れ男としか見てもらえない事に反発してしまう。
周囲からの目を気にしているのは泉のほうが重症だったね。
でも清水に対してはちゃんと憎まれ口を叩いて返している部分もあるし、案外と気が強い性格だと思う。

ノンケのはずの志水が打ち解けた途端にいきなりキスしたり押し倒したのには手を出すのが早すぎ、とちょっと驚いたが、こうと決めたら迷わずに突き進んでいく行動力には惚れ惚れした。
心底惚れたノンケ男に捨てられる怖さに不安になっていた泉をグイグイ引っ張っていく頼もしさも素敵だ。

そして、そんな二人の仲を取り持った元同級生&同僚の藤近も、この話では脇役にも関わらず食えない性格ぶりを発揮していてなかなか興味をそそられるキャラだった。
是非藤近のスピンオフも読みたい!!と調べて分かったけれど、『ストレイ・リング』がその作品なんだね、タイトルだけは聞き覚えがあった。

それにしても雨男と晴れ男に対して、唐突なカミナリ、季節外れの台風、まさかの大雪といった天候からのヘビーな祝福には笑ってしまった。

恋人兼おふくろ、のような…

2021年刊。
先に配信されていた電子書籍のほうを読みたいなと思ってチェックしてあったところ、書き下ろし後日談付きで紙本化されたと知って早速買ってきた。
第2の地球?のような惑星で先住民と共存していたり、生活様式が現代とさほど変わっていない様子は、SFのはずなのに日常味が強い。
まるで子供の頃に読んだ児童書『岩波・SFこども図書館』を彷彿とさせる未来観設定だからだろうか、初読みなのに懐かしいって感覚が湧くほっこりした物語だった。
42歳のオジさんなのに常に語尾が上がるジェフリーの喋り方とか、リアムの自我の芽生え云々といった小難しい事は深刻に考えないほうがいいのだろう。

終戦を迎えて、お互いにかつての役割では"お払い箱"となってから巡り逢ったジェフリーとリアム。
それが偶然の出逢いではなく、リアムが過去に何度も戦闘用アンドロイドの修理技師だったジェフリーに修理、再建をしてもらった事を覚えているなんて、まさに運命じゃないの!!
またジェフリーに直してもらいたい=再会したいと常に願っていた過去のリアムの気持ちがいじましい。

ただ、その当時のジェフリーがアンドロイドにも情をかける信条で、リアムに亡き母親の得意料理レシピをインプットしたおかげで、リアムには"おふくろ属性"が備わってしまったが。
多分ジェフリーって元妻・アンが『面倒臭くて甘えん坊』と指摘した通り、マザコンだと思う。
彼が時折感じる孤独をそんなリアムの存在が埋め合わせてくれるってのも不思議な縁だとも言える。

そして、気になるエッチシーンもがっつり読めまーす!!
"付けてきた"リアムに驚いて肉体関係を持つ事に躊躇っていたジェフリーだったが、『気持ちを通わせるためのセックスにアンドロイド相手で何が不服だ!!』って意味合いで後押しするなんて、なんつー元妻だよ。
元夫とアンドロイドの生涯の縁を取り持つとは、素晴らしいじゃないの!!
つくづくアンのサバサバした性格には天晴れ!!と拍手したくなってくる。

薔薇の返事

『人魚姫の弟』から続く犬飼さんの官能童話シリーズ、そのうちの一冊となる。
もしも見目麗しい王子さまキャラを探している人がいるならばこのシリーズを推したい。
鍵を握るヒロインがBL仕様として男性キャラに成り代わる訳だが、物語ごとに恋に落ちる王子さま達の麗しさや憂い、執着心に悶えるだろうと思う。

さて、2020年刊のこちらは童話モチーフでありながらも、犬飼さんが書き起こした薔薇の妖精王・フィセと生まれて間もない頃からフィセに惹かれていた王子・オーレリアンの純愛に魅了されたのだった。

慈愛に満ちたフィセは、オーレリアンの父王によって騙されていたショックから、香り高く富をもたらす白薔薇を咲かせることができなくなってしまう。
トワイダルは一気に寂れた国となってしまった。
そこから始まるフィセの長い苦悩の日々として、彼の心を映すように咲き誇る黒薔薇、白薔薇が物語を彩る。

それにしてもオーレリアンの幼少期、「ばらおうしゃま」ってフィセを慕う姿の可愛いこと。
やがて己の美しさを全く鼻にかけずに聡明で思いやりある王子に育ったのは、ひとえに恋するフィセに認めてもらいたい一心からだろうが、父王との不和もあって自惚れるどころではなかった背景も伺える。

これは自分の勝手な想像だが、トワイダル王国は何らかの執念に取り憑かれる一面を持つ血筋なのかも知れない。
オーレリアンの祖父にあたる先代の王は(恐らく政に関係なく)死後も後妻の再婚を許さない遺言を残したらしいし、父王オズワルドのフィセへの執着心は読んでの通り。
オーレリアン王子もまたフィセに恋焦がれる余りに…となるところを己の精進へ傾ける事ができたのは何より幸いだった。

ところで今回のこの物語、元の童話の鍵となる糸紡ぎの紡錐が出てこないのが意外だった。
ヨーロッパ伝来の童話は一説では性的な揶揄が多く含まれているらしいとの事で、紡錐や眠りにつく経緯にもその手の意味合いが有るらしいのだが。
"官能童話シリーズ"と呼ばれる由縁のその辺りを削った事を踏まえると、犬飼さん独自の脚色が強い仕上がりとなっている。

最初に挙げた通り、薔薇の妖精王・フィセの回りで咲き誇る薔薇は彼の言葉よりも雄弁だった。
長年の心の痛手を抱えていたフィセが最終的にオーレリアン王子の求愛をどう受け止めたかは、薔薇の返事が物語っている。

消防士として捧げる人生

2020年刊。
それにしてもこの本の表紙、何だかBLじゃないみたいで恰好いいね。
タイトル通り、消防士の責務と誇りといった熱いドラマだった。
骨格のしっかりした話でがっつり読み応えがあり、火災現場の切羽詰まった緊迫感が感じられて良かった。

過去の火事で両親を死に追いやった罪悪感から消防士になると決心したイサム。
一つ年下のジェイクはイサムと同じハイスクールに進学し、選択授業も全て同じにする徹底ぶりで、彼に追いつき常に側にいようと頑張っている。
イサムの卒業間近には人種で括られたコミュニティの違いから壁ができてしまったものの、遂にはジェイク自身も消防士となりイサムの後を追ってきたのだった。
イサムが消防士を目指すのが贖罪の気持ちからならば、ジェイクが目指すのはそんなイサムを守る為、といった意思がはっきりしているから、執着心とかストーカーめいたものは感じない。
ジェイクの決意がしっかりしたものなので、そこには一人前の大人としての頼もしさがあった。

ただ、イサムのほうはいざ消防士になったのはいいが、火災現場での消防活動で過去のフラッシュバックが起こり、足手まといになる様子にはハラハラした。
謹慎処分が嫌でそれを隠そうとジェイクに口留めするのには苛ついたが、それを逆に諫める事ができたジェイクに芯の強さとプロ意識を感じた。

実はこの新刊を手に取ったのは主人公が発火能力者という特殊な設定に惹かれたからだが、プロフェッショナルな仕事ものとして充分満足できるだけにこの設定は不要だったのでは…と思った位だ。
しかし、この話ではイサムが当時の記憶を失くしている程のトラウマをどう克服するかってのも焦点であり、クライマックスではその能力を用いて危機を乗り越える、といった見せ場もある。
要はイサム自身がこの能力を忌み嫌うばかりではなく、どう共存していくか…てところなのだろうね。

堪えられなかった男、耐え忍んだ男

2005年刊。
実はどこまで続けられるか不安だが、水原さん作品読破挑戦中で現在刊行順に読んでいっている最中だ。
順番で読むとまだまだヤクザだの愛人だのといった不穏そうな話が連なり、この本を手に取って穏やかそうな一冊でほっとしたら、これってがっつり三角関係ものですやん…
…なのに、一気に読み進めていたのだった。
多分、水原さん作品個人的お気に入り上位に食い込むと思う。

三角関係ものでも最後には三つ巴で落ち着くパターンを多く読んでいるせいか、この話の主人公・多伎(たき)がきちんとどちらかを選んで付き合う姿が真っ当で好感を覚えた。
(本当は三つ巴で着地するってのも好きな展開だけどね)
あと、終盤にはどうしてもDVが出てくるものの、始終痛めつけられる描写が無かったおかげで、初めて水原作品の受けキャラが古風で芯が強く気丈だって事を実感できた。

多伎は17歳の頃に洋人へ抱いていた淡い想いを断ってから、隆晴の告白を受け止めて付き合い始め、大学進学を機に遠距離恋愛になってもお互いきちんと向き合って交際を続けていた。
社会人となり教師をして頑張る日々の中、医者を志す隆晴の夢を共有して気持ちが繋がっているのを信じていた。
一方の洋人も、厳しい父親に堪えつつ漁師の跡を継いで地元で頑張っていた。
多伎との時々の交流は友人としての関係を守っていた洋人だが、内心はもしかしたら彼への恋心を隠しつつ幸せであるようにと支えていたじゃないか?と見て取れる。

こうして17歳から30歳位までの三人の半生が淡々と書き綴られているが、この時期の人生の記憶の色濃さというを思い起こすと、作中の展開に何だか深いものを感じる。
親の闘病、死別ってのも絡んでくるとなると…ね。
また、舞台となる彼らの故郷、港町の情景にもぐっとくるものがある。

恋と結婚とは違う現実、気ままに生きていけない世知辛さに直面した隆晴は他の女性と結婚してしまい嫌な男に成り下がってしまったが、周囲の期待に追い込まれた辛さってのも何となく分かるかも知れない。
進学せずに故郷に留まった洋人の人生にも苦労があったと思う。
しかし二人の間には、いつしか堪えられなかった男と、耐え忍んだ男として差が開いていて切ないものを感じる。

故郷に戻った多伎が速攻で洋人とくっついても別段おかしいとは感じなかったのは、隆晴と別れるまでの葛藤を経て気持ちが冷めていくに至るまでの描写もきちんと読めたって満足感があるからだろう。
多伎も洋人も誰も責めない生き様であるってのは強い人の表れだと思う。
だからきっと、二人ともこの先も悲観せずに生きていける気がするのだ。

此処が彼の原点・Ⅰ

遠野さんの小説を読んでいるとたまーに登場する神出鬼没な謎の紳士がこの人、茅島氏だ。
もうそろそろ肝心の彼のルーツを読まないとな、と長年積んでいたのをやっと読みました~。
(コミック版のほうはまだ読めていないけれど)
この新装版は2009年刊で、初版は1999年刊のリーフノベルズになる。

今までBLでセレブや貴族王族ものを多々読んできたが、この話を読んでみると茅島氏の唯一無二なキャラクターが際立っているね。
この人の周囲だけ空気の流れが違っていそうな雰囲気が漂っていそうと感じる事はなかなかない。
読み出して間もないうちから彼の浮世離れしている様子は充分に感じられたが、やんごとなき方々と同格の高貴さとは!!

もう一つ読んでみて意外だったのは、茅島氏が選んだ相手が常に側に居る執事でも見目麗しい秘書でもなく庭師の男だという点だった。
まぁ波多野氏は執事歴30年というベテランで主人・茅島氏を常に見守る立場が板についているし、秘書・小泉氏も立場を弁えているところからして相当有能なのが伺える。

ちなみに、1巻目の短編6本を通しての茅島氏の心は"恋するときめき"で占められている。
茅島氏の言う事やる事って大抵唐突だし、相手の空気を読まない一面もあるのに、KYだと不快な気分にならない不思議さがある。
いきなり庭師の家に乗り込んで告白したにも関わらず、まさか彼が茅島氏の想いに突き動かされて一夜を共にするとは…!!
しかも案外大胆な絡みに順応しているし(笑)

こうして庭師だけでなく、読んでいる側もあっという間に恋を知らなかった高貴な男に惹き込まれてしまったのだった。

性欲の絡まない愛がここにある

2019年刊。
このコミックに興味を持ったのは、ちるちるの作家インタビューの記事内で、ヒト形の龍が主人公と添い寝するシーンの幸せそうな笑顔に惹かれたのがきっかけだった。

いつ頃の時代かどこの国(大陸)か、登場人物の名前もないのに、一つの物語としてまとまっている。
しかもエッチシーン無し!!
これをデビュー作として引っ提げてくるとは、何だか作者が只者ではない予感がする。

唯一肌を見せるシーンといえば龍が主人公の体内に鱗を埋め込むシーンのみだが、些細な一コマでも萌えを感じるBL脳があれば問題ないのだ。
個人的には龍の爪に身体を掴まれている主人公ってアングルの表紙が好きだな。
主人公に頭からかぶり付いたり、着衣のまま湖?に落として熱を冷まさせるってヘビーな愛情表現だねぇ。
龍がヒト形になっても根本の体格差とは異なる大きさの違いもいい。
ただ、最初に龍が主人公の事をお前、貴方と定着していない点には引っ掛かったかな。

しかし、肝心の話については一読だけで理解するのは難しかった。
子孫を残す目的もなく三大欲求とも無縁だと龍に言い切られると、じゃあ何の為に伴侶を欲するんだ!!となってしまう。
何度か読んでいると、主人公と兄の間にある"かけがえのない人に先立たれる不安を感じる"という心境に切ないものを感じる。
自分の場合、そこから人が人生の中で欲するものの本質ってのは、じっと誰かに寄り添いたい、寄り添って欲しいって願望だと行き着いたがどうだろうか?
性欲とは違う愛。
それが龍の欲したものなのだろうか?
と、見当違いな解釈でなければいいのだが。

ちなみに龍が初めて"人"を意識したのは主人公の先祖に当たる姫となるが、彼女にはフラれているんだね…(^_^;)
そんな龍にとって幼かった主人公を見つけ出し見守る中で、人には死が直面すると知ると急いで眷属にしたいと焦ったり、力加減を知らずに躊躇したりと何て情の深い龍なんだ。
そんな龍の一挙一動には可愛げが増してくる。
龍の伴侶になると腹を括った主人公にもそんな姫の誇りを受け継いでいて、そんな彼を選んだ龍の審美眼には恐れ入った。

読めば読むほど深いものを感じ取れる一冊だった。

初長編でこのパワーはスゴい!!

2020年刊。
松梶さんの小説は先に短編『禁忌の密約』のみ読んだ事がある(*注・ガチ兄弟ものです)が、初長編でこのパワーはスゴい!!
今後色々な作風が持ち味の一つになってほしい、期待したい新人さんだ。

あらすじに戦闘部隊云々とあったので、今流行っているほわほわしたファンタジーとは違うんだ…とは感じた。
ただ、突如地上に出現した異形の脅威、人々は壁を構築して防衛している生活…といった序盤から、自分も未だ読んだ事がない進〇の〇人を思い浮かべたクチだったりする。
多分同じ印象を持った姐さんは他にも居るはずだ、間違いない(^_^;)
尤も、この物語で人々の生活を脅かしているのは、"凶獣"と呼ばれる異形の生物だけどね。

まぁそんな出だしを差し引いても、攻めキャラ(タイラ)が主人公で、受けキャラ(レイ)に惹かれて変わっていき、どうにかして彼を救いたいって突き動かされていく話ってのは久々かも知れない。

序盤では他人に全く関心のなかったタイラだが、いきなり目の前に現れて凶獣を滅多刺しにしたレイに強烈に惹かれていく。
特殊殲滅部隊のコンビの片割れ、ハウンド(犬)と称されるレイは凶獣狩りで滅法強いのと相まって、彼自身にも大きな秘密がある。
日頃の様子でレイ自身気ままでわがままなのかと思いきや、実はこれらが物語の謎と繋がっていて、中盤辺りから真相が見えてくる。

それでもレイを想う気持ちに揺らぎがなかったタイラは、何とかレイを以前のように戻したいと懸命に奔走する。
そこから、序盤或いは彼の過去を既に知る読者側は、タイラが心の痛みを知った一人の人として成長した姿を実感できるのだ。
結果、タイラはどうしたのか、レイがどうなったか、凶獣の脅威がその後どうなったかという終盤は、実際に読み終わったら満足できると思う。

ところで、タイラからすると実兄・ジョージとはソリが合わないと感じているようだけど、ジョージからすると彼なりに弟に気をかけているようだよ?
そんな一方通行な家族愛といった仄かな萌えの片鱗もあったのだった。

悩める三倉氏

『恋には向かない職業』続編、2020年刊。

さて、人気絶頂のアイドルグループのリーダー・頼の彼氏である三倉だが、芸能事務所の裏方(元マネージャー、現広報部課長)にしてはやけにイケメンすぎるなぁと感じた理由は最終話にて判明するよー。
まさにスパダリの鑑!!って割には根が繊細だけどね。
下巻では、そんな三倉が頼を大切にする余りに不安感や自己嫌悪に陥るので、下巻は三倉目線で読み進めていったほうがいいと思う。

尾上に揺さぶりをかけられた三倉は、ふとしたきっかけから日頃の理性を失って暴走し、力づくで頼を激しく抱いてしまった。
しかし、その後の頼はどうかっていうと、いつもとは違う激しいシチュエーションでエッチ出来た~(*´ω`)♡といたくご満悦のようで…
(ぉぅ…良かったな…としか…ナンカチガウゾ(-_-))
まぁ厳しい舞台稽古に関わらず気力体力満タンならば心配無用だが(笑)

一方、その反動で激しく落ち込んでしまった三倉は、その後舞台の本番に備えて頼のほうからしばらく家を出る決心に更に追い打ちをかけられてしまう。

ここで、三倉の回想シーンにある頼が最後にD.BUG入りした時のエピソードが印象深かったな。
頼はメンバー入りの時も三倉と両想いになるまでも、尾上が抱いていた先入観の打破でも、都度乗り越えるべき壁を把握していてきっちり乗り越えている。
三倉がその前向きさに惹かれたのにも納得できる。
この子ってバイタリティに溢れているよなと改めて感じ入ったのだった。

それに頼には三倉一筋という確固たる思いがあるので、自分の場合は読んでいてもすれ違いからくる危機感ってのは湧いてこなかった。
この子の思いってのは常に直球なのが分かるから心配する事がなかったってのもある。
そもそも尾上が頼に向ける目線ってのも、明らかに愛とは違うものだと思うのだけどね。
何て言うのだろうか、一つのものに打ち込むうちに生まれるものだけど、師弟間とか部活とかの先輩後輩間とかの絆って感覚はどう例えればいいのやら…

ま、全ての決着は三倉の胸の内にかかっていた訳だが、彼が一人考える時間を通して、それでも頼を好きだという結論に辿り着くまでの心境にグッときた。
そんな三倉の葛藤をページ数をかけて読めたからこそ、最後のプロポーズシーンの感激に繋がるのだ。
ラストの二人は最高に綺麗で映えるぞ!!
このページはカラーで見たかった位だ。

これからも頼は更なる高みを目指して自己研鑽し、三倉はそれを愛情で支えていく事に喜びを抱くんだろうね…




でも、「お幸せにね」って祝福はまだ先延ばしにしたい複雑な心境が湧いてしまっている。
欲が尽きないってのは恐ろしい事で、まだ続きが読みたい気持ちがあってだな…
うぅ…便箋買ってこようかな。