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表題作Brave ―炎と闘う者たち―

ジェイク・リー,9年生~,かつて隣人だった年下の幼馴染
イサム・モリヤマ(森山勇),10年生~,幼い頃の火事で両親を亡くした日系アメリカ人

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

幼い頃の火事が俺の運命を狂わせた――
発火能力を持った消防士と
その相棒が、人々を苦しめる炎と対峙する!!

念じるだけで手のひらから炎を放射できる
発火能力――その力による過失で両親を亡くし、
幼い頃の記憶まで失ったイサム。
過去の罪は人々を救うことで償いたい――
イサムは能力を隠し消防士を目指す!!
そんなイサムの苦悩を見守ってきたのは、
一歳年下で幼馴染みのジェイク。高校では
男女問わず人気者で、将来を嘱望されて
いたはずが、周囲の制止を振り切り、
イサムを追って消防士として現れ!?

作品情報

作品名
Brave ―炎と闘う者たち―
著者
楠田雅紀 
イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010118
4

(79)

(39)

萌々

(17)

(15)

中立

(5)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
12
得点
313
評価数
79
平均
4 / 5
神率
49.4%

レビュー投稿数12

たった一人のヒーローになりたい

ものすっごく良かったです!
表紙やタイトルから受ける印象はシリアスですが、読み口は比較的ライト。
それでいて随所に伏線が張り巡らされており、読み応えは抜群!
ラブ面でもしっかり萌えさせてくれます。

とにかく、攻めが魅力的。
一途な健気攻めで、幾度となく泣かされました。

「ヒーローになりたい」

誰かの──じゃなく、受けの。受けだけの。
それを体現していた攻めが、本当に素敵でした。


主人公のイサムはパイロキネシス。
自分の能力で火事を起こし、両親を殺してしまったという罪の意識に苛まれながら生きています。
イサムのトラウマの元になった事件の真相を知っているのは、幼馴染のジェイクだけ。
事件前後の記憶を失っているイサムですが、高校でジェイクと再会した事で止まっていた時計が動き出し……。

ミステリーとSFの要素がうまく絡み合って、ストーリーを面白くしています。
イサムの能力面はあまり強調されておらず、むしろ両親が亡くなった火事の真相や、ジェイクとのラブストーリーに重きが置かれているのも良かった。

イサム・ジェイクともに過去を悔やんでそれぞれに苦悩を抱えており、それが物語に深みを与えている印象。
ストーリーが進むにつれ、イサムの記憶と事件の真相が明らかになっていくところが見どころです。

そして、ジェイクとのラブストーリーも一筋縄にはいきません。
何度も告白しては振られるジェイク。
それでも諦めず、贖罪として消防士になったイサムを追いかけ、自身も消防士に。

気持ちを押し付けず、ひたすらイサムを支え続けるジェイクが愛しすぎました。
事件の真相が明らかになる事で、さらにジェイクの献身的な愛が際立っていきます。
兎にも角にも、優しくも厳しいジェイクが素敵なんです♡
これは好きになっちゃうでしょ。
必然の恋ですよ。

ここでパイロキネシスの能力が発揮されるのか……と、ここぞという時の能力の使い方にも脱帽しました。
イサムの作った小さな炎が大きな炎に向かっていく姿が、バディを組んで命懸けで人を助けようとする二人の姿に重なって、感動で涙が止まりませんでした。

ラブ要素もたっぷりなので、存分に萌えさせていただきました♡
ラブとミステリーとSF、どれも過不足なく丁度いい。
アニメっぽい世界観ながらも、エンターテイメントとして完成されている作品です。

小山田先生のイラストも素晴らしかった。
ありがとうございますと言いたい。

消防隊の隊長・ダグラスもかっこ良かったので、スピンオフプリーズ!

17

挿絵と作者の発想力と筆力の勝利。

最近、異世界転生ものや異世界ファンタジー系ばかり読んで、自分は異世界系しか面白さを感じられなくなってるのか?と危惧していたんです。
面白いと感じる自分が惹きつけられる小説がそういったものばかりで。
でも今回の楠田先生の新刊、すごい良かったんですよ!

まずこのアメリカの消防士という題材を持ってきた発想。
そしてそれを飽きることなく読ませる筆力。
魅力的なキャラたち。

そして、素晴らしい小山田あみ先生の挿絵!
もう絶対、この作品には小山田先生しかありえないという感じでした。
表紙だけでなく、中の挿絵も素晴らしいんですよ!

あと私、途中、隊長とイサムが幸せにならないかと願ってしまいました。
イサムが隊長に傾倒している描写なんか、何か分からないけど良かった!
隊長がステキすぎて、大人で逞しくて頼りがいがあって、すごくカッコイイんですよ!

隊長のスピンオフが読みたすぎます!
こんな素晴らしい隊長の幸せになった姿が見たいです!

8

消防士として捧げる人生

2020年刊。
それにしてもこの本の表紙、何だかBLじゃないみたいで恰好いいね。
タイトル通り、消防士の責務と誇りといった熱いドラマだった。
骨格のしっかりした話でがっつり読み応えがあり、火災現場の切羽詰まった緊迫感が感じられて良かった。

過去の火事で両親を死に追いやった罪悪感から消防士になると決心したイサム。
一つ年下のジェイクはイサムと同じハイスクールに進学し、選択授業も全て同じにする徹底ぶりで、彼に追いつき常に側にいようと頑張っている。
イサムの卒業間近には人種で括られたコミュニティの違いから壁ができてしまったものの、遂にはジェイク自身も消防士となりイサムの後を追ってきたのだった。
イサムが消防士を目指すのが贖罪の気持ちからならば、ジェイクが目指すのはそんなイサムを守る為、といった意思がはっきりしているから、執着心とかストーカーめいたものは感じない。
ジェイクの決意がしっかりしたものなので、そこには一人前の大人としての頼もしさがあった。

ただ、イサムのほうはいざ消防士になったのはいいが、火災現場での消防活動で過去のフラッシュバックが起こり、足手まといになる様子にはハラハラした。
謹慎処分が嫌でそれを隠そうとジェイクに口留めするのには苛ついたが、それを逆に諫める事ができたジェイクに芯の強さとプロ意識を感じた。

実はこの新刊を手に取ったのは主人公が発火能力者という特殊な設定に惹かれたからだが、プロフェッショナルな仕事ものとして充分満足できるだけにこの設定は不要だったのでは…と思った位だ。
しかし、この話ではイサムが当時の記憶を失くしている程のトラウマをどう克服するかってのも焦点であり、クライマックスではその能力を用いて危機を乗り越える、といった見せ場もある。
要はイサム自身がこの能力を忌み嫌うばかりではなく、どう共存していくか…てところなのだろうね。

8

炎に隠された真実

今回は裕福な家の1人息子である幼馴染と
火事で両親を亡くして孤児となった日系人のお話です。

火事により過去の記憶を亡くした受様
攻様との再会で真実を思い出し、彼の想いを受けとめるまで。

受様は日本人の父と日系二世の母の間に生まれ、
純日本人の外見をもつ少年です。
受様は火事で優しかった両親を失うまでは高級住宅街に住み、
隣に住む白人夫婦と家族ぐるみの付き合いをしていました。

隣人夫婦の息子である攻様は1つ年上の受様が大好きで
受様も誰にも秘密にしている発火能力を教えるくらいに
幼馴染を可愛がっていたのです。

しかし受様は、9才のクリスマスイブの夜に
その発火能力でうんだ火を父に放って火事を起こし
両親と家を燃やしてしまう事になります。

火事の恐怖に囚われた受様はその場からどうやって
助け出されたのかも覚えておらず、
気が付いた時には防火服に身を包んだ消防士の腕に
抱えられて助け出されていました。

受様は懸命に自分が火を放ったと説明しますが
受様は火事以前までも飛んでおぼろげで、
誰もが「受様の記憶違いだ」と取り合いませんでした。

その後、
身寄りのなかった受様は児童養護局のグループホームに入り
カウンセリングも受けますが、
受様の記憶は白い煙に包まれたままで
罪の意識から解放される事もありませんでした。

受様がミドルスクールに進んだ翌年、
受様は学校のカフェテリアで青い目を輝かせたイケメンに
声を掛けられる事になります。

そのイケメン少年こそが
成長したかつての幼馴染である攻様だったのです♪

大好きだった1つ年下の友人との再会に喜ぶ受様でしたが
攻様は受様がこの学校に進んだことを知って進学と言い、
離れていた時間を取り戻すかのように旧交を温め
受様との時間を持とうとするのです。

しかしながら
運動神経も良く快活でおしゃれでイケメンな攻様の周りには
受様のような有色人種がいないばかりか、
男も女も顔やスタイルが良くおしゃれで陽気な者達が集い、
シニアが次のリーダーグループと一目置く存在になります。

そしてハイスクールの最後の1年を迎えても
攻様はグループメンバーがどれほど反発しても
受様と共に過ごす時間を持ち続けますが
受様の中には攻様が自分とはもう違う世界の人間なのだという
気持ちが育っていました。

そして受様が大学に進学せずに消防士を目指すと知ると
「俺も消防士になる」「受様を護りたい」と言い
受様を想い続けてきた事を告白するのです!!

両親を亡くした贖罪を消防士という夢に託す受様には
攻様の言葉はとても軽くしか聞こえず
傷つけると判っていながら拒絶の言葉を放ってしまいます。

そしてハイスクールを卒業した受様は
ファイヤーアカデミーに進みアカデミー歴代1位の成績で
念願の資格試験に合格し消防士となるのですが

その2ケ月後、
消防士となった攻様が新人消防士として現れて!?

発火能力を持っている受様が
その能力で両親を殺してしまった罪の意識を抱えながら
消防士を目指すミステリーになります♪

火事の衝撃で記憶喪失を失ってしまった過去を
攻様との再会で徐々に思い出していく中で
受様が攻様との過去、両親との関りを思い出す事が
本作の鍵となって、ワクワクで読み進めました。

受様視点で進むので
攻様がなぜこれほどまでに受様に執着するのかが
ある意味怖く感じられたのですが

曖昧だった受様の火事の記憶が少しづつ
詳らかになっていく中で炎の中で起こった出来事と
幼かった攻様の決意が明らかになっていきます。

そして見えてくる攻様の母親の言葉の真意、
かつての自宅跡を訪れた時の受様の言動、
受様の語る過去に攻様が感じていた違和感の正体、

受様が記憶を取り戻してもなお
知りえなかった攻様の関りを知った時には
受様同様、もう涙が止まりませんでした。

受様があの日の真相を知り、攻様の真意を知り、
攻様の手を取るまでこんな展開になるんて
全く思いもしませんでした。

攻様、いい男過ぎですよ ๐·°(৹˃ᗝ˂৹)°·๐

小山田先生の硬質で繊細なイラストも
物語を素敵に彩っていて最高に良かったです。

11月に発刊された『小説Chara vol.43 2021年1月号』に
本編後日談が収録されています。
2人を巡る消防団員達のやりとりが微笑ましいお話ですので
気になる方はぜひチェックして下さいませ。

7

サスペンスとホラーの香りが漂うストーリー

小山田あみ先生がまたやってくれました。ハリウッドの新作映画みたいなカッコいい表紙。BL界に小山田先生がいらっしゃって良かったなあといつも思います

ストーリー…イサムは幼い頃隣の家に住んでいたジェイクと高校で再会します。しかし火事で家も家族も失ってしまったイサムは裕福な家庭のジェイクとはずいぶん立場が変わってしまいました。火事の時の記憶も曖昧でトラウマ持ちのイサム。なんと自分の体から炎を出す事のできる超能力も持っているという盛り沢山な設定。

前半部分のアメリカのハイスクール青春ストーリーはとても楽しかったです。スクールカーストもなんのその。ガンガン日系人のイサムにアタックしてくる金髪碧眼のジェイク。しかし鈍感な本人には全く伝わっていなかった悲しさ。

後半、2人が消防士になってからの話はだんだんと昔の火事の原因やイサムの記憶もわかってきて、シリアスで悲しい真実が明らかになります。でも発火出来る体質の人が消防士って…告知義務違反もやらかしてるし、イサムは悪い事言わないから内勤に移っとけと思いました。

あと40前半の独身ゲイ、ダグラス隊長がかっこよすぎた。イラストもカッコええ。楠田先生、ダグラス隊長のスピンオフよろしくお願いします。

追記…最近レビューを読んだ後だと他の方の影響受けがちなので新刊は特に自分のフィーリングで書いて後から他の方の感想もじっくり読むのですが…皆様ダグラス隊長に触れていらっしゃる(笑)ねーカッコいいですよね!楠田・小山田両先生タッグでまたやって頂きたいですね。

6

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