SS付き電子限定版
個人的に、ミステリは好きでは無いと言うか読むのが面倒臭いタイプですが、BLでクローズド・サークルと言うと俄然萌えちゃったりします。
閉ざされた極限状態の空間に、攻めと受けがぶち込まれてるって、最高ですよ。
しかも、それを楠田先生が書いてくれるって、もう何かのご褒美か?状態ですよ。
で、こちらタイトル通り、無人島の豪華リゾートホテルで起こる殺人事件がメインとなるクローズド・サークルものになります。
豪華客船で無人島へ向かい、リゾートホテルでバカンスを過ごすと言う体験ツアーへ参加する事になった主人公・瑞樹。
抽選に当たった友人が仕事でこれなくなった為、一人で参加したんですね。
そこでフリーライター・阿久津と知り合い、彼と行動を共にする事に。
そんな中、ホテル内で参加者が亡くなりー・・・と言うものです。
まずこちら、ストーリーとしてめちゃくちゃ面白いです。
主人公である瑞樹ですが、参加出来なくなった友人の名前を語って、このツアーを体験する事になったんですね。
大人しくて引っ込み思案と言った印象なんですけど。
で、そんな彼と親しくなるのが、この体験ツアーを取材する目的で同行したフリーライター・阿久津。
こちらは物怖じせず、明るく頼り甲斐がある印象。
これ、上手いのが、事件だけで無く二人のラブが同時進行でしっかり進んで行く所だと思うんですよ。
まずは無人島へと向かう豪華客船で二人は知り合うんですけど、これがめっちゃキュンキュン。
いや、終始瑞樹視点で進むんですけど、優しく爽やかな阿久津が魅力的に綴られ、そんな彼に瑞樹もほのかな想いを抱く・・・。
船から見た美しい夜明けだったり、明るく光り輝く海だったりと、情景描写がこれまた素敵でして。
もう、すごくロマンチックで、恋の始まりにうっとりしちゃうんですよ。
と、ここまでは超キュンキュンの爽やかな出逢い編。
で、ここからが、ストーリーとしてはシリアス展開となって行きます。
リゾートホテルに着いた一行。
このツアー客ですが、かなりアクの強い面々が揃ってるんですよね。
元警察幹部に、裁判官、雑誌の編集者にエリート銀行マン、そして看護師。
で、皆が皆、かなり横柄だったり自己中心的で、常識的な瑞樹と阿久津は勝手な行動ばかりする彼等の被害を被る事に。
そんな中、看護師のプールでの溺死、裁判官の焼却炉での焼け死にと、次々とツアー客の不審な死が続く。
更に、何故か電話もネットも通じずと通信手段が一切絶たれてしまう・・・。
そう、迎えの船が来るまで、ツアー客とホテル従業員のみで孤島へと閉じ込められた状態。
果たして、これは連続殺人事件なのか?
犯人は一体誰で、その目的は何なのか?
と言うのが、作品を読む上での見処になると思うんですけど。
えーと、瑞樹ですが、天涯孤独の青年なんですよ。
両親は事故で亡く、彼を育ててくれた姉も、何らかの不幸な事故で亡くなったと匂わせてある。
彼は最初こそ大人しく引っ込み思案なだけの青年に見えるんですけど、読み進めるうちに、何か心に重いものを抱えていそうだと分かってくるんですよね。
で、人が亡くなって強いショックを受ける瑞樹に「必ず守るから」と意味深な事を告げる阿久津。
こう、極限状態の中で二人の愛は静かに進みと、すごく萌えるんですよね。
ただ、彼も彼で何か目的がありそうと、読者としては信じたくても信じきれない状況でもある。
そう、二人の恋愛にときめき、ハラハラドキドキの展開に手に汗握り、分からない事ばかりで混乱の際に陥る。
で、読者の「どうなる?」と言う期待を溜めに溜めた所で、明かされる衝撃の真実。
繰り返しになりますが、元々ミステリは読まないタイプなのです。
その上での意見ですが、もうとにかくめちゃくちゃ面白かった。
いやこれ、犯人がですね、完全に予想外なのです。
えーと、伏線がめちゃくちゃお上手なんですよね。
こう、ミスリードを巧みに誘われるんですけど、真相が分かると「なるほどなぁ」しか出てこない。
もう本当、まさかの犯人はコイツ!
えええーーー!
すっごい衝撃なんだけど!!
てんでバラバラだと思っていたあれこれが、こうして繋がっていたか!と。
また、事件の真相がめちゃくちゃ悲しい。
ああ、彼はここまで、心に強く暗い決意を秘めていたのかと。
ただこれ、事件の落とし処がですね、めちゃくちゃ優しいんですよ。
そもそも、何が正義で誰が裁くのか?
ただ単に殺人が起こってと言う単純な事件ものでは無く、その裏に深い物語がある。
阿久津がですね、繰り返し意味深なセリフを言うんですよね。
彼は天罰を信じていて、大きな力で必ず罰は与えられるんだと。
真相が分かった時、彼が繰り返しこの言葉を言っていた理由が理解出来て、なんだかホロリと来ましたよ。
いや、ネタバレになっちゃうので語れないけど、ちゃんと神様は見ていてくれるんだなぁと。
深い愛に、救われるなぁと。
犯人はちゃんと裁かれと、白黒つけた明快な終わりでは無いんですよね。
でも、人の心の中のキレイな部分、そして救いが見れる、とても素敵なラスト。
二人の恋愛にも、とにかく萌えまくりましたよ。
BLはもちろん大好物ですが、ミステリーも大好き。
夏河さんの絵柄もめっちゃツボ。
作家さまが楠田先生。
ときたら、ええ、今作品の期待度がめっちゃ高くってですね、発売されるのを心待ちにしていました。
夏河さんの描かれた表紙がすごく可愛らしかったので、ミステリー要素もありつつの、でもBLベースの恋愛要素多い甘いお話かな?と思っていましたが。
いい意味で裏切られました。
めっちゃ面白かった…!
BLって恋愛ものなので、本格的なミステリーと掛け合わせるその塩梅が非常に難しいと思っているのですが、さすが楠田先生。そのバランスが秀逸でした。普段ネタバレ上等でレビューを書いていますが、ミステリーものなのでなるべくネタバレなしで書こうと思います。
主人公は瑞樹。
25歳の、平々凡々なリーマン。
彼は、友人が懸賞で当てた高級リゾートのオープニングイベントに誘われ、その友人の代わりに参加することになった。
彼がまだ中学生だったころに両親は事故で亡くなり、その後、年の離れた姉が育ててくれたが経済的な余裕がなく旅行とは無縁だった瑞樹。
分不相応なバカンスに気が引けつつ、けれど彼はそのバカンスに向かう。
そこで彼は、そのオープニングセレモニーの様子を記事で書くためにやってきたというフリーライターの阿久津と出会う。気さくな阿久津に声をかけられ、以降彼と過ごす時間が増えるが、一人の参加者がプールで亡くなるという事故が起き―。
というお話。
阿久津が友人とやり取りをしているシーンから物語はスタートしますが、このやり取りが不穏な空気感を醸し出してるんですね。このシーンで始まっているために、阿久津への疑惑がそこかしこにまとわりつくことになるのですが。
このバカンスに参加している人物は10組。
普通の母娘連れもいる中、なかなか癖のある人物も多い。
大手雑誌の編集長の綿貫。
すでに定年退職しているが、警察庁のお偉いさんだった久住。
我儘なナースのあかり。
良家の子息である若松。
裁判官の千葉。
横柄で、人柄に難ありの彼らとのやり取りを挟みつつ、そこに頻繁に登場するのは瑞樹の姉・菜々。
と言っても、実際にその場に現れるわけではなく、瑞樹の回想として、菜々の姿が描かれていきます。
弟を養うために、高校卒業後、若い女の子らしい楽しみは一切封印して必死で働いてきたこと。
亡き両親が残してくれた遺産は、瑞樹の大学進学のために手をつけなかったこと。
そんな優しい姉に、恋人ができてやっと幸せをつかむところだったこと。
バカンスに登場するヤな奴らと、姉のお話が少しずつ描かれていきます。
そして、彼らの間にあった「過去」も。
BL的なベクトルとしては阿久津×瑞樹なわけですが、阿久津はもしかしたら姉の関係者だったのでは?と思わせる描写もありつつ、ミステリーとしての謎解きがここにうまく絡みページを捲る手が止められませんでした。
最後の謎解きで、思わず落涙しました。
「犯人」が犯行に及んだ動機。
「犯人」を守りたかった人物、の攻防。
まー、とにかく素晴らしい。
そこかしこに撒かれた伏線を回収しつつ進み、謎が解けた状態で再度読み返すと、おお、これはこういう意味か!と新たな楽しみがあるのも良きでした。
ネタバレなしで書こうと思うと詳細が書けないのがもどかしいのですが、でもでも、とにかく萌えた。そして面白かった。
「殺人事件」がベースにあるので、苦手な方もいらっしゃるかな?
でも、ミステリーお好きな方にはぜひとも手に取っていただきたい。
人の心の闇と、過ちを悔い改める懺悔心、そして人を想う愛情、道徳心。
そこにBL的な萌えと、ミステリー要素が絡み、めっちゃ読みごたえのある1冊でした。
文句なく、神評価です。
いやー、面白かったです。
実は、この本を買うかどうかで散々悩みました。
だって、BL×ミステリー、しかも〝殺人〟て堂々書いてあるじゃないですか!
正直、大丈夫なの?B級にならない?って思ってました。
いや、本当に失礼しました。
楠田先生、ごめんなさい。
伏線の張り方が巧妙で、ポンコツな私はあっさりミスリードされました^^;
最初、「刑事コロンボ」的な倒叙ミステリーなのかな?と思っていたんです。
それは、導入部分で本作の攻めである阿久津という人物が思わせぶりな、事件を匂わせるような電話をしていたから。
私はまんまとやられたわけですが、勘の良い方なら犯人にちゃんと気付けるのでしょうか?
ミステリー好きな方にこそ、是非試してもらいたいです^^
また、人物像の描き方も素晴らしくて、受けである瑞樹が気弱な割にため息つきっぱなしだったり、心の中でムカつく奴の文句言いまくってたり。
そういうところが面白くて、この子好きだな〜と思いました。
離島のリゾートで起こる殺人事件がメインですが、その裏には別の事件が潜んでいます。
実は誰かの過去が事件の影にあり、そこが事件の動機につながるというところが切なさでもあり、作品としての面白さでもあったと思います。
文章も読みやすく、どの人物も怪しくて嫌なやつ(笑)
だからこそ、誰が犯人なのか全然分からなかったです。
じっくりと読めば読むほど、楽しめる作品だと思います。
再読したら別の見方ができそうだし、今度こそ倒叙ミステリーとして楽しめそう!
そして、阿久津の〝瑞樹を守る〟という言葉が救いでした。
惹かれ合う二人ですが、瑞樹のうぶさになかなか進まないラブストーリーとしての焦ったさ。
そこもキュンとして良かったなと思います♡
今回は取材参加のフリーライターとモニター参加の会社員のお話です。
リゾートホテルのモニターツアーで起こる殺人事件の顛末を収録。
受様は中学生の春に両親を交通事故で亡くして以来、5才年上の姉を保護
者代わりとして育ちます。姉弟2人の暮らしは決して楽ではなく、大学を
でて就職してもプライベートで遠出をする事は有りませんでした。
そんな受様が休暇を取って旅行に行く事にしたのは、太平洋に浮かぶ無人
島をリゾートとして開発した「アーバンシーズン美浪間島」のオープン
前のモニターツアーに当選したからでした。
受様は内気で人見知りで子供の頃から身体よりも頭を使う方が好きなイン
ドアタイプですが、高級リゾートをうたうアーバンシーズン美ハ浪間島は
ホテルステイだけでも十分楽しめそうです。
ツアー初日、受様は東京湾沿いにある客船ターミナルに着きますが、内心
ドキドキでした。実はこのツアーの参加枠はペアで受様は当選した友人に
誘われての参加でしたが、彼は仕事で参加できなくなり、権利譲渡不可の
ために受様は他人名義で参加しようとしていたのです。
受様は不自然にならない様に緊張しながら受付を済ませます。参加者は
専用客船で12時間かけて美波間島に向かうのですが、1人でいた受様は
旅行雑誌の取材で同行するというフリーライターに声を掛けられること
になります。このフリーライターが今回の攻様です♪
攻様は若く活動的な雰囲気の男性で、一見して自分とは正反対なタイプに
見えます。攻様は参加者の感想も記事に盛り込みたいから話を聞きたいと
言い、名刺を渡されて名乗られては挨拶しない訳にはいかず、あわてて名
乗ります。
ツアーの参加者は10組20人と聞いていますが、1人参加は受様だけのよう
です。受様は同じく1人で参加する攻様に受様が迷惑でなければ食事を
一諸にと誘われます。1人旅を覚悟していた受様はびっくりしますが、
攻様の申し出を受ける事にします。
船に乗船した受様は全てが物珍しくてワクワクしますが、ツアーの説明の
ために集められたシアターハブでは扱いに不満を漏らす元警察官や、フリ
ーライターが取材する事を揶揄する元裁判官や雑誌編集長やら、癖のある
客のせい、受様は出足をくじかれたような気分を味わいます。
その上夕食時には攻様に恋人に仕事を紹介して欲しいという看護師に同席
されてしまい辟易する受様でしたが、攻様は「権威を笠に着て偉ぶる人は
多いよ」と言い、「天罰を信じているから、彼らにいちいち腹を立てない」
とまで言うのです。
そんな事がありつつも、ツアーのメインであるリゾートホテルはまた素晴
らしく、受様はスケッチをしたり、攻様と島を遊歩道を歩いたりと楽しい
時間を過ごしますが、その日の夕食後、プルーで泳いでいた看護師が溺死
する事件が起きた上、美浪間島のネット通信が不通になるのです!!
果たして看護師の死は偶然の事故なのか!?
外部との通信手段が断ち切られたのは不運なアクシデントなのか!?
受様と攻様が参加したリゾートホテルのモニターツアーで次々と参加者が
不審な事故や殺人事件に巻き込まれていくミステリーになります♪
楠田先生のお話はキャラクターの性格や言動がとっても独特で、普通の
会社員同士の恋物語でもいつも思いもかけない展開が待ち受けていて、
いつもワクワクいっぱいで手にしています。
今回は先生初のミステリーという事で、さらにワクワク倍増しで読み始
めたのですが、まさか? まさか!? まさか!! な展開でとっても楽しく読ま
せて頂きました♪
かなり作りこまれた推理モノなので、何を書いてもネタバレになりそう
なのですが、読み始めから微妙な違和感は有ります。状況説明には齟齬
はないものの、何となく座りの悪いような微妙にムムムッ!?となるよう
な台詞がチラチラしていて何かが妙に引っかるのです。
頁が進むと被害者が増えていくのですが、彼らが狙われる理由が判らず
犯人の影がなかなか見えません。疑心暗鬼に陥っていく参加者達に迫る
犯人は想像がついても、なぜこんな行動に出たのかに行き着く読者は
そういないと思います。
更に犯人が明かされると、読者にはますます終着点が見えなくなってい
くので、どうやってハピエンに行き着くのか、最後の幕が引かれるまで
ハラハラとドキドキが止まりません。
そして全てを読み終えて再読すると、○○故の××だと思っていた事が
実は◆◆故の××だった事が判って、もうスゴイしかなかったです!!
気になった方は即入手してサクサク読んで、楠田先生が今回の為に作ら
れたツイッターのネタバレ垢にご参加下されて、ぜひ裏事情までお楽し
み下さい (^-^)v
楠田先生の新作、ずっと楽しみにしていました!今回も泣かされた〜!!先生の大きな愛に包まれた〜!!!
…萌えを叫ぶのはここまで笑
気分的に、暗いけどバッドエンドには陥らないBLが読みたいモードだったので、そんな自分の要望にピッタリなお話でした。
先生の作品にはいつも愛を感じます。今作では特に強く感じました。作中、殺人事件が発生するのに、ですよ?事件の真相が明らかにされる終盤までは我慢の子ですが、全てが明らかになった時、攻めの、受けの、登場人物の、作者の、人間の、あらゆる次元から発せられる「優しさ」に触れたような気がして涙が止まらなくなりました。
読みながら、なんとなく今自分が肌で感じていることについて、作品を通してあらためて問い質されているような気持ちになりました。
自分の発言や行いが誰かの心を深く傷つけているかもしれない。でも自分には関係ないから、自分のやりたいことをやってもいいし、言いたいことを言ってもいい。それで不都合が生じたらお金や権力や立場を利用すればいい。今までそれで通用してきたから、これからもそう。本当に?自分がもしそういったものを利用されて潰される側だったら?黙って泣き寝入りするしかないの?
大切な人を亡くして七年。姉を亡くした瑞樹に阿久津がかけた言葉が、ものすごく刺さりました。先生の、人としての愛情深さを、人として大切にしていることを、そのささやかなセリフからばしばし受け取りました。わたしにとって琴線に触れた場面の一つです。他にもたくさん、たっくさんありますが、ぜひ作品で読んでいただきたいなぁと思います。
真っ直ぐで誠実さを備えた受け攻めのキャラクターも好きでした。お互いに相手を思いやる気持ちや、人間の邪な部分を恥じる気持ちが会話から汲み取れて、地味に救われます。
特に攻め様の、遠慮がちな中にも時々大胆なアプローチを仕掛けたりして、少しずつ距離を縮めていく包容力に癒されました。その二人の背後には、重くて苦しくて深い悲しみが横たわっているにもかかわらず…。