前巻よりもさらにラブコメ感が増した気がします。犬飼の絶倫さに根古がとにかくツッコんでいる印象が強く、根古のせいではないけれど、ちょっと画面がうるさいと思ってしまいました。あとは根古のEDを治すことに対して、犬飼が兎川が登場する前からもう少し真剣さを見せてくれていたらなぁとも感じたり。別に勃起しなくてもいいという考えは、とりあえずセックスできたらいい、という意味にも聞こえ、兎川が登場したことによってやっと根古がいかに本気でEDを治したいと思っているかを理解したという風に見えました。後出し感がずるい気がして。全体的にもう少し根古の体を労ってあげて欲しいなぁと思いました。
思ったより随分あっさりしていたなぁというのが正直な印象です。ストーリーだけ切り取れば、結構重たいもののはずなのだけど、展開の速さや台詞・モノローグ回しなどのせいか、緊迫感を持ったり、同情や共感したりする間もほとんどなく淡々と終わってしまった感じがしました。
恵は自分のことを吉野原と同じだと言っていましたが、割と早い段階から自分を客観的に振り返れていましたし、そういう視点を持たない吉野原とはまったく異なりますよね。もし恵の症状が本当に重度のものだったのなら、私は潤ともっと長く付き合ってみないと、改善できないものなんじゃないかと思ったんです。それがあっさり数ヶ月でみるみる変化していくので、どうにもそこに深刻さを感じられませんでした。なんだ、普通の人間じゃん、という印象で。あとは、潤の掘り下げが欲しかったかな。あの特殊な性格は幼少期から形成されたのか、吉野原と付き合い始めてから形成されたのか。まだ彼の表面しか知らないような気がして、恵とくっついたのを手放しで喜べませんでした。
うーん、読後感はそんなに悪くなかったのだけど、どうも最初から最後までコウとトヒコの関係性がよく分からなかったなぁ、というのが正直な感想です。男の喘ぎなんて萎えるから鳴くなと言われたのがトラウマで引きずっているトヒコと、共感能力が低く人並みに相手の気持ちを推し量れないコウ。2人とも生き辛さを抱えていて、偶然の出会いから一緒に過ごすことでトラウマを克服し、相手を心から好きだという感情も持てるようになる。その流れはまあ理解できるんです。
ただ、大まかな流れとして理解はできても、細かい点がどうにも気になってしまいました。親切にしてくれるとはいえ、濡れ場では最初から結構強引にマニアックなプレイを仕掛けてくるコウに、どうしてトヒコはそんな簡単に惹かれたんだろうと思ったり、コウがトヒコに抱く感情が、一方的な庇護欲みたいなものから愛に変わっていった過程が上手く読み取れなかったり。確かに濃い濡れ場は碗先生の魅力の1つ。でも、今回のストーリーではもっと控え目にしても良かったんじゃないかな、と個人的には思いました。体の関係の濃さに邪魔されて、2人の心が親密になっていく様子が霞んでしまったような気がします。ギャグ作品では碗先生の濡れ場が大好きですが、今回は私には合いませんでした。
甘酸っぱい青春ものとしては良質なストーリーではあったのですが、荒木先生独特の描き方がちょっと合わないかなと感じました。まるでおもちゃ箱のような、デフォルメ多めのタッチ。こういうタッチ自体は嫌いじゃないんです。ただ、それにプラスして小宮山がかなり小さく、目も真ん丸、頰もぷくぷくした子供みたいな見た目なので、高校生同士の恋愛としてはあまりにも幼い感じがして、キャラクター達の関係性にどっぷりハマることができませんでした。そこを除けば、喜多と小宮山、そしてハナの綺麗な三角関係は魅力的だったのですが。私はやっぱり一番高校生らしいハナが気になってしまったかな。
惜しいな、と感じた作品でした。才能をとるか、愛をとるか、というテーマはすごく素敵で惹かれました。先生があとがきで仰っているように、愛に傾倒していくことで、蓮の作風はがらりと変わってしまう。世間から求められていない絵しか描けなくなった自分は無価値なのでは?と、蓮が己の存在意義を見失っていく様は見ていて痛々しく、同情を誘うものでした。
ただ、これもあとがきに書かれていることですが、最初は自死する結末だったのをハピエンに軌道修正したらしく、これが私が作品全体を通して感じた、どっちつかずな雰囲気の一因かなと思いました。元の作風が失われていくことへの不安も、そこまで絶望感たっぷりに描かれているわけではないし、今の作風が世間に受け入れられていくとか、橅木と蓮が今の作風と今後のことにどう向き合っていくかというシーンまではないので、ハピエンと言うにも少し物足りないんですよね。もちろん、蓮が絵以外に存在意義を見つけられたのは喜ばしいことなのですが。なんとなく、中途半端だなと感じる読後感でした。
ギャグ作品というのは重々承知の上だったので、重厚なストーリーを期待して読み始めたわけではなかったのですが、それにしても私には軽過ぎました。心に残るものが何もない…。ギャグ作品でもキャラの可愛らしさだったり、愛おしさだったり、いろいろ感じるものがある作品もたくさんあると思うんです。でも、この作品は展開があまりにも速過ぎて、ずっと置いてきぼりを喰らっている気分でした。領主と忍といういくらでも料理できる美味しい組み合わせなのに、正直もったいないなぁと感じてしまいました。展開を王道まっしぐらにするのではなく、ちょっと邪道を挟んでみたりしても良かったのかな、と思いました。
うーん、濡れ場は上巻よりも良かったのですが、そもそもこの2人がお互いのどこにそんなに惹かれたのか最後までよく分かりませんでした。単純にフェロモンの相性とか、一目惚れってことなのかな。ハナはともかく、連雀が好意を抱くのにはいろいろ理由が必要な気がしたんですよね。ハナへの接し方が急に180度変わったように見えて、その間の流れは?となりました。
きっかけは一目惚れとかでもいいと思うけれど、セックス以外の時の心の交流や、番になるか否かという問題以外の葛藤などをもっと読みたかったかも。ハナの弟も割と存在感があったのにあっさり片付けられてしまったのが、消化不良でした。そして、ハナに高嶺の花感を感じることはついぞありませんでした…。