電子限定描き下ろし漫画付き
碗先生節炸裂でした!!!
最高に面白かったです。
シリアスなストーリーをコミカルに仕上げる手腕、流石です。
そして何より、構成が良かった。
1〜4話までが受け視点、5話〜が攻め視点になります。
この、攻め視点がすごく効いてる!
自分に存在価値を見出せないトヒコが拾われたのは、親切な好青年・コウ。
お礼にとコウとHな行為に及ぶも、トヒコは鳴け(喘げ)なくて……と、いうお話。
トヒコが鳴けない理由が切なくて、自分勝手な理由でトヒコを性処理の道具として扱った同級生に腹が立ちました。
トヒコは鳴けないけど、泣けるんです。だから余計に辛い。
そんなトヒコが鳴けるようにと、あの手この手で責めるコウ。
碗先生お得意の、水責めやお漏らしが惜しみなく展開されていきます。
そして少しずつ心を開き、鳴けるようになるトヒコ。
トヒコがエロ可愛い。
責められている時の表情も、控えめな喘ぎ声も♡
おとなしくて謙虚で、「好きになってもいいのかなあ…」なんて悩んでいるところはキュンとしました。
そして5話からは、コウの本心が明かされていきます。
暗い生育環境、渇き切った心。
慈しみ、愛情、思慮──何一つ持たないまま大人になったコウは、かなり闇深い。
トヒコを責める姿に、少なからず狂気を感じていたので納得。
気まぐれで飼い始めたトヒコ。
コウは、弱い生き物を飼えば何かが芽生えると期待しています。
だけど、自分のためといいながら早々にトヒコを愛おしく思ってる。
あっという間に芽を出したコウの感情。
可愛い、俺を見て、呼んで、鳴いて──。
救われていたのは、コウの方だったんですね。
トヒコを好きだと言って、泣きながら微笑んだコウの表情が絶妙で涙が溢れました。
二人とも自分を見てくれる人を求めて、〝居場所〟を探して彷徨っていたんだと思う。
コミカルでシュールなのに、要所要所で感動させてくれます。
ラストはちゃんとオチもあって、さすが!という感じ。
エロは、変態寄り。
碗作品を読んだことがある方には、期待通りだと思います。
ただ、白抜きがねぇ……残念過ぎました。(シーモア)
作家買い。
碗さんの描く受けさんてちょいアホな子(褒めてます。そして大好物です)が多い気がしていますが、今作品はシリアスと言って良いでしょう。今までの碗さん作品とは一線を画す、そんな作品でした。
前半は受けのトヒコ視点。
後半は攻めのコウ視点のお話。
攻め・受け両方の視点で描かれているために、彼らの感情が分かりやすいストーリーになっています。
主人公はトヒコ。
田舎を出て上京したは良いものの、住む場所にも金銭にも困る日々。
けれど、彼はそこから這い上がる気力を持っていない。
手持ちのお金が尽きた彼は住み込みで働ける場所を探し始めるが、そんな彼に声をかけてきたのは前日にトヒコがぶつかってしまったリーマン・コウ。コウに誘われるがままコウの家に連れていかれたトヒコは最悪な状況(売られるとかハメ撮りされるとか)を想像するが、その想像に反し、コウはトヒコに優しくて―。
タイトルの「鳴けないトヒコ」。
「鳴けない」ってどういう意味かなー、と思っていたのですが、ああ、そういう意味か。
快楽を与えられても、トヒコは喘げない。
声を出すことができないんです。
それなら「鳴けるように」頑張ろうね、とコウからありとあらゆる快楽を施されるようになりー。
トヒコが鳴けない理由。
そしてコウがトヒコに優しくする理由。
碗作品にしては珍しく、かなりシリアスな、ダークなお話です。
が、碗さんらしいギャグが盛り込まれていることによって、シリアス過ぎない。バックボーンがシリアスなのにギャグがてんこ盛りだと、設定も、ギャグも上滑りしてしまうことがありますが、さすがと言って良いでしょう。そのバランスが秀逸です。
過酷な過去を持つトヒコが、コウから与えられる様々なものに癒され、そして感情をあらわにしていく過程にほっとしつつ、けれど、それで良しとはならない。なぜコウがトヒコに優しくしてくれるのか、その理由がトヒコとともに、読者にも理解できないからです。
そこにきての、コウ視点。
んー、お上手です。素晴らしいです。
コウの幼少期、そして学生時代、リーマン時代。
そこを少しずつ描くことによって、コウの「中身」が見えてくる。
トヒコは紛れもなく被害者なのですが、コウもまた、被害者でしかない。
お互いに欠けた者同士、なれ合うのではなく、与え合うことができたからこそ紡がれていく彼らの恋心に、心からのエールを送りたい。
薄幸なトヒコがコウによって幸せになりました、というだけに非ず、コウもまた、トヒコと出会ったことで心の隙間を埋めていく。素晴らしい恋のお話でした。
で、何が素晴らしいって、彼らの心の機微が瞳に端的に描かれていること。
序盤、真っ暗なトヒコの瞳が、少しずつ明るい瞳になっていく。
コウは、トヒコを抱くときに道具を使い、まるでおもちゃのように抱いていたのに、終盤は道具は使わない。
そういったところで彼らの想いを汲み取ることができるのも非常に良かった。
文句なく、神評価です。
作家買いです〜正直あらすじとかよく読まないで買いました。
島子先生の作品にしては珍しく受け攻め両方に闇を抱えさせているなと思いました。
が、島子先生お得意のシュールギャグは健在、というか大大大活躍です。
【「なく」について】
鳴けない?ん?どゆことや、と思っていたのですが、鳴けない理由がまたいじらしくて健気でかわいそうで!この「なく」にまつわる描写があちこちに散りばめられていてそれがぐっとくるんですよね。
-------------------------------------------------------------
「啼け」ないけど、「泣け」るトヒコ。
「泣く」ことを知らないコウ。
「啼か」せてあげたいコウと、コウを好きになって初めて「啼く」トヒコ。
「泣き」ながら想いを溢れださせたトヒコと、初めて好きという感情を自覚し「泣く」コウ。
-------------------------------------------------------------
明示はされていませんが、恐らくコウはサイレントベビーとして育ってしまった人なんですよね。周囲からはサイコパスと呼ばれ避けられるコウは、俺はどこもおかしくない、ちゃんと人間だ、というのを証明するためにトヒコを飼おうとする。だけどペットとしてではなく「人間」としてトヒコに次第に惹かれていって、そしてコウは初めての「人間」らしい感情を芽生えさせる。
タイトルを初めて見た時に、「トヒコってペット?鳥?の名前みたいやん」と思っていたのですが、この何気ないように見えるタイトルがまたこの作品をより深いものにしているような気がしてなりません。
島子先生があとがきで、担当さんからの「コウはからっぽなんじゃなくて枯れてる状態なんですね」「(感情の)土壌はあるんですよ。ただ干ばつ状態でそれをトヒコが潤して証明するっていう」という素敵な言葉を書いてらっしゃいました。
きっと、トヒコの鳴き声や流した涙がコウの土壌を潤して、そこから芽吹いた新緑こそがコウのあの病室での涙だったんだな、と思います。いやあ、いい話ダナア。
【島子先生と言えば】
島子先生と言えば、攻めから受けへのでろっでろでぐっちょぐちょな溺愛が醍醐味ですが、今回もそれが存分に楽しめました。溺愛を心地よく受け入れながらも攻めが実際どんなにやばいことを考えているか分からない無垢で健気で素直(でもえろい)な受けも醍醐味。最高。電子おまけ漫画の、「トヒコの可愛い鳴き声ランキング」を発表するコウのやばさ、そしてそのランキング内容のやばさといったら、、、ぜひ電子でも買っていただきたい、、、!
碗作品と言えば、腸内洗浄、異物挿入、おしっこが標準装備というイメージだが、今作は表紙やあらすじがシリアスなトーンなので、この3点セットはちゃんとあるのか?と変な心配をしていました、私。
が、まったくの心配無用! シリアス&純愛&変態がうまいこと融合していて、エロ盛りだくさんなのに泣けるという心が忙しい作品。面白かった〜!
過去のトラウマから快感があっても声を出せなくなってしまった受けと、そんな受けをあの手この手で鳴かせてあげようとする攻め。
その過程で数々の趣向を凝らしたプレイが登場するのだが、さすがと言うかなんと言うか、コンドームすら普通の使い方しないよね(笑)
他の作品でのおしっこ水風船も度肝抜かれたけど、今回はローション水風船。しかもローター責めのオプション付き。
そんなことまでされてるのに、受けが「コウさん優しい」「丁寧にしてくれる」って思うの、最初は「いやそれ違うただの変態」って違和感があった。けど読み進めるうちに、それだけ過去に酷い目に合されたってことがわかって、腑に落ちる。
攻めも攻めで、会ったばかりの受けにそこまでご奉仕するの、なんで?って思うんだけど、それにもちゃんとした理由があって。
そんな二人の気持ちが通じ合った瞬間は、まさに感動的で、素直に出会えてよかった〜!って思う。特に攻めは受けに会ってなかったら、そのうち何かしら事件起こして警察のご厄介になったりしてそうなヤバさ。でもこれからは受けがいるから、もう大丈夫でしょうね。
両想いになってからも、たっぷりページが割かれてたのもよかったなあ。ベタだけど、受けがお尻の準備をして攻めの帰りを待つってシチュは萌える。
あと碗先生、パンツ履いたまま射精させるのも性癖かなと思うんだけど、カバー下にそれもちょっとありました(電子版もカバー下あるの嬉しかった!)。電子おまけでは攻めにいろんな鳴かせ方をされていて、エロ可愛い受けを堪能できる。
変態プレイ好きな人もシリアス好きな人も、いつもの作者さんらしいギャグっぽいノリが好きな人も、いろんな人が楽しめる良作だと思います。
作家買いです。
文句なしの名作です。
生きる気力がなく、虚無のどん底に居たトヒコにまず共感が振り切れ、同時に、チラチラと散りばめられる島子ワールドにもう一気に引き込まれました。
自分の居場所が作られ、存在を認められることに一つ一つ喜ぶトヒコが尊く、泊められた翌日のちょこまかした行動がたまらなく可愛かったです。
そして、『鳴けないトヒコ』が鳴けることがゴールではなく、トヒコの感情が募っていく過程、告白、からの、ずっと不可解だったコウさんのバックボーンが明かされて逆視点からそれまでの物語をおさらいするという展開が非常に気持ちよかったです。
トヒコの告白シーンは今作で最も島子節がバチクソに全開な部分だと思います。
『変な飲み物』にぎゅううううと心が締め付けられていき、想いが溢れてしまう描写は本当に秀逸です。
めちゃくちゃ共感できるし、あのパッケージのふざけ方も流石ですよね。
そして、コウさんの真相が明かされていくと、極めて鬱な内容で泣けてしかたないのに、島子先生の魔法がかかると笑える流れに自然と乗せられてしまうのが最高でした。
『死んでない 俺はまだ人間だ』というモノローグは本当に感動します。
ドアの前でいつもトヒコが居なくなっていることを覚悟していたという一面も、彼が極めて弱いただの一人の人間であることを表していて好きです。
まるっと一冊表題作で、深みと捻りのある物語に大満足です。
手書き文字での非常に細かい笑いと萌えの要素も、これまでで一番ではないかと思う程でした。