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萌×2作品

エキスパートレビューアー2020

女性hepoさん

レビュー数1050

ポイント数5551

今年度4位

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そういう風に先生が育てた

悪いオトコとの攻防戦、2冊目。
いやはや、グッとくる台詞のオンパレードで、メモを取ろうかと思いました。
その中でも一番刺さったものを、レビューのタイトルにしてみました。

自分のことを信じてほしい岩永 vs 信じられるわけがない宮田の2回戦。
ひとを信じるというのは、言葉で言うのは簡単ですが、ものすごく難しいことですね。
何も疑わず、裏も読まず、相手が言うことを100%そのまま受け取る。
余計なことはしなくて良くて、実行するべき行動はたった1つ。
ただこれだけのことがどうしてこんなに難しいのか。
それは人間が経験で学ぶ生き物だから。

弄ばれた過去と、本気に見えない余裕。
絶対にまた同じ轍を踏むという予感しかない状況で、相手を信じられるひとなんて果たしているでしょうか。
しかも目の前には嫉妬に狂った助手の白石くんという、良い見本がいる。
岩永を信じて、また同じ結果になったら、何も知らなかった高校生の頃はまだ先に続く人生の方が長くて、立て直すことができたけど、32才の今、果たしてそんな時間の余裕はあるだろうか。
そう考えてしまうのも無理はないんですよね。

年齢、岩永の態度、過去の失敗から学んだ自分。
そういうものが宮田の矛であり、盾となるのですが、岩永の方はどんなに矛で突いても、何も否定しないことでスライムのように飲み込んでしまう。
宮田応援団である読者も、こんな相手に勝てるわけがないと思ってしまうではありませんか。

矛も盾も飲み込まれて、もう身を守るものがなくなったとき、宮田は相手の牙城に素手で向かってしまう。
それ、一番お勧めできない戦い方!と思いつつも、にやにやしてしまう自分を発見。
完全に捕虜になった状態で、まだ口だけは達者な宮田にもにやけてしまう。

ところで、タイトルに入れた台詞です。
1巻で宮田に牙を剥きつつも、岩永には冷酷なまでにスッパリキッパリ引導を渡されていた白石。
ああ、本当に興味のない相手にはここまで冷酷になるんだと思ったものですが、同情とは言え一度抱いたのは事実。
その後も就職が決まらない白石を手元に置いたのも事実。
そういう気遣いが相手に期待をさせることを分かっていない。
「相手の気持ちを考えない」という宮田の台詞に大きく頷くわたしたち。
そして仕事の邪魔すらしてしまう白石に呆れる岩永に、宮田の上記の一言ですよ。
それな!ですよ。
白石を変な風にしてしまったのも、宮田に信じてもらえないのも、そういう風に岩永が育てたから。
その場限りの気まぐれや、同情を相手がどう受け取るかという想像力の欠如。
それによって相手の人格にどのくらい影響が出るか考えない、予見力の乏しさ。
自分が種を撒いた結果に、自分が苦しめられる皮肉。
「明日、世界が終わるとしたら」という仮定でやったことが、結局明日も明後日も続く世界の中で、思わぬ方へ動いていく。
深い。いい。

宮田、素手になってしまったけど、強くなりましたね。
宮田の強さが、vs 白石戦でも発揮されていたのが良かった。

全然語り尽くせませんが。
続きは出るのかな?どうなのかな?

悪いオトコと全面戦争

顔の良い男は、顔が良いことを前提にした人生を送ってきているわけで。
『人は見た目が9割』という本が話題になって久しいですが、イケメンや美人は失敗しても「意外とおっちょこちょいなところがあるんだ」っていう人間性的にプラス評価になり、そうでもない人は「顔がソレなんだから、仕事くらいはちゃんとやれよ」とマイナス評価につながる。
そういう世の中ですよ。
そんな場面を目撃したとき、人間って怖いな!と思いました。
さらに若い頃、超が何個もつくほど面食いだったわたしですが、彼氏が地下鉄のホームでわたしを見ている風を装って、後ろの鏡に映る自分を見ているのに気付いたときに、面食い、やめました。
イケメンは遠くにありて思うもの。

そんなわけで顔面で得をしてきたであろう大学准教授の岩永(元・星澤)と、高校時代の後輩で、現在はビジネス系出版社の編集として働く宮田の話です。
ビジネス誌の連載を依頼した側と、された側。
その昔、顔にポーッとなって初恋を捧げた側と、弄んだ側。
表面上のビジネスパートナーを貫きたい側と、何かを企んでいる側。
忘れたいのに忘れられなかった側と、忘れなかった(らしい)側。
いろいろと思惑が対立する2人が、面白おかしく、ときに切なく描かれています。

基本的に宮田目線、ときどき岩永目線です。
なのでどちらの思惑も分かるけど、岩永はタヌキ!という先入観を植え付ける手法のせいで、読者からしてもどうにも岩永を信じきれない。
ゲームのつもり?それとも本気?
ついつい岩永の顔色を伺ってしまうけれど、余裕ある表情しか見せない!タヌキ!

高校時代の駆け落ちエピソードが出てくるのですが、今のところ、岩永目線でしか出てきません。
雪の降りしきるホームで、初乗り料金の切符を持って宮田を待つ岩永。
そのときから再会するまで、一度も会わなかった2人。
キスしかしていないから引きずるのか、約束に現れなかったから傷付いたのか、それとも本当に恋の芽が岩永の胸に芽生えていたのか。
ガンガン攻めてくる岩永の攻撃をかわしつつ、岩永の助手の嫉妬を買いつつ、うっかり流されつつ、何とか防戦する宮田。
なぜか「がんばれ!宮田!」と、手に力が入る。

木下先生の作品の不思議なところは、ここです。
ふつうなら「結ばれる」ことを願いながら読み進めるのに、「負けるな!落ちるな!」と反対の方向に応援したくなってしまう。
それもこれも人物設定の妙。
岩永が上手すぎて、いいように転がされている宮田を応援したくなってしまう。
それでいて、結ばれると嬉しくなる。
クセになるんですよね、この不思議な魅力が。

さて、岩永は本当に悪いオトコなのか。
今回も宮田をおもちゃにして遊んでいるだけなのか。
2巻で真相を確認してまいります!

癒される〜

植物のヒーリング効果が、ここにまで届くような爽やかな作品でした。
pixivで1話だけ読んで、気になっていて、やっと購入しましたよ。
可愛い。ひたすら可愛い。

院生の御影は、中学の卒業式で同級生男子に告白したところを見られて、揶揄われてからというもの、あまりひとと接しないように生きてきた。
植物学を専攻する彼にとって、植物は心を許せる話し相手だったが…。

学部2年で、ゼミに入ってきた七星と知り合って変わります。
2人のサイズの違いがすごい。
189cmで空手をずっとやってきた大柄の七星と、163cmで細っこい御影は、ふつうに並んでいるだけでも相当な大きさの違いがありますが、ベランダで御影が植物と話しているときに、後ろからぬっと七星が顔を出したときの顔の大きさが!
大人と子供ですよ。

最初はコワモテ大柄な七星に、肉食獣の前に飛び出してしまった小動物のように怯えていた御影だけど、行き倒れている七星を心配して一緒に暮らしているうちにときめきモーメントがわんさかと。
同居、良いであります。
生活を共にする+インテリアが癒し=最高。

御影目線で、わりと自虐多めのコミカル。
だけど御影が「一人で生きていく!」と決めるきっかけになった人物との再会があったり、世間が自分のような人間をどう見ているかという問題にも直面するけれど、七星に対して消極的になったり、変に拗らせた考え方にならずに、真っ直ぐに向き合うから、読んでいて気持ち良いんです。

七星の方も良いんですよー。
順風満帆だった七星が、初めての失敗で何もかも失ったとき、言葉も交わしていない御影の姿に救いを見出したというエピソード、ときめきが止まりません。
さらによく「男だから多少乱暴に扱っても平気」というノリがBLでは結構ある中、七星は…、読んで!良いから!ときめくから!

一人で生きていくと決めて、恋愛も、ましてや恋人もいた経験のなかった御影が、少しずつ、誰かと一緒にいることの心地良さ、自分が好意を向けていた相手に好意を返してもらえる喜び、その人のために前へ踏み出そうとする気持ちを覚えていく。
この、少しずつ恋をしていく様子が可愛くて、可愛くて。

癒されます。
ぜひ。

ん?BL?

いやあ、面白かったです。
3巻最後にちらっと出てた5年後が舞台の第二部。
半年遅れでやっと購入して、『海辺のー』から通して読み返したのですが、ここに来てやっと物語が一本に絞られて来た感じがしました。

1〜3巻の第一部はわりと話があっちこっちに行って、まとまりはないけどそれが「日常」って感じも良かったのですが、今作で13才になったふみが…、可愛い!
小さい頃から桜子一筋だったふみが、ついに駿と桜子が婚約していたことを知ってやさぐれましたよ。
やさぐれ方が中途半端なのも可愛いし、気持ちの持って行きようがなくて駿に当たりまくるのも可愛い。

5年経ったら、27才だった駿はもう32才なんですよね。
時の流れを感じます。
一躍売れっ子作家の仲間入りをしたかと思っていたら、ボサコン頭のニートに変身してました。びっくり。どこまでだめ人間なんだ。
橋本家も様変わりして、ゆり子ママは更年期、鬱病から一歩前進したお父さんは元気にバリバリ。そして実央はゆり子ママの代わりに家事をこなしつつ、相変わらずバイト三昧のヒモ亭主を抱えたワーキングマザー状態。

そんな中、ふみの桜子への片思いがメインで扱われていました。
ずっと好きだったひとが自分の兄と結婚の約束までしていたのもショック、自分の好きなひとが兄を好きだっただけでも悲しいのに、兄は男の恋人と呑気にいちゃいちゃしているニート。
兄に当たりたくなっちゃうのも、分からないでもないし、何もかも兄が悪い!と思いたくなるのも分からないでもないぞ、少年よ。
お父さんがいい味出してます。
何と言っても、ゆり子ママに断りもなくふみを養子にする!って決めたお父さんだけあります。

駿はだめだめだけど、良いことも言ってました。
駿だってずっと好きになった人に好きになってもらえるどころか、好きと言う気持ちさえ伝えることができない片思いばかりしてきた人ですもんね。
思春期の少年の、たった一度の失恋で、この世の終わりみたいに呪われても。
駿が言った台詞はぜひとも読んでいただきたい!
真理を突きまくっていて、さすが元売れっ子作家!と思うこと、間違いなしです。

そして小学生の頃、ふみに絡みまくっていた和田くんの娘・ちほちゃん。
彼女の立ち位置も切ない。
好きな子をいじめるのは男の子の専売特許じゃないんですよね。
小学生の頃はちくちくいじめて、今は痛いところを皮肉っぽく突いてくるというやり方でふみに絡んできてました。
この子も可愛い。

ただ、待てよ?よ。
駿と実央は、実央が多忙すぎてキスすら3ヶ月以上ぶりというセックスレス。
5年しか経ってないのに、枯れざるを得ない状況。
嫌な夢で不安になったり、だめだめ駿がそんな実央をきゅんとさせたり、こっちもいろいろあるけれど、メインは先にも言った通り、ふみ。
あれ?BL要素が脇に…?という感じもしないでもない、19才年上の女性に恋する少年の話。

でも面白かったからそれで良し。
続きが気になって仕方ないところで終わっているので、早く5巻が出ないかなあ。

だって家族だから

『海辺のエトランゼ』の続編です。
前作では沖縄の離島に逃げてきた駿が「エトランゼ」でしたが、ここからは実央が「エトランゼ」ということでいいのかな。

久しぶりに読んだら、ちょっと「あれ?」と思うことが多くて驚いてます。
『海辺のー』は何度も読み返していたけれど、よく考えたらこちらは4年前に一度読んだきりでした。
読み返してみて、その理由が分かったような気がします。

駿の元婚約者である桜子から「父の具合が良くない」と聞いて、6年ぶりに地元へ帰ることにした駿。
初めて沖縄を離れる実央も連れて、てんやわんやの道中。
着いた先は北海道。何と日本の端から端まで逃げてましたよ、駿くん。
実家に帰ってみたら、見知らぬ弟(7才)に、腰をやっちゃってるものの元気そうな父が…。

という始まり。
うーん、こんなにわさわさ騒がしかったかな?というのが、久々に読んだ感想。
弟のふみがずーーーーーーーーっと大騒ぎ。
もうちょっと黙っててって言いたくなるほどうるさい。
子供だから仕方ない…、子供が出てくるBLは好きだ…、いや、でもわたしが好きな子供が出てくるBLって、こういうんじゃないよね!?とひとりノリツッコミをしてしまう虚しさよ…。

さらに冒頭部分の実央のサイズが縮んでいて、髪を短くしたことも相俟って、まるで出会った頃のような印象。(徐々に大きくなります)

コマが吹き出しで埋め尽くされている、押しの強すぎるページが続いて、変だなあ、こんなだったかなあと思いながら読み進めてました。

今作ではゲイであることを「気持ち悪い」と言っていた駿の原点が見られます。
好きになるのはいつもノンケの友人。
先回りして釘を刺されたこと。
声をかけてきたひととホテルへ行ったものの、できなかったこと。
自分を肯定されたい、間違ってないと、気持ち悪くないと言ってほしい。
でもそれは同じゲイでは意味がなくて、「ふつう」のひとに、女の子を好きになるひとに認めてほしい。
だけどただの「第三者」ではなくて、身近な「友達」に受け入れてほしい。
そんな気持ちが強くなった結果、結局自分を自分で認められないまま、自分が一番自分を「気持ち悪い」と思い続けてしまったんだなあ。
呪いだな、と思いました。

初読のときに気になっていた、実央の言葉がありまして。
「女の子が好きだよ」って言うんですよね、実央は。
この台詞が初読時は「自分はゲイじゃない」という線引きに思えて嫌だったんです。
でもちゃんと読み取れれば、気付けたはずだったんだなあ。
ああ、実央は駿がずっと待ち望んでいたひとだったのか、と。

肝心の家族の方も、駿の言葉や結婚式の回想でもっと酷い状態を想像しがちですが、おおらかで朗らかなお母さんが主導権を握っている橋本家は歓迎ムード。
お父さんはゲイであることに怒っているというより、その日まで言わなかったことと、そのまま逃げたことに怒ってる様子で、ああ、やっぱり家族ってあったかいなと思える展開です。

ふみはうるさいけど、駿の過去のエピソードをちゃんと読み取ることが出来たので、再読してよかったなあと思った次第です。
ふみはうるさいけど。

子供の一途、おとなのもだもだ

シリーズ1冊目。
そのままアニメ映画になりそうな作画も、背景の雰囲気も素敵すぎる。

3年前、親の決めた結婚から逃げて、宿を経営している親戚のいる島に逃げてきた駿。
最近、いつもベンチに座って海を眺めている高校生・実央が気になって…。

という始まりです。
1冊目に関しては、2人の出会いと別れ、そして再会が描かれています。
幼い頃に父を海で亡くし、母ひとり子ひとりで生きてきた実央が、今度は母を亡くしてひとりぼっちになったとき、声をかけてきたのが駿。
高校生で天涯孤独になって、引き取られた家でも馴染めずに、本土の施設へ行くまでの短い間の交流が、その後の人生を決めてしまうきっかけになるのだから、ひととひとの出会いというのは不思議なものです。
一目惚れを考えたら、恋なんて1秒あれば出来ることなのかも。
ロミオとジュリエットなんて出会ったその日に結ばれて、次の日に結婚してますもんね。

ただこの2人はスピード展開というわけではなくて、離れて3年、相手のこととお互いのことをじっくり考える時間があって。
駿と同様に宿でお世話になっている絵理の粋な計らいか、余計なお世話か、ちょっとしたアドバイスのせいで行き違いはあるものの、実央は3年間、駿とどうなりたいか考えた上で島に戻ってくるのです。

が。

駿のもだもだが長い!
この作品だけでは駿と実央の年齢差ははっきりしません。
結婚するような年齢から3年、そこからさらに3年と考えても、実央より10才近く上なのかなあということはぼんやり分かる。
そして自分に置き換えてみる。
自分が30才近くになったとき、3年前に「可愛いなあ」と思っていた高校生が、「好き!」と言ってきたら…。
「同年代の子とがんばれ!」と言ってしまう気がしますよ。
しかも同性同士。もともとゲイじゃない相手に何かを期待できるほど若くもなければ、その子を「こちら側」に引き込んで責任が取れるほど大人でもない。
それは悩むよなあ、と思うわけです。

それに対して、3年考えてきた実央の押しの強さよ。
若さですよ。
若さに一途さが加わったら、それはもう最強ですよ。
ハーフアップも似合っちゃいますよ、って関係ないか。

駿の元婚約者の桜子さんの襲来の辺りは、うーむ…と思う部分もある。
実央が離れていた3年の間か、もしくはその前に、女の子とも付き合っていたことがあるのも結構びっくりする。
でもたぶん離れていた時期だろうなあ、と推測。
駿とどうなりたいかだけを考えていたわけじゃなくて、他の可能性もあった上で、駿を選んだんだなあと思えるエピソードなので、わたしは結構好きです。
しかも「女の子が好きだよ」って駿にしっかり言ってますしね。

初めてのシーンでは、2人の会話が色っぽさゼロで何だか笑ってしまう。
これもこの2人の味というか、気の利いた台詞や上手くリードしたりされたりなんかが似合わない辺りが良いんです。

これから続いていく2人の関係の礎。
ときどき単体でも読み返したくなる作品です。

入り混じる愛憎

※シーモア先行配信だったのか、2/21にはもう購入できました。
 うっかり上巻のレビューを投稿してしまいましたが、
 下巻のレビューは発売日以降に投稿させていただきます。

表紙に惹きつけられて購入したものの、ここまでヘヴィーな話だったとは。
予想の3倍はヘヴィーでした。

赤嶺英人(えいと)が課長を勤めるAエリアの課長補佐として異動してきた内海曳斗(えいと)。
「また会いましたね」と笑顔を向ける同期に見覚えがない赤嶺は…。

という始まりです。
そこからもう息もつかせぬ怒涛の展開でした。

6年前の新入社員歓迎会の帰り道、酔った赤嶺は内海を無理矢理犯したと告げられて、同じように内海に犯されてしまいます。
2人の端正な顔立ちが醜く歪んだり、顔面黒塗りの描写で問答無用に恐怖心を煽られます。
恨みを晴らしに来た内海と、6年前のことを全く覚えていない赤嶺。
開始早々、お互いに敵対心丸出し状態で、早くもハラハラドキドキが止まりません。
そんな状態ながら、会社の合併、部署廃止の危機を何とかするべく、部長から「顧客リスト」漏洩の犯人の行方探しを言い渡される2人ですが…。

もう怖い!
何を信じたらいいのか分からなくなりますよ。
一体全体どうなってるの?と。
途中に挟まれる新歓の回想と、徐々に読者に明かされる6年前の暴行の全貌がつらい。
内海が最初に赤嶺に対して、どんな感情を抱いたのかが伝わってくるだけに、赤嶺!何で覚えてないの!?酷くない!?っていう気持ちが募りまくり。
憎みながらも最初の印象と変わらない面を見せる赤嶺に、内海が複雑な気持ちを抱えているのも分かるし、ぐぬぬぬ。
弱り切った赤嶺が、寄り添って甘やかしてくれる内海に心を開きかけていくのが…。
ああ、うう、そんなに簡単にひとを信じちゃだめだって!と、iPadを握る手に力が入ってしまいます。

表情の表現力がものすごいんですよ。
睨みをきかせるシーンや、怒りの表情、何かを企んでいる表情、懇願する表情、扉絵に至るまで鬼気迫る空気感がビリビリ伝わってきます。
終盤で赤嶺の元上司への感情に、自分の思いがリンクした内海が涙を流すシーンは、訴えかけてくるものの強さに鳥肌が立ちました。

上巻では2人の因縁と、赤嶺の元上司のこと、その上司のために赤嶺がしたことが白日の下に。
この作品はBL資金が足らなかったら貯金箱をひっくり返してでも、上下巻、揃えてから読むべし!です。
とりあえず上巻だけ買って様子見とか、必要ないくらい先が気になります。
下巻へ行ってまいります!

シーモアは白い線でほんのり修正?修正なのかな?というレベル。
身体の描き方もとっても綺麗です。

「情は情」、ならば強情も「情」

実写化もされて、読んでいないひとを探す方が難しいくらいの名作。
ついにこの作品のレビューに踏み出す勇気が出ました。
BLにハマりたての頃に読んだ作品は”不朽の名作”揃いで、わたしごときが末席を汚すのも憚られていたのですが、そろそろいいかなと。

ノンケとゲイ。
「ひとを好きになる」のは同じなのに、その対象が「異性」か「同性」かの違いで、未来を夢見ることも、親しい人に話すことさえも出来なくなってしまう。
ましてや周囲に知られたら、一番寄り添っていてほしい相手が自分に牙を剥くこともある。

同性同士の恋の辛さで心が固まってしまった嶋と、新しい職場の上司・外川。
打ち解けない嶋を揶揄っているうちに、出来心で手を出してしまった外川は、柔軟すぎるし、いい加減すぎます。でもそこがノンケの男だなあと思ってしまう。
無神経でガサツ、入ってきてほしくないところにズカズカ土足で入り込むのに、柔軟さのせいで憎めない。いわゆる人たらしの類だと思います。

嶋は辛いことを全部飲み込んで、喉元を過ぎるまでじっと待つタイプ。
なんだけど、ガンガン入り込まれたらガードも緩むし、体を許せば心もじわじわ開いてしまうし。

場面展開と言葉選びがすごく巧いんですよね。
ここでこういう言葉を使うと刺さるとか、どう見せたら嶋の抑えていた想いが溢れて出すのを読者に伝えられるかというポイントを全部分かっていて、それを流れに乗せてやってのける。
だから映画やドラマを観ているような気持ちに、って、ああ、違う。こんなことを言いたいんじゃない。

最初に読んだときは、頭と心を撃ち抜かれたような気持ちになったんです。
「BLってすごいな!」と。
ずっと求めていた「同性を好きになったばかりに感じる行き場のない切なさ」が詰まっているなと。
1ヶ月のうちに5回くらい、夢中で読み返しました。

だけど今回、久しぶりに読んでみて、「おかしいな」と思ったんです。
外川も嶋も以前と同じ。
男っぽくて気遣いの足らない外川と、傷付きやすい嶋がそこにいて、前と同じように恋をしているんだけれど、わたしの方が変わってしまったのか。
心を描く作品がすごく増えましたよね、ここ数年特に。
そうなると以前すごく特別に思えていたものが、そこまで輝いて見えなくなると言うか。
外川の無神経さがただただ目立つ。
痛い目に遭ったのに、嶋が外川の出来心で始まった関係をずるずる続けるところに疑問を抱いてしまう。
以前はすごく刺さった外川の「愛情だって同情だって情は情」という台詞の「同情」に引っかかって、「こんなときまで無神経だなあ。じゃあ嶋の強情だって情じゃん」って屁理屈を捏ねている自分にびっくり&がっかり。

レビューと鉄は熱いうちに打て、と思いました。

イロモノ?とんでもございません!

コメディタッチで、楽しく読めます。
イロモノ風ですが、笑いあり、胸きゅんあり、切なさありの盛りだくさんな作品でした。

鳥月寺の住職・蓮正(はすまさ)は視える体質ながら、祓う力はゼロ。
金欠の彼が謝礼に乗せられて、テナントビルに幽霊調査へ向かったところ…。

クセの強すぎる霊に体を貸す羽目に。
お尻+前立腺の快感を知りたいという未練で成仏できない女性の霊を相棒に、体を張って童貞の幽霊くんたちを成仏させていたところ、超有名な祓い屋の名門一族のサラブレッド・桐原と知り合います。

会話のテンポが楽しいんですよ。
蓮正のすぐ丸め込まれるチョロいところも、自虐っぽいところも、天然なところも可愛い。
そんな危なっかしい蓮正を放っておけなくなってしまう桐原の事情もしっかり描かれているので、違和感なく2人の見守り隊を結成できます。
女性の幽霊もなかなか良い立ち位置で、蓮正との掛け合い漫才も楽しいし、いざというときは頼りになるし、最後はほんのり感動までくれるという。

この作者さんの作品はこちらと『ハルマニア』(2019)しかまだ読んでいませんが、作画が!圧倒的にこっちの方が良い!!!
イケメンは誰が見てもイケメン。
美人風な蓮正は、きっちりと可愛いかったり綺麗に見えたり。
2017年からの2年間で一体何があったのか、気になるところですが、わたしはこっちの方が好きだなあ。

ストーリーもしっかりしていて、登場人物のバックグラウンドのおかげでひととなりも見えてくる描き方がナチュラルなので、世界観にハマります。
「イロモノかな?」と思っていた方はぜひ一読を。

All or nothingな究極の選択的愛

最初に読んだときは明(めい)にイライラして、ちゃんとすべてを読み取れませんでした。
その次に読んだときに辛うじて評価だけ入れたようです。
でも今回読み返したら、「神」なんだよなあ。
どうして評価だけ入れるなんて、中途半端なことをしたんだろう、過去の自分。

生まれる前に亡くなった生物学上の父であるマコト。
ひとりで子供を産む心細さから、マコトの親友だった明と結婚したサエ。
片思いのまま、気持ちのやり場を永遠に失った明。
そんな明に「マコト」のフリをすることを強引に持ちかけた真(しん)。
土日だけ「マコト」になる真の本心は…。

『還らずの夏』に収録されている【All things I know】の続編でございます。
真がマコトの存在を知ったきっかけや、明の木曜日の過ごし方の件が描かれているので、読んでからの方が引っ掛かりなく読めると思います。

自分を見てほしいのに、見てもらえない。
いつまで経っても行き場のない想いが消えない。
心を欲しながら、体しか縋るものがない。
やるせない話です。

マコトにとってはどこまで行っても「親友」だった明。
マコトとそっくりに育った真にとっては、本当の父親じゃないと知る前から好きな人。
好きだから他の人に抱かれてほしくないのに、自分が抱いても、結局は「マコト」という自分じゃない存在に抱かれている明という図式が、考えれば考えるほど切ない。
罪悪感を消すために「マコト」に固執する明も切ない。
それに誰よりも家族を夢見ていたのに、我が子を抱くこともできなかったマコトは悲しい。
行き場のないやるせなさがあらゆるところに溢れていてつらい。

そんなアンバランスなバランスが崩れていく様子の描き出し方が見事です。
真は自分を見てほしくて、明は変わっていく自分の心を偽るのが辛くなって。
誰が悪いわけでもなく、みんな、ただ誰かを好きになっただけなのに、どうあっても拗れてしまう。
心理描写もモノローグも、刺さって来ます。

たった1人の人間を選ぶために、それ以外の全てを捨てられる。
たった1人の人間を選ばないことで、そのひとのしあわせを願う。
愛の示し方は違っても、どちらも深い愛。
手を伸ばせば離せなくなると分かっていながら、伸ばさずにはいられなかった心情が紙面から溢れてくるようでした。

最後に本当に蛇足で、お目汚しですが。
時系列マニアなので、つい気になってしまう辻褄。
真は高校1年生で16才。明は35才設定だったはず。
マコトは21才で亡くなっていて、この作品では「15年前 千塚真という青年が事故で亡くなった」とある。
15年前にお腹の中にいた赤ちゃんは、今、14才じゃないだろうか…とか、マコトと明は同級生だと思っていたのですが、明と真の年の差が19才なのは…とか、つい考えてしまう。
いや!そんな些細なことは!どうでもいいの!と思いつつ、気になってしまう。姑でしょうか。