イラストあり
お互い出会ったときの印象は良くなかったし
音楽の趣味が合って意気投合したとはいえ
関係の始まりもわりと唐突だったので
本当に気持ちは交わるのか疑問に思いつつ
読み進めたところがあったけど
性格的にも相性が良いとは言えないからこそ
急速に縮まることがない距離感に萌えがあり、
そこがものすごく刺さりました…!
婚活パーティーで知り合ったということは
お互い『結婚したい』と思っているわけですが
純粋に結婚したいわけでもないという、
胸に抱えているモノがあるふたり。
そういう点では似た者同士なのかもしれませんが
だからと言ってすんなり打ち解けることもなく
セックスしたから絆されたり流されたりもせずに。
『結婚』にこだわる理由や気持ちを明かし合って相手を知り、そして惹かれていく。
という、気持ちが動くまでのプロセスを
すごく丁寧に伝えてくれていたのがとても良かったです。
藤丸は個性強めで良くも悪くも考えが"若い"ので、
彼の言動に椿が手を焼くのかなーと思いきや。
完璧主義なのに自己肯定感が低すぎる椿のほうが
藤丸の数倍面倒くさい奴だったのには驚き。
北斗への想いを完全に拗らせているだけでなく、
自分の中にある理想を壊せない臆病な一面もあり
読めば読むほど「面倒くさいな…」というところ
ばかりが目に付いたりもするけれど
そういう部分をスパイスにしてお互いに成長していく感じ、本当にツボでした。
両想いになったからと言って簡単には変わらない
空気感と、
なんとなく締まらないラストシーンもふたりらしくてすごく好き。
たくさんのドラマがあるようなストーリーではないけれど、彼らの人柄に惹かれてグイグイ引き込まれた作品でした。
千地イチ先生の主人公は、ほとんどが地味。
この作品の主人公も、真面目な地味系。
高校教師の椿征一は、高校教師。
片思いの北斗が結婚すると知り、傷心。
婚活パーティーで、プロポーズしまくる藤丸レンと、推しのヘヴィメタバンドで意気投合、泥酔してベッドイン。藤丸は椿にプロポーズ。
翌日、藤丸の部屋で目覚めた椿は、北斗の訪問に驚く。
『Bararauka』のCEO兼デザイナーで、北斗の仕事相手だと知り、驚く。
北斗の依頼を断れない椿が、レンの生活の面倒を見ることになる。
レンの寂しい生い立ちを知り、どんどんレンが気になり、構いたくなる椿。
色々あって、二人な相愛の仲になり、椿の要望通りのプロポーズをするレン。
最後まで、素直になり切れない椿が、面白かった。
「あれ?これ、千地イチさんの本じゃん」と気づいたのが先月末。
どうもタイトルと斜め読みしたあらすじがしっくりこなかったんですよね。
読んだらもう夢中になっちゃって。
いや、あらすじにちゃんと書いてあるんですよね。
『泥酔し親友への秘めた想いまで喋っていた』って。
ここをねー、ちゃんと読んで匂いをかぎ取ればよかったんですけどねぇ。最近アンテナの感度が悪くなってきたのかもしれません。
何が良かったかって、椿征一という男はね、高校時代に自分の窮地を救ってくれた北斗という人気者の同級生と友人でいる為に必死で勉強をし、身なりを整え、人当たりを考え、おまけに料理までも覚えちゃうんですよ。
それまでは、人の陰に紛れる様な目立たない生徒だったのに。
ただ自分を救い上げてくれた北斗の側にいて、彼に徹底的に尽くすために生きてきたの。29歳になるまで。
おまけに椿は自分がゲイである自覚がないのよ。
北斗から結婚式での友人代表スピーチを頼まれて、自分では気づかずに投げやりになって藤丸とそういうことになった時に指摘され、初めて気がつくんですよ。これが失恋であることに。
この『鶴の恩返し』感とでも言うか、自分の世界のほぼすべてが『大切な人』のためのものになってしまう感じがたまらんかったんですよ。
椿は北斗の為に無理をしているの。
その無理をすること自体は喜びではあるんです。でも、苦しくなるの。
不可抗力で藤丸と一緒に婚活に行くようになって、自然体でいる楽さを始めて知ったりするんですね。
このお話で私が「素晴らしい!」と思ったのは、そこまでやった椿の想いがきちんと報われることなんですよ。
それは『恋』という形ではないのだけれど。
それがあって初めて、椿は次に進んで行けたんだと思ったんです。
「北斗がダメだったから藤丸に」って言うんじゃなくね、自分がやって来たこと全てが『良い悪い』を超えて自分のものとして蓄えられるって言うか。
私はそのシーンで泣きましたよ。
ああ、いい話だなぁ……
タイトルにつきます。素晴らしかった……
二人の感情の動きや恋していく過程が、これでもかと丁寧に書かれた純度の高いラブストーリーでした。文章がキラキラしてた…
デザイナーでCEO、婚活、プロポーズ、ヘビメタなど……目に入りやすい設定は多いですが、私は二人の日常の描写に惹かれました。
想いってこういう何気ない生活の中で、二人にとっては特別な瞬間を積み重ねて、育まれていくものだよな…なんて柄にもないことを心から思ってしまいます。
また攻めの藤丸レンが……こんな純粋で真っ直ぐな男が世の中にいるのかと…!
温室で育ってきたような男ではないのですが、彼の飾らない、そのままの言葉には心を撃ち抜かれます。
車の中で椿さんに言ったあのセリフ……!読んだ瞬間、一旦本を閉じて放心したあと、部屋中転がり回りました……やられた…
迷ってないでもっと早く読んでおけば良かった…そしたら特典とかも色々あったのにな…悔しくて発狂しそう…
どんな形でも、この二人にまた会えたらとてもとても嬉しいです。
面白かったです。
途中まで椿の頑固さに気が滅入りかけましたが、レンの前向きな姿勢が小気味良かったです。
椿に言われた恋愛について真面目に考えてどんどんレンは良い男になっていきます。それに対して椿は親友の北斗を好きだった時から成長しなくて、勝手に誤解してた時はハラハラしました。レンを好きだと確信してから住む世界が違うと臆病になって迷走してます。レンがちょっと気の毒になりました。
椿の誕生日にレン自らが作ったスーツを贈り、高級ホテルで夜景の見える席でディナーを食べて、衆人環視の中で赤い薔薇の花束と指輪を渡して「俺と結婚して下さい」でニヤニヤしてしまいました。
椿にはそれくらいしないと素直にならないと思います。