電子限定描き下ろし付き
君の命令で、君を抱く。
表紙とあらすじだけで回れ右してたんですが、BL AWARD 2020 BEST ディープ部門2位だと知り、しかもレビューも絶賛内容が多かったので気になって約2年前に読破。
あ~…これは賞取ったのすっっっごいわかるわ…。
まず最初の13ページで「どうなるん?!」って心をわしづかみされる。
完全なる病み系でもなく、もちろん痴漢漫画でもない(どちらも少しは要素あるけど)。
本郷さん作品はクライマックスで「あーーー!!!」って度肝を手づかみで引っこ抜かれる展開が待ってるのが多いんだけど、これもまさにそうでした。
やられた…これはネタばれなしで読んでほしい。
絵柄は正直そこまで好みというほどではないんですが、読んでるうちに そんなのどぉーーーでもよくなりました。
いろんな難しい表情とかが適切に表現されてて、なによりTKB描写がいろいろすごい(そこかぃ!w イヤ絶賛されてる方もいらっしゃいます!)。
作者のセンスがあとがきにも光ってます。
欲を言えばもう少し糖度が欲しい!ので(★マイナス1理由)、甘々イチャ2ラブ2を求める方にはこの巻(本編)だけではご満足いただけないかもですが、なんと!
「商業特典まとめ本に収録した描き下ろし漫画」(22ページ、165円) には えいちな番外編が載ってますので、ぜひそちらと合わせてお楽しみください。
去年の2月に本ページの関連作品欄にこの番外編を表示させてもらったので、評価数は現時点でたったの8です。
つまり、多くの方がこの番外編の存在自体ご存じないんだと思います。
そちらにはなぜかシーモアのリンクしか表示されてませんが、各種電子書籍販売サイトでご購入いただけます。
以上、本作はいろんな電子書籍販売サイトで試し読みが常に45ページぐらいありますので、ぜひ試し読みしてみてください(このページ上部からもできます)。
同著者の「シティ・ライツ・バースデイ」と「世田谷シンクロニシティ」もめちゃくちゃおすすめです。
不幸な事故によって自暴自棄になってしまった攻めと歪な母から逃れられない受け。攻めの痴漢行為によって受けと関係ができ、2人とも前向きに変わっていくお話。
エロい描写が多めですが、攻め受けそれぞれに背景があるからストーリーとして不自然ではありません。痴漢行為もそういう意味でしていたんだなと納得できるものでした。
受けは少しずつですが、確実に強く変わっていきます。変わっていくことができた受けが、攻めを支えていくのも素敵です。彼らの先には明るい未来が待っていて、きっと2人で笑っているんじゃないかと、そんなシーンも見てみたかったです。
病的なほどに性的なことを嫌う母に監視され抑圧された主人公みずきは、
電車の中で毎朝痴漢にあっている。
それは顔も知らない相手。ただ手に大きな傷があることだけわかっている。
男子高校生のみずきは、痴漢されるのを嫌だと思っているわけではなくて、むしろ受け入れている。
そして手の傷から痴漢相手である忍を探しだし、
痴漢の証拠を録音し脅す、
という非常に歪んだ始まりかたをします。
こんな始まりかたですが、
お互いを救済するハッピーエンドになっているので、
面白いので是非読んで欲しい作品です。
痴漢が救済へと繋がるストーリーが斬新。
明日への希望も何もなく、無気力に生きる日々に諦めの気持ちを抱いた2人の出会いからエンディングまで目が離せませんでした。
何はともあれ、痴漢行為から始まる愛のカタチに驚きでした。
犯罪行為の加害者と被害者が惹かれ合っていく過程は、実に官能的で背徳的すらあります。が、そのイケナイ事してる感がいい。
心に闇を抱えた者同士、心も身体も全てを曝け出して自分自身を…そして相手自身を知っていくことで、身も心も救われていくストーリーにグッときました。
2人の出会いは偶然だったようで必然であったと。そう思えるような物語でした。
心の隙間を埋め合っていくようなセックスはただの快楽行為ではなく浄化作用のような印象すら受けました。
いつしか忍が心の拠り所となり、高校生・水葵の心に前向きな意思が生まれていくところは胸アツです。母親の過剰な束縛と監視に心が疲弊した水葵が生きる意味を見出していく変化と、水葵と出会ってから生きようと思い始めた忍の変化は、まさにリンクしていて、彼らは運命共同体的な存在なのだと思い知ることになりました。
水葵の母のことはスッキリとしない部分もあったけど、高校生の彼が今の段階で出来ることは限りがあるので、この状況が現段階のベストかも知れません。
でもいつか母親から解放されて欲しいし、解放されるべき。
彼女は水葵をコントロールし、所有物化してきた。自分の身勝手な自己満足で。
そのツケはいつか取らないといけないでしょう。
水葵には……彼には彼の人生を受け生きる権利があるのですから。
未来のことはまだどうなるか分からないけど、どうなるか分からない見通しがこの作品っぽくて良い。その余韻すらこの作品の一部だと思います。
彼らのこれからの行く末を想像し、この作品の楽しみを広げていこうと思います。