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兄弟BLを求めて購入した作品です。久々に読みたくなったので再読しました。
初見ではいろいろと驚かされた作品ですが、今回は純粋に楽しめました。やっぱり好きです。
まずは「こどもの瞳」の感想です。
二年前のある出来事で兄・仁を心底嫌いになっていた弟・岬の元に、事故による記憶喪失で六歳児になってしまった仁がやってくるという設定がすごいのですが、実年齢三十歳の男が六歳の振る舞いをするのは破壊力がすごすぎます。慣れると愛らしいですけどね。
岬は仁を憎んでいたので当然のことながら厄介者扱いをして、六歳の仁は当然のことながら泣き喚いて、それに対して岬は当然のことながらさらに怒って……の悪循環が続く序盤は双方の気持ちが分かるだけに読んでいて辛かったです。城太郎がいてくれて本当に良かった。
祖母も仁に口止めされていたとはいえ、こっそり岬に真実を話してくれていたら岬はもっと仁に優しくできただろうに、と思わずにはいられません。
両親が健在で、かわいい弟である岬を守るために大きくなりたいと思っていた年頃の記憶に戻ってしまうのがまた切ないです。きっと過酷な人生を送ってきた仁にとって、その頃が一番幸せだったのでしょう。
記憶が戻った仁は、幼児化した時のことを忘れたいと言っていました。弟と恋人関係になってしまったという禁忌的な意味合いよりも、弟の岬に甘えていたことが嫌な様子です。だけど、私は仁の記憶が残っていて良かったと思います。
仁は命の危険を感じるほど苛烈な環境で育ったせいで抑圧的な性格になってしまっているので、祖父の死後に事故がなかった状態で二年前の件で二人がすんなり和解するのは難しかったのではないでしょうか。岬も意地っ張りな性格ですしね。
抑圧的な大人の仁は、嫌われて当然のことをしたからと、岬との和解へ向けて積極的に動けなかったのではないか。そもそも心の拠り所にしていたであろう岬に嫌われてからの二年間、どんな気持ちで生きていたのか。そんな考えばかりが浮かんで胸がしめつけられるんです。
仁が子供の頃に大きくなりたいと思ったのは岬を守りたかったからだし、どれだけ祖父に折檻されて辛い目にあっても岬が祖父に育てられなくて良かったと岬の幸せを願っていたし、幼児化して家族に置いていかれたと誤解していた時も自分は兄だからと我慢するような健気な人です。子供でも大人でも、岬を大事に思う気持ちは一貫しているんですよ。
「お兄ちゃん」の正体に気付いてなかったけど、幼児化した仁は岬に恋をします。この恋心は幼さゆえに芽生えたのか、それとも昔から潜在的にあったものなのか。どちらにせよ、仁の魂は岬だけを求めていたのです。
だから、幼児化によって抑圧的だった大人の仁の心を解放できたことは、子供の頃の孤独だった仁を愛で救うために必要だったと思います。
岬に甘えたことを仁は「兄だから」なかったことにしたいようですが、岬と城太郎と感情豊かに暮らした半年間は、長年飢えていた家族との絆を取り戻すための貴重な時間だったのです。岬にとってもそうでした。
ただ、記憶が戻ると、岬が今の自分ではなく六歳の自分を愛していたというのは何とも複雑ですね。でも純度百パーセントのひたむきな愛情を注がれる心地よさを知ってしまえば、岬が六歳の仁を忘れられなくなるのは仕方のないことです。
子供の自分との記憶を追い払えと言う仁に対して、岬は「思い出」は忘れずに、今の仁を知ることから始めたいという結論にたどり着きます。
さっそく体の関係から始まった二人ですが、その場面がとても好みです。他の方も書いていますが、「お兄ちゃん」と呼ばせたところが一番萌えました。あくまでも自分が岬を甘やかして守りたいのだという「兄」の執念がひしひしと伝わって最高でした。
このお話は、妻を亡くした寂しさ、仁への憎しみが愛しさに変わる過程、禁忌に対する罪悪感が薄れていく過程、仁の記憶が戻ったことへの喪失感、抗えない性欲など、岬の心情がとてもリアルなので、追体験したような読後感でした。
欲を言えば、岬と城太郎が仁の家へ引っ越してからのお話をじっくり見たかったです。
続きまして「こどもの瞳2」です。
副担任の堂本と小学四年生の城太郎が恋人になるというなかなかな問題作ですが、切ないお話でした。
結論としては、堂本は英断でしたね。
倫理観は完全に無視しますが、大人と身も心も子供との恋は、どうしても大人が譲歩する以外には成り立たないし、城太郎もまだ子供なので堂本の複雑な心情なんて察することはできません。
だけど、城太郎も子供特有の恋多き男ではあるものの、二番目でもいいと思い詰めてしまうくらい本当に堂本のことが好きでした。岬が仁と一緒に寝ることで、一人で寝なきゃいけなくなった人肌恋しさも堂本に執着する原因のひとつだったのかもしれません。この件は城太郎がかわいそうなので、岬たちに少なからず萌えてしまったことが後ろめたいです。
堂本の選択は正しかったとはいえ、あんな一方的な別れ方をされた城太郎はかなり傷ついたのではないでしょうか。
ボクシングも、きっと堂本の助言通りに一年間は勉強をがんばり、ジムに通えたら堂本に再会できると期待していたのかな、と切ない想像をしてしまいます。
十七歳の城太郎について、私は過去の失恋によって影と色気を持ち合わせた少年を想像しましたが、あとがきを読んで城太郎には無限の可能性があると確信しました。
本来、ここから二人は再会して再び恋をするのが王道なのですが、堂本は昔の面影を失った城太郎を見たことで長い恋を終わらせてしまいました。ここが岬と仁のお話との対比になっていて切なさが増します。
短編なのにとても印象に残ったお話でした。
唯一残念な点は、電子で買ったので挿絵がなかったことです。紙も欲しくなります。
本作は一応年上攻めですが、ある意味究極の年下攻めを楽しめる作品だと思います。
発売順考えずに読みまくっているため古い作品に率直な感想言うのもアレなのですが、思ったよりも萌えていない自分がいました。
そう、予想外に普通と思えてしまったんですよね。
ちょこちょこ先生らしい表現は楽しめるのですが、心にドカンとはきませんでした。
その分気負わず読めるという点はありますけどね(^^)
攻めは子ども返りしてしまった兄ということですが、この手のネタって漫画で見たい気持ちも顔出しちゃいますよね。
大人の姿とのギャップは文字できちんと伝わってくるんですけども。
先生の他作品を思い出すような場面もあり、凄い…これ以上にバリバリブラッシュアップしてるんだな、って感動しました。
表題作よりも実は2の方が好みでした。
表題作受けの息子であるしょーがくせいの城太郎くんに恋してしまった教師の話。
教師はゲイではあるのですが別にショタ好きではなく、好きになってしまったのが城太郎くん=10歳の少年だったと感じさせてくれたところが良かったです。
年相応な城太郎くんですが、父親譲りの正しいモノの見方を、子どもならではの無邪気で素直な直球にしてぶつけてくる。
大人の事情なんて関係ない真理を突く姿は、まるで自分の醜いところまで全て暴かれるような怖さを感じつつも、惹かれました。教師も私も(笑)
成長した後のこれからにも何かあればいいのにー!と思わずにはいられなかった。
話はまとまっているのですが、いやもう少しこの先も読ませて!!となりました。
お兄ちゃんのことが、好き。
お兄ちゃんに嫌われたら、死ぬ
木原作品で近親相姦とショタなんてどれだけキツい話なんだろうとゲスな興味が湧き購入しました。
「眠る兎」がデビュー作と言われて信じられないほど文章も巧みで面白く一気読みだったので、どれを読んでもいいなと思っていたのですが、「眠る兎」は95年出で09年(恐らく)に単行本収録にあたり加筆修正されています。対して今作は99年刊行時のままのようです。
冒頭白けるようなワザとらしい職場の台詞からはじまり、おや…と読み進めましたが、神経をザラザラと研磨されるようないつもの面白さを感じませんでした。兄の実の思いを知るシーンなども予測出来てしまう。
勿論面白いのですが、他の作品と比べてしまうと普通の面白さで、毒は少なめに感じました。時系列を無視して言うのは酷いとは分かっていますが。
6歳児の脳の大人には誰もが苛立ちを感じずにいられないでしょうが、厳しい言葉の数々は酷いだろうと傍目に思ってしまいます。ただそれを受けた事を覚えている大人になった兄から弾糾(かネチネチと説く)してほしかった気もします。6歳児でどうして、どの時点から岬を好きになったのかも聞きたい。
もう一つのお話はなんと1つ目の主人公の息子城太郎と教師。私の嫌いな近場モノ…主人公の友人だとか兄弟のサイドストーリーBLっていうパターンが嫌いです。何でもかんでもBLにするんじゃねぇ!と思っています。ですがその私の感じている嫌悪は、城太郎を悩ませ教師をホモとなじる子供同じく「同性愛はどこにでもある訳でないマイノリティなもの」という偏見が無意識にあるのかもしれません。
城太郎は岬が貧乏でも仁が突然来ても偏見なく素直に対応できる不憫で良い子です。
その城太郎が虐められたり「カタオヤ」と言われたり、兄弟で恋人なのが変じゃないか分からなくてでも誰にも聞けなくてモヤモヤしたりと、この先生でなくても抱きしめたくなります。
真っ直ぐな性格の彼は愛おしく、ゲイである堂本先生も彼からの好意に喜びを感じてしまう、そして子供の彼に安心と強い嫉妬も感じ始めるという、台詞も心理描写も良かったです。
後にその恋に踏ん切りのつく先生ですが、城太郎がその瞬間までにどう乱れ立ち直り、ボクシングに励み再会するならどうしたのか、そこまでを描かない余白がとても良いです。
彼らは別々で生き、思いはもう重ならないかもしれないけど、行動を伴わないだけかもしれない。先生にとって過去になってしまったのだから。
もしかしたら万が一その後再会しくっついたかもしれないし、それは描かれていないので想像する人の勝手を許されていると思います。
今でもふらっと読み返したくなって、目を通してしまいます。
この文庫版が2005年出版なので、もうかれこれ15年弱か…と思うと、個人的にも感慨深い作品です。
木原作品には独特の「痛さ」があって、それがクセになってしまう(と勝手に思っている)わけですが、その「痛さ」が合う・合わないは、本当に個人の趣味嗜好の話になってくると思います。
この『こどもの瞳』も例に漏れず、記憶喪失、兄の幼児退行、近親相姦とまあ多分にその要素がちりばめられているのですが、街子マドカ先生のイラストの柔らかさもあってか、私にはほどよい~やや刺激的くらいの「痛さ」でした。
木原先生はやはりさすがの筆致で、いたたまれなさやチリッとした罪悪感は気持ち良いほどに感じさせてくれるのに、なぜか嫌悪感はそれほど覚えずに読み進められるという…まさに神の名に相応しい作品ではないかと思います。
なんというか、読んでいて「あいたたたっ、いたい…!」という感じなんだけど、それが妙に気持ちよくて、定期的にそれが欲しくなるんですよね…
先入観なしで読んだ初読時が、やはり一番刺激的でしたけれど(笑)
文庫版には、こどもの瞳とこどもの瞳2が収録されていますが、私が読み返すことが多いのは無印のほうです。
幼い頃父方の祖父に預けられて今まで絶縁状態だったエリートの兄が、体は大人、頭脳が6歳くらいの子供になって子持ち主人公(弟)の元にやってきた……というお話です。
兄×弟と禁断を含んだ設定ですが、びっくりするぐらいサラッと読めます。
書き下ろしのほうは、ショ…ショタコン……! と申し訳ありませんが若干引きながら読み、でも最後まで読むととても切ないお話だと思いました。個人的に、現実を描いてくれたこちらのお話の方が好みでした。
いつもと違う設定の話を読みたい、という方におすすめだと思います。