余命わずかな山神様×心優しい薬師の、胸を打つ和風ファンタジー!

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表題作白狼さまの恋ぐすり

月白、不治の病に冒されている白狼の山神、22
弥一、『おくすりさま』と慕われる薬師、22

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

人も獣も等しく救う“おくすりさま”と慕われる薬師の弥一は、山の利権を狙う人間と山を守りたい山神との諍いに巻き込まれ、怪我を負う。そんな弥一を助けたのが、子供の頃に一度だけ出会った白狼の山神・月白だった。神域の月白の屋敷に連れられた弥一だが、そこで図らずも月白が不治の病に冒されていることを知る。“命に代えてもお前を治したい”――可能性を信じ、献身的に治療にあたる弥一が愛おしくて堪らなくなった月白は「これからは本気で口説く」と弥一に宣言して…。

作品情報

作品名
白狼さまの恋ぐすり
著者
雨月夜道 
イラスト
サマミヤアカザ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
ISBN
9784041083376
3.5

(16)

(2)

萌々

(6)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
56
評価数
16
平均
3.5 / 5
神率
12.5%

レビュー投稿数6

民話調BL

前半エロ度低め、心理描写が重点の、異種交流ラブロマンス。
BLが、性差や種別などの壁を越えた愛の物語だとしたら、評価に値する作品だと思う。

弥一は幼少時の戦乱で、家族を殺された天涯孤独。
領主の次男に助けられ、薬師の左衛門の預かりとなる。
山神様と称して、里人に信仰されているのは、獣人。白い狼の一族。
山神なんているわけないと、孤児で薬師に養われている幼い弥一は、師匠が毎日拝む山神の祠に泥団子を投げつる

師匠が病にかかり、夜の山に一人で薬草を採りに行った弥一は、山で迷子になり死にかける。
そこへ小さな白い狼が現れて、里まで送ってくれた。
その道すがら白狼と交わした言葉の通り、動物たちが薬草を咥えて弥一の治療を受けにくる。
山神様の存在を信じて、いつか幼い頃の愚行を謝りたいと思う弥一。

領主が代替わりして、山神の神域にある泉に毒を流す。
領主の弟から連絡を受け、毒消しの薬を作り、熊たちの案内で神域の泉に行くと、動物たちが苦しんでいた。
そこに、昔出会った白狼が現れて・・・

白狼神の月白と薬師の弥一の恋。
弥一は、月白の不治の病を癒す。・・山神の活力源は、人の信心。
成瀬かの先生の「琥珀色のなみだ~子狐の恋~」と似た、自然霊の化身の白狼。
こういう民話調は、自然と共存するには何を大事にしたらよいのか、考えさせられるので好き。
人化すると絶世の美男子になる月白の、飄々とした軽い口調が、良かった。事態の重苦しさを軽くしている。

1

ショックを受けてすぐにひっくり返る攻めの兄が楽しい




里を守ってきた山神を信じない領主の暴走によって起きた領地の荒廃と巻き込まれる山神と薬師の話

<あらすじ>
「定めた地では狩りをしてはならない、木を切ってはならない、狼を殺してはならない」
山神との約定を守ることにより、山神からの恩恵を受けている久住の地。
ところが、新たな領主となった頼義は山神を信仰していなかった。
どれだけ土地をうまく治めようと山神のおかげだという領民たちの考えに憤り、山神は自分たちの努力を掠めとるだけの盗人だといって憚らなりません。
そして、とうとう山神たちを殺す算段を始めるのです。

弥一(受け)は人も動物も等しく治療する優秀な薬師です。
弥一も昔は頼義のように山神に師匠の功績を横取りするろくなものじゃないと思っていましたが、決して姿を見せないはずの山神と邂逅して以来考えを改めたのです。
いつも身近に感じられる山神に感謝する弥一でしたが、毒薬を使って山神を殺そうとする頼義の策により巻き込まれてしまいます。
毒薬によって傷ついた動物たちや山神たちを癒すため奮闘する弥一。
しかし、山神の長の長子・蒼夜は毒をばら撒いた人間を信じられず弥一の協力を拒絶します。
その時に、蒼夜を取りなしたのはいつも弥一のそばにいた山神・月白(攻め)でした。
弥一の持っていた解毒剤を躊躇せず飲み、効くことを証明し他の毒に侵された仲間たちを助けるのに力を貸してくれるのです。
弥一の薬により皆が回復していく中、何故か月白だけがなかなか回復しません。
実は月白が原因不明の病に侵されていることを知った弥一は命に代えても月白が回復する薬を作ると約束します。
それを聞いた月白は治療を受ける代わりに口説かせろと言ってくるのです。


弥一は幼い頃の戦火で家族を失っています。
苦しみながら死んでいった妹のことがトラウマとなっており、人を助けることができない自分は無価値だと思っています。
そのため、しきりに口説いてくる月白の言葉を信じることができません。


神狼である蒼夜たちは灰狼なのですが、月白は白狼です。
白狼は原因不明の病に侵されており皆20歳前後で命尽きてしまいます。
ずっと研究がなされてきましたが、原因はわからないままです。
どの白狼も治療をがんばり、病に立ち向かうのですが誰一人打ち勝ったものはおらず絶望して死んでいくのです。
月白もそんな仲間を間近に見て、すでに快癒を諦めています。
そのため、効果を疑う解毒剤をためらいもなく飲んでみせたり、なんとしてでも治療法を見つけるという弥一の実験のような治療を受けるのです。
そして、幼い頃投げやりになっていた自分を立ち直せてくれた弥一を口説くのです。


神狼である彼らの力の源は領民の信心です。
頼義の問題とは別に白狼の病気の問題、それに絡んだ領民の信仰心の問題、二人の恋愛と濃い内容ではありましたが、ちょっと詰め込み過ぎになったような気がします。
これらの問題を解決するのに忙しく、二人の恋愛部分があまり書かれていなかったように感じました。

話としては面白かったけど、萌えとしては今一つ。

やっと頼義の問題が解決し、二人は愛を確かめ合ったけど、まだ病気の問題は残ったまま。
あっという間に10年経ち、やっと満足いく結果が得られ、老いを意識することができる喜びに浸る月白。
という感じで、ちょっと二人のいちゃいちゃがが足りない。


どちらかというと読んでいて印象に残ったのはツンデレな月白の兄・蒼夜でした。
初めは人間に不信感いっぱいで弥一を攻撃してくるような気の荒い感じでしたが、溺愛する妹に「嫌い」と言われただけで泡を吹いて倒れたり、月白と弥一が抱き合っているところに鉢合わせてもやはり泡を吹き、かとおもったら、一族のことで走り回っていたり、耳をへたらせて月白の身体のことで弥一に頭を下げたりと百変化な蒼夜がすごく可愛かったです。

電子書籍おまけ
「知ってたよ」
弥一をストーカーをしていた月白の思い出。

弥一と出会って、生きるのを諦めることをやめ、弥一のために頑張ろうと決めた月白。
姿を現してはいけないという決まりを守りながらいつもそばにいて手助けしていました。
それはさながらストーカーのよう。
溺愛する妹に付きまとって嫌がられている蒼夜の行動と同じだと気がついた月白は愕然とします。
それでもやめることは出来ず、月日は経ち今は伴侶として弥一の世話を目いっぱい出来ることを楽しんでいます。
それを見た弥一が一言、「こんなに世話をやきたかったのに今まであんなのでよく我慢できていたな」と。
気持ち悪いと嫌われるかもと絶対秘密にしようと思っていたのに実はとっくにばれていたのでした。
あんな世話の焼かれ方嫌じゃなかったかと聞く月白に、「今は嫌だ」と答える弥一。
「もうお前が見えないのは嫌だ」と、ちゃんと触れて話して目を合わせなきゃ我慢出来ないと言う弥一に愛しさいっぱいになる月白。

まだ身体の方は治っていないようですが、2人のイチャイチャする様子が楽しめました。

そして、本編でも、妹を溺愛している様子が見えた蒼夜でしたが、ストーカー具合にも笑ってしまいました。

1

貴方の一言に支えられて

今回は不治の病に蝕まれた白狼の山神と里で唯一の薬師のお話です。

受様が攻様の不治とされた病の治癒法を探し、共白髪の誓いを立てるまで。

受様は15年前に住んでいた家も家族も戦火に焼かれ、野垂れ死にそうなと
ころを領主の次男坊によって拾われ、手厚い看護を受けます。受様は自分に
も薬師みたいな力があれば家族を助けられたのにと涙します。

受様を助けた薬師は腕は良いものの立身出世を望まず、山に籠って薬草取り
や薬草作りに勤しむ奇特な老人でした。領主の次男坊は周囲を説得して受様
を薬師に弟子入りさせ、受様は薬師の後継者として励みます。

老薬師は久住の地は天から遣わされた神狼が山神となって守る地だと言い、
毎日山神の祠を掃除して感謝の祈りを捧げていました。しかし受様は目に
見えないものを信じられず、何より治療した患者が治ると山神様のお陰だ
というのを理不尽だ思っていました。

そんなある日、老薬師が風邪をこじらせて倒れてしまいます。受様が懸命に
薬を煎じて看病しても一向に回復せず、受様は解熱草に一縷の望みを託して
1人で山に入ります。

運よく解熱草は見つけますが、山道で迷ってしまいます。老薬師に恩返しも
出来ないままに妹の様に儚くなったらと思うと誰でもいいから老薬師を助け
てと叫ばずにはいられません。

するとそんな受様の声を聴いたかのように翡翠色の瞳を持つ白狼が現れます。
白狼は死に賭けながらも老薬師を案じる受様を放っておけずに姿を現したの
です。この白狼が後に攻様となります♪

人語を解する白狼は自身の体温で受様を温め、受様の将来人や獣の患者を
助けたいと言う夢を励まし、そうなったら手助けしやるとまで言ってくれま
す。しかし、受様が山神への信仰を改め、1人前の薬師となっても白狼と
受様の再会は叶わないませんでした。

受様は白狼に告げた通りに里の人間ばかりか山の獣もみる「おくすりさま」
として慕われますが、そんな受様を利用としようと名主ばかりか家督を
継いだ前当主の長男の現領主までも迫ってくるのです。

というのも現領主は山神を畜生と罵り、里人が何かと山神の恩恵を口にする
のを苦々しく思っていたのです。受様の毒薬で狼を殺し、山神を討つ事さえ
厭わない領主に受様はかつての自分を見るようでしたが、白狼との邂逅が
領主と自分との決定的な違いとなったことを痛感します。

しかし、受様に袖にされた領主は毒薬を作らせ、山の泉に流すという愚行を
決行、 兄の動向を訝しんだ次男坊は秘かに受様に毒薬を届けて解毒剤を作ら
せます。受様は獣たちを救うべく入山しますが、山神達は人間である受様を
信じず牙を向くのです。

果たして受様に彼らを助ける術は有るのか!?

生まれながらに病を患う白狼と人間の薬師という種族を超えた恋物語を描く
和風ファンタジーです♪

一般的カップリングでは受様の"健気"率が高いかと思いますが、雨月さんは
攻様の"健気"率が高め、その上人外率も高いという、もふもふ好きな私には
たいへん美味しい作家さんです。

本作もあらすじと設定からしてかなりツボなお話だわ♡とワクワクで手にし
読み始めました (^O^)/

受様は毒薬を仕込んだ領主の手下として怒気しか向けられません。そんな
受様を庇う様に毒に侵された狼が現れます。この狼こそ成長した攻様です♪

攻様は受様の解毒剤を飲み下して山神たちにその効果を見せつけ、受様は
山神たちの里での養生を許されますが、山神たちの人間不信は根深く長の
長子である攻様の兄も受け入れてはくれません。

受様の解毒薬によって回復した攻様は、受様を甲斐甲斐しく世話をします。
山神の里で暮らす中で受様は白狼である攻様が不治の病を患っている事を知
るのです。受様は薬師として攻様の治療をかってでるのですが、治療を受け
る代わりに受様を口説くことを許せと迫るのです。

現領主が神殺しを仕掛けている事からかなりシリアス路線と思って読んでき
ましたら、山神の里が舞台となってからはコミカル傾向になってきて受様が
薬師の腕を活かしてパパッと治療しちゃうの!? とも思いましたが、雨月さん
のお話がそんなにあっさり着地するわけがありません。

攻様の事情は生まれつきの多病だけではなく、人間の向ける山神信仰もまた
攻様の寿命に深く関わっているのです。そして受様が人間界から消えた事を
山神を滅そうとする現領主が利用する事態になり、受様が攻様と幸せを掴む
までハラハラ&ドキドキでとっても楽しく読めました♪

人間を見護る神と神を敬う人間との関係が物語の根幹となります。

誰かを愛する事、信じる事。己の中にある正義を貫き通す事、心を偽らぬ事。
己の望む応えを得るために一時目をつぶっても、それが己の心を偽る行為な
らやがては心が悲鳴をあげることになるのですよ。

山神の存在を認めない傲慢な領主、山神を信じ兄を支える次男坊、人間達を
嫌う攻様の兄狼、受様に懐く攻様の妹狼、山の獣たちが受様や攻様と対立
し、協力し、傷つけられ、て、関係性を変えていきます。

受様が攻様の手を取れて本当に良かったです。

今回は雨月さんの既刊から『千年恋空―ずっと好きな君へ―』をおススメ。
攻様がすごーく頑張る素敵なお話ですごく泣けます。

1

今回可愛いのは攻め

雨月さんお得意の土地神様とそれに愛される身寄りのない人間のお話です。
ただ「いつもとちょっと違うかな?」と思ったのは、今回のお話の受さんは朴訥と言うか、生真面目な人なんです。幼いころの戦乱で、可愛がっていた妹を助けられなかったことをずっと気に病んでいて、長じて薬師になったという……なので「この受さん、もう、可愛いいじらしくてたまりません!」という『雨月さんのあの感じ』が訪れませんでした。それがちょっと残念。

その分、今回のお話は攻めさんがとても可愛い。
2人は子どもの頃に出会っているのですが、このエピソードでも可愛らしいのは圧倒的に攻めさん。
いや、神様なんですけれども可愛い。
そして病弱。
それなの滅茶苦茶男前でもある。
ちょっと新しいタイプ(ひょっとして『今風?』)の攻めさんだと思いましたです。

お話を引っ張るのはこの2人よりも、里の君主である頼義とその弟の義親。
先代が急死してその後を継いだ頼義は山神を信じず、彼らの聖地を奪うことで自国の勢力拡大を図ろうとしています。それに対して弟の義親は、信仰も領民からの信頼も篤い。
でも義親は兄が変わってくれることを信じて、自分が矢面に立とうとは決してしないんですね。
そのせいで山神一族と里の対立がどんどん先鋭化していって、2人が巻き込まれていくという筋立てになっています。

義親の兄に対する盲愛とでも言うような信頼ぶりが、読んでいる途中で「これ、なんかあるのかな?」と勘ぐってしまうほどで、実はわたくしはこちらの関係にちょっとだけ萌えを感じてしまいました。
いや、私が思っているのとは違ったんですけれども(笑)。
でもかなりざわざわさせていただきました。

モフモフあり、剽軽なバイプレーヤーありで、楽しくさらっと読みました。

1

口説く攻め

雨月先生らしいなあと思う作品でしたが、猛烈にささるものを感じられずさらっと読んでしまったので中立より萌にしました。本編230p弱+あとがき。

久住の山奥の庵で薬を作り、人や獣を診ている弥一(やいち)。幼い頃に山中で山神様に出会ったからか、獣たちと意思疎通ができ、とても良い薬を作ることが出来ます。領主の弟にも目をかけてもらっていたのですが、領主は山神の討伐を考えていて、とうとうある日毒を山の水場にまいたようで・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
領主、領主の弟、蒼夜(攻めの兄、なんともユニークなお方・・・)、朱音(攻めの妹)、獣たち少々かな。舞台が山神様たちの里なので、人間少ないです。

**より内容に触れる感想

雨月先生のキャラって、おっちょこちょいさんとか、早とちりさんとか、元気いっぱいさんとかというイメージですが、今作の攻めさんは空元気さん、受けさんもそんなに落ち着きのあるタイプというようには感じられなくて、そんなに萌を感じなかったです。
このキャラだからこそ、体質?遺伝?に起因する虚弱体質を悲劇的にならずに克服していけるので、重くならずに良いし、メンタル強く保って、受けを口説くということが出来るのだと思うのですが・・

攻め受けとも今一つピンとこない中、面白かったのが攻めの兄の蒼夜。妹溺愛、直球一本勝負!という感じの方で、最初やな奴か?と思ったら中盤以降、とても可愛い人になりました。

受けさんも雨月先生の既刊がお好きな方でしたら安心してお読みいただけると思います。
個人的には、攻め受けとも元気良いタイプである場合は、思いっきり笑わせていただくパターンの方が嬉しいのかもしれないと気づいた一冊でした。

2

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