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表題作ニャンダフルライフ

龍崎達也,26歳,交番勤務の警察官
木谷実弥央,眼鏡会社経理部勤務

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

猫を助け交通事故に遭った実弥央は、気づくと猫になっていた。雨に降られ寒さに震える実弥央を保護したのは、アパートの隣に住むイケメン警察官で片想い相手の龍崎だった。猫になったのは天邪鬼すぎる実弥央の願いを猫神様が叶えたからで、7日以内に実弥央だと気づいた上で名前を呼ばれれば人間に戻るという。実弥央は添い寝したりキスしたり、龍崎に甘やかされまくりの猫ライフをしばらく楽しむことにしたが……。

作品情報

作品名
ニャンダフルライフ
著者
越水いち 
イラスト
ミドリノエバ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778127749
3.9

(60)

(24)

萌々

(23)

(4)

中立

(3)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
11
得点
227
評価数
60
平均
3.9 / 5
神率
40%

レビュー投稿数11

思わずグッと来ちゃう、心を打つ心情描写がお見事です(´;ω;`)

猫を庇って車に跳ねられてしまった主人公。
気がつくと、何故か猫の姿になってしまっていた上に、なんと片思い相手に保護されて、一緒に暮らす事になりー。
と言うお話になります。

こちら、キャラ設定だったりストーリー展開と言うのが、とにかく巧みでして。
主人公の性格があまりにツンな為、序盤は好意を持ち辛かったんですよね。
それが、「おお、こう来るか!」と。
この、好意を持ち辛いキャラ設定が、逆に萌え要素へとひっくり返されるのがお見事ですよ。
また、思わずグッときちゃう、心を打つ心情描写もお見事でして。
そう、好きな相手から甘やかされ放題の生活は素敵だけど、そんなのは本当の幸せじゃないのです。
自分自身で愛されなきゃね。
まぁそうじゃ無くても単純に、激甘のニャンダフルライフが楽しくて仕方ないんですけど。


ザックリした内容です。
アパートの隣人で警察官・龍崎に、絶賛片思い中の実弥央。
可愛がってる猫を庇って車に跳ねられた彼は、気がつくと何故か猫の姿になっていたんですね。
怪我を負い寒さにふるえていると、拾ってくれたのはなんと龍崎。
彼から甘やかされまくりの猫ライフは、とても幸せでー・・・と言うものです。

で、実弥央が猫になってしまった理由ですが、車に跳ねられる前に猫神社で願った「龍崎と進展がありますように」と言う願いを、猫神様が叶えてくれたというもの。

猫の姿になった事で素直に甘えられ、確かに龍崎と親しくなれた実弥央。
ただし、7日以内に実弥央だと分かって貰えた上で、名前を読んでもらわないと、人間の姿には戻れなくなってしまい・・・と言う展開です。

まずこちら、主人公である実弥央ですが、かなりの天の邪鬼でツンな青年になります。
本当は甘えたがりで小動物を可愛がりと優しいんですけど、龍崎に対してはやたらツンケンした嫌味な言動をとってしまう・・・。

実は序盤、このツンぶりがあまりに酷くて、個人的には好きになれなかったんですよね。
が、そんな彼が猫になると、逆にこのツンぶりが可愛くて可愛くて仕方ない事となる。

こう、龍崎がですね、とにかくミャオ(実弥央)にメロメロなのです。
一緒にお風呂に入って洗ってあげたり、ミャオが欲しがればフーフーして茶碗蒸しを分けてあげる。
で、実弥央ですが、猫ならば一緒に眠ったりと、素直に甘えられるんですよね。
もう、まさにニャンダフルライフと言った二人のイチャ甘生活が丁寧に綴られ、あまりの甘さと可愛さに悶絶しちゃうんですよ。
また、この時の実弥央がいじらしいと言うか微笑ましいと言うか。
爪楊枝を使ってメッセージを書く的に、自分が実弥央だと伝える手段を思い付くんですよ。
でも、期限までの少しの間だけ、この生活を続けたいー。
いや、ツンケンしすぎだろと思ってたのに、そのツンぶりが可愛くて可愛くて仕方なくなっちゃうのです。
なんかいじらしくて、その健気さにキュンキュンきちゃうのです。

と、そんな中、映画に行く約束をすっぽかされたまま連絡が取れない実弥央を、心配して憔悴する龍崎。
そんな彼を見て、実弥央は罪悪感を覚えるんですね。
また、期限が近づき人間に戻るために行動を起こそうとすると、何故か文字と言うものが分からなくなってる事に気づくー。
龍崎の話してる言葉もだんだん理解出来なくなりと、自分がどんどん猫寄りになっている事が分かり・・・と続きます。

これ、人間に戻る為の手段が無くなってしまった上に、自身がどんどんただの猫になって行くと言う、実弥央の絶望感が切ないです。
彼がそうなった時に、強く願う事がグッとくるんですよ。

自分の名前は、まだ覚えている。
大事な人達の名前も、ちゃんと全員覚えているのだろうか?

人間としての記憶を持ったままより、忘れてしまった方が幸せに生きられるだろう。
でも、忘れたくない。
龍崎への愛しさも、寝顔を見つめるだけで泣きたいほどの幸せも、忘れたくないー。

いや、切ない。
ものすごく感情移入しちゃって、心が痛んで心が痛んで仕方ないですよ。
あの甘々ライフから一転、こう来るなんて予想だにしなかったですよ。

と、かなり切なくさせてくれる部分はあるんですけど、ちゃんとハッピーエンドなのでご安心下さい。
ちょっとオチが強引と言うか唐突感があったりするんですけど、まぁ愛の力の成せるワザって事で問題無いです。

作者さんのデビュー三作目になるのですが、読み終えた後に心に残るものがある、とても素敵なお話でした。
個人的には、今までで一番好きです。

12

ツンの名作ではなかろうか?

現在、私は激しい幸福感に包まれております。
昨年に引き続き、越水さんの新刊を読めるなんて!
『ロマンスの鐘~』から『刑事たちの~』までの長かった待ち時間を思うと、これを幸福と呼ばずして何と言えばよいのか……もうそれだけで『神評価』付けてしまいました。

でもですね、このお話「推し作家さんの新刊だっ」という感激だけじゃなくて、面白かったんです。
主人公の実也央は他人から見ると、幼少の頃は「可愛げがない」中学高校では「物言いがきつい」「高飛車」と言われ続けてきて三十路前。自分でも思い当たるところはあるんですね。もう、絵にかいたような『ツン』さんなんです。だから今までまともな恋をしたことがない。数少ない実也央の友人らによれば「絶対無理目なダメ男にばかり惚れるのは、本気で恋愛をする気がないから」。
そんな実也央が恋をします。相手はご近所でも「イケメンで好青年」と評判の交番勤務の警官、龍崎。
たまたま隣に住んでいた龍崎に出会う度に「ツンケンせずに普通に話がしたい」「せめて友達に」と思いつつ素直になれない実也央ですが、龍崎の部屋の水道トラブルをきっかけとして映画に誘われます。
けれどもその前日、可愛がっていた野良猫が車に轢かれるのをを助けた実也央は猫になっちゃうんです。
で、気づくと龍崎に助けられ彼の部屋に……誰かに「この猫は実也央である」と見つけてもらえれば人間に戻れると解りつつ、でも龍崎と暮らしていたいと思う実也央は人間に戻れるタイムリミットである一週間を猫として暮らそうと考えます。

お話は度肝をぬくような進み方はしません。
でも、実也央が恋に落ちる理由や、どうにかして龍崎との距離を縮めたいと願う気持ちの描写がとてもとても胸に響くのです。
こんな風にジンと来るのは、実也央の恋心が彼のモノローグとして語られるのではなく、エピソードの積み重ねで示されるからなのではないかと思ったんですね。
例えば、子どもに傘を貸してしまった龍崎とひとつの傘でアパートまで帰ったエピソードなどは本当に瑞々しいのです。
好きだという気持ちがどんどん自分の中で大きく育って行くのに、それを口に出来ない。それも頑なな自分の性格の所為で……これ、多くの人が経験してきたことなんじゃないですかね?
そんな経験を追体験出来るような書き方なんですよ。
これが良いの!
ああ、たまらん!

簡単に人間に戻れると思っていた実也央は、時が過ぎるにつれ、それがどんどん難しくなることを知ります。人間としての記憶や自我みたいなものも薄れて行くことも。
その時、実也央が「忘れたくない」と強く思うのは、龍崎に対する恋心なんですね。
私、それほどツンデレ好きではないのですが、この部分を読んで改めました。
欲しい欲しいと思っていても、自分の殻を破ることが出来ない、ある意味とても不器用な人の本気の恋。
刺さりましたよ、まさに。

しかし、三冊ともお話の肌触りが違う。
越水さんに対する期待が更に高まって行くのを抑えられません。
そもそも、大変読みやすい文章で、所謂『美文』と言うのとはちょっと違うと私は思うのですけれども、でも、紡ぎだされる光景は極めて美しいと感じてしまうのですよねぇ……
読者サービス(今回は猫耳エッチでしたが)も、オーソドックスなんですけれど萌えさせてくれるし。
あと、コミカルな部分とリリカルな部分を矛盾せずにひとつのお話の中に共存させてくれるし。

いや本当に、こんな感じのペースで書き続けていただければとても嬉しいです。
BL小説というジャンルが縮小していく中、是非頑張っていただきたいと心から思います。

10

猫の可愛らしさ!

主人公の実弥央(受け)の一人称で進んでいくのですが、龍崎(攻め)の実弥央への気持ちがよく伝わってくるので読みやすいです。

「ロマンスの鐘が鳴る」でのお互いの気が付かなさも見事だったのですが、こちらでの
・実弥央の思考が、ネコ寄りになっていく様
・実弥央の態度が、本物のネコの行動と同じ
というのが素晴らしかったです。

足元にまとわりついて尻尾をなすりつける場面なんて、うちのネコもそういうことする!と嬉しくなりました。

ネコ好きには手放しでお勧めですが、真面目な警察官の攻めと、素直になれないツンデレ受けがお好きな方にも楽しめると思います!

2

猫好きな方は是非!

猫がかわいい!
実弥央がなったのはシャム猫柄の猫で、想像するとかわいいし、イラストを見てもかわいいし、ストーリーの中で獣医もかわいいと言っていた。とにかくかわいい!
そんなかわいい猫の中身は人間の実弥央で、猫なのに裸を恥ずかしがったり、用を足す姿を見られるのを恥ずかしがったり、キャットフードを拒否したり、言ったことにちゃんと反応したりする。
読んでると活き活きした猫で、不愛想らしい龍崎がデレデレになるのもよく理解できた。
人間の実弥央はデレないツンデレで、子供の頃親戚に「可愛げのない子」と言われたことのある、筋金入りの天邪鬼。龍崎が好きなのにツンツンした態度を崩せず、「それじゃ伝わらないよ!」と読んでてハラハラした。
実弥央が人間に戻るきっかけも予想外で良かった。
ただ、戻った後、両想いになっても実弥央はツンツンしてたと思うので、2人がちゃんと上手くいくのかちょっと不安・・・。

2

吾輩は猫である

越水先生の日常描写が好き。
テレビを付けて、キャスターの顔を見る前に洗面台へ向かい、歯を磨きながら戻って来るとタイミング良く天気予報が流れている。
買い物で特売だからと調子に乗って重い物を沢山買ってしまって、持ち帰る時にちょっと後悔したり。
いつもベランダにふらりとやって来る黒猫ちゃんに挨拶をしたりなんかして。
この絶妙な「ありそう」な日常によって、一風変わった設定の物語を身近に感じさせてくれるから不思議。

物語の主人公・実弥央(みやお)は、ひょんな事から知り合った、町で人気の交番のおまわりさんで隣部屋に住む龍崎に片思い中。
もっと親しくなりたいのに、元々のいじっぱりな性格もあいまって、ついツンツンとした素直じゃない対応ばかりをしてしまう自分に嫌気がさす日々。
それでも少しずつ仲は進展し、龍崎から一緒に映画へ行かないかと誘われます。
そんな一大イベントを翌日に控えたある日、親しい友人達と飲んだ帰り道でいつもベランダに来る「ロン」と名付けた黒猫が現れ、彼に誘われるかのように訪れた猫神社で、何気なく「龍崎との仲が進展しますように」と猫神様に願った事から突然猫になってしまい…
と、かなりユーモラスな設定なのです。
しかしながらこれがまた面白くて。

道端に服や鞄を残したまま猫になってしまった実弥央は、龍崎に拾われ彼の元で保護されることになります。
思っていた形は違えど、猫神様に願った通り龍崎と親しくなり、猫の姿でなら素直に甘えられ、それはそれはニャンダフルなライフを送ることになるのですが…7日間という期限付き。
7日目を迎えるまでに、猫になった自分を認識して貰った上で名前を呼んで貰えなければ2度と人の姿へ戻ることは出来ません。
この魔法が切れる前に…的な設定がすごく良く効いていてですね。
みゃおと命名した拾い猫を溺愛する龍崎も大変微笑ましく、2人の言葉が通じていないはずなのに稀に噛み合うコミカルなやり取りや甘々生活がとても可愛い。
猫に対しても誠実な龍崎の終始包容力がある姿が素敵でした。
一方で、行方不明となってしまった実弥央を思い、憔悴していってしまう龍崎を見て、伝わらないもどかしさや罪悪感でいっぱいになってしまったり、タイムリミットが近付き、どんどん猫化が進んでいってしまっている自分に焦燥感を覚える実弥央のくだりがすごく切なくて。
猫のみゃおとして暮らす内に、龍崎がどれだけ実弥央の事を思っているかが伝わって来るのですよね…
魔法が解けるシーンとっても良かったので、ぜひこちらはご自身の目で確かめて頂きたいです…!

最初に越水先生の日常描写が好きだと書きましたが、猫になってしまった実弥央の猫的視点で見る日常もすごく面白かったです。
もしかしたら猫の日常はこんな感じなのかもしれないななんて。

今作も非常に楽しませて頂きました。
合間に挟まれる「吾輩は猫である。パンツはまだない」や、動物病院での検温に耐えるシーンにクスッとなりました。
きっと今後も作家買いをしてしまうだろうなと感じる面白さ。
次回作も楽しみです。

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