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表題作龍の夫―亡国の神―

国の守り神とされる龍
王族出身の軍隊長

その他の収録作品

  • 後日談(描き下ろし)

あらすじ

番(つがい)に憧れる龍×孤独な軍人永年の愛に変わる人外BL

国王の弟である軍隊長に下った命令、それは――…
守護を得るために、龍神の"伴侶"となること。

夫となった傲慢な龍に、身体の内側から眷属に作り替えられる"歪な夫婦生活"。

「ほかの誰でもなく、私はお前がいいのだ
数百年、共に生きよう――…」

人と深く交わらず孤独に生きると決めたはずが、本当は心の底でずっと欲していた言葉を、龍が与えてくれようとは。
そして、龍が誰よりも"絆"に憧れ、孤独だったことを知ってしまった。

もう独りに戻りたくない、独りにしたくない――…

<幸せに満ちる余生を描いた後日談11P収録>

作品情報

作品名
龍の夫―亡国の神―
著者
須嵜朱 
媒体
漫画(コミック)
出版社
祥伝社
レーベル
on BLUE comics
発売日
ISBN
9784396784911
3.8

(90)

(30)

萌々

(30)

(21)

中立

(5)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
16
得点
338
評価数
90
平均
3.8 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数16

ファンタジー、からのBL

初めての作家さん。onBlueレーベルということでストーリーにはある程度期待して望みました。

これは最初は同人か何かだったのでしょうか?
国を治める長寿の兄と、防衛を一手に引き受ける弟。国の守り神と信じられている龍の要請に応じる形で、弟は防衛軍のトップを離れ、龍のもとに嫁ぐ。

龍は人間に姿を変えられるのですが、その形がちょっと今時のアウトサイダーのよう。目が黒いのが少し不気味です。
弟は、龍に見初められたというより、そばにいて欲しい存在のようで、前半ではBLという恋愛ものではなく、それを離れたファンタジーの雰囲気があります。

龍は、弟を自分のものにしようと、うろこ(逆鱗)を体に埋め込んだり、舌でなめまわしたりする。弟は、その舌による愛撫?で感じてしまうようなのですが、脳みそをなめられるような感覚とも語っており、ある意味親愛を深める行為なのかな?

しかし、弟の方に恋心が芽生えるというでもなく、龍も思い人は別にいるようで、これは恋愛という感じがしない。そして、その自由な感じが独特でむしろ良いとも思えます。

ただ、後半はかなりBLっぽくなってきます。
龍は、当然人間らしくはないので、逡巡や恋わずらいなどの甘さはみられませんが、ただかけがえのない存在として弟を求める。一方の弟も、無垢な伴侶として絆される。恋愛になるのはよいのですが、前半が不思議な雰囲気で始まっただけに、後半が”普通”のお話になってしまったのがちょっと残念でした。

1

貴方

なるほどこういう作品ですか。
あいもかわらず表紙だけで買ってるんですけど、表紙から受ける印象とかなり違いました。かろうじて主役が服の中で射精する(したであろう)シーンがあるものの、エロ無し作品です。表紙からは触手ものかと見紛うエロスを感じるのに。

国の守り神たる龍が、主役の王族である軍隊長を貴方と呼ぶのが序盤からかなり好きでした。ずっとある種の片思いをしていたのですね。破壊と支配の感情のみと豪語するあたり恋愛感情ではないのでしょうが。ただし物語の中でしっかりと龍が破壊と支配以外の感情を持つことは伝わります。BL作品の中ではかなり"神らしさ"のあるキャラクターで、生殖行為や食事を一切しないあたり、先生の作品に対するプライドが伝わる。

ただ自分は漫画としての読みにくさがかなり気になってしまいました。場面転換が分かりにくく、かつ話の雰囲気から世界観を伝える場面や、国民の描写がもっとあった方が好みでした。話の壮大さに比べて描かれている場所が少なすぎる。描きたいものはわかるけど…という気持ち。

1

性欲の絡まない愛がここにある

2019年刊。
このコミックに興味を持ったのは、ちるちるの作家インタビューの記事内で、ヒト形の龍が主人公と添い寝するシーンの幸せそうな笑顔に惹かれたのがきっかけだった。

いつ頃の時代かどこの国(大陸)か、登場人物の名前もないのに、一つの物語としてまとまっている。
しかもエッチシーン無し!!
これをデビュー作として引っ提げてくるとは、何だか作者が只者ではない予感がする。

唯一肌を見せるシーンといえば龍が主人公の体内に鱗を埋め込むシーンのみだが、些細な一コマでも萌えを感じるBL脳があれば問題ないのだ。
個人的には龍の爪に身体を掴まれている主人公ってアングルの表紙が好きだな。
主人公に頭からかぶり付いたり、着衣のまま湖?に落として熱を冷まさせるってヘビーな愛情表現だねぇ。
龍がヒト形になっても根本の体格差とは異なる大きさの違いもいい。
ただ、最初に龍が主人公の事をお前、貴方と定着していない点には引っ掛かったかな。

しかし、肝心の話については一読だけで理解するのは難しかった。
子孫を残す目的もなく三大欲求とも無縁だと龍に言い切られると、じゃあ何の為に伴侶を欲するんだ!!となってしまう。
何度か読んでいると、主人公と兄の間にある"かけがえのない人に先立たれる不安を感じる"という心境に切ないものを感じる。
自分の場合、そこから人が人生の中で欲するものの本質ってのは、じっと誰かに寄り添いたい、寄り添って欲しいって願望だと行き着いたがどうだろうか?
性欲とは違う愛。
それが龍の欲したものなのだろうか?
と、見当違いな解釈でなければいいのだが。

ちなみに龍が初めて"人"を意識したのは主人公の先祖に当たる姫となるが、彼女にはフラれているんだね…(^_^;)
そんな龍にとって幼かった主人公を見つけ出し見守る中で、人には死が直面すると知ると急いで眷属にしたいと焦ったり、力加減を知らずに躊躇したりと何て情の深い龍なんだ。
そんな龍の一挙一動には可愛げが増してくる。
龍の伴侶になると腹を括った主人公にもそんな姫の誇りを受け継いでいて、そんな彼を選んだ龍の審美眼には恐れ入った。

読めば読むほど深いものを感じ取れる一冊だった。

2

表紙のは触手ではなく爪

表紙が、堅物軍人が触手責めを受けるみたいなエロ系かな〜と思い買いました。
読み進めていくうちに、どうやら本編よりも表紙がエロい系か…?と不安がでてしまったのですが、結果的には大満足しました。

表紙のは触手ではなく、龍の爪だったようで、コミックの帯によって触手に見える仕様です。

本編について、はじめは簡単に人と龍の違いから進め、お互いを理解し合える中になっていったが、実は真に理解できていなかった…。という感じでした。
普通の人外BLなら、お互いの違いを認め、分かり合える中になってエンド!ですが、この作品はまだ相手のことを知っているようでまだ知らなかった…と、異種間との交流を掘り下げて描かれていました。
また、その知らなかったことが、王族出身で軍隊長(軍のトップ)の主人公が今まで守ろうとしていたこととも深く関わっていたことで、彼は悩みます。
守るべきものが何なのか…と国を守る立場として、揺れます。

その悩み苦しんだ先に出した、責任ある答え、言葉に震えました。1番の山場です。カッコよかった!

設定やストーリーがよく練られていて、一味違う、大人な人外BLものです。
人物のタッチは青年誌に近いです。好きです。

3

いもぞう

自分の中のエンディング主題歌は「浪漫と算◯ LDN ver.」です。

異種間純愛でした。

龍神の人型が好みの外見だったのと王族軍隊長が生け贄、と言う帯につられて購入しましたがBLでも稀にみる純愛系でした。

長い年月を生きる龍は一緒に生きてくれる人間に憧れて色々探しましたが力が強すぎるためそもそも人間に近寄れませんでした。そこで主人公を眷属に作り変えて丈夫で同じ年月を生きれる様にしました。その眷属、もとい伴侶に選ばれたのが龍が長寿の呪いを掛けた姫の子孫である主人公でした。
主人公が幼い頃、龍の事を山に1人だからかわいそうと言った事がきっかけで彼なら一緒にいてくれるのではと思い、龍が力の加減を覚えるまで見守っていました。
結局力の加減が出来無いままでしたが、一途に見守り続け人との絆に憧れていた龍の念願が叶って良かったです。

*読み終わってから気付いたのですが主人公の名前が私の見た限り出てこない!みんな「隊長」とか「弟君」とかしか呼ばず、双子の兄からも「お前」としか呼ばれてなかった上に龍も「婿殿」と呼んでいたため氏名不明のままでした!

3

孤独を埋めてくれるひと

龍が命に限りのある人間へ興味を持ち絆というものを欲しがったり
人間の真似ごとをして理解しようとする姿がなんとも健気という感想です。
俺様系なのに国王の弟を“貴方”と呼ぶのが大切にしてくれているようで好きでした。
隊長も最初はただ兄や国の為と決意した伴侶の道でありながらも
一緒に過ごすうちに龍に情が移って
真実を知った後でも共に生きていこうとする心温まるお話でした。
婿殿の男らしさと優しさは龍に気に入られてしまっても仕方なかったかもしれませんね。
龍の咥内で得られる快感は想像もつきませんでしたが
直接的ではなくてもなかなかえっちでしたし
それに屈しないように歯を食いしばる婿殿…無駄な足掻きというか尚一層龍を煽るだけなのでは?と思ってしまいました。
せっかくなので一度だけでも人の姿でまぐわって欲しかったです(正直)

3

タッチも好みだし、今後の作品も楽しみ

 表紙のイメージほど陵辱とか蹂躙といった印象はなく、むしろハートフルな読後感が残る作品でした。不器用で孤独な龍が、人間の伴侶を得て、誰かと寄り添い合う温かさに初めて触れる物語。不老不死で地上のあらゆる生物を凌駕する強大な力を持っていても、心はけっして満たされないものなんだなぁと改めて考えさせられます。他人と心を通わせられることの喜びは、何にも勝るものなのだなと。

 ストーリーもよく練られていて、龍と隊長の会話も適度に笑え適度にシリアスで、デビュー作でこのクオリティは素晴らしいと思いました。ただ、完全な私個人の好みとして、異種間だと反発し合ったり打ち解けるのに時間がかかったりしてくれると尚良いという思いがあったため、この評価になりました。買って損はない、良質な作品だったことは間違いありません。人間の姿になった龍と、安易に濡れ場に縺れ込む展開にならなかったのも良かったですね。エロに比重を置いていない分、2人の心の変化に集中して読めると思います。

2

寂しがりやの龍に萌えろ

とある国の守り神と国王の弟が織り成す、恋というにはいささか初々しい、龍と人間の異種間の絆を紡ぐ物語。

国の安寧を約束する代わりに国王の弟に要求されたのは〝龍の伴侶になること〟だった。
平和を条件に人外のものに嫁ぐその設定はまるで昔話にでてくる異類婚姻譚を思わせる。

龍は食事をすることも、睡眠をとることもなく、人がもつ情というものを介さない。
いちおう人型をとることはできても、生き物として人間とは根本的に違うものだというのが嫌というほど感じてしまう。
それでも、龍は〝人〟を慕い、〝絆〟に憧れるのをやめることはできなかった。
そして、遂には強引に人間を伴侶として迎えてしまう。
これって龍としてはかなり変わり者らしい。
本来、龍は人間に興味などもつことはない。
龍とは種の異なる生き物というよりは、天災のようなものだから。
たしかに天災と言われれば、それと理解しあうのも、情を通じあうのも、難しいよなあ。

それでも、一頭(匹)と一人は少しずつ少しずつ絆を紡いでゆく。
ときに反発し、教え教えられ、守り守られ、甘え甘やかされ(そりゃもうワンコのごとく)、互いに支えあい、笑いあう。
あれ、これって人間同士の夫婦と同じじゃない?
そんな風に気の遠くなるような時間をかけて、共に生きてゆく二人がいとおしく、うらやましくもあった。

3

龍への愛おしさがどんどんデカくなる

王国の守護神とされている龍と、国王の双子の弟で軍隊長のお話。

争いの元になるからと、王家から除外され子供を作ることも許されず、王族の為国民たちと違て長寿の為、愛する家族を作る事も無くただ国の為に戦い続ける隊長の事情がたまらなく切なかったです。
そんな中で、守護神の龍に興味を持たれた隊長は、今後も守護し続ける代わりに伴侶として眷属になる様言われる。
国の為に生きてきた隊長がまたも自分を犠牲にして条件を受け入れるのは可愛そうだったけど、国王の兄がちゃんと弟の不遇を理解しているのは救いでした。

人間と根本的な考え方の違いで、なかなかお互いのことを理解できない龍と隊長が少しずつ会話を重ね龍の事・人間の事をしていくのは素敵でした。
龍が隊長に興味を持ったきっかけの回想はちょっと切なくて龍への愛しさが一気に高ぶっちゃいました♡

龍に性的欲求も愛情的感覚も無いので、BLという括りにはなかなかあてはまりずらいですが、それを抜きで読んでも十分に入り込める素敵なお話でした。

2

孤独な龍と人間が夫婦になる話

表紙だけ見て おっ、触手モノかな??と思ったのですが違いました。
スライム触手かと思ったら龍の爪でした。

和モノファンタジーで人外攻め、いいですね。
無性の攻めって初めてだったのですが、好きです!
挿入こそないものの、性行為の真似?みたいなことがあって、ちょっとエロかったです。

最初は、龍のことを不気味で怖い存在だなと思っていたのですが、受けと出会ってから表情がコロコロ変わっていくところが可愛い!!と思いました。人間の姿になった方が気安く接してくれると気づいたときのニカーって笑顔が、良い…。

人々と接することができない孤独な龍と、王家の血筋だから歳をとるのが遅い孤独な受け(250歳)。どちらも同じような寂しさを感じてる似たもの同士の話です。夫婦になれて本当に良かったね…。お互いの救済って感じです。
陛下であるお兄さんも良いキャラしていて好きです。あんなに小さな容姿をしていたのに、最後は年老いて…。何百年たったのだろう。

書き下ろしが特に好きで、夫婦感が増してました♡

一言でいうと、仲間や家族などの「絆」の本。
BLという枠に収まらないような大作で、素敵でした。

4

想像してた異種間ものと違ったけど良き!


異種間もので、攻めが龍で受けが王族の軍隊長さん。しかも、王族の血を引いていると、普通の人間とは違って長生き。
ときたら、私の心がこれ面白そー!!!と、ビンビンにセンサーが鳴っていたのですが、他のかたのレビューを読んだときに、エロはない。と書いてあったので、ちょっと買おうか悩んでしまった作品。
私の中の勝手なイメージで、異種間ものってそれなりにエロいシーンがあるイメージだったので、想像してた異種間ものと違う!正直、それならやっぱり買わないでおこうかなぁ…と、欲しいものリストから外していたのです。が!!!

なんだか、やっぱり気になる~と、購入。
あ、買って良かったなと思いました。

当初は、おいおい龍さんや。一体、何をしたいんだい?と、思うこともありましたし、龍と人ということで、そもそもの意識の違いというか、異種間ならではの、お互いが理解できない2人。

でも、龍も人もお互い寂しいという気持ちを持っている。
そんな2人が、お互いの寂しさを埋めるように、徐々に家族になってくれて本当に良かった。

一番最初に抱いた異種間ものイメージとは違ったけど、とても素敵なお話でした。

2

異種間同士の尊敬と愛情と…

恋愛というより異種間交流というか、
異種間愛という感じでしょうか?
確かに、青年誌のような絵柄とストーリーですが、
私はとても心動かされるものがありました。

国を護ってもらうために、自らの身を龍に捧げた軍隊長と、
孤独な龍との交流を描いた物語です。

守護を受けるために隊長は龍に嫁いだのに、
敵国に攻められ多大な被害を出してしまいます。

龍はどうして護ってくれなかったのか?

その答えにハッとしました!
自分の手で立ち上がり国を護ること……
それを望んでいたのは隊長なのに、
そのことを改めて教えてくれたのは龍でした。

国を護ってくれないなら龍は必要ないのか?
その葛藤にも、その答えにも胸が熱くなります。

孤独な龍に寄り添って生きると決めた隊長の気持ちを嬉しく思いました。
人に信仰するものがある事は、心の支えにもなるでしょう。
きっと人間にも大切なことなのです。

龍と人間が共存することができれば心強いし、
もう龍が一人ぼっちで寂しい思いをすることはないと思うと、
とても素敵なラストだったと思います。

4

なんちゃってではない異種婚姻譚。

はじめに余談ですが、表紙のカラー絵が線の滲みまで見て取れる、手塗り感溢れる仕上がりで、手描き大好き人間はテンションが爆上がりしました。それとも最近のデジタルは、そこまで再現できるようになってたりする……?

さて、本題。先行レビュアーさんもおっしゃっているように、表紙とタイトルと帯がある意味でミスリードをしています。なので、表紙で妄想を膨らませすぎないほうが良いかもしれません(主にエロ的な意味で)。

国の守護役を降りようとしている龍と、国のために、龍の要求に従ってその伴侶となることを決めた王弟(軍人)の物語。帯には龍×王弟と書いてありますけど、実質受け攻めなしです。

読後の感想は、あー、なるほどーー、こうきたかーーー、という感じでした。事前にエロなしとの情報はつかんでいましたが、お相手がそもそも、三大欲求すら存在していない生物だったとは。というわけで、異種婚姻譚と言いつつ、性愛的な要素はほぼ皆無。ブロマンスではなくBLを標榜する作品で、それはかなり珍しいのでは、と思ってしまいましたが、私はこの作品、ちゃんとBLだと思いました。が、ここが受け入れられないという方も、きっといらっしゃるでしょう。

そんなわけで、そもそも生物としての折り合いを付けるところから始まる二人のお話です。この辺がヌルくない。そこらの異種婚姻譚でうやむやにされがちなところを、キッチリ描いてくれています。

表紙が詐欺でなくミスリードと言ったのは、実際にこういうシーンがあるからですが、それはエロいというよりむしろ痛いシーン。主人公が龍の眷属として体を作り変えられるに当たり、鱗を体内に埋め込まれる。麻酔無しで腹を割かれて異物を埋め込まれるわけですよ。そして、馴染ませるために龍になめられて大量の唾液を浴びせられる。主人公が感じているので、この辺りがエロ的な萌えどころと言えば萌えどころですが、ビジュアル的には完全に食べ物的意味で喰われているので、あんまり萌える余地はないかも。

主人公や読み手からすると、主人公が龍の伴侶になると決めた直後にこの展開が来てえええええ、となるのですが、のちのちこのシーンの裏事情が、龍視点で語られます。

最初は、人間とは考え方も在りようも全く違い、理解し難く恐ろしいばかりだった龍の側の事情と気持ちが徐々に明かされてゆく。このあたりが物語のキモになります。

主人公は途中、国の守り神であるはずの龍が、何かを守るという発想を持たないのではないかと疑い、その振る舞いに疑問を持つのですが、これは正解。

「天災が人に興味を持つなど、哀れなことだ」

これは物語のキーパーソンとなる「姫」(王弟の遠い祖先で、龍が人間に興味を持つきっかけになった人)の独白ですが、この台詞が龍の本質を言い当てている。龍が憧れを抱くのも宜なるかな。

龍という種族にとっての人は、人にとっての虫なんかと同じような存在なのでしょう。基本的に意思の疎通もできないし、共に生きるには儚すぎる存在で、殺してもなんとも思わない。そんな龍という種族の中で、それでも人という生き物と、人が人を守ることに興味を抱いたこの龍が、変わりダネだというオチなんですね。

そして変わりダネ故にそれを共有できる相手がおらず、孤独を抱えているわけなのですが、そんな龍の心情に思いを馳せたのが、少年期の王弟。龍はそんな彼ならば自分の孤独を埋めてくれるのでは、と期待し、ひっそり執着していたわけですが、敵国の神から受けた呪いで王弟が歳を取るようになり、焦りを覚えてなんとか自分のものにしようと行動に出た結果が、伴侶として自分のそばにいろ、という要求+前述の人体改造だったわけです。

しかもこの人体改造、「逆鱗」を使ってるんだとか。それ、一枚しかない上、普通、触っただけでやばいヤツですよね……?それ引っぺがすとか、どんだけ……?そして、改造中も失敗したらどうしようと手が震えてるとか。必死か!……やべえ。こいつ思ったより可愛いぞ。最初の頃の威圧感はどこへやら、この龍、後半、完全にワンコと化します。

王弟の側も、長命の呪いの効果は薄れたとは言え、それでも通常の人の法則からは外れた存在で、はみ出し者の孤独を感じる身。描かれる周囲は彼に十分好意的ではあるのですが、誰とも番うことのできない孤独は抜き難くあったわけで、龍の存在は図らずも、その孤独を埋めてくれるものだった。お互いの孤独をお互いの努力と思いやりによって埋め合うこの関係は、十分に愛の名に値するのではないか?

そもそも、生き物としてのあり方が違う存在同士が、互いのあり方を理解して、歩み寄って共にいようと努力する。これって、愛の本質なんだと思うわけですよ。それがちゃんと描けているので、この作品は十分いい作品だと思いますし、BLと呼んで全く差し支えないと思うのです。が、それ以上に、異種婚姻譚として思ったより深く踏み込んでいてくれたところが物語として面白かったので、若干甘いかなあ、と思いつつ、神評価で行かせていただきます。

しかし、読み終わってもサブタイトルの意味がよくわからない……。どこが亡国?

10

タイトルと表紙にだまされた。孤独感を抱えていた二人が寄り添うまで

紙本
修正…エロなし
カバー下…なし
あとがき…なし

1

絵がいい

青年漫画っぽい絵柄です。表紙の強そうな男性が屈辱的な表情で人外に力で押さえつけられてる感じが色っぽくて好みで買いました。このビジュアルで生け贄…受け?!と思って。

普通のBLのような合体エロシーンはありませんが、強い王族軍隊長が無理矢理竜の伴侶にさせられ、竜の眷属になる為に体中をベロベロ舐められてるシーンがエロい。実際性的快感を伴っているんだけど屈辱から必死にそれを隠そうとしてる様がストイックで色っぽい。

こういう「貴様」とか「バカ者」とかの言葉遣いが似合うプライド高いちょっとおじさんの軍隊長が好きな方はぜひ。私は大好き。王族は普通の人間より寿命が長い設定ですが、隊長の見た目年齢はどう見ても30代以上です。

竜は隊長のことを昔からずっと見守っていて、隊長も普通の人間と時の流れが違うため孤独だったけど、竜の一途な想いに絆され、だんだんお互いを想い合う関係になる様子が丁寧に描かれていて感動的です。竜が嬉しい時、尻尾をバタバタ地面に叩きつける所は犬みたいでキュートでした。最後の後日談では本物の伴侶、パートナーになれた様子が伝わってきてほっこりしました。

この絵柄・雰囲気で次回はもうちょいエロ度の高いお話も読んでみたいなあと思わされる作家さんでした。

1

愛をもって孤独を知る

(評価は神寄りです)

世界観も展開も練られていてぐいぐい引き込まれます。
ホントにデビュー作なんでしょうか…?
一般紙で活躍している作家さんと言われたら納得するレベル。
物語としてとても面白かったです!!!

描かれているのは恋愛感情とは少し違うかな?と思いました。
性交渉シーンもありませんし、
そもそも龍が人知を越えた存在なので感情の概念そのものが違うのですね。

がっつり恋愛!って感じではなかったですが、
龍と軍隊長との心の交わりは非常に良き…!
兄弟の絆を感じられるところもかなりグッときました。

※ちなみに一応攻め受けがあるようですがエロ自体も性的欲求もなしです。


さてさて。
お話は龍を守護神と崇めるとある国が舞台となっています。
というのも何代も昔の先祖が龍と話すことが出来て、
龍の加護により王族のみ長寿(250歳ぐらい)の家系になっているのですね。
国王の見た目はまだまだ少年の姿をしていました。

表紙の彼は国王の双子の弟です。青年です。
本来なら国王と同じ年の取り方をするはずが、争い時の因果で成長するようになってしまった。
今は王族を離れ、軍隊長として兵の先頭に立ち国を守っています。

そんなある日、龍神が「もう国を守らない」と伝えてきました。
国王の説得は一蹴され、代わりに軍隊長を寄越せと…。
軍隊長が龍神に話をつけにいくと龍神から伴侶になるよう求められました。
これが国を守る条件だとつきつけられ軍隊長は覚悟を決めます。

軍隊長は龍神の側で生活を始めました。
しかし龍神の話を聞けば聞くほど、崇められてきた言い伝えとのギャップが増すばかり…。

本当に龍神が国を守ってきたのか?
龍神が軍隊長を伴侶に選んだ理由は?
この国の未来は?
ーーーと展開していきます。


私の語彙では上手くまとめられないので興味ある方は読んで下さい!!!

夫夫生活を始めても最初は概念そのものが違いすぎてすれ違いばかり。
けれど一緒に生活すると見えてくるモノがある。心に触れる瞬間がある。
間にある微妙な空気が段々暖かいものに変化するのがすごく良きなのですよ…!

龍神は人型になる時もあるのですが、
最初は姿形を整えても禍々しいオーラで"人"になりきれず。
けれど軍隊長と生活を共にして徐々に人と変わらない笑顔になるのがグッときます(;///;)

で。龍神が軍隊長に拘った理由。
龍は本来なら破壊のみを楽しんでいたのですね。
けれど偶然龍と話せる人間に出会い
人と人が愛を紡いでいるのを知ってしまった。
そして同じような愛を求めてしまった。
欲しくても手に入らないことで孤独も覚えてしまった。

人との関わりに飢えていた龍神は、
軍隊長の何気ない一言に可能性を求めてしまったのですね。
龍神のモノローグには涙腺が緩みました。

また軍隊長も心のどこかに孤独を抱えていたんでしょうね。
兄である国王も、兵達も、皆軍隊長を慕っている。
けれど沢山の人に囲まれているのに置いて行かれてような感覚を抱えていて。

だからこそ龍神の孤独さに共鳴した…というのかな。
上手く言えないんですけど孤独が精神的な繋がりを強くしたように思えました。
それが恋愛感情かどうかまでは読み取れませんでしたが、愛情を感じます。

また兄弟の絆も良かったです!
というか国王ですよ。愛弟が龍神の伴侶になる前も後もずっと気に掛けていて…(;///;)
龍神へ敬意と畏怖を抱いているのに、弟を守る為なら刃向かう気があるとこが良き…////

1読目より2読目3読目…と重ねると更に面白かったです。

13

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