嫌な奴(文庫版)

iyana yatsu

嫌な奴(文庫版)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神32
  • 萌×24
  • 萌5
  • 中立3
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
11
得点
194
評価数
47
平均
4.3 / 5
神率
68.1%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
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媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫
発売日
価格
¥693(税抜)  
ISBN
9784065162798

あらすじ

杉本和也は、大嫌いな「親友」三浦に会うため12年ぶりに故郷を訪れる。再会した三浦は昔と変わらず嫌な奴だったが、和也はどうしても突き放すことができない。三浦に押されるまま、一緒に暮らすことになってしまい……。不器用な友情と、胸が張り裂けるような愛情と性愛を見事に描く傑作!

表題作嫌な奴(文庫版)

三浦恵一、和也の元同級生、小学4年生→27歳
杉本(秋元)和也、高校教師、小学4年生→27歳

レビュー投稿数11

NoTitle

嫌な奴とは三浦の事なのでしょうがあまりそう思えません、粗暴な時期があったのは確かですが中学を卒業する頃には普通の人格になってます。それを否定するのは和也だけでそれでいてはっきりと拒絶せず相手を自分の隣に居させる。嫌なら拒否すればいいわけでそれがプライドからか本心は嫌でないのかはっきりしない。

二人は同じ進学校に受かりますが和也は離れるために遠い土地へ引っ越し、三浦は一人で全寮制学校に通う事になります。独居で車椅子の三浦の父親は家具で下敷きに、それで和也を追いかける三浦を理解できず物語に入り込めませんでした。

0

やっぱりBLが好き(長文)

本編を読み終えて、出版社が講談社文庫だったのを思い出し、これはBLとして刊行されたものじゃないんだと気を取り直しました。ちるちるでは非BL登録ではないけれど、これはBL枠で読んだらいけないやつだったと肝に銘じました。

というのも、ビブロス版で読んでいた者としては、読後全くの別物感がじわじわと襲ってきたわけで、それが時間の経過による記憶の改ざんのためなのか、あるいは大幅に加筆修正されたゆえなのかはさだかでなく…、この際、所持しているビブロス版と読み比べてみたら違いが分かるのではないかと両者を照合して、自分なりに感じたことをレビューとして書いてみたいと思います。わたし自身木原先生の大ファンですが、中にはこれを読んで気分を害される方がいるかもしれませんのでご容赦ください。

まず、本書のカバーイラストをご担当されている丹地陽子さんはとても魅力的な男性を描かれるイラストレーターさんで、前々から気になっていた方でした。以前、匿名でちるちるのニュースコメント欄を拝借しまして丹地さんの情報を募ったところ、ちるちるを私物化しないで!とお叱りを受けた過去があります。あの時は注意してくださった方以外にも、もしかしたらご本人様にも不快な思いをさせてしまい、大変申し訳なく深く反省しています。話は戻りますが、丹地陽子さんはやはり期待を裏切ることなく、表紙絵一枚のみで作品の世界観を見事に表現している、素晴らしいカバーイラストに仕上げられているなと思いました。詳しい経緯は知る由もありませんが、きっと非BL作品だから引き受けられたんだろうな…、BL界に来られることはないんだろうな…、と脳内のどこか遠いところで察している自分がおります。残念ですが、まだまだこちらの世界はきっちり線引きしなければいけない領域だということを心しなくてはいけませんね。

木原先生の作品を読んだらその日の夢見が超絶悪かった、という初めての経験をしたのがこの『嫌な奴』でした。イラストが坂井久仁江名義の国枝先生というのも、この作品が後に一般小説として復刊される未来を暗示しているようで興味深いところです。ノベルス版だと挿絵が多くて受け攻めのビジュアルがイメージしやすかったですし、ストーリーの緊迫感がほぐれる効果もありました。木原先生なので、終始読みながらの拷問状態は通常ではありましたが、わたしとしてはお話の内容以上に、なぜ今この作品が非BLとして刊行されたのかに関心が向いてしまいました。

このお話を腐ィルターを通さずに読むと、三浦は単に気持ち悪い奴です。そんな奴にどこまでもつきまとわれて逃れられない、とある不運な男の話です。結末も同じなのに、ビブロス版で読んだ時の衝撃や不気味さ、消化しきれないモヤモヤは感じられず、こんなにフラットでまとまりのあるお話だったっけ?と読み終えて当惑しました。本作がいわばBLの二次創作としての一般小説とするならば異色作になるのかと思います。ですが、わたしには全然引っかかるものがなく、元ネタのBL版の方でガッツリと三浦と和也の関係に萌えていたわけなので、一般小説側の読者から見たら明らかそっちの感覚の方こそが変態なんだったと自覚しました笑

以下、しょぼい比較が始まりますので警戒してくださいね。

この文庫版の三浦は一層気味が悪いキャラクターでした。ビブロス版の三浦はもっと屈託がなくて、和也に対してストレートに一方的な親友以上の恋情を滲ませていたように思います。それなりに「攻め」仕様だったことが比較してみてわかりました。和也も三浦からの好意を自覚しているんですよね。三浦は擬似的な肉親(家族)の愛情を求め、和也は疎ましく思いながらも偽善的な同情心だけは持ち合わせている。二人の間には出会った時からずっと不思議な引力が働き続けているのです。

たとえば高校受験前、深夜に三浦が和也の自宅を自転車で訪れるシーンや、二人で四万十川へ旅行した時に和也が三浦を置き去りにするシーン、和也に嫌われているのがわかっているのに、三浦が無理矢理彼を凌辱するシーン、そしてその後も和也の職場にまで押しかけずにはいられなかった三浦の和也を求めずにはいられない激情から、薄々と感じられる何かがありました。そういったところにBL的な萌えを覚えていたのに、おかしいなと会話や地の文章をビブロス版と照らし合わせてみたら、わたしが萌えていた部分が微妙に修正されていることに気が付きました。ってことは、BLとして読み取るべき箇所が消されてしまったってことになるのかな?と。それに、小野寺の存在感が前よりも増しています。小野寺と三浦の関係も不思議で、小野寺の方が三浦に執着していて実は好意を持っていたんじゃないかと邪推してしまうくらいです。おっと、その邪推がすでに腐ってましたね…。本作では、受け攻めの概念だけでは昇華させることができない二人の関係の複雑さを、小野寺に活躍してもらうことで補われているような印象を受けました。

こういう読み方をする読者、一番嫌な奴!笑

ビブロス版の方を読み返すと、1998年当時の消しゴムの値段とか、三浦が入院中に読んでいた小説のタイトルが明記されていることとか、リアルな情報が盛り込まれているのを再発見して、ファンとしては二度目の興奮をさせてもらえました。もしBLで先に読んでいなかったら文庫版にどういう感想を抱いたのか…そちらも経験してみたかったです。

BLが後ろめたいジャンルではないことを、BLペンネームのまま非BL作品も生み出していく作家様によって証明されていくのは心強いですし、とてもチャレンジングだと思います。BLはすごいんだぞ!なんていつも心の中だけで叫んでいることだけれど、本書を読み終えて、自分は心底BLが好きで、BLというジャンルでしか読めないものを読みたいんだ!という謎な欲求を実感しました。

4

恋とは呪いである

1998年ビブロス(!)刊行の『嫌な奴』を大幅加筆修正したものとか。
ビブロス版を読んだような気がしていたのですが未読でした。
ただねぇ、物語自体を全く違うものにしてしまうことはないでしょうから「やっぱり木原さんはずーっと木原さんだったんだなぁ……」と思いました。

このお話には、ど不幸まみれの地獄が『ある一言』や『ちょっとした行為』によって天国になってしまう『木原マジック』がありません。だから読んでも幸せにはならない(人が多いと思う)。
ただ、ここに書かれているのはある種の純愛なんだろうなとは思うのです。

親の離婚によって田舎町に引っ越してきた和也が、泥濘にはまった三浦の父の車椅子を三浦と一緒に押してあげたのは、和也からすれば道徳心に裏打ちされたちょっとした親切でしかなかったのだと思います。
でも、孤独に慣れた三浦からしてみれば僥倖だったんだと思うんですね。
まさに、暗闇に差し込んだ一筋の光だったんだろうと。
それに縋るしかなかったんだろうと。
でも和也は暴力的な三浦のことが嫌いなのです。

これ、2人の性質が違い過ぎるから、互いに理解のしようがない。
和也は自分のことを偽善者だと思っているけれど、他者の目を気にするというのは人の気持ちを理解できるからで、これ、別の角度から見れば彼の利点にもなり得るものなんです。だけどその所為で、三浦を決定的に自分から退けられない。
三浦は自分に正直で、努力家です。和也と同じ高校に行くために猛勉強し、ほとんどビリに近い成績からとんでもない進学校に受かっちゃったりする。でも、和也が自分を嫌っていることが解らないのです。いわゆる『空気が読めない』。
この2人、解り合えるはずがない。

だから三浦の想いが強ければ強いほど、和也は三浦を嫌いになります。
いや、むしろ恐れると言った方が近い。
だけど三浦は和也から離れることが出来ないのです。
この恋は呪いに限りなく近い。

ただ、恋と呪いは元々すごく近しいものなのかもしれないのです。
だって『好きの反対は無関心』なのですから。
ホント、木原さんって怖いよなー……

9

どMな読者向け?

”アオイトリ”の甘々(?)な木原先生に”あれ?”な感じだったのですが、
これはもう”これですよ”な感じしかなかったです。
この中に”愛”を見出せる人は相当な上級者と思われます。

そもそも心のない人間に”心”を求めてしまった三浦の悲劇として
切なくなりました。どうでもいいヤツだったら忘れてしまうものなのに、
どうでもよくないから、何年も心にひっかかってしまっている。
ここまで囚われて抜け出せない感情は”恋”とどうちがうのか?
”嫌な奴”とは果たして誰のことなのか?
また、沼にずっぷりとハマってしまうのでした…。

6

あーちゃん2016

こんにちは。「どMな読者向け」に座布団10枚差し上げたいです!

ホントに嫌な奴

「コゴロシムラ」が面白かったので購入。途中メンタル激下がりにより読めなくなって一時中断。「もう駄目だ読めないかも」と思っていましたが、再び手に取ってみたら!何とか読めてとても嬉しいです。私みたいに途中で断念してしまった方、しばらく間置くと読めるかもです。ただあまりにしんどかったので萌で精一杯です。300p弱。以前出版されていたものを大幅改稿しているそうですが、旧版を読んでいないのですいません、比較はできていないです。

高校で教師をしている和也のところに、中学時代の友人小野寺から「三浦が病気で弱っているので一度見舞に帰ってこないか」と連絡があり、夏休みを利用して渋々行ってみたのだが、相変わらずどうにもこうにも苦手というか嫌いな奴で・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
小野寺(中学時代からの友人)、森本(受けの同僚教師♀)、峰倉(受けの生徒♂)、山城(受けの学校の養護教諭)。その他ちょこちょこいますが・・攻め受けが強烈過ぎて。

++内容に触れる感想

小説を読んでけらけら笑ったり、きゅんきゅん萌え転がって現世を忘れたいタイプなので。

最初、同族嫌悪なのか、攻めも受けも嫌すぎて読めなくなってしまったんです。辛かった。人間のイヤな部分を突きつけてくるからかな。いい人を演じているところ、道徳観念が人とは少し違うところ、人の話すことを聞かないところ・・・木原先生、容赦なし。

5日ぐらい間を置いて、また手に取って後半を読み始めてみたら。
諦念?しょうがないなあ、こういう人生もあるよなと思うところが出てきて、読了できました。
いや、こんなに深く執着してくれる人、自分にはいないので、人生の濃さという点ではこの二人は最強じゃないかとか、複雑な思いでいっぱいです。いいのかな、いやコレほんとにいいのか?と読んでいるこっちがグルグル。

所謂王道とか甘いとかセツナイとかいう既存パターンのお話や関係性ではないので、原油のようなドロドロした感情に向き合えてる方限定でおススメします。お話としては凄い!の一言。私は「期限切れの初恋」よりさらにキツカッタでした。

6

あーちゃん2016

うあー。えすむらさま、上級………
私、あまり上手じゃないみたいです。
染まりきってしまって、絡め取られて、
はい上がれなくなります…
木原先生の、まだ読めてないの4冊もあるんですよ、どうしたものか………

えすむら

座布団、ありがとうございますw。”お話として凄い!”という表現、まさにそれですよね。甘々も好きなんですけど、きついのって読んだ後のカタルシスがいいんですよ…byどM

幸せが見えない…でもそれが魅力でもある


嫌いな男がそばに居続けるお話。
でも本当に嫌な奴はどっちなのだろうか…。

三浦と杉本それぞれの気持ちがなんとなく分かるんですよね。

子ども時代の友人の強烈なマイナスイメージって時が経ってもそう変わらないものですよね。
少し落ち着いたと周りが言っても自分の中でプラスになることはなくて…。

死んだって構いやしないほど心底嫌っているのであれば、もっとおもいきって行動すればいいのに…
結局中途半端ででもそこがリアルな人間くさくて…とりあえずダラダラ同居生活を続けてしまう。


三浦も大人になり嫌われていると理解しつつも離れられない。本性知っても傷付くことに慣れた体でそばにい続けてしまう。
優しくされたくても決して優しくなんてしてくれないと分かっていても。

子どもに杉本と同じ名前をつけたことが印象に残っています…。
横暴で自己中だし嫌われ要素が目についたとしても、私は三浦の肩をもちたくなりました…。
でも無理、嫌い!なままの杉本のことも分かる…。

ただ結果どんな気持ちがあれ離れられないということは結局そこに何か…愛とは呼べないがそれに近い何かがあるのでは…あってもいいのではと思います。


相変わらず最後まで幸せが見えなかったですが、SS読んだら少し心が晴れました。
きっと死ぬまで続くよ。

2

戻れない分かれ道

友情か、愛情か、執着か。
杉本と三浦の関係に名前をつける必要はないのでしょう。本人たちも、もうわからないのですから。

それよりも、作品中に二度出てきた「分かれ道」(「道は二つに分かれ…」と表記されている)が、物語の隠れたキーワードのように思えて、気になって仕方がありませんでした。

杉本が三浦に無理やり体を奪われ逃げようとすると、三浦が杉本の職場に押し掛けて言います。
「お前は、俺に会わない方がよかったんだろうな。」
最初に読んだときは、病気の三浦を杉本が見舞って12年ぶりに再会したときのことだと思いました。(表紙の裏に書かれたあらすじが印象に残っていました。)
でも、もう一度読み返して、再会の後、杉本のアパートに押しかけた三浦が言った「お前を見つけちまったからな…」を読んだとき、「会わない方がよかったんだろうな」とは、二人が初めて出会ったときのことなのだろうと強く思いました。

18年前、田舎に引っ越してきたばかりの杉本少年が、何気なく散歩して出くわした分かれ道。舗装された道と、石ころが転がる黄土色の荒れた道。石ころ道を選ばなければ。ぬかるみにはまった父親の車椅子と格闘する三浦を手助けしなければ。きっと三浦は杉本を「見つける」ことはなかったような気がします。
再会し同居する二人が、四万十川近くの橋へ降りる道を選んだとき。橋への道を選ばなければ、後に三浦が体の関係になる女と出会うこともなかったでしょう。

もし、杉本の母親が再婚して引っ越さなければ。
もし、杉本が早いうちに三浦に「嫌い」と言えていれば。
もし、三浦の子どもが死んでいなければ。
もし、杉本の結婚が上手くいっていれば。
数えきれないほどの分かれ道があって。結局、杉本は三浦を振り切れなくて、三浦も杉本を手放せなくて。二人にはもう一緒にいる道しか残されていない気がします。

杉本の「たくさんの選択肢の中には、自分が変わっていく…そんな可能性もあったのだろうか。」というセリフに、心をグサリと刺されてしまいました。
「あのときが分かれ道だった」と気づいたときには、もう戻れないことが多いのではないでしょうか。人生の皮肉で、苦味。いい歳の自分は、過去の分かれ道を考えないようにしてたのに。しばらく考えてしまいそう。木原先生、ひどいよ(笑)。

小野寺のまっすぐさが、もやもやと心に引っかかっています。
そもそも、小野寺が杉本に「三浦に本当のことを言った方がいい」とか、「三浦を見舞ってやってくれ」なんて言わなければ。親切からでも、自分のひと言が誰かの背中を戻れない分かれ道に押し出してしまう可能性があるとしたら。そう考えたら、うかつなことは言えなくなってしまいそう。少し怖い。考えすぎかな。

8

木原沼へようこそ

あー、これこれ、
この救いのない、一方的な執着愛。
これこそ昔ながらの木原節だ。
スマホとかの、通信手段がアップデートされて今のお話になっていますが、かれこれ20年以上再販が待たれていた伝説の作品。
最初から最後まで、全然甘くならずに、ほぼ救いなく終わるところは、BL小説を読み始めた初期の頃、木原作品に出会って感じた衝撃のまま。
こんな風に、どうにもならないダメな人間を、どうやったら描けるのか、発想力も、書き切るだけの胆力も、どちらも圧倒的で、この味を知ったらもう、あなたもコノハラー。
多分、旧版よりはずっと読みやすくなっていると思うので、木原作品初心者さんにおススメして、木原沼の住人を増やしましょう。

14

恐怖すら覚える執着を愛と呼ぶのか?

1998年に出版された作品の新装版で、
スマホが出てきたり看護婦ではなく看護師になっていたり、
大幅に加筆修正されています。

読み終わってまず思ったのは、
これはボーイズラブなのか?ということ。
恐ろしいほどの執着で追ってくる「親友」三浦と、
三浦によって人生の歯車を狂わせていく和也の物語です。

三浦はとても傲慢でわがままです。
それは子どもの時から変わりませんが、
和也と出会って甘えを見せつつ、
一緒の高校に行くために必死に努力する一面もあります。
しかし、三浦の執着は恐怖を感じるほどのもので、
心底恐ろしくなりました。
勝手に家に居つくし、勤務先まで追いかけてくるし、
挙げ句の果て和也を無理やりレイプする……
一番ゾッとしたのは、女だったらどうとでもして束縛できると言ったところ:(;゙゚'ω゚'):
結婚していた時に生まれた子につけた名前は〝和也〟
こ、怖いよ……

ただ、和也にも憤りを感じました。
三浦が嫌いなのにいい顔をして裏で悪口を言っていた学生時代。
慕ってくる三浦に黙って往信不通になり、三浦が火事で亡くなったかもしれないと聞いても同情すらしない。
わたしは、三浦をここまでの悪魔にしたのは、
和也だったんじゃないかなと思うんですーー…

これって和也視点だから三浦が悪者のようになっていますが、
三浦視点だったら和也も相当な悪人ですよ。
実際、和也の親友だった小野寺は三浦を気にかけているし、
和也のことは酷いやつだという評価に変わっています。

けど、どんなに拒絶されても三浦は和也の傍を離れられないし、
三浦は和也の生活の一部になりつつあります。
ここから何かが始まるかもしれないし、
なにも始まらないかもしれないーー 
この物語のその後は、読者の想像力に委ねられています。

『嫌な奴』とは誰のことなのか?
和也にとっては三浦であり、
三浦にとっては和也かもしれません。
そして、読者にとっては……?

お互いを傷つけ合う関係に萌えは微塵も感じませんでしたし、
愛なのか執着なのか分からない感情をBLだとは思えません。
それでも深く心に刺さり、
忘れられない作品になりましたーー…
萌え云々ではなく、作品としての評価は神しかあり得ません。



8

この作品で語られる「愛」は、得体の知れない怪物みたい

粗暴で自己中心的な大嫌いな「親友」。
その親友に延々と付きまとわれる主人公と、とても不条理な物語です。

これ、本当に不条理なんですよね。
大嫌いなのに友人面され、大嫌いなのに同居と居座られ、挙げ句の果てに犯されて、心は通いあわないまま、奇妙な同居生活は続いて行く。
この場合、主人公に共感してやりきれない気持ちになるのが通常だと思うんですけど、主人公もまた、共感し難い「嫌な奴」。
萌える要素がゼロの気がしますが、個人的には好きで仕方ないお話だったりします。

元々はノベルズで刊行された作品ですが、新装版になるにあたり、大幅に加筆修正されています。
大筋自体に変わりないですが、スマホが出てきたりと現代風になっていたり、言い回しなんかが洗練された印象。
旧版より、文章としては確実にこなれています。
あと、初回限定で書き下ろしのSSも付いてくるので、未読の方はぜひ。

ザックリした内容としましては、主人公・杉本が、たまたま転校先で同級生だった粗暴な男・三浦に、延々と付きまとわれると言うものです。

この三浦ですが、粗暴で自己中でと、クラスでも嫌われ者。
そんな彼が、ささいな出来事から杉本になつき、つきまとうようになるんですね。
で、三浦を気嫌いしつつも、「いい子」でありたいが為に拒否せず受け入れる杉本。
やがて二人は周囲から「親友」だと見られるようになる。

えーと、こちらラストの3ページのみ除いて、あとは杉本の視点で語られます。
で、これがめちゃくちゃしんどいんですよね。
杉本の三浦に対する感情と言うのは、まさに嫌悪感しかなくて。

杉本と言うのは、とにかく人の目が気になるタイプなんですよ。
その為、親友である三浦を無下には出来ない。
でも、三浦自体が嫌で仕方ない。
共に居るのが耐えられなくて、とにかく離れたくて仕方ない。
ところが、どこまでも三浦は自分についてくる。

また、親の再婚に伴って卒業と同時に姿を消し、三浦から離れる事に成功します。
ところが、病にかかった三浦を12年ぶりに見舞った事をキッカケに、再び付きまとわれる事になる。

こう、ここが木原先生の怖い所だと思うんですけど、杉本がですね、嫌なヤツなんですけど、それがすごく中途半端なんですよ。
杉本が三浦に振り回されてると同様に、三浦もまた杉本によって人生を狂わされているんですよね。
彼が高校を中退しなければならなかったのも、病にかかったのも、杉本に責任の一端があって。
杉本は三浦を毛嫌いしつつも、その事に罪悪感を覚えるくらいの善良さはあるため、強く突き放す事も出来ない。
そこにつけ込んで、無理やりアパートに居座り、同居生活へと持ち込む三浦。

いや、何だろうな・・・。
こうやって一方的な執着を向け、主人公の人生にどんどん侵食して行く攻め。
そして、そんな攻めからなんとか逃れたいと、精神的にも肉体的にも追い詰められて行く主人公。
これが容赦なく書かれていて、読んでいて不条理だと言う感想しか出て来ないんですよね。
杉本の偽善者ぶりにも、三浦の気持ち悪さにも、奇妙な二人の関係にも、本当にやるせなくなる。
やるせなくなるんだけど、同時に強く心に刺さるものもあって。

三浦と言うのは、とにかく杉本と言う存在自体が、欲しくて欲しくて仕方ないんだと思うんですよ。
それが、執着であれ、愛であれ。
彼もまた、自分が毛嫌いされている事は分かっている。
それでも、離れる事も忘れる事も出来ない。
三浦に執着され続ける杉本も哀れなんだけど、三浦もまた、杉本の愛を求め続けと、すごく哀れなんですよね。
救いと言うものが無い。
それでも、狂ったように三浦を求め続ける杉本に、どこか心を動かされてしまう。

個人的にすごく心に残った部分なんですけど、精神的に限界を迎えた杉本が、一週間姿を消すんですよね。
そこで、戻った杉本を、強姦する三浦。
そこから二人は肉体関係を持つようになるんですけど、「こんな事をして何が楽しいんだ」と言う杉本に対して、三浦が返す台詞がとにかく壮絶で。
「俺が楽しんでると思うか」なんですよ。
お前がいたって、楽しいことなんてあるものか。一人の方がずっとマシだ。
なんですよ。
これこそ、三浦の本音だと思う。

何だろうな・・・。
一緒に居ても傷つけあうだけでありながら、それでも離れる事が出来ないとなると、愛とは一体何なんだろうなぁと。
私が知ってる愛と言うのは、優しくてあたたかくて、幸せにしてくれるものなんですよ。
でも、この作品で語られる愛と言うのは、得体の知れない怪物みたいに感じてしまう。
とても怖いんだけど、怖いから惹き込まれる的に。

まぁそんな感じで、万人受けは絶対しないとは思うんですけど、個人的には好きで仕方ない作品です。
木原作品中では評価もそれほど高くないんですけど、こうして新装版となり、多くの姐さんの目に触れる機会が出来た事を、純粋に嬉しく思いますね。
名作だと思ってるので。

ラスト3ページの三浦視点がとても秀逸なので、こちらもぜひ、読んでいただきたいです。

12

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