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表題作冬色ドロップス

白井豊樹、伊吹に想いを寄せる高校生
高丘伊吹、怪我で入学が遅れたクラスメイト

その他の収録作品

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  • 春色ドロップス
  • 七色ドロップス(書き下ろし)
  • クリスマス・ドロップス(書き下ろし)
  • 夏の渚とドロップス~あとがきにかえて(書き下ろし)

あらすじ

幼なじみの豊樹(とよき)と洋平(ようへい)は、高校に入学して伊吹(いぶき)と仲良くなった。伊吹は受験当日に交通事故に遭った自分を助けてくれたという洋平を密かに想っているのだが、豊樹の片思いの相手は伊吹だった。伊吹の恋を応援する豊樹。ひと触れで均衡が壊れてしまいそうな十代の恋と友情の行く先は……?

作品情報

作品名
冬色ドロップス
著者
尾上与一 
イラスト
さがのひを 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784344846197
4.1

(68)

(35)

萌々

(18)

(7)

中立

(3)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
10
得点
271
評価数
68
平均
4.1 / 5
神率
51.5%

レビュー投稿数10

色とりどりにきらめく、甘くて切ない日々

表紙やタイトルから受ける印象どおりの、繊細で透明感がある作品。
高校生同士の、等身大の恋や友情を丁寧に綴った物語です。

もうこれ、めっちゃピュア!
甘酸っぱくて、時に切なくほんのり痛い。
そんな彼等の日常に、ひたすら萌え転がっちゃいましたよ。

ちなみに、表題作が雑誌掲載作に加筆修正したもの。
そこに、特典ペーパーのSSや個人サイト掲載作品が収録され、更に書き下ろしで二人のその後になります。
あとがき内で掌編まで書き下ろされてますが、最後の一行に「やられた」と言う言葉しか出て来ないですよ。
皆様も、ニヤリとしちゃって下さい。

ザックリした内容です。
高校に入学して、一月が経った豊樹。
彼のクラスに、怪我で入学が遅れた生徒・伊吹がやって来たんですね。
実は、受験日当日に事故に遭った伊吹を介抱したのが、豊樹の幼馴染みで親友の洋平。
再会を喜び三人は仲良くなりますが、やがて伊吹が洋平を好きだと言う事に気づく。
そこで、豊樹は伊吹への想いを隠したまま、彼の恋を応援しますがー・・・と言うものです。

こちら、高校生達の三角関係ものになるんですね。
主人公で攻めである豊樹→事故に遭った受け・伊吹→伊吹を助けた親友・洋平って形になるんですけど。
事故時に、痛みと不安で朦朧としていた所を助けてくれた事で、洋平に恋をした伊吹。
側で親友として過ごすうちに、伊吹に惹かれた豊樹。

う~ん・・・。
こちら、とにかくピュアで優しいんですよ。
豊樹視点で進みますが、彼は自分の気持ちを封印したまま、伊吹の恋を応援するんですよね。
これが、切なくはあるものの、どこか甘くもあって。
えーと、皮肉にも「伊吹の洋平への片思い」と言う秘密を共有する事で、グッと二人の距離は縮まるのです。
自分の気持ちを知っている豊樹の前では、安心して気を許せる伊吹。
そして、打ち明けて気まずくなるよりは、一番の理解者であり親友でいたいと望む豊樹。

何だろうな・・・。
最初に透明感があると書いたんですけど、ドロドロした生臭い部分が無いのです。
豊樹には。
純粋に、伊吹の恋が叶う事を願う。
その、「強い」優しさに、ひどく心を打たれてしまう。

で、ここから、洋平に想いを打ち明ける決心をする伊吹ですが、なんとタッチの差で、洋平に彼女が出来るんですね。
更に、伊吹が恋をしたのは、事故時に自分を励まし、あたたかい手で背中をさすってくれた見知らぬ誰か。
それが洋平だと思っていたのに、実は・・・。
と言う展開。

この事実を知った時ですが、つくづく豊樹のお人好しさと言いますか、深い優しさにグッときちゃいましたよ。
事実を知れば、ただでさえ事故により深い傷を負った伊吹に、更に重荷を背負わせてしまう。
バカだなぁ、豊樹。
本当に。

とりあえず、ここからのオチにはシビれました。
そう、伊吹ですが、彼は彼で、ちゃんと物事を見てるのです。
潔いし格好いいですよ。
ああもう、高校生の恋っていいね。
眩しすぎる・・・。
ついでに、タイトルにもある「ドロップス」。
これの使い方が秀逸ですよ。

あと、書き下ろしでは伊吹視点に切り替わり、想いの通じあった二人のその後が語られます。
付き合いだした二人ですが、互いに恋愛初心者。
階段を一歩ずつ上がるように、キスから初めてゆっくりゆっくり初エッチが成功するまで。
並行して、進路の悩みや好きだからこその不安、そういったものが語られます。

これ、事故の時に助けてもらっただけで好きになるって、ちょっと単純じゃないかと言う思いがチラッとあったんですよね。
伊吹視点で当時の状況が語られる事により、彼の想いに納得が行くのが良かった。
あと、表題作は片思いがテーマですので、ほんのり苦いんですよね。
こちらでは、ひたすら甘酸っぱい。
いや、男同士だからこその越えなきゃいけない壁みたいのはあって、ちょっぴり切なくはあるんですけど。
ただ、二人でお泊まり会だったり、汗をかきながら必死で初エッチみたいな微笑ましいエピソードが大量投入され、もうひたすら萌え転がっちゃうんですよ。
それこそ、ローションを買うだけで一大事の高校生だから。
う~ん・・・。
出会って早々にエッチに突入しちゃうカップルも少なくない中、キスするだけにこんなに頭を悩ましてるカップルって、かえって新鮮。
一度で上手くいかない所なんかも、すごくピュアピュアで萌えまくちゃいましたよ。

ところで、今作の掲載雑誌ですけど、蒼竜社の「HOLLY BOX」だったりします。
いや、こうして文庫と言う形で世に出していただけて、本当に感謝しかないですね。
この作品が日の目を見ずに埋もれちゃうのは、あまりに勿体ない。
語れるほど私は、尾上先生の作品を読んでいないんですけど、本当に繊細で素敵な作品を書かれる作家さんだと思います。
いや、雑食で地雷もほぼほぼ無いけど、尾上先生はピンポイントで地雷要素のある作品を書かれるから。

最後になっちゃいましたが、恋愛だけで無く友情部分も本当に素敵でした。
洋平もまた、すごくいい子なんですよね。
三人での友情シーンにも、すごく萌えちゃいましたよ。

14

甘酸っぱい、まさに「アオハル」。

作家買い。
尾上さんて、シリアスで痛い作品を描かれる作家さま、のイメージですが、今作品はそのイメージを大きく覆す、甘酸っぱくて、優しくって、まさに「アオハル」といった作品でした。

今までの作品と作風こそ大きく異なりますが、作品の造り、っていうのかな。
まず本篇があって、そこを補足する小話で脇を固めていく描き方は変わらず。読んでいてすんなりストーリーに入り込めますし、何より理解しやすい展開になっていました。

主人公はDKの豊樹。あだ名はトヨ。トヨには仲の良い幼馴染の洋平がいて、洋平と同じ高校に通っている。
ある日、彼らのクラスに一人の同級生がやってくる。
同じ新入生だったが、そのクラスメイト・伊吹は本命の高校の入試の日に事故に遭い、そのまま入院していたため、入学も遅くなってしまったのだ。そして、息吹が事故に遭ったときに彼を助けたのが、洋平。

自分を助けてくれた洋平にいつかお礼を言いたい。
そんな思いを持ち続けてきた伊吹は、いつしかその想いが恋心に変わっていく。

伊吹の恋を応援するトヨだけれど、実はトヨは伊吹のことが好きでー。

視点はトヨ。
彼の目を通して、洋平との友情や伊吹の洋平への恋心が紡がれていきます。
だからこそ、トヨの伊吹への想いがなんとも切ない…。

で、トヨの健気な恋心はそれだけじゃないんです。
もっともっと深い愛情とか、優しさを、トヨは持っている。

伊吹のことが好きだから、彼の恋を応援したい。
伊吹のことが好きだからこそ、彼の重荷になりたくない。

まだ高校生のトヨの男気に悶絶しっぱなしでした。
アンタ、カッコよすぎだよ…!

トヨと伊吹の切ない片想いの行方は、ぜひとも本誌を読んで堪能してほしいです。途中、とんでもなく切ない「Fin」になるのではないかと危惧しながら読み進めましたが、最後は大団円。多くの腐女子の皆さまの萌えと共感を呼ぶこと請け合いの、優しい結末が待っています。

全体の三分の一くらいまでの分量が、トヨ視点の表題作「冬色ドロップス」。

その後、伊吹視点だったり、トヨ視点だったりと視点は切り替わりますが、小話が続いていきます。

男同士であることの葛藤。
伊吹の元カノの登場。
「これから」を思い描く、若い恋人たち。

甘々なだけなストーリーではなく、二人のモダモダな恋心も描かれていて、甘さと切なさ、そして萌えのバランスが絶妙でした。

タイトルにも使われている「ドロップ」。
このドロップが、素晴らしい小道具として使われています。

ドロップのように、甘くって、ちょっと酸味もあって、でもノスタルジックな感傷さえ呼び起こされる、そんな可愛らしいお話でした。

ドエロな作品もおいしくいただけるワタクシですが、でも時にはこんな甘酸っぱいお話も良い。

めっちゃ良かった。
文句なく、神評価です。

11

赤いドロップは《恋が叶う》!

あー胸いっぱい(*ฅ́˘ฅ̀*)♡
トヨと伊吹の出会いから10年以上の年月を見守ることができて幸せです。

初めは勘違いから始まった恋でした。
受験の日、交通事故に遭ったところを助けてくれた男の子に恋をした伊吹。
その子と高校で再会してーー…という展開。
助けてくれたのは洋平だと思っている伊吹ですが、
本当の恩人は洋平の友人・トヨでした……

トヨ→伊吹→洋平という恋の矢印
伊吹に恋するトヨが本当にいい子、
泣きたくなるほどいい子なんです!
伊吹を好きなのに、こんなふうに思ってるーー
〝二人失恋するよりは伊吹だけでも恋が叶う方がいい〟
健気で泣けちゃう(´ฅωฅ`)‧º·˚.

トヨが、一度くらい伊吹に自分だけを見てほしいって思ってとった行動なんだと思いますか?
[一人だけ直前で電車に乗らず見送る]ですよ!
驚いて窓にへばり付いてトヨを見る伊吹ーー
これで満足って……健気過ぎて泣けちゃう。

でも、名探偵・息吹に意外とすんなり事故の真相がバレちゃって、二人は恋人同士になります。
ここからはちょっとした危機はあったものの、
終始寄り添う二人がとても可愛かった^^

キスいつする?みたいなのとか、
トヨの「パ、パンツの中を、見せていただけませんでしょうか?」には笑いました(´>///<`)
出した後のゴミを夜中に捨てに行くところもリアルなんだけど、
なんか可愛くて笑っちゃう。

「こ、これさ……」と言ってトヨがコソコソ持ってきたのがジェルで、息吹( ゚д゚)ハッ!みたいな(笑)
どこで買ったの?防犯カメラ大丈夫?
というやり取りも、可愛すぎてニヤニヤが止まらなかったです!
何このピュアさ!
ジェルは違法じゃないからね(笑)
萌え殺そうとしてるとしか思えなかった‼︎

それがねー、大学を卒業する頃にはお風呂場でヤっちゃえるくらいになってるんだから感慨深いよ。
「早く……こすってーー中……」
伊吹こんなこと言えちゃうようになったのね♡
そして、そんな二人の成長が堪らなく愛おしい(´。✪ω✪。`)

あとがきにかえて書かれた二人のその後を描いた短編も最高でした。
ここまできたか……という感じで胸アツ。
作者様には感謝しかないしかないです‼︎
さがのひを先生のイラストも素敵で、
なんといっても表紙が最高に気に入ってます^^


9

心が若葉の頃になる

まず大声で言いたいのは、
「この尾上さんは痛くない!」
……ってことなんです。
全作品を読んではいませんが、どうしても尾上さん作品は『死のかほり』がするイメージが強くて。その、ギリギリのところで燃え上がる恋が、儚くもきらきらと美しいのが魅力だと思ってきたんですね。
今作は『きらきらと美しい』部分はそのままに、ちゃんと生きて、生活していく恋が書かれていますよ。
モブの女の子たちも含めて、登場人物全員を応援したくなる様なお話です。
これ、私が青春というものから「思えば遠くへきたもんだ」という現状だからだけではないんだと思うんですね。尾上さんが登場人物みんなに、作家としての愛を注いで書き上げたからだと思うんですよ。

おまけに、何と素晴らしいことにこの本、短編集です。
「短編集好き、集まれ!」と叫ばせていただきます。
私、ひとつひとつのお話を積み重ねて全体の世界を形作っていく、短編集というものが大好きなのです。
この本はねぇ、もう、短編集の特徴を余すところなく利用して構成されているんじゃないかと思いましたよ。
上手いし、とても丁寧なんです。積み重ね方が。
私と同好の士はずぅぇったーいお手に取った方がよろしいかと思うのです。

出版社あらすじに書かれている通りのあらすじなんですけれども「ちょっとだけトーンが違うかな」と思うのは『ひと触れで均衡が壊れてしまいそうな十代の恋と友情の行く先は……?』という部分。
恋は友情を壊したりしません。
むしろこの3人、特にトヨ(豊樹)と伊吹は常に他の2人を傷つけないようにいつも考えています。
むしろ、とても繊細。そして優しい。とことん優しい。
トヨが伊吹についた嘘も、想いが通じてから体を繋げるまでにかけた時間(このエピソード、かなりリアルに感じました)も、これが恋なのかそれとも恩義なのかに悩むトヨの姿も、そしてそれを悲しむ伊吹を慰める洋平の言動も、みんなみんな優しくて、私はひじょーに癒されました。
若くて、柔らかで、そして前を向こうとしている。
ああ、心が洗われる様だわ。
読み終わって、私まで少しばかり純粋に、綺麗なものになった様な気がします。

ここに美しいものがあります。
いやいや、ぜーったい読んだ方が良いですよ!

蛇足
ちなみに、私が一番好きなのお話は『春色ドロップス』。
中間に挟まれている、ファーストキスのエピソードが書かれたとても短いお話なんですけれども。
ちっとも劇的じゃない。
劇的じゃないからこそ初めての想い出の劇的さが刻まれるという、恋の日常を書いた傑作だと思います。

9

きらきらと眩しい、背筋が伸びるような作品

まずタイトルが美しい。

作中ゆったりと時は流れ、主人公たちは成長し、読み終えると余計、「ドロップス」という名詞の、その溶けてなくなる儚さや甘酸っぱさ、鮮やかな色合いが、青春物にしっくり来すぎて切なさを喚起されてしまう。

短編毎のタイトルも絶妙で、学生生活のイベントや四季の移り変わりがきらきら色とりどりに描かれています。

それにしても主人公たちの清らかさ!
人として恥じない生き方を選択し続ける強さ!

私にとって尾上先生の作品を読む醍醐味は、苛酷な状況を捩じ伏せるような、互いに思い合う絆の強さと精神の力なのですが、現代男子高校生を描いたこの作品でも十二分に味わいました。
読後背筋が伸びるようなBLを今後も書き続けて頂きたいと、切に願います。

いやーしかし初々しさと眩しさは尾上先生史上最高!
好きすぎて過呼吸になるってすごいぞ!
攻めのトヨの器の大きさと誠実さ。受けの伊吹のひたむきさ。双方の一途さ。
きらきらとやさしい、素敵な物語でした。

6

この作品が収納されている本棚

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