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運命の期限はざっと十四日~恋愛音痴のオメガバース~

unmei no kigen wa zatto jyuuyokka

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表題作運命の期限はざっと十四日~恋愛音痴のオメガバース~

安斎公平,20歳,理科大助教で超エリートアルファ 
善行学,27歳,翻訳家でオメガ

その他の収録作品

  • オメガバースの独身極め道
  • ウンメイじゃないんだ
  • あとがき

あらすじ

飛び級を使い二十歳にして理科大助教となった超エリートアルファの安斎公平は、
恩師の紹介で大学近くのシェアハウス「メゾンAtoZ」に入居する。
アルファとオメガが住居だけでなくセックスパートナーも互いにシェアすることのできるこの家で公平を魅了したのは、翻訳家の善行学──メゾンAtoZ入居歴十年の一風変わった青年だった。
つれない態度のそんな彼とも、十四日以内に結ばれれば「運命の人」のはずだが……。

作品情報

作品名
運命の期限はざっと十四日~恋愛音痴のオメガバース~
著者
くもはばき 
イラスト
亜樹良のりかず 
媒体
小説
出版社
三交社
レーベル
ラルーナ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784815532468
3.7

(60)

(26)

萌々

(14)

(8)

中立

(5)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
10
得点
215
評価数
60
平均
3.7 / 5
神率
43.3%

レビュー投稿数10

泣いてしまった

アルファとオメガがセックスパートナーもシェアするシェアハウス「メゾンAtoZ」を舞台とした、笑えて少しほろ苦くて切ない、でもとびきり素敵なラブストーリーになります。

これな、最初は運命の番ってだけで「好き好き」言いまくる攻めにムカついて仕方なかったのに、終盤では不覚にも泣いてしまいましたよ。
序盤と終盤でこれだけ評価をひっくり返せるって、もうそれだけで単純に凄いと思う。
とりあえずめちゃくちゃいいお話ですので、オメガバースが苦手な姐さんにもぜひ読んでいただきたい。

や、個人的に、運命の番として出会った二人が、そこから如何に愛情を育ててゆくかに、オメガバースの醍醐味があると思っているので。
例え運命の番じゃなくても好きになったと言うのに、堪らなく萌えるので。
オメガバースって、実は素晴らしくロマンチックなんですよ。


で、内容ですが、オメガバースでシェアハウスを舞台としたラブストーリー+人間ドラマになります。
飛び級を使い20歳で理科大助教となったエリートアルファの公平。
恩師の紹介で入居する事になったシェアハウス「AtoZ」で、強く惹かれる運命の相手で変わり者の青年・善行と出会いますがー・・・と言うものです。

実はこちら、序盤ですが、攻めである公平にイラついて仕方なかったんですよね。
彼は血筋的にも優秀なアルファ中のアルファでして、属性としては大型ワンコ。
受けが好きで好きで仕方なくて、善行の一挙一動に「好きです!」と尻尾を降りまくるような、普段なら大好きなタイプなのです。
なのですが、こう彼は、わりと独り善がりだし悪気無く傲慢。
良くも悪くも、現実を知らない、育ちの良いアルファなんですよね。

えーと、このシェアハウスですけど、発情の症状が重いアルファやオメガが、安定した性交渉を確保する為の共同生活の場として存在するのです。
で、公平ですが、彼は特に発情の症状も重くない。
しかし、アルファが不足して困ってるのを知り、ここへの入居を決めたー。
いや、この時点で「えっ?」と。
困ってる人を助けてあげようってすごくいい事だけど、なんか上からに感じちゃってモヤモヤすると言うか。

また、善行と出会って即、彼に強烈に惹かれる。
で、早々に「好きです!」「運命だ!」「幸せにします!」みたいな。

いやなぁ、これ、善行が言うように、フェロモンと見た目とセックス以外で、彼のどこにいったい惹かれたの?と。
幸せにしたいってのも、実はすごく傲慢だよね?と。
だって、善行は、今の生活が別に不幸せじゃないし。
恋人以外とセックスをして発情期を乗り切ってるから不幸だって、それはお前の勝手な思い込みだよな?と。

まぁそんなワケで、最初こそ攻めにイラついてイラついて仕方なかったんですよ。
何だコイツ!?と。

私はちょっと潔癖な所があって、こうなるともう、絶対そのキャラを許せないんですよ。
が、今回、そんな欠点も含めて(許して)人を好きになるんだよと言う事が丁寧に書かれてまして。
もう、目から鱗と言うか、人に対するすごく優しい見方を知ったと言うか。
前述の通り、公平は結構欠点の多い男なのです。
が、同時に同じくらい、いい所もあって善良でもある。

これ素敵なのが、善行が公平のそんな全てを踏まえて、その上で恋愛感情を育てて行く所だと思うんですけど。
いやね、公平の悪い所にはちゃんと教育的指導を入れつつも、彼の真っ直ぐな愛情はちゃんと受け止めるんですよ。

また、オメガの体質を受け入れ、サバサバと生きているように見える善行。
実は彼には過去に辛い出来事があり、本当の所で発情期を慰めるだけのセックスを割り切れてなんてなかった。
この過去がかなり痛々しいもので、読んでて辛いんですよね。
だからこそ、公平の真っ直ぐな愛情が響くと言うか。

これね、今作でのキモとなるのが、フェロモンの有効期間なんですよね。
今作の小気味いい所ですが、運命の番と言うのは、ただ単に遺伝的に極端に相性がいいと言うだけでして。
そう、二人の間だけに運命的に特別な何かが存在するワケではない。
そんなワケで、公平ですが、自身の恋心がフェロモンに惑わされた脳のバグでしか無いのか、それとも本物なのか悩むんですよ。
えーと、フェロモンにある程度耐性が出来る14日が経つと、自ずと結果が分かると言う案配で。

で、ここに来て公平の出す答えに、めちゃくちゃ感動するしひたすら萌えてしまう。

運命だから(フェロモンに)惹かれたけど、今は彼の甘えてくれる可愛い仕草、いけない事を叱ってくれる厳しさ、撫でてくれる手の温かさ、少し寂しげな声ー。

全てが愛しいなんですよね。
彼を知れば知るほど、好きになるなんですよね。
そう、私が最も好きなオメガバースなんですよね!!

ちなみにこちら、ここからかなり切ない出来事が二人を襲います。
二人の気持ちが通じあい、幸せを掴んだと思えた直後。

これはあまりにも辛い。
そして切ない。
もうこの時点で完全に二人に感情移入してしまっている為、泣けましたよ。
序盤を読んでた私からは信じられないけど。

ただだからこそ、二人がたどり着いた所に、深く感動するし胸がいっぱいになってしまう。
良かった!
良かったねえ、二人共と!!

最後になっちゃいましたが、設定上、NTRありです。
苦手な方はご注意下さい。
私もこれはちょっとキツかった。
でも、それ以上に本当に素敵な作品だと思います。
あと独自のオメガバース設定も、素晴らしいと思う。
運命なんて関係無く、自分達の気持ちで恋をして幸せになる努力をするのです。
落とし所が痛快だし小気味良いよなぁ。

14

共感しまくる恋愛観

「あなたを幸せにします」というのはかなり胡散臭い科白だと思うのですよ、私は。
私を一番幸せにしてくれるのは、まず私だと思うんですね。だから、私は私の人生を手放すようなまねをしてはいけないと思うのです。恋をするにせよしないにせよ、それを決めるのは私であって『運命』なんかじゃない。なんでそう思いたいかと言えば、自分で決めた事ならその結果を人の所為にしなくても良いからです。能動的であるからこそ耐えられる事ってあると思うんですよ。
この物語の受けさま、善行学も私と同じ様に考えていることに大変共感しました。
何たって『オメガバースに生まれたからには、運命なんてものは中指立てて抗ってなんぼの存在である』なんて思っているんですもの。

理性的?
いやいやいやいや、これは『かなり乙女ちっく』だからだと思うんですね。
見た目やにおいや体の相性なんていうものじゃない要素で、恋におちたいのです。
目に見えないもの、多分『人間性』とか『ずーっと奥にある根っこみたいな部分』とかで惹かれ合いたいなんてことを考えちゃっているのです。

世界観が面白いオメガバースです。
でも、もしバース性というものが本当にあったとしたら、民主主義を国是とする所ではこの物語の様な世界観が一番現実的かもしれないと思っちゃいました。
伴侶がおらず、ヒートが重くいオメガの為のシェアハウスがあるのですよ。
そこにはオメガとアルファが一緒に暮らして、恋愛抜きの性行為が行われます。そこから恋愛に発展したらシェアハウスから転居しなければならない。あくまでも性行為はヒートを鎮めるためのボランティアなんです。

飛び級の結果、たった20歳で日本の大学助教になったため、英国育ちの安斎公平はこのシェアハウスに引っ越してきます。このシェアハウスを住居として選んだのは、小さい頃から祖父にノブレスオブリージュを徹底的に仕込まれたから。
……この祖父と言うのがアルファではなくオメガだっていうのが、なかなか意味深と言うか「なるほどねぇ」と思わせるんですよ。「公平のじいちゃん、貴方もきっと色々あったのね」って。

ところが公平はここの住人である学に一目ぼれをしてしまう。
どう考えても『運命の相手』なんですよ。
フェロモンにあてられて公平は学に向かっていきなり「好き」とか言ってしまう。
でもそれが、どれだけ失礼なことなのか公平は解っているんですね。
だから、そんな自分の『野生』を謝りつつ、なだめつつ、学と普通の恋愛をしようとするんです。必死で「あなたと心で抱き合いたい」とか言っちゃうの(笑)。

バース性による相性ですから、当然の如く、学だって公平に一目ぼれするんです。
伴侶になっちゃえば、ある意味楽ちんなんですよね、オメガって。
でもそれは嫌なんですね、学は。
何故ならオメガバースという自分の性が、彼の夢を奪い、可能性を縮小させ、彼の存在を軽んじさせてきたから。
それに屈したくないのですよ。
だから伴侶を求めることもしないで来た。
恋がなくても人生を楽しくすることは可能なのでね。
だけど、恋もあったら人生はもっと楽しい訳で。

2人が惹かれ合うのは本能なのか、恋なのか。
フェロモンの影響で惹かれ合うのは14日間と言われている中で、可愛らしいエピソードと、とぼけたユーモアをまぶして、あっちへゆらゆらこっちへゆらゆらする2人の気持ちが書かれて行きます。

ばきさん作品ですから、当然の如く、後半に大きな試練が学を襲います。
あたしゃまた、苦い結果になるんじゃないかとはらはらしましたが、ご安心ください。ハッピーエンドです。全体のトーンも明るく、登場人物の『ねじれっぷり』も割とマイルド。
くもはばきさんをまだお読みになったことのない姐さま方も「とっつきやすいのでは?」と思います。私が大好きなくもはばきワールド。是非ご一読を。

10

科学的根拠に基づくオメガバ

オメガバなんだけど、科学的な感じで描かれている。オメガやアルファの番関係やフェロモンについて科学的根拠をもとに説明されていて、なるほどという思いで読み進められた。
そして首を噛めば即番になれるわけではない、という設定や、フェロモンに対する抗体ができるという設定とかも、素晴らしい!
アルファとオメガのシェアハウスという設定もすごいなと思ったけど、読み進めると成る程と思ってしまう。

オメガバ世界の人々は住みやすくするために色んな元気するだろうし、ある意味現実的なオメガバ世界観で私は大好きです。
オメガバ世界でアルファとオメガの中で一目惚れが通じないのでは、というテーマ?もいいと思う。

話の内容には触れなかったけど、設定やテーマがすごく良くて、こういう世界観の話がもっと増えてほしいなと思いました。

1

シェアハウスもの!!

人の良いちょいへタレα × 飄々美人Ωのオメガバシェアハウス

星の観察しながら恋が発展してくの良い!
フェロモン効いてる今だけって直球をハイハイ流すも、この心地良さを受け入れたら今までを否定することに…
ってなかなか受け入れられないのが苦しいもどかしい
心と体は矛盾するばかり~

Ωと蔑まれるとこはないと自分の手で場所を得た強さ、無神経さを叱れるお姉さんみにそりゃ惹かれちゃうわけだけど、公平は好きすぎて暴走するくせに「キスしていいですか?」触れるのには許可取りしてくるから堪らないです。

意志を尊重してるわけだけど、言わせてるわけで…‍
テンポの良さとしんどい可愛いそう来るか…のバランスが面白かった!!

凹んだとこにピッタリはまるのも運命と恋心の奮闘にキュンでした!!

0

面白かった!

そこまでオメガが理不尽な目にはあってないので「オメガバース」が苦手な人でも、多分読めると思います。
ただしアルファとオメガによる「シェアハウス」が舞台なんで、受けが不可抗力とはいえ他の人からやられちゃう展開はあるし、攻めも他の人とするので、そこが地雷な人は回れ右です。
私は先にレビューを読んで、そういう展開があると覚悟して読んだけど、知らずに読んだら、え‥?!マジで……?!!とショック受けてたと思う。
でもこんな展開になるなら読まなければ良かった……とは思わなかったし、読後感も良かったので萌萌評価です。

攻めは私の大好きなワンコでした。
受けの言動に一喜一憂して、大好きダダ漏れなワンコ。

運命の相手と思われる受けに一目惚れするんだけど、フェロモンの作用による「欲情」なのか、心を伴った「恋」なのか見極めようとするんですね。
というのも、タイトルの14日間は、フェロモンの有効期限を表してるんです。
初対面の相手のフェロモンに惑わされるのは14日間程度なので、それが過ぎると耐性ができてなんともなくなるはず……とお互いに心にブレーキをかけているんです。

なんだけど、どっからどう見ても、お互いにそれは「恋」でしょ!!なんですよ。
なのに、どちらもフェロモンによる「バグ」だと自制してる姿が焦れったくて。
オメガバースだけど、「運命」を理由にせず、お互いに自分の気持ちをじっくり見極める過程が描かれているところに、おぉ〜、そうきたかぁ!と。

攻めは「ノブレスオブリージュ」を叩き込まれて育ったアルファなので、非常に紳士的。
そしてアルファであることが、恋の足枷になっているというところも新鮮で。
発情しちゃった受けを前にして、懸命に自制してギリギリと耐える姿には萌えました。
「あなたを幸せにしたい!」と出会って早々、受けに言っちゃうようなアルファゆえの思い上がりもあるんだけど、受けに指摘されてすぐに反省できるいい子だし、本当にまっすぐなワンコなところが大変好みでした。
そしてサバサバしたように見える受けの過去や、気持ちの変化もじっくり書かれているところも良かったな。

これがもしオメガバースじゃなかったら「受けに一目惚れしちゃったワンワン物語」としても充分成り立つんですよ。
そして、ふつーのオメガバースなら「運命が〜」を理由にくっついて終わり……だと思うんですよ。
でも、この作品はその「運命」にあぐらをかいてないんですね。
そこがとても良かったし、読み応えがあったと思います。

ーーー
時折「アルファ」を「男性」に、「オメガ」を「女性」と置き換えて読んでも違和感ないように感じました。
そこが少し今の日本の現状に通じるところがあると思う。
差別はないとされてはいるけど、オメガにとって不利な点が多かったりというところが。

例えば医大で、オメガは減点という不正採点がされていたりとか、あるある!ですよね。
受けの部屋を見て「色気がない」「可愛げがない」と言うアルファの存在とか。
なんでオメガだからといって、可愛げがある部屋である必要があるんだ?と思ったんだけど、女性に可愛げとか色気を求める男性が多いように「オメガ」にも可愛げを求めるアルファが多いのかなぁ…とか。
あとは攻めが「オメガには優しく」と言ったのもそう。
周囲から「オメガ」に限定しない方がいいと指摘されて、「人には優しく」だなと攻めは反省するんですね。
私も息子には「女の子には優しく」ではなく「人には優しく」と教えているので、こういうところも共感できました。






4

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