1994年―――。あの夏、ふたりの香りに満ちた部屋で……。

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表題作潮騒のふたり

屋敷孝太郎,28歳,数学教師(※リバあり)
比奈岸直弥,36歳,社会科教師(※リバあり)

その他の収録作品

  • 描き下ろし
  • あとがき

あらすじ

誰にも好かれる、人気モノの中学教師、比奈岸(ひなぎし)直弥(なおや)は、
八歳年下の新任教師、屋敷(やしき)孝太郎(こうたろう)の教育係となる。
素行不良で逃げ癖のある孝太郎は、直弥のまっすぐな指導に耐え切れず、
同性愛者であることを告白し、キスを仕掛け、彼を遠ざけようとする。
しかし、変わらず接してくる直弥との距離は徐々に縮まり……?

pixivで発表された作品の全ページに加筆修正をし、50ページ超の描き下ろしを加え、単行本化!!!

作品情報

作品名
潮騒のふたり
著者
遠浅よるべ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルールコミックス
発売日
電子発売日
ISBN
9784046800596
4.3

(50)

(31)

萌々

(8)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
213
評価数
50
平均
4.3 / 5
神率
62%

レビュー投稿数11

甘さも焦りも苦みも受け入れて

 まず94年という時代設定がいいですね。戦前の昭和や大正、もっと遡って江戸時代などの作品はそこそこありますが、昭和の終わりや平成初期をあえて今描く作品はかなり貴重なんじゃないでしょうか。令和になった今から見て、目に映るものがそこまで大きく変わったわけではないけれど、スマホじゃなくてポケベルだったり、キャラクター達が好きだという芸能人や作家の名前が当時流行ったものだったり、細かいところに時代の移り変わりが感じられるのもまた趣があるなぁと思いました。

 リアルさを追求し過ぎて糖度が低くなりあまり萌えられない、というのは商業BLをそれなりの数読んできた方なら一度は体験したことがあるのではないかと思います。が、この作品は現実味と萌えがしっかり両立していました。ノンケで奥さんとまだ離婚していない身で、最初は快楽への好奇心、欲求不満から比奈岸と寝てしまう屋敷。ギャンブル好きで借金があり、教職に対して大した熱意もなく、嫌になったら飛べばいいと考えている比奈岸。どちらも理想的な男性とは言い難い。でも、2人はそんな汚い部分も晒し合いながら、いつか冷めることも分かった上で、本気の恋愛を見せてくれました。再会した時の2人の表情に、当時本当に楽しかったんだなぁと。最後はまた希望を持たせてくれる終わり方だったので、想像が膨らみますね。

2

リアルな恋

骨太の絵柄から、ずっとこの作家さんは男性だと思い込んでいました。しかし違ったんですね(後書きで判明)。

高校の先生同士。風紀に厳しいながらも生徒想いの先生、比奈岸。そこへやってきたちょっと問題児の教師、屋敷。
屋敷はゲイで、最初は仕事に興味がない風だが、面倒見役の比奈岸の元、次第に意欲をもって先生をやるようになる。
同時に、二人で飲みに行くなど仲良くなる中で、比奈岸が、実は夫婦仲がうまくいっていなかったり、意外な性癖を知ることになる。
ノンケのはずの比奈岸だが、仕事仲間というだけでなく次第に恋愛に。。

というお話。
距離が近づいたり離れたり、本気になるのが怖い屋敷と、男同士ならではの葛藤など、リアルに伝わってきます。
そして、ほんのりとハッピーを匂わせるようなラストもよい。

久しぶりに読み応えのある作品でした。おすすめです。


3

近年読んだBLのなかでベストワン

絵もストーリーも緻密に描写されていて
何度も胸を締め付けられました。
90年代という時代設定だからこその「モノがもつ重み」を感じました。
素晴らしい作品に出会うことができ、作者様に感謝です。

5

男同士のリアルな恋愛がここに

『ばらとたんぽぽ』がわりとギャグ強めだったので
こんなにリアルなお話を読ませていただけてとても嬉しいです。

冒頭で比奈岸先生が口うるさい印象を持ってしまいましたが(すみません)
あんな風に心を砕いて来たから人気者の先生になったんでしょうし
屋敷も肉欲だけじゃなく惹かれていったのでしょうね。
屋敷の過去、恋愛とも言えない体だけの遍歴は
もしかしたら男性同士であれば少なくないのかもしれません。
初めて本気で追いかけたい相手が比奈岸先生だったのは
とても人間味がある人物故納得です。
ドノンケかと思いきや、ソッチに興味あるとかつけ込まないわけないし
後ろの才能もあったとか…エロいです……。
(最初は屋敷が抱かれる側なのも萌えました)

屋敷の逃げ癖というのは正直私にはわからない感覚なのですが
比奈岸先生にだけは約束したにも関わらず
いつか来る終わりに怯えてしまうのはどうしようもないのかな…。
屋敷の根っこは簡単には変われなくても
比奈岸先生はちゃんと愛してくれて腹を括ってくれたように思えたのですけどね。

エピローグでは4年後のわりに比奈岸先生の結構なシワがまたリアルです。
4年の間にあれこれあったのが意外にもアクティブで驚きました。
それだけショックだったということですね。
最後の電車のシーンで物語の余白を感じさせる演出、小憎らしい!
二人の未来を信じたいのですが本当のところはどうなのか気になり、
ここは是非はっきりさせて欲しかった…。

確かに時代を感じてしまう時代背景ではあります。
古めかしい、でもそれで敬遠してしまうのはもったいない骨太な作品だと思います。

6

セリフが際立つ

よかった……。切なくてきゅんとした…。何度も読んでしまう。

『ばらとたんぽぽ』で作者のストーリー展開や心理描写の腕は信頼していたので、気楽に読み始めたらどんどん惹きこまれて、最後はじぃぃぃーんとしてしまって…。しばらく余韻に浸ってました。

絵柄は青年漫画のように骨太だけど、中身はしっかりBLです。包容力のある年上のノンケ受けと、真剣に相手と向き合うことを恐れてすぐに逃げようとするゲイ攻め。少しの好奇心と諦めかけていた劣情に流されて始まってしまった二人でしたが、思いをぶつけあった濃密で儚い時間は、戸惑いと束の間の高揚感がせめぎ合うガチ恋でした。先が見えない不安を打ち消すように、「今が幸せならええやん?」ってセリフ。これほど切なく効果的に響いてきたのは久しぶり…。

手のかかるタチの悪ガキが性癖?の比奈岸は理想的な受けキャラだったなぁ。後半、ちょっとしたことですぐに距離を取ろうとする屋敷のワンコ化がたまらないです。人混みで手を繋いでしまって、比奈岸に謝るシーンにきゅーん…。思わずぎゅーってしてあげたくなっちゃった笑

1994年に出会ってから6年後の二人、そして現在はどうしているのでしょうか。エンディングも映画的な終わり方で凄く好きです。

電子版の最後に収録されている特典漫画に笑っちゃいました。思うところがありすぎて笑

7

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