【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
恋人達の痛いスレ違いものであり、深い愛と再生の物語でもあります。
こちら、読み始めたら止まらなくて、一気読みしちゃいましたよ。
甘え上手な年下ワンコに、やり手ディーラーで自立した大人である受け。
序盤ですが、バーで出会った二人がその夜のうちにベッドイン、そこから、攻めのちょい強引な押しにより二人が恋人同士となると言う、やや性急な流れなんですよね。
で、上手いのが主人公の心情描写。
攻めである藍沢ですが、新人の画家になります。
遠野(主人公)ですが、実は過去に痛い恋愛を経験しており、その事から元恋人と同じアーティストである藍沢と付き合う事に対して、すごく慎重なんですよ。
そんな心に傷を持つ彼が、藍沢の真っ直ぐな愛情により、再び優しい恋に落ちるー。
こう、遠野と言うのはすごく臆病なんですよね。
藍沢への確かな好意はあるものの、過去の経験が邪魔して、素直に自分の想いを受け入れる事が出来ない。
もう二度と、あの時のような辛い経験はしたくない。
でも、藍沢なら信じても大丈夫なのかもしれない。
遠野の心の揺れと言うのが丁寧に綴られ、少しずつ少しずつ前向きになって行く彼の姿に、えもいわれぬ喜びを感じます。
何だろう。
恋に落ちて、愛し合う喜びを感じてって感じで、ごくごく普通の恋愛がすごく丁寧に綴られてるんですよね。
二人はあっと言う間に恋人同士になるんですけど、だから展開が急に感じるかと言うと、その真逆。
焦れったいくらい、遠野の気持ちの変化はゆっくり。
戸惑いに、怯えに、逆に喜びにって感じで。
でも、それがめちゃくちゃ萌える。
と、ここまでは大人の不器用な恋って感じで、甘くて可愛らしくすらある印象。
が、ここからがこの作品の真髄と言いますか、痛くて切ないけど同時に深く心に響く展開なんですよね。
実は遠野ですが、過去の痛い恋愛以外に、とある隠し事があったりします。
それに絡んで、二人は手痛いスレ違いの後、遠野から別れを告げられてしまいます。
私は最初、攻めが同じアーティストってだけで、何故ここまで受けが臆病になるのか疑問ではあったんですよね。
ちゃんと伏線が張ってある為、遠野のこの隠し事に関しては、途中で予想がつきます。
予想がつくだけに、二人のスレ違いがめちゃくちゃ切ない・・・!
いやね、この作品ですが、しっかり男同士だからこその恋愛が書かれているんですよ。
これ、男女なら、このスレ違いって無かったと思うんですよね。
明るく太陽のように思える藍沢ですが、うだつの上がらない新人画家である自分に対して、成功している大人の男である遠野に何も感じていないワケでは無かった。
そして、コンプレックスを抱える遠野は、弱くて臆病だった。
エゴもあった。
う~ん・・・。
私は普段なら、受けを傷つける攻めは攻め失格!死刑!!てなもんですが、この藍沢に関しては、すごく気持ちが分かると言うか。
こう、彼も傷ついてる事が分かるだけに、ただただ切ないと言うか。
理想としてはひたすら与えつづけられたらいいんだろうけど、やっぱり同じだけの確かなものが帰ってこないと不安になるよなぁと。
と、そんな感じでとても切なくはあるんですけど、だからこそ、二人が再び恋人同士として愛しあうのにすごく感動でして。
そう、胸アツのラストです。
えーと、繰り返しになるんですけど、とにかく遠野の心情の変化と言うのが丁寧に綴られてるんですよね。
彼の歩みってすごくスローペースなんですけど、こうして気持ちを整理して、一歩前に進んでってって、彼にはこれくらいの時間が必要だったんだろうなぁと。
勿論、藍沢にも。
ただ単に二人の恋愛が綴られるだけじゃなく、それぞれ抱えるものがあり、また家族との関係だったりと、バックボーンまでしっかり書かれてるのが素敵でした。
タイトルがとても素敵なんですけど、最後まで読むと、そのタイトルにも深い意味があったんだとジーンときちゃう。
スレ違い時の攻めの言動って結構冷たいものですし、かなり切なくもある。
人によってはこのへんで引っ掛かるかもしれないんですけど、個人的にはとても素晴らしい感動的なお話でした。
最近、新作小説レビュー少ないけどあまり存じ上げなかった作家さんで皆様のレビュー評価もとても高い。読んで納得。面白かった!
他のレビュアー様もおっしゃっていますが、ファンタジーとかスリリングとか奇抜な設定抜きで、仕事を頑張るごく普通のアラサーの男の人同士が出会って恋に落ちる話。最近こういう小説に飢えていました。登場するのは普通の人々だけどぐいぐい読ませるストーリー。こういう作家さんは貴重です。新作が楽しみな方が増えて嬉しい。
これはネタバレしない方がいいストーリーなので詳しくは言いませんが、受けの秋文が誠実な人柄で優秀なセールスマンなのに周りの同僚が酷いヤツばかりで本当に気の毒。男の嫉妬醜い。人を陥れる為に会社に損害を与えようとするヤツなんてソッコーリストラされるがいい。
攻めの茜は秋文の元彼と違ってとてもいいヤツなんですが、途中のすれ違いや誤解は受けが可哀想で泣けます。でも最後は2人が幸せすぎて嬉し涙が。秋文が茜を名前で呼べるようになる所は号泣必至です。ぜひご確認ください。
大人のほろ苦逆転ハッピーエンドストーリー、おすすめです。
魔法もケモ耳もヒートも、刑事もヤクザも、霊ですら出ません。
そんでもってそれほど大きな事件が起きるってわけでもないんです。
……でも面白い。めっちゃくちゃ浸りました。
あとがきによれば第19回リンクス新人大賞で激励賞だった作品とのこと。
調べたら2014年の10月31日が締切。
6年前か。
いや、2021年今の私の『読みたいお話ドンピシャリ』でした。
ひとりは絵描として生計を立てたいけれどなかなかうまくいかなくて、画廊でバイトをしながら絵を描き続けている藍沢。
ひとりはディラーのNO1営業マンであるがため社内では同僚に妬まれ、胃潰瘍になっちゃうほど繊細で、おまけに自分のことについてはとっても口下手な遠野。
この2人が惹かれ合い、互いを大切だと思う様になるのですが、アートについてのすれ違いが起きてしまうんです。この『すれ違い』というか、誤解というか、ここがこのお話のミソなんですが。
藍沢にとって絵って『自分そのもの』なんですよ。
そういう人じゃないと多分絵描きにはなれないんだと思います。
で、遠野はそのことを良く解っているんです。
解っているけど、藍沢の求めていることに応えられない理由がある。
ここの描写がね、いやはや、とってもつらい。
このお話はね、ラストが素敵。
様々な理由で感じ方が違ってしまわざるを得ない人たちでも理解しあえる、と書いてある。やり方は『相手を尊重すること』なんですよ。
これ、恋のやり方としても、アートのつくり方としても、納得できる。
それもね、ストンと落ちる様な書き方ではなく、じわじわっと来るんです。
この『じわじわっ』がねぇ……いやー、良いですよ。
是非ご一読を。
あらすじの「受けには秘密があり、それもあって攻めから別れを告げられる」ってところが、購入を躊躇わせる理由でもあって。
基本的に攻めは苦労してナンボだと思ってるのと、攻めザマァみたいに受けから愛想つかされて……みたいなのは読んでてワクワクしちゃうんだけど、反対に受けが苦労したり攻めから愛想尽かされるってのは、そんなに好きじゃないんですよね。
だけど読んで良かったです。
駆け引きなどせずひたむきに恋心を伝えてくれる売れない画家の藍沢(攻め)
そんな藍沢に惹かれながらも、過去の恋のせいで臆病になっている遠野(受け)
恋人同士になっても、遠野の心のざわざわは打ち消すことができなくて。
それは、どうしても打ち明けることができない「秘密」のせいで……。
そのせいですれ違って、別れを告げられるときの痛みときたら………!!
心が引きちぎられるような追体験がすごかった。
ぶっちゃけると、元彼がアート畑の人間だったからといって、そこまで画家である攻めに対して警戒する必要はないんでは?と思ってたんですよね。
「秘密」に関しても、素直に言えばいいのに……とも。
鼻につくほどではないけれど、やや過剰に感じてた。
だけどその理由を知ったら、そりゃ言えないわーー!!!と。
遠野という人間を知ると納得がいくんですよ。
そして相手が藍沢だからこそ言えないっていうのも納得なんですよ。
一言で言えば「超センシティブ」ってところでしょうか。
それがまぁ麻生ミツ晃さんの挿絵とぴっっったりでして。
頭の中で何の苦もなくコミカライズできたくらいで、麻生ミツ晃さん以外考えられないってくらいのマッチ度。
実はもうほんのちょっと文章も、そして中身も削ぎ落としたほうが好みなんですね。
(素敵な表現はたくさんある)
だけど、あとがきで投稿作(そして受賞作)というのを知ってなんか納得したんですよね。
書きたいこととか思い入れがいっぱいある熱量のある作品というのかな。
心動かされるものを読んだぜ〜!!という充足感が素晴らしいので神です。
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「初恋にさようなら」のネタバレを含む呟き。
戸田環紀さんって、一途な攻めに想われるも、とある理由のせいでなかなか受け入れられないうちに、攻めから別れを告げられる受けっていうのに萌えがあるのかなぁ?
「初恋にさようなら」も、超一途な攻めから手のひら返されたように冷たくされる様子が印象的だったので。
初読みの作家さまですが、麻生さんの表紙につられて手に取りました。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公はカーディーラーの遠野。
有能な営業マンで、ゆえに、同僚からの嫉妬心ややっかみを買いくだらない嫌がらせをされている。
そんな日々に疲れる遠野だが、彼にはもっとつらい出来事があった。3年間付き合った恋人に振られて傷心中。しかも辛らつな言葉で振られた遠野にとって、その恋人の職業である「アーティスト」に嫌な思いしかない。
が、彼は出会ってしまった。アーティストである藍沢という男性に。
一途に好意をぶつけてくる藍沢に、少しずつ心惹かれていく遠野だったが、藍沢がアーティストである、という以上に、遠野が二の足を踏む「秘密」が遠野にはあってー。
というお話。
初読みの作家さまですが、すごく読みやすい文章を書かれる作家さまだな、というのが読み始めてすぐに感じた感想です。
起承転結、言葉のチョイス、登場人物たちの感情の起伏。
そういったものが、過不足の無い文章で紡がれていくためにするんと読み手に流れ込んでくる。
そして、その文章が遠野視点で描かれているためにまるで自身が遠野になったかのような思いに駆られてしまう。
で、ですよ。
この遠野という男性が凄く薄幸、っていうのかな。
仕事、家族、そして恋愛。
一生懸命で、奮闘するのに、それが上手くいかない。
そこに絡んでくるのが遠野の抱える「秘密」。なんです。
正直に言ってしまうと、なぜ彼がその秘密をうちに抱えているのかすごく疑問でした。「秘密」として抱えるには、そこまでの問題ではないのでは?と。
が、この「秘密」がねえ、ストーリーに重きを与えるっていうのかな。
私もそう感じましたが、人によっては遠野の秘密ってそんなに重大な事項ではない。ないけれど、彼にとってはそうではなかった。彼にとって、その「秘密」が、どれだけの負荷を与えたのか。
その遠野の想いが、実に繊細に、そして緻密に紡がれているために、遠野の苦しみが怒涛の勢いで読み手にも迫ってくる。
一方の攻めさんの藍沢くん。
ワンコのように、一途に、健気に遠野にぶつかってくる彼もすごく良かった。彼にも彼の悩みとか苦しみがあって。そこを、彼は自身の力で這い上がってきた。
そんな藍沢くんと、遠野のすれ違いが切なくて泣ける。
どちらも悪くない。
悪くないのに、悪くないからこそ、彼らはすれ違っていく。
一途に遠野を想っていたからこそ、藍沢くんの哀しみとか、苦しみが大きかったのだろうと。
そして、藍沢くんを幸せにするのが自分ではなかったとしても、藍沢くんには幸せでいてほしいと。そう願う遠野くんの想いも。
もう、感動しっぱなしでした。
今作品は、登場人物はさほど多くありません。
舞台も、彼らの生活圏しか登場しない。
けれど、そうであってなお、すごくドラマティックっていうのかな。映画を見ているような臨場感がありました。
で。
そこに華を添えるのが麻生さんのイラスト。
儚く、美しく、そして繊細なイラストが、この作品の持つ世界観をがっつり描き切っています。
ストーリーも良かったですが、麻生さんの挿絵で萌え度は確実に上がりました。
文句なく、神評価です。