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表題作ALASKA

あらすじ

「いつかお前を助けてやる。一緒にアラスカに逃げよう――」幼いマルコとスコットが肩を寄せ合って交わしたクリスマスの約束。だがその後二人は離れ離れに。やがて成長したマルコとスコットは、思いがけない形で再会する――。

38ページ

『小説Dear+』2019年フユ号にて掲載
 翻訳:冬斗亜紀

作品情報

作品名
ALASKA
著者
キム・フィールディング 
イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
電子発売日
4.3

(9)

(5)

萌々

(2)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
39
評価数
9
平均
4.3 / 5
神率
55.6%

レビュー投稿数3

ふたりの20年間

レビューしている方がいた。
おまけにあらすじ紹介が綺麗。
なのでどんなお話なのかは、ふばばさまに乗っかってしまって感想だけ書きます。

あたし、こういうお話に徹底的に弱いんですよ。
日常に追いつめられているふたりが「ここではないどこかに行こう」って約束しちゃうお話。
自分らを囲む現実は過酷で、向き合う相手を何とか救いたいのに、あまりにも自分は非力。だから「アラスカに行こう」って言うんです、行くことなんか出来ないって分っていても。
……ごめん、私はもうこれだけで泣ける。

このお話のシビアな所は、5年刻みで2人の現在が描かれるところ。
つまり『子どもだったから非力だったわけじゃない』って、彼らは何度も何度も思わされ続けるんですね。

「いやー『明日に向かって撃て』も『真夜中のカーボーイ』も『カリフォルニア物語』もバドエンだもんなぁ……」と何度も思い出される鬼畜展開でしたよ。
私と同嗜好の姐さまがいらっしゃいましたら、ラストはご自分の目でどうぞ。
私は感涙いたしました。

3

二人の二十年の物語にじわっとくる

どうしようもない子供二人が別々の道を歩み、お互いを精神的な支えにしてどうにか生き抜き、最終的に……というお話。1993年から始まった物語は2013年にエンディングを迎える。二人の二十年の結末がこうなってくれて本当に良かった。

幼少期を共に過ごしたスコットとマルコは、その後クリスマスに二度会っただけ。ふらっと現れた一度目と、偶然出会った二度目と。マルコの生活は常に家族を養うためだけに消費され、スコットは家もなくさらに酷そう。

やっと二人が本当の意味で向き合うのは、最初に別れてから二十年後。スコットのセリフに全てが詰め込まれてて、こんなのもう泣くしかない。唯一もらったクリスマスプレゼントを大切にするマルコも良い。

無力な子供が大人になって自分の足で立てるようになり、再生の精神的支えだった相手と今度は二人で幸せになろうという、お互いを救済し合うようなお話。泣ける短編。

3

聖夜の愛のクロニクル

つらい境遇を生きる2人の少年・スコットとマルコの愛のクロニクル。

養護施設をたらい回しにされているスコットと。
祖母と幼い妹2人と暮らして身動きが取れないマルコ。
2人は離れがたい親友であり、兄弟のようでもあり、とにかく魂で結びついている。
マルコは、拠り所のないスコットを救いたいし、
スコットは縛り付けられているマルコを自由にしてあげたい。
その象徴が、アラスカ。
2人でアラスカへ行こう。
それが2人のクリスマスの誓い。
物語は、5年おきのクリスマスを描きながら進んでいきます。
家族を守っているマルコに、どこからか会いに来るスコット、というパターンが繰り返されて、年月が経っても少年の時に思い描いた未来がちっともやってこない状況が炙り出されます。
マルコの妹たちは、マルコの苦難を知ってか知らずか、マルコよりもずっと自由奔放なようだし。
スコットはある年はホームレスとしての惨めすぎる再会もあった…
マルコはそんなスコットを見ても決して蔑まず、彼の尊厳を守る。
そうしてまた時は過ぎ…
2人の長い離れ離れの日々がようやく終わる、約束のアラスカが、やっと2人の愛が叶う。

いわゆる恵まれない境遇の2人は、長じてもなかなか思うような人生にならない。
働けど働けど。
それでもお互いを心の支えとして懸命に生きる。
2人はずっと、多分性的関係は無く。離れている時間には他の人との愛も時間もあって。
それでも。お互いは一生の心の支え。
そんな涙の出るようなお話。
長い長い離れ離れの時間。お互い生きていて良かったね。

4

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