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「愛玩少年」⇒黒羽男爵×河村清次
「燃える恋桜」⇒後藤勲(陸軍士官学校教官 中尉)×清瀬春仁(幹部候補生)
「堕ちた軍犬~出会いの刻~」(描き下ろし)
タイトルと表紙のインパクトにドキドキしてしまいますが、内容はそれを上回るあやしさで大変なことになってます。水上シンさんの雰囲気のある絵柄もそれに拍車をかけていて独特の世界観を存分に味わえました。(表紙のイメージで「ちょっと無理かも…」と思った方にはあまりオススメできません。なんて言ったって期待通りの内容でしたから)
中学生の清次が黒羽男爵の屋敷に売られてきますが、首輪をつけられ男爵に後ろから挿入されながら墓地をお散歩してみたり、愛ゆえに殺されかけてみたりetc…あまりの濃さにむしろ笑っちゃうという位の展開が繰り広げられます。そもそもそんな濃い本格プレイにたどりつく前、少年だった清次が初めて男爵と出会う冒頭シーンからエロいですからね。最初から最後まで目が離せませんでしたよ。
「燃える恋桜」は男爵の従者・後藤(軍服+アイマスク(仮面!?))の軍隊時代(過去)の話です。現在の後藤がどうなっているのかが分かっているだけに読んでいてすごく切なかったです(あぁこの人があの人になっちゃうのね…としみじみ)。
濃ゆい絵柄に独特の雰囲気、いや~好きだっ!水上シン先生は一度見たら忘れられない、絵柄もストーリーも個性あふれる作家様です。表紙の禍々しい耽美さも濃厚なストーリーも読み手を選ぶ作品ばかりですが、ハマってしまうと読まずにはいられません。
時代物がお得意ですが、中でも軍服キャラが出てくる作品が大好きです。水上作品はレイプや凌辱で始まるお話が多く、それが愛に変わるというのはあまり好きな設定じゃないのに、作品全体に読ませる力があっていつのまにか惹きこまれてしまいます。どれも濃厚でハードですが、クスッと笑える「のほほん系」と心も体も痛い「シリアス系」に分かれます。読んで楽しいのほほん系がお勧めですが、シリアスも捨てがたいです(>_<)。この『愛玩少年』はシリアスな方の水上作品です。
貧乏な少年、清次が子供の頃に恋をした美しい男爵の館で働くことになるのですが、館の住人が妖しい人ばかりです!男爵はもとより、彼が引きとっている女装男子の2人、マスクで顔を隠した軍服の使用人は後藤と言うのですが、ひどく冷静で乱暴です。
男爵の美しさは水上作品随一ですよ!真っ白な肌に白い絹糸のような髪、そして紅玉のように燃える瞳。こう評される男爵の美しさは本当に神々しくてまさに耽美、カラーで見たかったなぁと思いました。
アルビノで生まれてきたことで存在を否定された男爵。誰も信じることが出来なかった男爵が、ひたむきな清次の愛にやっと心を開いた瞬間、「信じたいのに…憎むことしかできない」「愛しているのに」という台詞に涙が…。
10年後、りっぱに成長した男らしい清次と、ベッドに横たわる男爵にリバが妄想出来るのも嬉しい。女装男子二人も立派な男性に成長していましたよ^^
・『燃える恋桜』
軍服の使用人、後藤の過去のお話。士官学校の教官だった後藤と生徒の一人、清次の物語。↑で、恐ろしい男だった後藤と同じ人とは思えないコミカルなお話。それなのにとても官能的で濃厚なエロが素晴らしく映えます!こういうコミカルからの切り替えの巧みさも水上先生の大きな特徴です。
その先の描き下ろし『堕ちた軍犬』を読むと、たった2ページで後藤の悲しい過去がはっきりとするのですが、その後に描かれた教官と生徒の恋物語という同じ設定のコミックス『陸軍恋愛士官学校』は、不幸だった後藤の物語の救済のようにも思えるし、『虜囚麗人』に収録の「白日夢の面影」でも後藤を描かれていて、彼の不幸は水上先生にとって思い入れがあるのだなと感じました。どちらのコミックスもお勧めです。
私が最初読んだとき、あんまりこういう陵辱強姦系に触れたことがなかったので苦手だったんですが、ちょっとずつ作品自体の良さがわかってきました。
男爵との衝撃的な出会いで一目ぼれした清次。初めて抱く気持ちをもったまま男爵家に父の借金で売られてきます。
とにかくそこでの数々のプレイが痛いです。見てて苦しくなっちゃいました。
それでも健気な清次。どんなひどい仕打ちを受けても自分の気持ちを男爵に訴えます。しかし、過去の経験からその想いを信じきれない男爵。非常に切なかった。どちらの視点に立っても苦しいです。
最後の5人揃うシーンはすごく良かった。これまで痛かった分すっごく幸せな雰囲気で素敵でした。
萌か神か悩んだけど、私の中では“萌”という評価では片付けられないので神で!!
敗戦直後の日本、とある町はずれの森の奥にひっそりと佇む、廃墟のような洋館が舞台。そこに住む異形の男爵と、彼に買われた少年・清次のサディスティックな純愛の物語です。
男爵の館の住人は、選りすぐりの個性派変態揃い。それも、皆人間離れした美しさで、倒錯的で壊れてて…そんな館の住人たちが醸し出す湿った淫猥な雰囲気が、男爵と清次の耽美な純愛をいっそう盛り上げてくれてます。この雰囲気がたまらない。
館の住人の中でも特に個性的なのが、執事(この作品では「番犬」)の後藤。軍服姿で軍帽を目深にかぶり、軍人そのもの…というか、実際元軍人です。目元を仮面で覆っているのも、なんとも不気味。しかも彼は常に無表情で冷酷…そもそも何故軍服姿の人間がそこにいるのかという不条理さも含めて、ハンパなく惹きつけられるキャラなんですよね。作者の真骨頂である軍服姿なだけに、一挙手一投足がサマになってるし…
あまりに後藤のキャラが立ちすぎてて、主役CPそっちのけで後藤が気になる…ってところが、敢えて言えばこの作品の難点かもしれません(笑)
もっとも、それを見越してかちゃんと後藤が主人公のスピンアウト作品「燃える恋桜」も同時収録されています。
こちらは、現役の青年将校として陸軍予備士官学校で教官をしていたころの後藤と、候補生の清瀬とのかわいい純愛をコミカルに描いた作品。「かわいい純愛」と言っても、後藤はドS教官だし、手は早くないほうwですがちゃーんとHにこぎつけます。その過程が、変態入ってて何ともカワイイんです。
わりと直球一辺倒のシンプルな純愛ストーリーなんですが、シンプルな話だけに、「愛玩少年」では無表情で不気味な存在でしかない後藤が、かつては明るい普通の青年だった…という事実に胸を打たれます。後藤は何故人間らしい感情を失ってしまったのか?その理由もこの作品を読めば分かります。笑えるけど切ない、いいお話です。
ジュネットの水上シン単行本は全部読みましたが、個人的にはこの一冊が一番好きでした。耽美系の作品が読みたい人には是非オススメですね。
江戸川乱歩と怪奇漫画の梅図かずお+水上ワールドのドッキング!!
主人公が異形の男爵に痛みに耐えながら愛を貫く姿は、真のBLの神髄であります。
アルビノといわれる人々は現実に存在しております。私の趣味ではじめた催し物のの関係で、アルビノの女性と知り合いになりました。肌が異様に白く、髪の毛は天然栗毛・・そして物語の男爵と同じく色盲でございました。
昔は、異形なる者として隠れるように暮らしていたのではないでしょうか。
時代設定は戦後間もない頃の日本、おどろおどろしい雰囲気の昭和の時代が堪能できます。登場人物のコスチュームは明治時代を彷彿させますが、それは演出だと思いましょう。
登場人物の元軍人・後藤の過去の悲しいお話し「燃える恋桜」はリアルな戦時下の日本の軍関係の学校を描いています。昔の軍隊は暴力が猖獗極めたのですが、他の作家はここまできちんと描きません。水上さんはきちんと描くのでエライな~と思います。この物語はまだ終わりではないと思います。さらに続編 激戦地ルソン島でのお話がクライマックスになると思うのです。ぜひとも、血肉際踊る戦闘場面と甘いBL場面を交互に見せる、他の作家には描かない分野に挑戦してほしいです。
そして、後藤が新しい恋人と出会うまで、続編を続けて描いてほしいですね。
匿名さん
私も陸軍の軍服フェチなので水上さんの世界観が好きです(*^.^*)
軍服と倒錯した愛ってよく似合いますよね!