電子限定描き下ろし漫画付き
いまさらお前のいない夜はいやだ
大学生の孝己は幼馴染みの沙世と暮らしている。沙世はいつでもどこでも突然眠ってしまう病気で、孝己はまるで母親のように微に入り細に入り沙世の面倒を見ている。
沙世がいつでも自分を頼れるように、優しくくるむようにして日々を過ごしてきたけれど、そういう意味で沙世を好きな気持ちを持て余す。
一方で沙世の方も、孝己が自分の前から去ったらどうなる?などと考えるようになる。このままで居たい気持ちとのせめぎ合いが丁寧に丁寧に描かれたお話。
絵柄に派手なところはないのに不思議な魅力があって、最後まで集中して読みました。最後まで読んで、それからもう一回初めから読みました。
日常が淡々と描かれていますので見逃してしまいそうですが、出来事的にも心情的にも結構なドラマが内包されていて、2回目読んだときに沙世の成長(というかジャンプアップ)を思い知り、よくよく考えたらクズでヘタレな孝己の方が沙世に救われていることを再認識しました。
お互いがお互いを必要としていてつなぎ止めたくて、これは依存なんだろうか、刷込みなんだろうか、でも完成形ならばもうずっとこのままでいいよね、と思わされました。
象徴的なのが、孝己が沙世に言った「俺より一日早く死んでね」という言葉です。孝己は最後まで看取りたいんですね。沙世を残して自分が先に逝くのは心配で、さりとて沙世のいない世界で生きたくはないから「一日早く」なのですね。深い。
「5分後に孵るのを待ってる」というタイトルも、よく練られていて深いと思いました。
脇キャラの蜂須賀くん、出番が少ししかないけど、孝己のセフレで親友で、二人の関係もよく知っていて、同じ学部の沙世のために講義のノートをとってくれる(孝己の依頼)やさしい人。見た目とのギャップでとてもモテそうだけどセフレは孝己だったという、こちらにもドラマがありそうでとても良かったです。
同じく脇キャラのたつきちゃん、キャラが激しすぎて出番一瞬なのに強烈な印象。孝己のことをタカシと呼ぶのは何故なのか分からず色々謎のままでした。こちらは逆に居なくても支障なかったような。
ラフなタッチではあるのですが、とても印象的な瞳の描き方と間の取り方で物語にぐっと引き込まれました。ナルコレプシー的な症状を持つ沙世への刷り込みの結果を、孵化に例えるのがユニークでもあり、ちょっぴり切なくもあり。こんな特殊な条件が揃っていなければ、ありえない関係性だったかもしれない。でも、そういう運も含めて人生なのだと思っています。きっかけとか、意味とかを考えてはいけないわけではないけれど、お互い相手を必要としていて手放したくないのならそれだけでいいじゃない、と2人の肩を叩きたくなりました。
同人誌からの商業化作品としてとっても良い塩梅でした。同人誌からの作品は曖昧な完結が多い気がするという勝手な先入観を抱いているのですが、商業でよく見る設定や展開ではない作家さんの描きたいものがストレートに描かれている同人作品の旨味もしっかりあり、かつまとまりが良くすっきりと完結しています。強めの設定(病気)も悲劇的にしすぎず、かといって軽く描くわけでもなく、漫画がうまいなぁ、と。登場人物の描きわけもひっそりと上手だし。派手ではない良さがある。しみじみ。
独特な絵と「場所や時間関係なくどこででも寝落ちてしまう」という特殊な体質を持つため、ひとりでは何もできない受けという新しい設定に惹かれ購入しました。
今作品がチ点日子先生にとってデビュー作だと聞いてびっくりするほどの高クオリティです!
ほとんど植物状態な沙世(受け)。
体質のせいで常に眠たそうな雰囲気を発しているため、勘違いしそうですが、実はかなり男前。思っている事は、はっきりと言える健気な子です。
そんな沙世とは違い、孝己(攻め)は過去のトラウマや沙世に対しての歪んだ感情のせいで、何事も曖昧にしたいタイプのヘタレです。
しかし、沙世の事は何より大切にしたいという事が物語が進むにつれひしひしと伝わります。そして、沙世を大切に思うあまり、自分の「汚い」部分を必死に隠そうとする孝己に泣けてきます。
そんな二人は、性格も経験も『好き』の価値観も全く違いますが、お互いがお互いの側にいたいと強く思うことだけは一緒・・・そんな二人の関係性がどう変わっていくかが描かれる不思議なお話です。
こちらは、何度も読み返すほど大好きな作品なので、ディープな作品をお求めの方は是非読んで見てください!
表紙が可愛くて一目惚れして買いました。買ってよかったです。
"性行為=恋愛のゴール、愛情の表現の最上位"的に描かれることが多くなるのが恋愛漫画の常ですが、これはそんな感じがしなくていいなと思いました。性行為をどうするかが2人の交際においての争点でしたが、それはたいしたことではないというふうに描かれているのが面白かったです。好きでお互い以外ないから一緒にいたい。たとえインプリンティングだとしても。一緒にいる為の手段の1つが性行為であるというのは面白いなと思います。一緒にいる為に価値観を擦り合わせていくのは恋人やパートナーとでなくても必要なことです。性行為の有無についてがそれに該当している話は新鮮でした。
性行為がゴールになるのが悪いとか、不快だとか思っているわけではありませんが私個人の問題としてごく稀に押し付けがましく感じることがあるのでこの作品には救われたような、新しい視点を見せてもらったような気がします。大好きです