イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
「いつかあなたに逢えたなら」「善き王子のための裏切りのフーガ」とこちらの作品で3冊目になり、前作から1年半あまりの新作でしたがこの作品が1番好きでした。
人気絵師さんばかりに挿絵を描いて貰っているので、とても期待されている作家さまなのだと思うのですが、今作でその実力を発揮していると思いました。
どちらかと言うと作風は決して明るくなくて、時には読むのが辛くなる描写が多々あります。なので木原音瀬先生辺りを好まれる方にはハマるのではないかと思いました。
今作では冒頭の初老の女性と青年のシーンが、巻末の「30 years later」で昇華していて見事だとしか言いようがありませんでした。
こちらのお話ですが蓮がオメガとして酷い目に遭って来たからこそ、結末に安堵し涙が出るのだと思いました。
瑛里がどんな態度を取ろうが一貫して仕事に誠実であろうとする蓮が強くてとても魅力的な人物なんです。どうして蓮が強い気持ちを保ち続けられるのか、瑛里が何故オメガ嫌いなのかは後に秘密が明らかになります。
前半の各所に散りばめられたヒントに「多分こうじゃないのかな?」と想像出来るのですが、その答え合わせをする為に読むのが凄く面白いのです。もちろん瑛里と蓮のキャラも魅力的でした。他にも蓮の師匠の榊とかアシスタントのアリサも魅力的なキャラでした。
オメガを憎み蔑むとても未熟な世界ですが、中には己の考えを改め悔やむ瑛里の父親のような存在がいることが救いでした。
α至上主義の家庭に産まれたβの悲劇も気になりました。
作家買い。
片岡さんの新刊はオメガバものです。
片岡さんは切ない系のお話を描かれる作家さまのイメージが個人的に強いのですが、さらに今作品はオメガバースものということもあるのでしょうか。そのイメージを損なうことのない、切なく、けれどん深い愛情お描いたお話でした。
その世界観をyocoさんが描いてくださっていて、もうもう…!と言葉にならないほどの切なさと、そして萌えに終始襲われながら読破しました。
ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
人口のほとんどはベータ。
アルファはそのうちのたった2%。オメガも、同じく2%。
その少ないオメガは、多くの人から嫌われている。
オメガは発情期があり、その時はアルファを性的に誘惑し襲わさせる(見方によってはオメガがアルファを襲っている)ことが、その原因の一つ。
そして、オメガは発情期がなくなる30歳くらいになると内臓が衰えてき、そのまま死に至る。が、それを回避する方法が一つだけある。
それは、アルファの精液を摂取すること。が、それと引き換えに、アルファは少しずつ命を削られ、最終的に早死にしてしまうのだ。
つまり、オメガはアルファの命を奪って生きながらえる、という点で、オメガは嫌われ、侮蔑の対象になっているのだった。
という、少し特殊な世界観を孕むお話です。
主人公はアルファの瑛理。
人気俳優で、家柄も良く、見目も良い彼は今人気絶頂の俳優だ。そして彼は大のオメガ嫌いを公言している。
そんな彼は、大きな舞台を控えていたある日、オメガと遭遇してしまう。
舞台衣装を切り刻まれるという事件が勃発。そして、その衣装を治すためにやってきたのがオメガの蓮だった。オメガに自分の衣装を触られることすらおぞましく感じる瑛理だったが、それをきっかけに蓮とのやり取りが始まる。
そして、蓮を少しずつ知っていくうちに、オメガに対する差別、そして蓮に対する感情も変わっていき―。
というお話。
オメガバものは作家さまによって、あるいは作品によって若干細かい設定が異なりますが、今作品はオメガはアルファの精液を体内に取り込まないと死んでしまうという、ちょっと独特な設定のお話です。
読み始めたとき、瑛理のオメガに対する差別、蓮に対する暴言、などなど、なんて酷い男だ!と思ったんです。その一方で、どれほど侮蔑的なセリフを言われても、自身の仕事にプライドを持ちコツコツと仕事をこなす蓮に対する好感度は爆上がり。
傲慢でクソでクソな攻めさんが、受けさんの想いに触れ、そして更生していくお話かな?
そんな風に予想しながら読み進めましたが。
えー。
えー?そんなお話?
という、二転三転するストーリーに翻弄されっぱなしでした。
蓮は28歳。
つまり、彼の寿命はあと1,2年くらいしか残っていない。
短い生涯を、己の信念に従い懸命に生きる、そんな連がカッコよくて。けれど、彼の清廉な想いは、もっともっと深いところにある。何を犠牲にしても、彼には守りたいものがあった。
そして、緻密に紡がれていくストーリー展開も素晴らしい。
あちこちに巻かれた伏線を、少しずつ回収しつつ進む展開で、あ、あれはこういう意味か―!と分かった時の感動と言ったらなかった。
そしてこの素晴らしいお話に、yocoさんが色を付けて描いてくださっているという眼福さよ。相乗効果で萌えがストップ高です。
一番最初に、どなたかの葬儀があったのだとわかる描写からスタートします。
これが最後に繋がっていく。いやー、うまいです。
あともう一点。
オメガバものはアルファ、そしてオメガに目が行きがちですが、ベータにはベータの苦しみや葛藤があることもきちんと描かれています。
その一方で、中立なベータだからこそ俯瞰的に物事を見ることができるのだということも。
差別的に、あるいは色眼鏡をかけたまま、自分自身で考えることなく世間の意見に惑わされることの愚かさも。
色々なものがぎゅっと詰まった作品でした。
個人的に、蓮の上司(というか師匠と言った方が正解か?)の榊さん。彼がめちゃんこドストライクキャラでした。本当の優しさを持った、強い男性でめちゃめちゃカッコよかった。
読後、yocoさんの描かれた表紙を見ると、これがまたグッとくる。
蓮が、どんな想いであの衣装を抱きしめているのか―。
キャラ良し、ストーリー良し、設定良し、さらに挿絵良し。
オメガバものらしい切なさもありながら、そこに片岡さんらしいエッセンスが盛り込まれた良作。
文句なしの神作品です。
αで俳優の瑛理×Ωで衣装デザイナーの蓮。私史上Ωに最も過酷なオメガバースでした。
Ωが迫害される世界、瑛理目線で話が進みますが、瑛理は勿論、周りも蓮への当たりがきつい。そんな状況を淡々と受け入れて、ひたすら仕事に取り組む蓮がかっこよかった。そんな蓮に瑛理は惹かれたんだと思う。
周りの妨害があったり、瑛理が違和感を持つ中で過去が明らかになり、蓮の悲痛な覚悟に泣きました。どうにもできない状況で、それぞれが大事な者を守りたかった。でも歪みがあるから幸せにはなれない。
瑛理が真実に辿り着いて、想いを貫いてくれて本当に良かったです。
ラストのアリサのシーンが印象的、心に沁みました。
yoco先生のイラストが作品にぴったりで、作品を読んで泣き、イラストを見て泣き。
心をぎゅっと掴まれるような、素晴らしい作品でした
オメガバースものはそこそこ読んでいるけど、
ここまでΩが可哀想な設定の作品は初めてでした…
最後をのぞいて、全編通して受けの蓮に対する周り(攻めの瑛理含む)の反応だったり態度が、まぁひどい。完全にΩが差別対象になってる設定です。
そんな周りのことなど気にせずコツコツ仕事に打ち込む蓮の姿がいじらしくって…
だからこそ最後の展開に心からよかったと思えました。
時間をかけて読もうと思っていたのですが、気がつけば一気に読み切ってしまいました。
yoco先生が描かれた挿絵が作品の雰囲気とも合っていて、表紙は最後まで読んだ後見返すとグッとくると思います。
片岡先生の作品は初めて読んだんですが、他の作品も読んでみたいとおもいます!
あらすじは、他の方のレビューにもあるので省略しますが、もう本当に最高!!簡単にオススメポイントを3点レビューします!
①後半にかけての秀逸な伏線回収!
大抵の小説は、中盤あたりで結末までわかってしまう事多いですが、この本は本当にラストまでドキドキハラハラしました!そして、序盤から中盤にかけて、色んなところに仕掛けられた伏線が、ラストにかけてどんどん回収されていく、、、普通の小説としても面白い、しっかりとしたストーリー構成!!伏線回収後味スッキリが好きな方、ストリーも重視したい方にオススメです。
②不憫健気受け好きは必読!
オメガバース好きな方は、不憫受けが好きな方が多いイメージですが、受けの蓮くんはThe不憫受け!ただ、不憫なだけじゃ無い!!とにかく健気!!!!とりあえず不憫健気受けが好きな人は読んでください。
③美しい絵
言うまでもなく、yoco先生の絵。麗しや。
オメガバース以外に、この小説独自の設定がいくつかあります。(漢字が多い手術の名前?とか)ですが、内容自体は非常に簡単で理解しやすいです。オメガバースの基本設定を分かっていれば、初心者の方でもスラスラ読めます。そして、オメガバース作品マスターの方には、逆にそれがスパイスとなって、楽しんでいただける作品だと思います!