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これは20禁くらいにした方がいいと思います。ポルノだからという意味でもありますが、この精神世界を未成年が読んで果たして理解できるのかが疑問です。
この作品に限っては、本編よりあとがきを先に読むのもアリだと思います。特にネタバレはないし、作者がどのような考えを持って書いたのかよくわかります。「女装」や「調教」がテーマというより、精神的な「歪み」と「依存」が柱に来ていると思います。BLにおけるエンターテイメントとファンタジーを取り除いてチャレンジしたということでした。
主人公の由宇は普通の少年。義理の叔父である匠のことが好きなのですが気持ちを伝えられず、匠に好きになってもらうために「女の子になりたい」と考えるようになります。それを知った匠は由宇に一から全てを教えていきます。
顔のベースケアから産毛やビキニラインの処理まで詳細に書かれています。それが凄い。ビスクドールのような衣装を身につけ、化粧をして「かわいい女の子」になった由宇。しかし外見だけではない「女の子」になりたいという由宇に匠は「男に抱かれて、とろとろに濡れる身体にしてあげるから」と告げます。
お風呂で腸内洗浄する場面やアナルを拡張していく様子はリアルで読み応えがあります。セックスの仕方を教えてほしいと言う由宇に対し「それは誰のためだ」と訊く匠。本人だとは言えない由宇に匠は「そんなにそいつに抱かれたいのか」と、ここから二人のすれ違いが始まりました。
匠は優しく残酷に由宇を「女」に変えていきます。ラストで二人の気持ちが通じあった後、初めてのセックス描写は胸焼けするほど濃いものでした。
後半の『愛玩人形』は「暴力を使わない精神的な隷属に至る過程」が完成したものでした。女装だけではなく、性の道具も使って由宇を「猫」にする描写も凄いです。他のBLで見られるようなプレイ的なものではありません。
匠の出張中は自慰も禁止され、排泄でさえ匠の管理下に置かれた由宇。「隷属」という言葉がぴったりだと思いました。しかしそれは同時に、由宇だけではなく匠も相手に隷属し依存しているということなのだと感じました。
ラストのシーンでは完全に匠の「人形」になった由宇がいます。もしもこの人形が壊れてしまったら、匠も一緒に壊れて狂ってしまうのだなと感じさせる終わり方に鳥肌が立ちました。
これで絶版になっている崎谷作品以外は全部レビューが済みました。長かった…。しかしこれからも文庫化されるものや、新作が多く出版されることでしょう。
この『少年人形』は数ある崎谷作品の中でも一度は読むべき作品だと思います。最後に、崎谷さんがこの作品を出版するにあたって、崎谷さんの担当さんの「相当やばいですけど、これで行きましょう!」という開き直った言葉がよかったです(笑)
近年のアカデミックの潮流のひとつに「クィア理論」というのがあります。端的にいえば、レズビアン・ゲイスタディーズから派生した異性愛だろうがなんだろうがみんな「クィア(オカマ・変態を意味するスラング)」なんだからそこから何を問えるのかを考えるもの、と言っていいでしょう(気になる人はジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』をどうぞ)。
で、この作品とどのようにリンクするのか?
それは、主人公の意識のあちこちにある「自分」という存在への違和感。
コンプレックスという言葉で片付けるにはあまりにも生ぬるい徹底振りには正直感心しました。
同時に崎谷さんに高評価を抱いているのは、よく「学園祭の見世物」のような場所におかれやすい女装ものをあえて引き剥がしてみた、とあとがきであっけらかんというその姿勢。普通の作家ならば「女装」というものを一種のジャーゴン(隠語・萌え属性の言い換え語)としか見ないのに、崎谷さんはそれを否定しどこまでも「倒錯」スレスレで描いていこうとしてきます(由宇にとっては崎谷さんの女装観のほうがボーイズラブであっても生き延びることができる唯一の選択と思えるし、それ以外の方法は多分ないでしょうから)。
だからこそ、この作品には「萌え」という評価を下すことはできませんでした。そういう評価をしてしまうことは「主人公の叫びをかき消して」しまう暴力になると思うのです。
その剛胆さに拍手したくなるような、
荒唐無稽なセックスファンタジーと対極にある、真摯に文学的なポルノグラフティでした。
耽美で装飾的な挿絵と、ガッツリ対峙するのは、
豪華なドレスに包まれた、克明な調教物語。
それにしても、この2段組でたっぷりと、
ここまで書くか、の、調教と開発の詳細なプロセス。
底なし沼にうっとりと沈んでいくような結末。
「BL」では括りきれない、ある意味究極の「BL」
読み応え、たっぷりでした。
この作品。CD化したら、とんでもなくポルノな、エロ作品になりそう。
「…おにいちゃんの、…」
誰に言わせたいかなぁ、、、
言葉責めするお兄ちゃん・匠は、是非、ゆうきゃんにやって欲しいけど、
由宇はだれがいいだろう、、、
ちるちるさんの紹介で見つけて、あ、確かうちにある♪と、手にしました。
我が家のは表紙折れのヤケた本ですが、SHYノベルズだったのかとびっくり、装丁とイラストそして小説と、丸ごと1冊が特別な作品でした。
小説の内容は、生来の虚弱体質でコンプレックスの塊りで孤独な「由宇」の、求めたものが同性の「匠」だったことから始まります。
その匠は、忙しい父親や学校からは貰えない、安らぎや温かさを惜しみなく与え見守ってくれる、由宇の世界の唯一の存在。
でも、由宇は成長と共に、同性の自分と匠がこのままでいられない事に気付き悩み妄想し、傍にいられる理由を「女装化」に見出してしまう。
決して、由宇は“性同一障害”ではなく、狭い世界の中の年齢よりもずっと幼い由宇の足掻きが“女装”を願っただけなのです。
また匠も、自分の子・弟・生徒のような特別な由宇の願いを、意識も知識もあり受け入れたのですが、その時はまだ執着の外堀という感じです。
由宇が願い匠が適えるだけなら、倒錯的な愛とその交換で済んだかも知れません。
ですが、匠側にも見過ごせない感情があったのです。
長年培われた由宇への執着が、可愛い可愛い由宇の“女装願望”は自分以外の誰かの為?と考えると嫉妬が燃え上がって・・・、
そして、由宇の特別は自分だけだと知っても、次に欲しいものー女装していない素の由宇ーが適わず苦しんで・・・、
ページをめくる毎に、性描写しかり心の葛藤しかり、2人の間に痛みが伴って窒息感も増していきました。
読み手は、2人の気持ちを知っているだけに、眉をひそめて成り行きを見守るしか無くて結構辛かったです。
もっと早くお互いに吐露してたら、もっと早くお互いの欲しいモノを手に入れる事ができたのに、難があればある程、作品を読み手が自分に浸透させていくものだと納得。
厚めの2段組みの本ですが、作者の上手さもあって一気に読み進め、2人が分かりあえた所でやっと息を付く感じ^^、クセになりそう。
好評なエロ部分ですが、期待を膨らまし過ぎたか、流して読んだ訳ではないと思うのですが自分にはそれほどって感じでした。
作者がポルノなエンタメを意図していたらゴメンナサイなのですが、多分男女差があるし(想像<視覚!)、2人の心情の方が自分の心に暗く圧し掛かり、官能的な描写をクラマシテしまったのかと。
だから、自分にはエロ部分の詳しさは無用でした。
だからと言って、この作品が自分の中で一段下がったとかは全くありません。
2人のキャラクターも魅力的で心理描写はスムーズ、物語の切なさや痛さは琴線に触れ感情移入し易かった。
BLというカテゴリー分類だけではないですね、小説を読む男性なら勧めても大丈夫だと思います。
出版社さんも特別な作品としたかったのでしょう、装丁が素晴らしい。
“神”ですが、今まで自分が評した作品とは隔しての、別棚に置いた“神”にします。
読む人を選ぶ作品ではあるけれど、傑作だと思います。
挿絵の佳嶋さんの表紙の独特の雰囲気が内容を物語っています。
どこか退廃的で倒錯的、言うなればJUNEっぽい香りのする作品で、これをもっと文学的に書けば普通に文学としてイケるんじゃないかと思うんですよね。
それ位の精神的美学というか、BLの枠を超えた何かを感じます。
由宇〔受〕は女の子になりたい。
そんな願望を義理の叔父である匠〔攻〕が丁寧にじっくり時間と手間をかけて叶えてくれます。
そのプロセスはとても丁寧で詳細に描写されていて、エロなんだけどそれはどこか美しいのです。
この辺りは語るよりも実際に読んでこの空気感を感じてくれとしか言えない部分が多い。
自分的には今のところ、これが崎谷さん作品ナンバー1の傑作だと思ってます。