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作者買い
疎まれて育った王子と人間と蜘蛛の怪物との間に生まれた半分蜘蛛の男の子のお話です。
かつてこんなに蜘蛛が可愛く思ったことはないかもしれません。
もちろん虫シリーズも既読ですがここまで可愛い蜘蛛じゃなかったように思います。
表現がすごく繊細な作品でした。
最初のキスシーンも非常に斬新なキスの始まりで色んな意味で驚かされたし、心に残ると思います。
これはどうやってエチシーンに持っていくのだろう?と不安になりましたがいざ始まってみるとさすが中原先生。変態プレイは欠かせないんですね(笑)
残念だったのは、グレンを表す紋章がどんなものなのか、挿絵が無いので想像でしかわからず、絵心のない私には想像するのが難しかった事です…
不器用だけど甘々攻め、不憫だけど健気に前向き受けがお好きな方にオススメです。
決してあの姿を見られてはいけないよ。だなんて、まるで御伽話のようでわくわくしてしまいますね。
地獄から戻った王子と呼ばれ人々から畏怖されている王子と、国内で忌み嫌われる蜘蛛の怪物・アラクネルと人間の間に生まれた針子の青年という組み合わせ。
織物といえば糸、糸といえば蜘蛛だと連想して今作を書かれたとのことですが、そこからこんなに魅力的なお話になるのかと驚き。
静かにそっと歩み寄るような心の動きがむずむずと心地良い素敵な作品でした。とっても面白かったです。
美しい絹織物で名を馳せる、養蚕業が盛んな豊かな国。
そんなセルセンフォート国では、各王子に王子の針子として繊細な刺繍を施す者がいて…と、国の設定がまず面白いです。
過去にあったとある事情から恐れられている第五王子・グレンの針子となってしまったフィン。
彼のことをもっと知りたいと思うフィン視点でグレンを追う度に、時に損なほどに優しすぎる彼の本当の姿が明らかになってきて、ああこれは好きになっちゃうよなあと、フィンが針子としてグレンのためだけに針を通したくなる気持ちが分かってしまう。
別に人に知られなくても良い、理解されなくても良いと思っているグレンのぶっきらぼうな優しさがなんだかどうしようもなく胸に刺さるんですよ…
なんの罪もないはずの彼の深い悲しみや、幼い頃から胸にぽっかりと空いていた孤独な部分が、フィンがひと針ひと針心を込めて施した美しい刺繍によって少しずつ繕われていきます。
繰り返しになりますが、両視点でゆっくりと少しずつお互いを知っていく過程が心地良くてとても素敵なのです。
不器用にしか生きられなかったグレンの心情の変化も、その心を動かしたフィンの懸命さもすごく良かった。
グレンの良きお兄ちゃんのエセルバート王子、使用人・針子仲間など、サブキャラクターも魅力的でした。
お兄ちゃんとグレンのやり取りには萌えてしまった。食えないキャラクターのお兄ちゃんに見せる姿がキュートすぎる…
気になる点としては、やはりグレンの母親である女王でしょうか。ちょっと呆気ないというか、グレン優しすぎるよ…と思ってしまったり、後半もぎゅっと駆け足で内容が詰められていた印象があり少々惜しいです。
ですが、もしかしたらアリアドネの糸に導かれてこうなったのかなと思える締めの部分は素敵なものでした。
一風変わったファンタジーをお求めの方はぜひ。
人外もので蜘蛛モチーフは初めてです。
蜘蛛かぁ……ビジュアル的にどうなんだろうと興味津々でしたが、挿し絵に蜘蛛は描かれていなかったのでちょっと残念。頭の中で色々と想像しながら楽しみました〜
というわけで。
蜘蛛と人間のハーフの青年・フィンが、王子・グレンの専属のお針子に採用されることから物語が始まっていきます。
人間の父と刺繍の名手と名高い蜘蛛怪物(アラクネル)の一族である母との間に産まれたフィンと、不遇の境遇に置かれたグレンの恋愛ストーリーは、まさに山あり谷あり。どちらともにワケありな事情が物語を盛り上げていきます。
この作品の大きなキーポイントは"刺繍"。
アラクネルが紡ぐ刺繍には不思議な力があり、それを狙う悪役も登場します。
フィンの刺繍の才能は狙われる対象にもなるけど、グレンとの距離を縮めるキューピッド的な役割もある大事な要素。刺繍に全てを捧げるフィンの姿にご注目下さいね^ ^
フィンの真骨頂はアラクネルの血を引いた素晴らしい刺繍の才能です。
仕事中は、誰にも部屋に入らぬように人払い&内鍵ロック!
というのは、フィンが仕事をするときは普通の姿ではないからです。口から糸を出し、翡翠色のライン模様が身体に浮かびあがる。見事な刺繍を施していく彼の秘密の姿は内緒です。それに、新月には完全に蜘蛛化しちゃうので、フィンの正体は絶対に知られてはならないのです。
フィンにとってリスキーな仕事なのは間違いありませんが、刺繍はフィンの天職。身に付ける者の生き様や人となりを糸に込めた想いが、誰をも魅了する素晴らしい作品となって舞い降りてきます。
グレンの心を少しずつ溶かしていくフィンの刺繍。もちろん刺繍だけじゃなく、健気なフィンにも惹かれていくグレンの気持ちの変化も見どころです。
このままグレンのお針子として幸せな日々が続くと良いけど、そう簡単にはいかないんてすよねー…。
フィンとグレンを襲う陰謀や、結末までの伏線だったり過去の出来事だったりね、そこには長年の母と子の確執も含まれていて、色んなことが後半には複雑に絡んでいきます。
最後は怒涛の回収ラッシュ。真相があれもこれもと暴かれて大忙しです。
多少の詰め込みと駆け足感は否めないかな。
グレンの母である女王には喝!
改心していい感じに落ち着いたけど、これまでのグレンに対する仕打ちは酷いよ!?…という若干モヤる気持ちを物語の片隅に置きつつも、全体的にはハッピーエンドになったので読後感は良かったです。
グレンとフィンは、産まれや育ち、身体も性格も人種も違うけど、本当の自分を周囲に隠しながら生きてきたところは似ているなと思いました。だから自然とお互いに惹かれていったのかも。
フィンがグレンのために紡いだ刺繍が、フィンの想いとなって形となり、それをグレンが身に付けることによって、フィンの気持ちがグレンに伝播していく。刺繍が繋げたささやかな愛が心に響く作品でした。
2人の周辺部は割と騒がしいけど、BL展開はゆっくりで控えめで派手じゃないのが私には刺さりました^ ^
ちょっと一風変わったファンタジーを味わいたい方におすすめです。
因みに私のお気に入りは、「鶴の恩返し」のようなフィンの作業シーン。誰にも部屋に入らせず蜘蛛化してせっせせっせと刺繍仕事するなんて、まさに"それ"じゃないですか〜
フィンの能力に引き込まれちゃいました♪
作家買い。
中原さんの新刊はファンタジーもの。あらすじを拝見して、ちょびっと買うのをためらいました。すみません。
ワタクシ、蜘蛛がとっても苦手なのです…。
まあ買いましたけどね。
そして、とっても面白かったです。
主人公はフィン。
彼の住まうセルセンフォートは養蚕業が盛んで、ほかの国では真似できない技術の織物によって豊かな財源を誇る国だ。かつて蜘蛛の怪物・アラクネルが織りなす刺繍に目を付けた初代国王の手腕によって、セルセンフォートは財を成したという歴史がある。
アラクネルと人は良い関係を築き共存を図っていたがとある事件が勃発。以来、蜘蛛を見たら殺すようにという女王の命が発動され、今では蜘蛛は忌み嫌われる存在になってしまった。
そして、フィンは、母を蜘蛛にもつ半妖。
誰にもその秘密がばれないように隠し通してきたが、フィンの夢は「王子の針子」になること。自分の刺繍技術を生かしたいと思っている。そして果たしてフィンは王子の針子として起用されることになるが、フィンが配属されたのは「血を好む」という悪い噂の多い第5王子のグレンだったー。
というお話。
蜘蛛の出す糸で刺繍を織りなすという設定からして非常に独創的というか、BL作品で「蜘蛛」が主要人物というのは斬新というほかないなと思いつつ読み始めました。いや、個人的に蜘蛛が苦手というだけなのですが、でも蜘蛛の半妖が受けさんて…!
石田さんて非常に画力の高い方なので、めっちゃ「蜘蛛!」というビジュアルで挿絵があったらどうしようかと思いましたです、はい。が、私と同じように蜘蛛苦手な腐姐さま方、安心めされい。大丈夫です。蜘蛛の挿絵はなし。むしろイケメンさんしか登場しないので眼福でした。
蜘蛛の怪物が織りなす織物で豊かな国となったセルセンフォート、という設定。
女王が蜘蛛を見たら殺すように、という命を出したこと。
そしてフィンが針子になりたいと思ったその理由とか、フィンが仕えるようになった第5王子のグレンとか。
全く関わりがないように見えるこれらのバックボーンが実に緻密に繊細に絡んで進むストーリー展開はさすが中原先生といったところか。「血を好む」と噂されるグレンの素の姿はめちゃ男前。ナイスガイすぎて悶絶しっぱなしでした。
そして、フィンという男の子がとにかく可愛いのです。
彼が王子の針子になりたいと願ったのも、グレンの優しさを知っていく過程も。
人から忌み嫌われる蜘蛛の半妖だという負い目が彼にはあるのかな。なんか、蜘蛛嫌いでごめん、という気持ちになってしまった。
グレン、そしてフィン。
共に、自分の感情の変遷に理解が追い付いていないさまがまた良い。
彼らが、相手に対して抱いているのが「恋」だ、と気づくまでの過程にめっちゃ萌えました。
で、フィンが蜘蛛の半妖、という部分に絡んでの彼の身体の秘密がめっちゃエロかった…。これから蜘蛛を見かけたら思わずこの作品を思い出しそうです。本物の蜘蛛ってお尻から糸出すんじゃなかったっけ…?
ストーリーも面白いですが、斬新な設定、そして登場人物たち。
何もかもが素晴らしい1冊でした。個人的に第1王子が好き。彼のスピンオフ、描いてほしいな。と切望しています。
中原一也先生は読ませる力はピカイチだと思っているので、今回も迷わず予約していました。
過去の自分の中原先生の作品の評価を見ると、実は泣かせられた作品に神評価を付けていることが多いんですよね。www
今回は涙腺にピクリとも来なかったので萌2にさせて頂きました。でも、それだけではないんです。実は途中に個人的にとても萎える場面があって、珍しく今回は好みじゃないのかと心配になったんです。最後まで読むとあの展開はグレンとフィンの危機を救う為に必要だとは分かったのですが、グレンという人物を考えた時にあんな事をするだろうかと最後まで引っかかってしまったのも確かなのです。
更に今回は王子なのに用心棒のような事をして積み荷を守ってるんですが、国の荷物なのに盗賊に襲われちゃう規模なの?ってそこら辺も引っかかって駄目でした。
グレンの本当の姿とか彼の清廉さとかには凄く惹かれました。あんな目に遭いながらも優しい心を捨ててない姿に凄く萌えたんです。
また、フィンの半妖に隠された秘密なんかは、全然想像してなかったので凄く驚きました。
後半にグググいーと引き込まれたんです。この辺りがやっぱり上手いなぁと思いました。
ただ、やはり引っ掛かる点が多かったのと途中のアレが好みじゃなかったのでこの評価でした。