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表題作或るシカリオの愛

ジャレス・マルティーニ,古道具屋の店主
ルカ,元殺し屋の天涯孤独な青年

その他の収録作品

  • 恋を学ぶシカリオ(書き下ろし)
  • あとがき

あらすじ

二束三文の宝飾品や動かない懐中時計──ジャンク品が並ぶ古道具屋で、無気力なその日暮らしをするジャレス。ところがある日、密売業者からガラクタと共に身元不明の青年を押し付けられてしまった!? 読み書きや計算もおぼつかない青年・ルカにできることは、なんと「殺し」だけで!? 無垢でいたいけな殺し屋と、過去に傷を抱えた世捨て人──決して交わらないはずの男達が辿り着いた純愛!!

作品情報

作品名
或るシカリオの愛
著者
砂原糖子 
イラスト
稲荷家房之介 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199011153
4.4

(44)

(29)

萌々

(8)

(4)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
10
得点
192
評価数
44
平均
4.4 / 5
神率
65.9%

レビュー投稿数10

自分を知り、相手を想い、世界がキレイであると気づくルカの成長ストーリー

パキッとした青空が印象的な表紙、中南米を舞台とした、砂原先生の作品です。
シカリオとは?と意味を検索しなくてよかったです。多少のネタバレになってしまうかも。

正直、最初の50ページ目くらいまでは、なかなかのめり込めず。
とにかく、ジャレスもルカも無口で。
だから、どんな人なのか、何を考えてるのか、攻め受けともにとっかかりがつかめなくて。

幼い頃から殺しをしてきたルカ。
殺し以外に、何もできない。
生きるためには、感情を持たず、何かを考えずにいたほうがいい。それが出来れば生き延びる。出来なければ死ぬ。そんな世界で生きてきたルカです。

でもある時、雇い主から、ジャレスの古道具屋に不用品と共に置いていかれ、ジャレスにとっては騙されたようなものだったけれど、結局邪険にもできず、商品と並べて陳列するように、ルカを店に置いておくことになりました。

ルカに「生きる」ことを教えるジャレス。
読み書き、計算。自分の気持ちや考えを持つこと。
そして、生きていくための仕事として体を売るならば、とルカにセックスの手ほどきをすることになります。
ルカはお仕置きとしてのセックスしか知らないので、まずは自分が気持ちよくなることを教え、そこから男の煽り方、実際のテクから表情や喘ぎかたなんかも身につけさせようとします。
ジャレスの指導が結果的に言葉責めみたいな感じでエロくて、ドキドキさせられました。

身体を触れ合わせたり、店番の合間に勉強したり、料理が得意なジャレスと美味しい食事をとったりしているうちに、ルカは根が優しいジャレスに好意を抱くのですが、感情を知らないルカなので、その気持ちが恋であることにも気づかないのです。
ルカがもどかし可愛くて!
気持ちの変化とともに、世界が色付いていくように、きれいな景色だとか、お店にある商品だとか、鮮やかな描写が増えていくのも素晴らしいです。
ルカの目にうつる世界が変わっていくんです。

お話の最初のほうは、あまり入り込めないと思ったけど、それもそのはず、抑えめにして、この色づき方を出させるためだったのかな、砂原先生さすが!と思ったのでした。

実は同じようにジャレスの気持ちもルカに向いていくのですが、ジャレスにも過去が。
シカリオ。彼もまた元殺し屋だったのでした。
ルカに生きる術を教えながらも、本人は退廃的な雰囲気をまとわせています。
ルカを置いておくことにしたのも、自分と重ねる部分が大きかったんだろうな。
ルカは頭を悪くすることで生き延びられてきたけれど、ジャレスは頭がよかった故に、また、弱みとなる恋人を持ってしまったがゆえに、死にかけました。
生きることになったのは、フェルナンドとの偶然のやりとりがあったから。

ルカへの気持ちを自覚したからこそ、ジャレスはルカを遠ざけることにします。
また、かつての同胞が訪ねてきたために、ルカの身を案じたためでもありました。

だが、やられるようなルカではない。
サッサと敵を片付けて、ジャレスの元に駆けつけた!実際、ルカは凄腕の殺し屋だったんでしょう。

ようやくジャレスへの想いが恋だとわかったルカ、そしてジャレスも、ルカと一緒にいる決意をします。

本編後の「恋を学ぶシカリオ」
これもすごくよかったー。
追われるように街を出たので、逃亡劇が主体になるのかと思っていたんですが、あくまでルカの恋を学ぶ様子に主軸が置かれていて、ルカを応援しながら読みました。
ルカは当然、ヤキモチもわからないわけで、また、ジャレスと気持ちが通じ合っていて、恋人だとも思えていないわけで。
タコス屋の姉妹との出会いで、胸のモヤモヤをずっと抱えてるルカが、可愛くてたまりません!
ジャレスはルカに自覚してほしくて、わざと何も言わないし、挑発するようなことをしてみせたりするけど、めちゃくちゃイケメンなので、全部絵になっちゃうというか、こちらまでドキドキハラハラ。
ようやく気持ちが本当に通じ合ってからのエッチでは、ルカの喘ぎ声がナチュラルに煽る感じで、これはジャレスも嬉しかっただろうな。
ど下手くそな声を出していたルカはもういません。

最後、サルヴァドールとの決着も宙ぶらりんにせずちゃんと収められていて、しかもすごくカッコいい去り方だし、スッキリできたのもよかったです。

ジャレスはこれからたくさん笑ってくれるだろうから、ルカには自信持って隣にいてほしいな。
これからも旅するのもいいし、またフェルナンドもいるミノシエロに戻ってもいいし。
彼らが自由に鮮やかに色づく街で生きていけますように。

素晴らしい作品でした。

0

読み始めと読了後の感想の違いがすごい




密売業者から二束三文で買い取った商品の中に紛れ込んでいた男ルカ(受け)。
古道具屋のジャレス(攻め)は殺ししかできないというルカに仕事ができるようにと男娼としての商品になるようにと指南をするのですが‥


この作者様のお話は甘い話が多いという印象でしたが、今作は初めの方はまーったく甘くありません。
指南という名の感情の伴わないセックスは読んでいて全くそそらず、この辺りが苦痛で、読み進めるのに非常に時間がかかってしまいました。いつもの5倍くらいの時間をかけて読んだような気がします。

よくあるBLでは、こういう(家に仕方なく置いてやる)シチュエーションでは何だかんだ面倒見てあげるのですが、ジャレスは初めは面倒も見ないし、なんなら自虐趣味のヤバいやつに売ってしまいます。間一髪(どちらかというと買った方の命)で助け出した後も、男娼の手ほどきをしたりして、優しい(酒屋の友人曰く)ながらも完全に面倒を見る気はない。
常に人が死んでたり銃声が聞こえたりする土地柄で、常に何気に緊張するし、2人の関係も緊張感漂う関係だしで、ずっとヒリヒリしていて読んでいて疲れました。この緊張感が読んでいて楽しいと感じられればとても面白いと思うのではないでしょうか。
私は甘々な話が好みなので、前半までは「趣味じゃない」でした。

表題作は、後半に行くに従ってどんどん緊張感が増して、しんどくて、でも最後はほっとする話でした。
書き下ろしも甘さには程遠いのですが、2人が恋人になって、人間らしくなっていく様子が、よかったと思える話でした。

甘さはあんまりなかったけど、良いお話でした。



ところで、シャレスの腐れ縁の酒屋のフェルナンドの空気読む力がすごい。実は読心術が使えるのではというくらいで、2人の間に彼がいてくれて良かった。
フェルナンドの夢が叶うと良いですね。ルカのおかげで叶うんじゃないかな。




1

続編が読みたくて仕方ない……!

好きな要素しかなくて悶えながら一気読みしました。

陽気な人々に反して暴力と銃声が鳴り響き、常に〝死〟と隣り合わせな街・南米が舞台。
そんなアウトローな設定ながらも、【心に傷を抱えた世捨て人×無垢でいたいけな殺し屋の青年】の不器用で優しい交流に心が満たされる〝愛〟のお話でした。

何と言っても、初めから甘々じゃない所が凄く良い!
〝甘々になるまでの過程〟が大好きなので、その過程を存分に味わう事が出来て満足感が半端ないです

初めは、ガラクタ同然に売りつけられたルカを「面倒事に巻き込まれた…」と疎ましく感じでいたのに、最終的には無くてはならない人生の相棒になっていて……この2人の関係変化にめちゃくちゃ萌えました*

そして、攻めのジャレスが性癖すぎる……!
心に傷を負った草臥れた男性が大好きなんで、もう…気怠げでやる気の無い、世捨て人な雰囲気に1発KO
無気力なのに、溢れでる色気が半端ない……
無垢で無知なルカに房中術を教えるシーンは、何処となく〝子供に悪いコトを教える大人〟のような背徳感が漂っていて、ひたすらドキドキしました♡

一方、幼い頃から裏組織で生き延び、感情を知らない〝元殺し屋〟のルカ。
臍の緒がついたまま、ゴミ溜めに捨てられていたルカの
——命は生まれたときからずっと空気のように軽い
と言う表現が、壮絶な人生を物語っていて胸が痛む…

そんなルカが、冷たく突き放しながらも何処か優しいジャレスと接する内に、ゆっくり感情を知っていき…初めて他人から与えられる〝愛〟を知り、恋をする。
「死ぬか、生きるか」のモノクロだったルカの世界が、鮮やかに彩られていく変化にじんわりと癒されました。

初めての感情に戸惑いつつも、止められないルカの想いが初々しくて可愛い一方で、愛を知ってるからこそ、愛する事を恐れるジャレスの絶妙な距離感が焦れったい……!

前半から散りばめられた伏線回収と、見事なタイトル回収に拍手が止まらない、読み応え抜群な〝孤独な男達〟の純愛作品でした。是非!

1

光をもたらす者

文句なしに読み応えのある作品でした。
異国情緒溢れるストーリーは私の語彙力は褒め称えられないほどの描写力。出てくる料理や民芸品をググったりして、現地の景色を想像しながら読むのが楽しかった〜!

特に好きだなと思ったのは、ジャレスの元恋人の女性の描き方。
BLだと『過去に付き合った人はいるけれど、こんな気持ちになるのはお前が初めて…』的な描写が定石かと思うんですが、そうではなくて、過去に誰かを愛した経験があるからこそジャレスがルカに抱く感情も愛なのだと分かる…という表現が切なくて優しくて、二人の関係に説得力を持たせていてすごく良かった。
ルカに恋人のことを訊かれて、『元』恋人な、とジャレスが返すのも、彼の優しさを感じられてきゅんときました。

何もかもが初めてなルカにジャレスが惜しみなく注ぐ愛、『こんな気持ちは初めて』がこれからたくさん起こるだろうその後の彼らを妄想するのも楽しい。
最近砂原先生は同人誌出してない印象ですが、アフターエピソードがあったらぜひ読みたいなあ。

2

心理描写の畳み掛けと疾走感が神!

久々に泣いた小説。長くこの物語の空気に浸っていたかった。めちゃくちゃ良かった!

日常の中に発砲音が溶け込んでいるような、遠い異国が舞台のお話。古道具屋の店主と捨てられた元殺し屋の少年、かと思いきや店主も実はワケありで――?という、メイン二人はどこかが欠けた者同士だった。

ジャレスが心に負った傷はとても分かりやすいものだったが、そこにしっかりフタをして生きているために、ルカ視点で見ると内面がとても分かりにくい。元々そんなものを探りながら生きてこなかったルカに読み取れるはずもなく、とてももどかしい。

ルカの素直さ・無垢さは背景を考えて切なくなりながらも、とても可愛かった。必死にジャレスに応えようと頑張る姿が良い。危なっかしさにハラハラするのはジャレスも同じだったんじゃないかな。ジャレスの元を去る際に、最後に選んだのがナイフじゃないところも良かった。

ジャレスはルカとは対照的な成熟加減が厄介だと思った。心を動かすことへの抵抗力がすごそう。ギリギリまで抵抗して、危険からルカを遠ざけて、やっと受け入れるシーンは感動。ルカの拙いからこそ深く伝わるストレートな告白も泣けた。

クライマックスへの心理描写の畳み掛けと疾走感が素晴らしかった。砂原さんのこの書き方がめちゃくちゃ好き!心も体も全力で走って相手に向かっていく感じ。このシーンだけでも神。

後半はルカ視点で二人が心から恋人になっていくお話。流れとしてはよくあるBLかも。旅立つ二人を見送った感動の余韻の中で読む続きの物語は、どこかふわふわしていて、気持ちの良い読み心地だった。

乾いた空気を感じさせる情景描写も楽しく、トリップした気分で読めた。ファンタジーでなくても自分にとっては十分に非日常で、だがこの世界とは地続きで、もしかしたらこんな二人がどこかにいるかもしれないと想像できるのが良い。

特に前半のお話は何度でも読み返したいと思うくらい好き。面白かった!

3

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