優等生と狡猾な人たらしの二重人格×片想いの劣等生

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表題作イドの遺言

沢村和耶
休学中の大学生,二重人格
檜垣諒雨
派遣自動車整備士

その他の収録作品

  • 描き下ろし6P

あらすじ

「…和耶の好きなようにしてほしい」

高卒で働きながら細々と暮らす諒雨は、ある日学生時代に好きだった青年・和耶と再会する。しかし、再会を機に和耶に「自分は二重人格である」と打ち明けられる。ずっと好きだった優等生で優しい和耶とチャラくて狡猾な別人格の和耶。二人と接しているうちに次第にどちらの和耶にも惹かれていく諒雨は――…?

作品情報

作品名
イドの遺言
著者
アサヮ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
海王社
レーベル
&.Emo comics
発売日
電子発売日
ISBN
9784796416801
4

(72)

(30)

萌々

(23)

(16)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
16
得点
292
評価数
72
平均
4 / 5
神率
41.7%

レビュー投稿数16

タイトル回収、素晴らしい

読了後の方向けだろうレビューです。すみません。
面白かったねを共有したくて……。


まず最初に、“イド”の遺言というタイトルでしたので、二重人格で性に奔放であるというトップ、和耶の主人格ではない人格が登場した時点で「あぁ、彼が居なくなるのだな」と予想はついていたのですが、ついていたのに、裏切られたような感覚になりました。

結末をここで語るのもナンセンスな気がしますが、興奮冷めやらぬ、ですのでどうか多めに見てください。
和耶が「諒雨(ボトム)が好きなのはおれじゃなかったんだ」と勘違いしたまま、そのまま別人格を殺して主人格が別人格を演じるなんて普通考えつきません……。そういうタイトルの回収の仕方をするのか〜!!と脱帽しました。
これまたひと味違うヤンデレを浴びたなと……。

「諒雨がおれ以外と一緒に居るのは嫌だから」と友人を騙したように、諒雨の事も騙して生き続けるというのはダークでいい味がしますね。
ただ、行動原理が基本的に“諒雨の唯一でありたい”なのがいじらしくもあります。
男に乱暴された辛く苦しい過去(直接的シーンは無いです)をひた隠しに生きてきた事や、別人格に交友関係を乱された事等で自己完結型(ネガティブ)の自罰意識強め自損思想なのが全マシすぎて個人的性癖にぶち刺さって抜けそうにありません。
面倒臭い男なんて面倒であればあるほどいいですからね。

遺言の件はダブルミーニングにもなっているのかな?
時間を空けて冷静にもう一度読み込みたいです。

尺があったらもう少し掘り下げられた所もあったのかな?と思わないでもないところもありましたが、伏線回収の鮮やかさに個人的には大満足の作品でした。


表情の描き方、雰囲気の作り方が突出してお上手な作家さんで、線の引き方も柔らかく、登場人物の顔も上品さとかわいらしさが共存していて魅力的でした。
髪の毛先のペンの抜き方が艶っぽいですね……。
パースの乱れもなく、読みやすいです。
ただ、流し読みするタイプの方は話が理解できなくて難しいと感じてしまうのではないかな。
丁寧にストーリーを構成されている作品だと思います。

4

過剰な想いから生み出した二重人格 重苦しい メリバが刺さる!

和耶×諒雨

愛のゆえにくる歪んだ重いストリートが好きで、
アサヮ先生の作品は電子単話で虜になった。
単行本が出て嬉しい。描き下ろしがあって感激。

諒雨と和耶、
中学校時代に素直になれなかった2人の想いが、
6年後の再会から再び動き出す。
諒雨と和耶と、和耶の二重人格であるもう1人の和耶(あいつ)との三角関係のような複雑な恋が広がる。

2視点から滲み出るお互いへの心理的葛藤が鮮やかに描かれていて、
じわじわと進行する距離感とともに、精神的に重苦しい展開が続いて、
恋になるとどうしようもない感情に飲み込まれていく。

メリバが心臓にズキューンと突き刺さる!
結末が(2人にとって)良いものかどうかは、読み手に委ねられるでしょう。
私は、恋が本心に向き合うことが一番大切だと思っているから、納得できる結末だった。


和耶の諒雨への重い執着ががいいところだが、
その気持ちが臆病で伝えられなくて、
ヘタレな性格が二重人格を生み出してしまったほどの
吐き出せない過剰な想いが胸の奥で弾ける!

和耶の心に生み出されたあいつは、
優しくて包容力のある和耶と真逆で、
悪の本心を抱えて少しヤンデレな傾向が醸し出した緊張感とダーク感・・・

和耶にとって、あいつとの交流は不可能で、
切り替わるのもコントロールできなくて、
同時に意識することもできない。あいつを嫌っている。

諒雨にとっては、和耶とあいつはどちらも「和耶」という人で、
和耶の穏やかさに癒されながらも、
あいつの挑発的な態度に心が揺れ動いて、
和耶とあいつの異なる「好き」にどう向き合うのかーー和耶とあいつも同様に好き。
ヒリヒリとしたのは、
和耶があいつを嫌っているから
あいつを好きになるから生じる罪悪感!

あいつに追い詰められる和耶、
1人でいることへの恐怖から、
諒雨に依存するようになっていく様子、
自分ができない諒雨への気持ちの表現をあいつができているから、
諒雨が好きなのはあいつだと思い込みという自信欠如、
次第に襲われてくる痛苦や重圧、
自己嫌悪に陥った行動・・・沈痛で寒気がする。

そんな和耶を救おうとしても、
どうすることもできない諒雨、
和耶とあいつにも献身的に接し方が健気で、
少しずつ見せるツンツンも愛おしい。
貧乏な家庭背景という不憫さが、
和耶への気持ちと純粋な依存へと繋がっていく姿にも目が離せない。

あの時。もし不器用でなければ、
2人はどうなっていただろうか、と考えさせられる。

二重人格とその葛藤が主なテーマになって、
形にできない想いに悩む和耶、
それぞれの人格と向き合う諒雨、
2人の心理描写が本当に見事で、
関係がどんどん深まるにつれて、
愛も痛みも増していくのが切ない。
二者択一という曖昧な状態で、
誰が傷つくしかない恋になっていくか・・・
タイトル回収?・・・とラストまで読み進めて、
しっかりした物語が脳の深淵に迫って、余韻が止まらない作品でした。

3

そうか…

素直に面白かったです。

読み始め、再会のシーンがあっけなさすぎてどうなるのかな…と思いましたが、あれよあれよという間に話に引き込まれていきました。
(途中、ん?というご都合主義もありましたが…)

二重人格の主人格であるカズヤの事が好きだったはずのリョウが、副人格のカズヤに惹かれている…?比べてしまっている…?
求めたらダメなのに…という事は…?
これからどうなってしまうのかしら…と思っていましたが、最後に…おぉぉ…そうくるのですね…カズヤ、いいんだね。あなたはそれで、いいんだね…。

カズヤとリョウ、2人の心に小さな棘が刺さったままなのでは…と思いましたが、それが良いのだな。
うん、そこが良いのだな。

なんだか、私の心にも何かが刺さったままの様な気がします…。
もう一度しっかりと読み直します。

今後の作品も楽しみにしています。

2

タイトルに引かれました。

初めての作家さんの作品です。

タイトルからして不穏な匂いが…
これは好みなやつだなと思いおもわず手に取りました。
はて、イドとは何ぞや?と言う状態でしたが、
とりあえず読み進めてみることに。

帯に歪んだ三角関係とありましたが、成程。
二重人格。そういう事でしたか。
表紙の和耶(攻め)の表情が水面に映ってる姿と
そう出ないのとで違うところが、またそれを
彷彿させてて素晴らしいなと。
作中でも鏡が出てきたり、映し出す物体に
もう1人の自分が出てきてる表現がとても好きでした。

理想の自分と本来の自分、どちらも自分なのにな。
涼雨はどちらの和耶も好きだと思います。
理想を追い求めるが故に本来の自分を消す、
これが良い選択だったのかは分かりませんが、
なんだか現実にも起こりえそうな心情でのめり込んで読んでました。

ちなみにイドとは無意識の領域のことらしいです。
本能のままに理想の自分になることに結びついてるのかな?あくまで私の考えですが…

またアサヮ先生の作品読みたいなと思わせてくれる
面白い作品でした。

2

別々じゃないはずなのに

 終始淡々とした空気ではあったのですが、扱っているテーマが非常に重くて、そのミスマッチ感が逆に不安を煽ってくるような作品でした。こういうの、嫌いじゃない。絵も好みですし、ストーリーも予想した展開から2転3転して否応なしに引き込まれ、結末も絶妙なメリバ加減で久々に深い余韻を残してくれる作品に出会えました。こちらが初めての単行本ということで、次回作もとても楽しみです。

 和耶の人格が分裂してしまった原因となった事件の詳細は描かれていませんでしたが、きっと直前の諒雨からの拒絶も大いに関係あったんですよね。2つのダメージが重なって自分の価値を底まで下げてしまった和耶は、本来の自分とはまったく逆の、欲求を素直に晒け出す人格を無意識に生み出した。再会し一緒に暮らし始めた諒雨にとってはどちらも大切な和耶であることに変わりなかったけれど、元の和耶の心は、昔の深い傷に今の二重人格の悩みも重なって、もう手の施しようがないほど壊れてしまっていたんですね。心の救済のために生まれた人格のはずだけど、強くない和耶自身に救われようとする気力が残っていなかった。そして、和耶がとった選択。これから偽りの日々が始まるのかと思うとあまりにも辛く、和耶と諒雨、どちらの立場に立ってもやりきれません。どれだけかかってもいいから、いつか諒雨が気付いて、和耶自身がちゃんと諒雨に愛されているんだと分かる日が来ることを祈りたいです。

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