特典付
1巻で解決したと思われた先祖返りの心配もなくなったものの、先祖返りを抑制するために飲んでいた感情を抑えていた薬のせいでつっけんどんな物言いをしてしまう練。2巻では電灯開発部の代表になることで、楓以外の人や部下とうまくコミュニケーションが取れずに悩んでいました。そんな時に楓とも言い争いになりそのまま帰られてしまいます。無事に楓を見つけ、そのままふたりで楓の村に行き、数日過ごすことになりました。
2巻の終わりで練が感情を爆発して涙を流し倒れます。3巻では練の目が覚めた時からはじまります。
3巻はある意味、練の再生や生まれ変わりのものがたりであり、そして成長がテーマになっていると思いました。
練が相手の気持ちをおもんぱかろうとしてから、いろんな人の胸や目から糸が見えるようになります。それは人との繋がりであったり好意であったりするようで、ちゃんと練もそれを「大切にしたい」と理解しています。でも楓からの糸は強くて直視をするのも辛くて、目を合わせられません。
自分を変えようとしてなにかをしようとした結果に見えた糸。それによって自分の情緒が不安定になって練にはやりにくく感じつつも、それってある意味みんなが思春期に経験してきたことなのかもしれません。大人になって結婚してから自分が変わっていくのは、きっと何倍も恥ずかしいんでしょうね。
そして2巻で練が代表になることに躊躇した原因となった言葉を言ってきた西の天才発明家で電灯制作の指導者であるチャーリー・ウィンストンから手紙がきます。自分の研究所の助手にならないかと。チャーリーは遠慮なく練を自分の元に来るように話を進めていきます。理にかなっているけれども計算ずくで、練もその方が会社のためであり元の自分のままでいられるからと、心が傾きかけます。
でも練には楓がいます。楓が理由になります。みんなと繋がる糸もそう悪くないと思えます。
そして最後にちゃんと自分が怒っていた理由も目を合わせられない理由も理解します。その時の楓の糸と練の顔がすごくいいです。すごい表現力!無表情だった練がぐちゃぐちゃになっていく様子がめちゃくちゃよかったです。
3巻で完結なんですが、もうちょっと続いてもよかったのではないかな、まだ描き足りないところがあったんじゃないかな、と勝手に続きを期待してしまうほどです。でもきっとここで終わって、読者それぞれが物語の中のことや描かれなかった未来のことを想像するのも楽しいですね。
1巻でまずいったん終了した物語を2巻3巻と続けて、練と楓だけでなく家族・部族・会社そして世界まで物語が広がっていきました。ただかわいい兎とかっこいい狼のケモ耳が不本意ながら結婚することになってから互いを想いやって好きになっていくだけでなく、番になって暮らしていく様子が丁寧に描かれているとても素晴らしい作品になっています。
BLらしいイチャイチャはあまりないです。でも大満足で何度も1巻から読み返したくなります。
これからも練と楓とみんなが幸せに暮らしているといいな。
獣人ファンタジーのBL作品は多々あれど、これだけ精密な世界設定をしている作品はなかなかない。ファンタジー好きはBL以外の部分もファンタジーの良さをたっぷり堪能できる作品だと思う。
描きたいカップリングがまずあり、それにあわせて設定を付け足していったというより、先にこの世界の設計をがっつり作り上げ、その中で暮らし生きている様々な獣人たちがいて、さらにその中の一部(練と楓)にフォーカスして物語を作ったというような印象。例えばGoogle Earthのように俯瞰から見た地球ずーーっとズームインしていくとそこに生活している練と楓がいる…みたいなイメージ。
感情が育ってくることによって感情に振り回されて苦しんでいた2巻の練はとってもしんどそうでせつなかったけれど、辛いことだけではなく他者とのつながりを育んでいく練の成長物語を見届けた感じ。そのつながりを糸で表現していたのがとても素敵だった。
さらに楓への恋心を自覚したときの練が、初心を通り越して自分の感情に振り回せれているのが微笑ましい。自覚する前の方がスキンシップが多くて自覚してからは意識してダメダメにへたれてしまう攻め良いなあ。
個人的には練が妄想で見たちっちゃい練の前に楓が現れるシーンがお気に入り。子供の頃の攻めの前に現れ救済する受けというシチュが大好物なので。あとうずくまってる小さい練がめちゃめちゃせつなくて可愛い。
これで完結と言っていたけどもっとこの世界の実態を知りたいと思ったし、同じ世界で生きる別の獣人たちのストーリーも知りたいな。
2巻の後半から、練さんメインの話に。
先祖返りをしないよう、
小さな頃から感情を抑える薬を飲んでいた練さん。
投薬が終わって、少しずつ感情が再生するように漏れ出してく訳ですけど
辛いことはつらく、他人の感情にも反応するようになると
それはそれでしんどい。
2巻からその展開を読んでいて、
抱えきれない感情の量に
なにより一番は、そんな自分のことを
周りと違ってしまっていると
持て余して涙する練さんに泣きそうになってしまいました。
3巻では、どうなるのかと思っていましたが
ここにきて、糸という心象の可視化!
ファンタジーを逆手に取っての、この展開は
思ってもみなくてやべぇとなりました。
赤い糸じゃないですが、人との信頼関係の表れとして糸が登場するんですけど、
これは相手の気持ちが見えるものとかではなく
練さんの相手に対して認識しているものの可視化で
もしかしたら、練さん自身が
混乱しそうな自分の内面をどうにかしようとした結果、無意識に作り出したものなのかもしれません。
でもこの演出、独特の感性を持つ練さんらしい展開で、ほんと良かったです。
今思えば、獣化をしない為に感情を抑えていたんですけど、
先祖返りからヒトに戻ってこれたのは
楓という感情が動いたからなんですよね。
はーBL絡み合う素敵な流れにときめく❤︎
話が脱線してしまいましたが、
あとがきに、「事実を山ほど描く、しかし真実は描かない」と決めて描いていたというのを読んで、まためちゃくちゃアガりました。
本当にそれは見事に形にされていたし、
正しく真実だな、と益々読み応えを感じてしまいました。
最後に、この感情を可視化した糸が
クライマックスのエチでは
もはや糸が溶けて2人も溶かして粘着させるがごとく変態していくという、最高の演出となります。それまで目覚めた本当の恋心から楓を真正面から見えなくなっていた練さんでしたが、
身も心も一緒になりたい的な衝動に駆られ
モノローグでは、ばかになる。となってましたけど笑(キャー)
それまで理性的であれと努めていた自分のリミッターを外すことができたんですよね❤︎
もう感情に溺れても大丈夫になったんです。
いや、少しずつなっていったのかな。。
なんにしろ、胸熱でめちゃくちゃときめいたし
良かったねー!と幸せにもなり、いわゆる多幸感でいっぱいになりました。
最初は可愛くて楽しい大好きなファンタジーものだと読み出していたんですけど、
こんなに深いお話だとは…もぅたくさんの人に読んでもらいたい。
長々と書いてしまって
また頭が冷えたところで
このレビュー、整理するかもしれないんですけど、
ぜひぜひ堪能してもらいたいです〜❤︎
1巻発売後から本誌で追っていました。
練さんと楓のお話は完結しちゃったんだなという寂しさと
こんな素敵なお話を生み出してくれて本当にありがとうございました
という気持ちでいっぱいです。
練が見えるようになった、人と人とをつなぐ糸
色んな見え方ができるし、とらえ方もできて想像力もかきたてられました。
3巻では糸が見えるようになり照れる練さんがとてもかわいかったです。
楓も笑顔も見られて本当に大好きな作品に。
書き下ろし、先生のあとがきを読んで考えさせられ、
もう一度最初から読もうとなりました。
まだ未読の方には是非読んでもらいたいです!
全てを説明するのでは無く間を読みとる、読み応えのある作品でした。
練が見えるようになった糸。あらすじを読んだときは新たな能力?とも思ったのですが、共感覚的な、実際に練が感じた思いが言葉の代わりに出てきた表現なのだろうなと思うとぐっときました。
1巻の練が楓に対してしばらく無関心よりマイナスな態度にもやもやしていたのですが、今回の楓の心情で納得できてスッキリしました。
感情を無くすのでは無く潰してきたんだなあ練は。切なくなると同時に楓と出会えて縁を紡いでこれたのがなんて尊いのだろうとじーんときます。
最後に出てきた森の舎での話。一匹のバンダナをつけた狼と看守がひとりになった後の呟きに切なくなり。きっと彼らにもストーリーはあるのでしょうけど暴くのは野暮ってものでしょう。
やさしいファンタジーの世界では無いけれどこの世界観が好きだったなあと最終巻でより感じました。