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小説


受けは傷痍軍人という重い設定で、そののんびりした口調から語られる戦時中の体験は、かなりハードモード。焼夷軍人あるあるなのだろうが、死者からあの世に呼ばれる感覚、死への感覚が麻痺していく描写、死をちらつかせたジョークは、正直あまり笑えない。
自然の美しいものに飢えていた受けが、無意識に攻めを目で追ってしまう描写には説得力があるし、人物造形としては尊敬に足る存在だとは思う。
ただ、この二人の恋のあり方を心地よく受け取れなかった。受けと攻めの関係性が、どこか共依存的に見えてしまう。「世話されたい人」と「世話したい人」が過不足なく噛み合う構図が、健康的な関係には思えなかった。にもかかわらず、周囲がほぼ無条件にウェルカムで、物事がイージーモードに進んでいく点に、現実との乖離を感じてしまう。
戦争による喪失や心の傷を抱えた人物が、その救済をほぼ恋愛関係の中に集約していく構図も個人的には重い。受けの言動は、いわゆる「部屋とワイシャツと私」の世界観――依存や献身が美談として処理される構造を想起させ、この価値観が苦手な人にはかなり厳しい作品だと思う。19歳の恋人に「死んだら取り憑いていい?」と尋ねる場面には、恋愛よりも別の拠り所が必要なのでは、と感じてしまう。
さらに王宮に呼び出された際のエピソードがあまりに荒唐無稽で、物語として受け入れきれず、三割ほど読んだところで本格的にしんどくなり途中離脱した。
傷痍軍人という現実的で痛みを伴う存在を、恋のメルヘンとして消費する描き方には、どうしても違和感が拭えない。読んでいて心が痛む作品だった。
タイトルからライトなお話なのかな!と思ってましたがとんでもない。めちゃくちゃ心に沁みる愛のお話でした…何度も泣いちゃったよ。電子版です。
15年間続いた戦争、そこで戦い続けた救国の英雄リシャール。本編は彼の一人称で物語が綴られています。そのお人柄通り、あたたかくのんびりお話が語られていて。15年間続いた戦争のこと、仲間達が次々と戦死していき、最後に生き残ったのが自分だから救国の英雄なんて呼ばれている、ただのおっさんだ、なんて。
ちょこちょこ「ん…?」と首をかしげちゃうところがありました。彼の主観で語られるので、そういうものなのかなと思って読んでいましたが、番外編で答え合わせできました。仲間がみんな死んでいったのは、リシャールがあまりに強いため、常に前線に送られていたからだと。
15年間、ずっと死と隣り合わせ。昨日笑いあった仲間が今日は死んでいる。
そんな経験を積んできた彼が、まともなわけないんですよね。
そんな彼を現世に繋ぎ止めた、それはもうでっかい愛と執着でがんじがらめに捕らえたウィリアムに盛大な拍手を送りたい。
彼にとって身近すぎる「死」から、彼を遠ざけたウィリアム。ウィリアムはリシャールのために生まれてきたんだとしみじみ思ってしまいました。一生しあわせでいてくれ…。
他者視点で語られる番外編では、リシャール視点の本編ではわからなかったウィリアムの姿が見られたり、リシャールの関係者が出てきたり。天国のような街に住む猫さまたちが、可愛かったり。
置き手紙には「あかーーーーん!!!」って盛大につっこんでしまいました。リシャールさん!それ、一番だめなやつですよ!と。
それに対するウィリアムの行動がまたすごかった…
泣いて笑って、また泣いて。心あたたまるお話でした。いいひとたちばかり…!
これからのリシャールは、老衰で亡くなるまで、ずっとしあわせなんだと信じられるお話でした。
すごく、すごく面白かった…!
小説家なろう で、全部読んでいまして、今回書籍になるという事で購入しました。
まず、表紙がいい。宇良たまじ先生がいい仕事してます。
リシャール(受、フラグ建築士)に振り回されるウィリアム(攻)。
今回の書籍に収録された「青と白と猫の街」にリシャールがウィリアムに置き手紙を書くシーンがあり、
「いや、それあかんやつ!」と思わず叫んでしまいました。
受に振り回される攻っていいよね。
現場からは以上です。
題名とあらすじ、そして序盤を読んだ段階では、ここまで胸が苦しくなるような深いシーンが多々ある作品だとは予想していませんでした。
申し訳ない……。
BLによくある「年下イケメン×くたびれたおじさん」だと思ったら大間違いで、ストーリーも、攻と受が互いに向ける愛情も、とても深いです。
攻・ウィリアムは金髪碧眼の美青年で、公爵家の長男で国王の甥で、見習い騎士の中でもずば抜けて強く、一見非の打ち所がない完璧な男です。
しかしその内面は、ウィリアム自身も自覚しているとおり、女性に好まれる性格ではありません。
唯我独尊、傲岸不遜な変人。
ウィリアムを愛する実の両親からですら、そう評される男。
自分がやりたいように好きなように生きる。
そのためには権力も金も惜しみなく利用する。
心から愛情を向け慈しむ対象は、リシャールだけ。
受・リシャールがこれまた……。
序盤を読んだ段階では、単に自己評価が低い人かと思っていました。
ところが実は、あのウィリアムすら翻弄してしまう、とんでもない人物……。
常に死と隣り合わせの戦場の最前線で15年間戦い続け、その影響で生死の捉え方も価値観も思考回路もぶっ飛んでいる。
危うい。
とにかく危うい。
ちゃんと力いっぱい捕まえておかないと、すぐにその命をあっさりと捨ててしまいそうな。
意図的にではなくとも、結果的に命を落とすことになりそうな展開に無防備にフラフラと歩いて行くような。
そんな危うさを常に持っていて、ウィリアムの心痛が心配になるレベルです。
まさか王女から侮辱されて、その場で瞬時に自死しようとするとは。
同情を引くとか、謝ってほしいとか、そんな考えなど微塵もなく、単にシンプルに自分の命を終わらせようとしただけ。
ウィリアムが止めていなければ即死だった。
あのシーンで、リシャールの危うさが目の前にドン!と示された気がしました。
騎士団長のザイル視点や、ウィリアムの両親視点の場面があり、それを読むとひしひしと、ウィリアムとリシャールはお互いが相手でなければならない運命の相手なのだなと思いました。
他人に興味を示さずただ自分がやりたいようにやってきたウィリアムが、唯一興味を示し愛する相手がリシャール。
危ういリシャールを、権力と金を惜しみなく使って守り、更にその若さと強気な性格で全力でリシャールを囲い込むウィリアム。
リシャールと出会えなかったら、ウィリアムは一生人を愛することなんてなかったかもしれない。
ウィリアムと出会えなかったら、リシャールはどこかでフラッと命を捨てたかもしれない。
二人だから、愛を知って生きている。
リシャールがどれだけ過酷な経験をしてきたか、それによって恐らくどこかのネジが飛んでしまっていることにも、胸が痛くなったりしましたが。
ウィリアムなら、リシャールがいつか迎える死が老衰以外のものにならないよう、全力で愛し守っていくと信じられるので、途中途中切なくなりながらも安心しました。
あと、表紙のイラストがとても綺麗でかっこよくて良かったです!(実は年下攻もおじさん受もあまり好きではないので、表紙のイラストが違ってたらこの作品を読んでいなかったかも)
すごい大作でした。
表題作(1話目)はリシャール視点で独特な文体で。
一冊この調子だったらキツイなあと思ってたら、団長ザイル、騎士ウィリアム、ウィリアムパパ公爵視点もあり。読み進むにつれて本当のリシャールやウィリアムのことがわかっていって。
1話目は戦争を終わらせた男リシャールが終戦後を生きるところからです。
何も欲しがらず、死んでいれば良かった。いや死ななくて良かった、と思いながら淡々と日々を過ごし。綺麗なものが好きだった。自然の滝や湖や。でも右足が動かなくて遠くまで歩けず馬にも乗れない。だからか美しいウィリアムを見てしまう。そんなことが綴られ…。
なんかもうたまらないんですよ。
リシャールが教官を務める騎士見習いのウィリアムとの仲が進むところとか。主人公はリシャールかもしれないけど、ウィリアムの圧倒的な深い愛の物語かもしれない。
自分を大切にしないリシャールを身の回りから住処から何もかもを整えて囲い込んでいくウィリアム。リシャールにどんなに好きと伝えても全く伝わらない。
一冊を通して色んな出来事がありリシャールもウィリアムもだんだん変わっていくんです。
リシャールが守り愛したこの国、王、王族。リシャールの守りたいものを全て守ろうとするウィリアム。そうしないと安心してリシャールが生きられない。もう特に最後の章が感動の嵐です。
リシャールが戦時中に瀕死の状態が長引いたせいか、話し方や考え方がもしかして…?でもギリギリ障害ではないという設定で。
世間知らずの自覚はあるけど、あれ?俺はおかしいのか?って思うところ、それがめちゃくちゃせつない!
人生の半分近くを戦争の最前線にいたから、戦後の暮らしが幸せってニコニコしてて。
与えられる権利も使える権利も何にも利用しなくて。でもいざ国に危機が?って時には暴走してしまって。
リシャールにウィリアムがいてくれて良かった。ウィリアムにもリシャールがいてくれて良かった。
私もリシャール友の会に入りたいです。
ザイル団長やウィリアムパパ視点も2人を知る上でとっても良かったです。
