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彼が愛しているのは

Kare ga Ai shite iru no wa

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表題作彼が愛しているのは

町田亮輔
建築設計事務所の若手設計士、バイセクシャル、25→26歳
片瀬真白
建築設計士、町田が勤める事務所から独立、29→30歳

同時収録作品彼が愛しているのは

東江由基
東江建築設計事務所所長の甥,設計士,真白の先輩
片瀬真白
新人建築設計士

その他の収録作品

  • あとがき
  • Home Coming

あらすじ

元勤め先の後輩・町田と気楽なセフレ関係を続けている真白。真白には辛い恋の記憶があり、誰とも深い付き合いをするつもりはなかった。だが町田は優しくて仕事熱心で、本人が軽く見せようと装っているよりは、ずっと深く真白を想ってくれているように見える。町田に惹かれていくにつれてかつての恋人の記憶が蘇るようになり、戸惑う真白だが……? 抱えた傷ごと、彼を愛した。切ない年下攻ロマンス。

作品情報

作品名
彼が愛しているのは
著者
安西リカ 
イラスト
橋本あおい 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784403526435

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48

4.4

(55)

(37)

萌々

(13)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
10
得点
244
評価数
55
平均
4.4 / 5
神率
67.3%

レビュー投稿数10

抱えた傷ごと包み込まれ、ゆっくり育ってゆく気持ち

決して消えぬ大きな喪失を抱えた受けを、
その傷ごと愛する攻め。

信じられないくらい一途な攻めの包容力が胸を打つ、
受けの救済ストーリーです。
途中からティッシュが手放せなくなるほど、泣けて泣けて、泣けました...

肌色な表紙にちょっとドキッとするけれど、
内容はとてつもなくピュア。
読み終えて表紙を見返し、攻めが受けを見つめる
その優しい視線に、たまらない気持ちに。


元勤め先の建築設計事務所後輩の町田に
飲みの席で誘われたことをきっかけに、
セフレ関係を続けている真白。

実は真白には忘れられない辛い恋の記憶があり、
誰とも深い関係を築く気にはなれず、
気楽に過ごせる町田との関係を気に入っています。

しかし共に過ごすうち、だんだんと
”軽い遊び人”を装っている町田の真面目な人となりや
優しさ、自分に向ける真剣な思いを理解するようになり、
心が揺れ動きー

と続きます。


これ、まず、真白の抱える恋の思い出と傷が、
とてつもなく大きくて痛くて切なくて、やるせないのです。
(以下大きなネタバレを含みます)





遠い憧れの存在だった先輩設計士・東江由基との恋。
確かに気持ちは通じ合っていたけれど、どこか”終わる”ことを予感させる緊張感を孕んだ恋だったことが、中盤、真白視点で丁寧に綴られています。

そして天才的な能力・技術を持つ東江が
海外へ活躍拠点を移した直後の、永遠の別れー


本気で恋していた人を喪い、人前で元気な顔を見せられるようになるまで、
真白がどれだけの時間を要し苦労したか。
引き出しに今も入ったままの眠剤や、恋人の訃報から半年の間休業していた…といった描写から、彼の苦悩がダイレクトに伝わってきます。

で、この真白の元恋人・東江という男が、憂いと大人の色香を纏う、
良い男なのですよね…
真白の気持ちの方がずっと大きいのかな、と思いきや、
誕生日を覚えていてさりげなく「欲しいものはないか?」と聞いて来たり。

海外へと行ってしまう時にも、真白からもらった観葉植物を「連れて行く」なんて言い方をして、真白をドキッとさせる。
「待っていて欲しい」という直接的な言葉は告げずに希望を持たせるような言動、ずるいなあ…!と思うのですが、憎めない。

特に切ないのが、二人で話し合いながら、
「一緒に住むなら…」と理想の家の意匠製図を作るシーンです。
そんな未来はきっとないだろう、と頭のどこかで互いに分かっていながらの会話に胸が痛む。。

そして東江の告げた「2年」という期間を、
真白が待ち続ける決意をした矢先の喪失。


で!!

ここから攻め・町田視点へと大きく場面転換してからの展開が、
この物語最大の見せ場ではないかと思います。

飲みの席で軽々しく真白を誘った時。
飄々としながら自分のことを「セフレ」だと言っていた時。
自分が設計を担当する場所に、「ちょっと付き合ってくれない?」と言って
真白を何度も連れ出すようになった時。

彼の軽口の裏に、一体どれだけの真摯な思いが隠れていたか…

この攻め視点パートを読んで前半を振り返った時、
一番に「あっ!」と思い浮かんだシーンがあります。

真白が初めて町田の家に誘われ、いい雰囲気になったにもかかわらず
ベッドでうとうと…と眠りかけた時。
町田はてっきり強引にでもキスしてくるのかと思いきや、
優しい声で「寝ていいよ」と囁く。

これ…!

真白の家の引き出しに眠剤が入っていること、
それが置いてある理由、それらを全て知った上での、セリフだったのですね。。

自分のそばでは、何も心配せず安心して眠ってほしい。
決して真白を一人にしない。寂しくさせない。泣かせない。

「決まった相手は面倒くさい」と言う真白の心に負担をかけないように、
明るく、気楽で、軽い男を演じる。
そうして真白が立ち直るまでそばにいる。
他の誰かが軽い気持ちで真白と遊ぶことなんて、絶対嫌だー

えっ、実はそんな前から真白のこと、知ってたの!?
という二人の出会いエピソードに驚くと共に、
とんでもなく深く大きな彼の献身愛に衝撃を受けました。


そんな攻めの一途愛が明かされ、
二人の思いはもう”セフレ”の枠をとうに超えたよね、両思いだよね…!?
となったところからの、”すれ違い”描写。
切なさが、加速していきます。。

はっきりと好意を認識してしまったからこそ、
セフレだと思っていた時には抱かなかった
「昔の恋人を今も引きずっている」ことへの罪悪感が、
真白を苦しめるようになる。

過去の恋の傷を(本当は知られているのだけれど)
町田に告白できない真白の葛藤も十二分に理解でき、
切なさに涙しました;

このすれ違いの回収というのかな、それがまた見事すぎて。

未完成でいつもどこか不安定だった、東江との恋。
そんな関係性の象徴でもある意匠製図を、
今度は町田と二人で話し合って形あるものにしてゆき、完成させる。

真白が新たな恋を自分自身に許し、覚悟を決めた瞬間の描写に
心震えました。
で、そんな真白の心を、言葉で態度で行動で、しっかりホールドしてくれる町田!!
君はどれだけ包容力を持っているのー…!

ラスト、二人で共に訪れる場所に、また(何度目かの)熱いものが込み上げてきます。
輝く希望の見える最後の一文も、とても素敵で沁みるものでした。


そして最後に、タイトルの『彼が愛しているのは』。
これも秀逸だなあ…と唸ってしまう。

恋が成就するまでの攻め視点で見ると、
「彼(=真白)が愛しているのは(東江であり、自分ではない)」と、切ない恋心として読み取れる。

けれど物語全体の流れから見ると、
「彼(=真白)が愛しているのは(、今は確かに町田ただ一人)」と捉えられる。

考える余地と余韻、そして最後にはたまらない幸福感を感じさせてくれるこの短いタイトル、本当に素敵です。

あとがき後の掌編は、真白の叔母視点。
温かな叔母の目線を感じるお話に、ほっと優しい気持ちになります。

抱えた傷ごと受け入れられ、愛されるー
なんとも印象深い、夜明けの救済ストーリーでした。

11

過去を上書きするのではなく、過去とも共存する愛のカタチ

このお話、面白いなと思ったのが過去の恋と現在の恋が同じだけ重要視されていることです。

真白が過去に愛した恋人の恋物語に想いを馳せる一方で、セフレ関係にある年下後輩・町田にどんどん惹かれていくという恋愛の二重構造になっています。
こういう場合、過去の恋愛を引きずる真白に対して町田が過去の愛なんか俺が上書きしてやるぜ〜!ってなりそうなもんですが、このお話は好きな人の過去の愛もまるっと受け入れましょうという町田のスタンスが男前。昔の恋人を忘れられなくてもそれでいい、むしろ忘れないでいてとサラッと言ってのける町田の真白への愛が沁みまくって堪らんでした( ´∀`)

真白にずっと恋心を抱いていた町田の執着心を感じるストーリーではあるものの、真白の生活空間や恋愛観をとても大事にしている寄り添い型の健気さがグッときます。
町田も真白も真白の元恋人・東江も建築に関わる同じ業界人。東江は業界内では有名なエース建築士で、町田にとっても真白にとっても憧れの対象の人物です。
真白と東江の間に町田が間男として入ったとかではなく、ましてやこのストーリーは三角関係でもありません。物理的には三角関係でなくても、東江が真白の心にいつまでも忘れられない存在として居続けている意味では、精神的な三角関係といえるかもですが。

真白が東江を失い、真白と再会したのち真白に近づくためならセフレでもなんでも利用する町田の想いがどこまで献身的で、こんなにも素敵な攻めキャラを生み出してくれた安西リカ先生にありがとうととにかく言いたいです。
真白を軸として過去と現在の恋愛が構築されているように見えますが、このストーリーを動かしているのは町田だと思っています。真白が東江と交際に至るその時点においても実は町田の真白への執着と恋心が裏では既に稼働しており、真白と東江の交際ストーリーにも町田の感情が少なからず絡んでいるからです。

真白と東江への憧れと羨望の感情や、2人の親密な仲を感じて失恋、そして新たに始まる真白との関係への期待が複雑に交錯していることにより、真白の過去と現在の恋愛が町田の存在により一層の深みを増していくことに注目いただきたいなと思います。そして、後腐れない関係のセフレから好きな人へと気持ちが変化していく真白の町田に対する想いからも目を離さないようお見届け下さいね^ ^

真白と元恋人との別れがあんな風な終わり方だっただけに切なめなストーリーになるのは否めませんが、いつまでも過去に留まるのではなく新しい恋愛に前を向いていこうとする未来の動きは明るい読後感に繋がります。
過去を上書きするのではなく、過去とも共存しながら愛を構築していく姿が風通しの良い爽やかな恋愛の空気を感じさせ、最後の最後まで彼らの愛に酔いしれることができました。

5

切なくて苦しくて、でも前を向ける物語

安西リカ先生が大好きで、新刊が出るたびにすぐに読んでいます。
最近は軽めの作品が続いていましたが、本作はとても切なく苦しい物語でした。


気軽な体だけの関係を続けている真白と年下の町田。関係が続くにつれ互いに親密さが増しているものの、真白にはつらい過去があり、その先に進むことができない。
かつて、憧れの相手に捧げた深く苦しい愛を思わぬ形で失った真白は、その喪失から立ち直れていない。
町田との関係をいざ進めようとした時、かつての愛を忘れて進むことの恐怖に耐えられない真白。


真白の過去の恋愛の切なさも、過去に囚われる苦しみも、すべて身を切られるようにつらく、泣きながら読みました。
真白の苦しみを理解し、心にぽっかり開いた穴ごと彼を愛し、忘れるのではなく喪失を共有することで前に進む道を示した町田。彼の献身と深い愛情により迎えた結末に、静かな感動を覚える素晴らしい物語でした。

本篇中の視点切り替えが巧みで、安西リカ先生の物語運びの力も遺憾無く発揮された作品だと思います。先生のファンの方も、そうでない方もみなさんにぜひ読んで頂きたいです。

5

過去含めてとても良かった。

あらすじに「真白には辛い恋の記憶があり」とありますが、元カレ東江の描写がちょくちょく出て来るなぁと思ったら、途中、がっつりと出会いから付き合うようになるまで書かれているんですね。
もうね、単なる元カレレベルじゃないんですよ。
東江という男の存在感とそれを愛した真白の過去を読者が否応なしにわかる仕掛けになっています。

その後の、攻め視点ときたら!
あんた、めっっちゃ健気!!!
ほんと、めっっっっちゃ健気なの。
めーーーちゃくちゃ愛しているのに、重い感情をぶつけないように、負担にならないように自制しまくっていて。

そして町田が見つけた「luminous」という名前のついた製図画像。
これは東江と真白がああでもない、こうでもないと言いながら造った家。
それを残している真白の気持ちを思うと泣けました。
煌めいているけれど非現実的で…永遠に完成することはない「真白と住む」家。
泣ける。
それをあの町田が完成させたというところもいい。

そして一番泣けてしまったのが「いつか消えてしまうとわかっていても、確かにあのときは同じ光を求めていた」ってとこ。

一方通行の泡沫のような恋だと思ってたけど、確かにあの時、愛はあったんだと知ることができた真白の気持ちを思うと泣ける。救われたよね。
そしてそれを町田のおかげで知ることができたとか、luminousのくだりも含めてお話の回収が神すぎます!!!!

そして何より過去の男、忘れさせてやるよ系ではなく、忘れらない気持ちも含めて丸っと愛する町田、最高です!

5

意味深なタイトルが良い

今回は建築設計事務所の若手設計士と
フリーランスの設計士のお話です。

元カレを忘れられない受様が
気安いセフレだった攻様を恋人とするまでと
伯母視点の後日談短編を収録。

受様は大学卒業後
受様の出身大学のランクでは本来通用しない
業界では存在間のある中堅設計事務所に
就職します。

受様は課題や提出物は常にギリギリクリアですが
学外のコンクールやコンペにセットと挑み
センスとアイディアだけで勝負し

対象には縁遠かったものの
特別賞や審査員賞などを獲得した成果を
最大限発揮して採用獲得でした。

その設計事務所には
代表の甥でエース級の若手設計士がおり
受様の同期達は彼に憧れ共に仕事ができるかもと
入所を志した者もいましたが

受様が彼の名を知ったのは入所後で
更に代表から数多くの志願者で採用を揉めた時に
甥の推しがあった事が決め手になったと言われ
彼の作品をみた受様も憧れるようになります。

そして少しでも彼に近づきたいと学び
仕事でも彼の助言を受けられるようになり
恋を育てる仲となり

彼の移籍と同じくして受様も事務所を出て
フリーランスとなるのですが
ある不幸な出来事で受様は恋を失います。

元々長くは続かないと思っていた恋ですが
彼を失った受様の傷は深く
誰かと付き合う事はありませんでした。

事務所からの依頼も多く受けていた受様は
去年の新卒で有望株と噂される攻様に
熱い視線で見られていて
年度末の飲み会で口説かれたこと話きっかけに
セフレ感覚で付き合う事になります。

受様はそれまでワンナイトを楽しみつつも
割り切った関係と言っても続ける事で
面倒なことが起きそうだと
特定の相手を持たずに来ますが

男は興味があったが初めてという攻様は
セックスに余計な意味づけをせず
性格もドライで

飽きたらあっさりと終わりにできそうと
セフレ関係を続けていたのですが・・・

憧れの人だった元カレを忘れられない受様が
遊び慣れていそうとセフレにした攻様との
恋物語になります♪

意味深なタイトルが
物語の展開に明暗をつけていて
大変楽しく読ませて頂きました。

受視点での2人の現状から
受様の過去の恋事情が語られ
攻視点で受視点には見えない攻様の恋事情が
描かれているのですが

受様の元カレ視点はないのですが
攻様から見た2人の様子を描くことで
元カレの心情が透けて見える事で
それぞれの立ち位置と思いが三角関係のように
絡み合って影響していて非常に面白い展開でした。

受様の元カレの不幸な事故は
受様が抱いていたネガティブな未来へと繋がり
ハラハラさせられましたが

受様が攻様との恋を選ぶまで
ドキドキ&ワクワクさせて頂きました (^-^)/

あとがきの後に番外編があるので
ここまでしっかり堪能しましょう♪

4

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