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圧巻でした。
そして非常に重い。非常に重いテーマを扱った作品なのです。
これまでの安西作品を期待して読んだ読者にとっては、衝撃を受ける事になるとも思います。私もこれまでとあまりにガラリと違う作風に最初は戸惑いました。
でも、最初は静かに、また読み進めるうちに加速度的に引き込まれるその深いストーリー性。痛くて切なくて仕方ないのに、心の深い部分を揺さぶられ、読み終えた後は強い感動を得られると思うのです。
実は最初のうちは読み進めながら、「これは果たしてBLなのだろうか」と疑問を持ちました。
序盤は推理サスペンスの要素が強いのです。
ひどく痛がってる小さな子供。そんな子供をなぐさめる「三希」。どこか不安を煽られる、不自然な青年・百合原。そして、そんな百合原に偶然出会う、何か事情がありそうな滝本。
お話としてはとても面白く、グイグイ引き込まれていくのですが、推理サスペンスの要素の方が強くBがLして無くない?と言った感じで。
ところがですね、中盤になるとこれは紛う事無き愛の物語だと分かってくる・・・。
痛くて切なくて仕方ないのですが、ちゃんとベースにあるのは愛なんです。
また、三希の事を思うと胸が張り裂けそうな気持ちになります。
ただですね、終盤の圧巻的なシーンに、ハラハラするのですが救われもする。滝本の「深い」と言う単語では言い表せない愛情に、もう号泣なんですね。そして、「彼」のモノローグにもこれまた号泣。
自身が母親なので、百合原の過去はあまりにも痛いものなんですが、それでもしっかり愛されていたんだと思うと、救われたような心地にもなるのです。
あと、ストーリー自体もお見事でした。これで全て上手く行くと、こちらが油断しきってからのどんでん返し。「やめてー! やめてー!!」と読みながら叫び出したくなりました。
全てを読み終えてから、もう一度最初のページを読むと、ひどく胸が痛くて再び涙が零れそうになります。百合原の「ニャー」にも(´;ω;`)
でも、やっぱり百合原は「彼」であり、「彼」も百合原なんだなぁと、ちょっぴり心が軽くなる。
これからは「二人」で、幸せな未来を築いていって欲しいと願わずにはいられない物語でした。
私は普段レビューを書くとき、これこれこうゆうストーリーで、こんな展開で、ここが萌えて、あそこが萌えてと、ついつい事細かに書き込んでしまいます。全部言いたくて仕方ない(>_<)ヽ
しかし今回は、この作品でそれをやっちゃあダメだろうと自重しました。
そんなワケで、感想を延々と・・・。さっぱり意味が分からなかった申し訳ありません。ただ、すごく心を揺さぶられる作品です。いつもと違うかもと敬遠せず、たくさんの方に読んでいただきたいなぁと思います。
*追記です。
私は安西先生のデビュー作からのファンですが、良くも悪くも正統派の作家さんだと思っていました。こう書くと語弊があるかもしれませんが。
しかし、前作でも「あれ?」と思いましたが、今作で大きくイメージが代わりました。これからかなり化ける作家さんじゃないかと思います。なんにせよ、こちらがターニングポイントになる作品では無いかと思うので、かなりワクワクしてます。もちろん、これまでの正統派の作風も大好きなので、いい塩梅に甘くて可愛い作品も出してもらえると嬉しいな~と思ったりしてます。
わざわざ、追記で書くほどの内容では無いのですが(^^ゞ 失礼しました。
本編を読み終わってかなり悩みました。
物語は受け視点、攻め視点と交差して、早い時点で真相が明かされます。
切ない、そして大人の事情があるからか、さらりと書かれているけれど、透(受け)の過去はかなり重いです。幼児虐待に地雷がある方や深いネタバレを避けたい方は、この先は目を通さないことをお勧めします。
以下、かなりのネタバレを含むレビューです。
*****
透は過去に(おそらく誘拐)で酷い虐待(肉体の一部欠損)を受ける内に、主人格を守るために複数の人格が生まれた多重人格者(解離性同一性障害)です。
交代人格が現れている時は、透は一切の記憶を持ちません。
その中でもホスト人格(交代人格)で唯一、オリジナル人格の透と交流できるのが「三希」。この名の由来も切ない。
三希は数多の人格の中で透を守り、透の代わりにその痛みを受け、危害を加える者を徹底的に排除するという、強い人格。
透は三希を心の支えにしているものの、やはり彼が表に出ている時の記憶は持たないのですが。
過去編。
三希は犯人探しに表に出ている時に、滝本(攻め)と出会います。
この辺のエピソードは滝本視点で書かれているので、どこまでが計算でどの時点で滝本に本気になったのかは曖昧です。
滝本は傲慢で他人を見下すのが当然で、強い男を心身共に屈伏させるのが、成長過程で植えついた己の生き様だったのですが、ゲイバーで三希と出会い、全くタイプでなかったのに強く惹かれ、べた惚れ状態に。
会えなくなるのを恐れ、「詮索しない」という条件を守る一途さです。
しかし、滝本の誕生日を境に、三希は姿を消してしまいました。
それから数年後、新聞販売員の透と出会い、三希の面影を見、交流が始まっていくのですがーー
*****
前書が長くなりましたが、透は真面目で消極的な性格で、更に特殊な経験を経ている為、本心から心配してくれる人物はいますが、友達と呼べる人はいません。
一方、滝本は単なる好奇心やちょっとした加虐心から透と交流を図ります。
やがて本気で好きになるとも知らずに。
そして消えた(眠りについた)三希が再び表に出てきて……。
透と滝本の関係に欠かせないのが「三希」なんですね。
透は自分を好いてくれた滝本が好き。でも三希を忘れて欲しくもない。
滝本は透も三希も同じくらい好き。今後は透と共に生きていきたい。
三希は透を庇護したい。でも滝本も好き。
三者の想いがもうどうしようもなくて、故にこの作品は絶対に特典ペーパーも合わせて読んでもらいたいです(現時点ではネットショップを含め、まだペーパー付きが購入できます)。
評価が難しい点の一つが、エロ描写が滝本と三希がしめる割合が大きいこと。
一つが同じ身体と言えど、人格が違う二人を同時に愛すること。
一つがちょっとした謎が残ったままなこと。
そして、三希は幸せになれたのか? (その後の透を見るに、上手い具合に統合出来たみたいですが)。
自分の萌シチュエーションとは少しズレていますが、サスペンス物が好きなのと、作品の完成度からいって評価はこれしか付けられませんでした。
もう読みだしたら止まらないペースでしたよ、ええ。
前作『あなたが教えてくれた色』で、安西さんの作風が若干変わった…?と思ってましたが、今作も今まで安西さんのイメージとは全く異なる毛色の作品だったように思います。
いつもレビューはネタバレ上等で書きますが、今回はネタバレは封印します。こんなにネタバレしたらアカン!と思う作品もそうそうない。ぜひとも予備知識なしで読んでほしいです。
とにかく面白い。萌えるとか萌えないとかをはるかに超越してると思います。一つの作品として、めちゃめちゃ面白かった。
主人公は綺麗な顔をしているものの、自分の風体に全く関心がなく、貧しく、なるべく人と関わらないようにひっそりと生きている百合原くん。少しずつ見えてくる彼の過去や、彼の抱える病、そしてー。
シリアスな雰囲気満載で、最後の最後までもしかしてハピエンにはならないのではないかとハラハラドキドキしながら読み進めました。
攻めの滝本も良いんですよ。
ハイスペック男子ではありますが、めっちゃブラック。そのブラックさを産んでいる理由の一つにも萌えますし、単なるナイスガイではないのでストーリーに厚みが出ていると思います。
安西さんの文章力が半端ないので、その文章力で描かれていく「謎とき」が面白すぎる。そこかしこに撒かれている伏線を回収しつつ、でも、その根底に流れているのは沢山の人が百合原くんに向ける様々な、そしてあふれんばかりの愛情。
とにかく読んでほしい。
文句なく、神評価です。
正直最初の「にゃあ」はキモ。と思ったんですが二度目では、おぉ……。と思って。三度目では、ふ……ふおおぉ!でした。
切ない。
あらすじとタイトルには特に惹かれなかったんですけど作者と口絵で買いました。……口絵!
攻が勝ち組で、性格悪くて、でもまあ安西さんじゃひどいことにはならない……よ、な?
と読みながらビクビクしました。
クライマックスの少しネタバレを。
結局のところ三希は透を守ってる。頭が良いから、自分がやれば無罪になるのを知ってる。そうしなきゃ終われない。だからブレインでしかないのに、不向きなのにやる。
そういう、三希では罪にならないだろうってのは遼一にもわかってるんですよね弁護士だもの。一方の自分はちょっとしたスキャンダルで周りから蹴落とされる世界に生きてる癖に、あんな家で育ちの癖に、
殺人はちょっとしたスキャンダルどころじゃないです。
なので、格好よかった。
読み返してみると、最初の遼一が意地悪なとこから既にほほえましかったです。相手を見下しつつも気になって仕方ない当たり、三希の時と同じ反応してるんじゃん可愛いな
安西先生の最新作。
「好きで好きで」や「人魚姫のハイヒール」とは全然違く作風で驚きました。
こういうのも書かれるんですね。
重く切ない話ではあるけれども、
この二人の幸せな生活は続いていくと思うと読後は爽やか。
個人的2017年度ベスト5には入れたい、読み応えのある一冊です。
****以下ネタバレ含みます****
攻(遼一):弁護士資格も持つ優秀サラリーマン、尊大、姿を消した恋人を思い続ける
受(透):虐待(親からではない)を受けたことが原因で多重人格になり、傷害事件を起こした過去を持つ、新聞配達員
攻が過去の恋人と受を重ね合わせて共に過ごすうちに
いつの間にか受の純粋さに惹かれて愛するようになるのはよくあるストーリー。
でも本作の場合は、元恋人(三希)=別人格の透で、
多重人格になった理由はひどい虐待に因るもの、
三希が遼一と一緒にいたのは復讐に利用するため、
透自身は何もかもに自信がなくて静かに生きているだけ、と
設定や背景がとにかく重い・・・。
そんな中でところどころ遼一が徐々に見せる、三希ではなく透への愛情や優しさと
それに喜ぶ透にがキュンとします。
最後は三希は消えてしまったけど、やっぱり透の中には残っているのかな。
これまでの辛かった30年間分、遼一に甘やかされて幸せをたっぷり味わってほしい。
もっとこの先の二人も読みたいな~。
安西先生は商業しか書かれてないのかな。